キヴォトスに狩人様がやってきた   作:小説を書く左廻りの変態

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ナイトレイン、みなさん買いましたか?
自分はもちろん買っちゃいましたよ。

使用キャラは「鉄の目」

名前はVenatorですので、夜を渡る際にどこかで出会うかも知れません。

自慢ですが【夜の獣グラディウス】はアプデ前にソロで倒しました。
褒めて


第三十四話 悪夢

私が意識を今にも手放してしまいそうな時だった。

 

ドパンッッ!!!!!

 

一発の銃声が空気を揺らす。

腹の奥底で響く様な重い音に対して本能的に恐怖を感じたのか先程までのは嘘だったかの様に意識が鮮明になる。

 

「どこもかしこも獣ばかりだ…」

 

音の出所を探す為に、その方向へと頭を向けた。

2メートルはありそうな巨大な体躯

首元に巻かれたきめ細やかな装飾の入った灰色の布

返り血で煌めく漆黒と言うべき装束

それとは対照的な絹の様に艶やかな白髪を携える、一人の初老の男性が、そこにはいた。

 

右手に持つのは朽ちた包帯が巻かれている柄が歪んだ大斧。

しかし大柄な体躯には似合わない、まるで博物館にでも置いていそうな古い銃口がラッパ状の銃を、左手に構えていた。

 

その先からは硝煙が白く上へ上へと登っていくのが見て取れる。

察するに先程の銃声はこの男性が持つ銃から発せられたと、容易に想像がつく。

 

けれど、一つ疑問に思うことが私にはあった。あれほど小型だと言うのに何故あそこまでの大きい銃声を響かせられる?

炸薬の量?それとも銃の構造によるもの?そんな能天気なことを考えていた時、自然とその銃の向けられた先の

 

惨状

 

が目に入ってしまった。

 

そこにあったのは、頭の丁度上半分辺りが消し飛び、残った下顎から鮮血が間欠泉のごとく吹き出る様だった。

咄嗟に目を逸らした。けれど、脳裏に焼きついた“あの時の記憶”とこの瞼に焼きついた情景が自然と結びついてしまった。

 

瞬間、とめどなく溢れるのは血の混じった吐瀉物。

胃の中のもの全て、それどころか内臓全体を吐き出してしまったのではないかと錯覚するほどの強い嘔吐感。

焼け付く様な痛みの走る喉元。

自然と溢れる涙。

それにより歪められた視界。

生暖かく膝元に広がる吐瀉物の粘性を帯びた感覚。

鼻腔を満たす胃酸のすえた匂い。

 

その何もかもが鮮明に、私に直接、流れ込んできた。

 

「この程度で吐くか…無理もない。もしかしてヤーナムの外の人間か、なら尚更…」

「ひっ…」

 

気付くと、その初老の男性は私の方へと足を進めていた。

血に濡れたその姿が私は心底恐ろしく感じ、体が強張り、肩が震え始める。

 

カツカツと、音が響く中に、ゆっくりと水が滴る様にその衣服から血が滴り落ちる音が混ざる。

近づいてくる、その行為自体にすら恐怖を抱き折れていない右腕で必死に顔を覆う。

 

しかしながら、視界を塞いだ事により、先程よりも音が鮮明になる。

 

一歩、一歩、そのまた一歩。

ゆっくりと、ゆっくりと、着実に。

その時、歩く音が止まった。

 

「…怯えさせてしまったか。すまない、その様なつもりはなかったんだがな」

「え……?」

 

その声は男性らしさを感じる低い声で、しかしながら内に優しさが込められていた。

まるで目の前で泣いている幼子をあやす様な、そんな声。

 

強張った体から、力が抜けていくのが分かる。

ようやく…まともに話ができる人が来たからか、あるいは相手に攻撃の意思がないとわかったからなのか

 

いしき、が

 

━━━━

━━

 

「ホシノ先輩!!」

「ホシノ先輩!!」

「ホシノ先輩!!」

「ホシノ先輩!!!!!起きて下さい!」

「え……?」

 

瞬時に意識が鮮明になる。

意識が遠退いていたのが嘘かのように。

体の感覚も、まるで膜が一枚…いや何重にもかけられたと錯覚させるほどの鈍った感覚が、一瞬にして元に戻った。

先程までの恐怖を感じさせるほど大きい月はなく、ただ、布製の天井が見える。

恐らくテントの様な中だと思う、だけど。

 

「「「ホシノ先輩!!よかった!!」」」

「…あ、私…戻って来れたんだ。」

 

私は、さっきまでヤーナム?という街にいたはずなのに、いつのまにかアビドスに戻っていた。

 

「ねぇ、今って何時ごろ?」

「えっとお昼過ぎで14時半くらいですが…それがどうかしましたか?」

 

夜と昼間という時間の差、日にちが違うのでは?とも考えたが、生臭い鉄の様な、あの独特の匂いが鼻腔を満たす。

横を見ると、顔面全体や、胴体に厚く包帯を巻かれたゲヘナの風紀委員の人たちが見える。

 

それはことごとく、私に時間の経過はそれほど経っていないことを突きつけた。

 

ではさっきの光景は一体なんだったのか。

まるで、さっきまでの光景の全てが“夢”だったかの様だと、私は思った。

 

けれど、折れた曲がった腕が夢ではなく現実だと突きつける。

 

「がっ…ぅ…」

 

それを認識した途端に腕に激痛が走り、あまりの痛みに身を縮めて痛む腕を押さえつける。

そんな時、耳元で声が聞こえた。

 

「動かさないで下さい」

「あなたは、だれ」

「私は氷室セナ、ゲヘナ学園救急医学部の部長を務めさせて頂いております。」

 

ということは、ここは救急医学部の仮設テント?

ああ、収容人数が多すぎてゲヘナまで運びきれないから、ここで…

 

「セナさん!お願いします、ホシノ先輩に治療を…!」

 

「現在、包帯や清潔なガーゼなどが不足している状況です。今すぐに処置はできかねます。暫しの間、お待ちください。」

「でも…!」

「腹部が貫かれたり、腕や足が千切れかけた,したぃ…ではなく患者の方が優先です。」

 

「ねぇ」

「はい?なんでしょうか」

「セナさん。背が高くて黒い髪の古臭い砂漠には似合わない皮の服を着た子はいなかった?」

「ホシノ先輩…ツキミちゃんのことは後で話しますから、今はとにかく安静n「聞かせてよ」

 

半ば食い気味にそう私は話す。ツキミちゃんが私を庇ったあと、何があったのか、それが知りたかった。

大方…あの子のことだから撃たれたことに激昂して更に惨状を作り上げたに違いない。そう、思っていた。

 

「いいの?ホシノ先輩に話したら…!」

「今から言うことは…決して嘘でもなんでもありません」

「アヤネちゃん…本当に、本当に言っちゃうんですか?」

「セナさん、見に来て頂いて申し訳ありませんが、少し席を外してはいただけませんか」

「ええ、というよりもたまたま通りかけただけですので。」

 

そう言ってセナさんは今いるテントからまた別のテントに移って行った。

その際に、隙間から血だらけの風紀委員が見えたけど…いまは気にしない方が身のためだろう。

 

「ホシノ先輩が望むなら、私達は止めない。だけど、今の先輩に耐えれるかどうかわからない。」

「それだって別に良いんだよ、シロコちゃん。何か知ってるなら教えt」

 

「なんで…」

「なんでそこまで…あの人に!」

 

「ただの…化け物なのに!!」

「シロコちゃん…化け物って、そりゃ酷いんじゃないかな?確かにお化けみたいに身長は高いし、言っちゃ駄目だと思うけどドラキュラみたいに血色は悪かったけど…それにセリカちゃんが誘拐された時だって」

 

「そうじゃない!!ホシノ先輩…どうして、今ここにノノミちゃんがいないのか…わからないの?」

「シロコ先輩!言っちゃd」

「ツキミちゃんに…!」

 

「あ、え?」

 

頭の中に虚無が広がる。ノノミちゃんが、いないのは…

 

「そんな訳…ないよね?」

 

「「………」」

 

テントの中には、沈黙が続いた。

嘘だ、こんなこと…全部悪い夢だ。

悪夢に違いないんだ




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