私は玉座にも見える椅子に座り、
大量に平伏す信者を椅子の上から見下ろす。
「聖女様!!
どうか我々に慈悲をお恵み下さい!!」
「お恵み下さい!!」
『もちろんよ。
きちんと働いてくれさえすれば、
私がこの手で救ってあげる』
「「「聖女様万歳!聖女様万歳!!」」」
手をあげて歓喜するもの、泣きながら手を合わせ拝むもの、床に手をつき頭を下げたまま礼を尽くすもの。
私は狂気兼カオスと化した状況に、慈愛に満ちた微笑みを静かに浮かべるだけ。
昔は悍ましくて仕方がなかったこの光景も慣れればそう辛くはない。
『さぁ、憐れで迷える羊達よ。
私に全てを委ねなさい』
さぁ、今日も今日とて
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私は、何の因果か未来を予知し、干渉する能力をもった。
所謂視える人達が云うに、この力は“術式”というらしい。
負の感情が力を生みだす源なのだそうだ。
そもそもの私は生まれてから暫くはただの無力な子どもだった。
物心がつく前に親に捨てられて孤児だった私は教会に拾われ、5歳のときに予知能力を開花させた。
無自覚に人々を酷な運命から救っていたら、ある時“術師”だという男に出会い、私の“術式”が明らかになったのである。
未来に干渉できることは私だけしか知らないが、視えない人々は私が神からのお告げを受け取っていると捉えた。
それからの私は教会で神様の生まれ変わりだ何だと囃し立てられた。
その反面、私の能力が他に漏れて攫われたり奪われないように重々に守られ存在は秘匿になった。
別に無理やり監禁されているわけでもないし、虐待などもされない。
ただただ現人神と讃えられ崇められる。
人でもない、死人でもない、別枠の存在だと思われていた。
まぁ、自分で縛りをかけてから年を取らなくなったから、ここ十数年は“人”の領域を逸脱しているのかもしれない。
いつまでも16歳のままの私を見て人々は私のことを神様だと勘違いしていく。
毎日毎日、人と会って、未来を視て、その繰り返し。
そして過ぎ去っていった時。
私が率いる教会は国の脅威になるレベルにまで大きくなった。
いや、私以外ほぼ非術師の信者だけど。
その数、数千人だ。
全国に散らばっているらしいけど、それでも凄い。
私一人で独裁できてるのはある意味奇跡だな。
上を殺して自分が教祖に、なんて考える人間が出てこないのが謎だ。
皆、私の未来予知の能力が余程特別なのかな?
まぁ、余計な犠牲を払わなくて済むならそれでいいけれど。
とはいえ、ある程度長く続けてきた聖女生活も、いい加減に飽きてきた。
私はめちゃくちゃ献身的な人間でもないし、神様なんて全く信じていない。
教会にいるため当然のように祈らされるが、時間の無駄だとしか思っていなかった。
私の能力は神頼みでもなんでもない。
勝手に救われた気になって増えていく信者に私は何の感慨もわかなかった。
未来を教えるけど、その後どうするかはその人次第なのだ。
私は別に誰も救けてなどいない。
『暇だなー』
その日の慈善活動が終わり、身を清めた後やることがなくて目を閉じる。
今時の暇つぶしであるケータイ電話もテレビもゲームも。
望めばいくらだって与えてくれるのだろうけれど。
特段興味もわかなかった。
本は好きだけどね。
『外に出てみるか』
特級呪霊、
数年前、私と契約を結ぶべく姿を現した変わった呪霊だ。
術式があるということは、呪霊も視えるということで。
教会でも現れる呪霊を私は適当に退治していた。
術式の解釈を拡大させればやれることは沢山あるのだ。
そんな中現れたのが幽霧。
呪霊までもが私の予知能力に縋るのが意外だったのを覚えている。
幽霧の願いと引き換えに私は彼を自分の下に管理することにしたのだ。
「散歩に行くの?」
『うん、乗せてって』
「わかった」
幽霧は人型をしているが、私を抱え自由に浮遊することができる。
術式も特級とだけあってレベルが高いし技能も上等なものだった。
私より少し背が高くて、顔は真顔がデフォルトではあるが整っている。
青白い肌や紅く染まった瞳が不気味さを醸し出しているが、それなりに人間らしい。
あと、知能も高いし会話もできる。
そういうわけで、私の話し相手であり、移動手段なのであった。
幽霧に手を伸ばすとヒョイッと抱えられた。
姫抱きなのは少しこそばゆいけど仕方ない。
「今日はどこまで?」
『1時間くらい遊歩したい』
「バレない?」
『見回りは3時間に一度だからバレないよ』
幽霧は無言で一つ頷くと、私を抱えたまま窓から飛び立った。
私は飛んでないけど、ふわりと宙に浮く感覚が気持ちいい。
スイスイと夜の空を闊歩する。
私は満面の笑顔で夜の街を見下ろした。
「楽しいの?」
『楽しいよ』
幽霧は不思議そうだった。
まぁ、呪霊には理解できないことなのかもね。
私にとって、外を行き交う人々の観察は楽しい。
普段まともな人間の相手をしてないからね。
当たり前のような日常を見ていると自分の精神が落ち着く。
『ん?んん?ちょっ、ストップ』
流れる人々を観察していたら、ある青年に目が止まった。
幽霧に一旦足を止めてもらう。
青い瞳をもつ白髪の青年。
制服着てるし、背丈的に高校生かな?
彼が纏うオーラといったら、凄かった。
私は視える方でしかも目が特殊らしく、彼のオーラが視えた。
いや、あれは滅多にない強者だ。
しかし、どこか脆さも併せ持つ諸刃の剣のようで。
『“
術式名を呟いて、私は“目”を凝らした。
『…うーん、彼はなんていうか…凄いな』
然と視えた彼の人生はまさに波打つ高波のようだった。
今まで視てきた人々の中でも“特異”で“悲惨”な運命。
特に“最期”なんて何とも形容し難い想いが胸を満たした。
『しかも国に影響を及ぼすほどとか…』
なんというスケールの大きさなんだか。
視てしまったものの深刻さに頭を抱えた。
そして、うーんと唸りながら私は眉間にできた皺を解す。
関わっても私にとって良いことは殆どないだろうが、放置すれば未来はこのまま進んでいくわけで。
………いや、これは無視できない。
「?どうかした?」
『…ごめん、5分だけ降りてもいい?』
私は誰かを救うことなんてできないけど。
手を差し伸べて、導くことはできる。
「…別に良いけど、無茶はやめてね」
幽霧は主である私を失くしたくないようで、少し嫌そうだったが協力してくれた。
地面に降りると白髪の青年を追う。
幽霧には一応私に目が届く範囲のところで見守っていてもらうことにした。
白髪の青年は私と同じで“目”が良いらしい。
そして、術師の卵らしかった。
うん、あの子は卵の中でもとびきりの金の卵だな。
未来視した時も感じたけど、一つの世界を覆す唯一無二の強さとは末恐ろしい。
無事に逃げ切れると良いけど。
まぁ、最悪術式で逃げるかな。
幽霧もいるし、捕まる気は更々ない。
「…誰だ、ついてきてんの」
人がいない道に出た彼はピタリと立ち止まると、低い声を放ち、ゆっくり私を振り返った。
サングラス越しに青い目が向けられる。
え、なんかこの子目つき怖いな。
警戒されてるにしては鋭かった。
並の呪詛師や呪霊だったら震え上がっていること間違いなし。
まぁそれはともかく、誰もいない空間で2人きりの状態になってしまった。
どうやら私は誘い込まれていたらしい。
まぁ、話がしたかったから丁度良いか。
『今晩は、少年。
今夜は星が綺麗だね』
私は彼を少年と呼んだ。
気分だったからそう呼んだんだけど、 青年の方が良かったかな?
まぁ年齢的に一周り以上離れているしおかしくはないでしょ。
「あァ?餓鬼が何言ってんだ?」
あれま、メンチ切られてしまった。
煽るつもりは一切なかったんだけど。
私は見た目だけは若いから勘違いされやすいんだよね。
誤解されてるようだけど、どうせもう会うことはないだろうし解かなくていいや。
『怒らないでよ、
それより君に伝えておくべきことがある』
「…は?」
私は微笑んで、呆ける彼を見つめた。
『君はとても強いだろう。
そしてこれから更に強くなっていく。
しかし、驕るのは良くない。
君は失くしてはならない仲間や友人がいる。
彼らを守るためには、
強さだけじゃ駄目なんだよ』
口を挟ませる余裕もなく言い切った。
とりあえずヒントだけあげた。
私の予知はただじゃないからね。
まぁ、相手はまだ学生だし、無料体験ってことでお金は取らないけど。
「は?何いきなり…」
『戒めであり予告だよ。
君はどう選択し生きていくのかな。
楽しみだよ、五条悟君』
最後は悪役っぽく嗤って言ってみた。
そっちのほうがより記憶に残ると思って。
あと普通に敵キャラムーブに憧れた。
厨二病って言わないで、心が死ぬ。
私の予想通り、青年は目を見開いた。
「おい待てよ!
何で見ず知らずの他人にそんなこと言われなきゃいけないんだよ!?」
『信じるのは君次第だよ。
ただし、信じる者は救われる。
それだけ』
私はニコリと笑って、黒い煙に巻かれる。
五条悟は言うだけ言って去っていく私を逃すまいと手を伸ばすが一歩届かず。
私は闇夜に紛れるようにして消えた。
幽霧の術式のおかげだけど、便利だな〜。
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▶その後。
「危機一髪だね。
リスク高いことするのやめなよ」
『スリルも時には大切だよ?
人生における刺激的なスパイスになるから』
「術師に捕まったらどうするのさ、
一生使い潰されるよ?」
『本気で有り得そうで怖いからやめて(怯え)』
お読みいただきありがとうございます(*^^*)
今年ハーメルンを読み始めましたが、どの小説も面白くて好きです。
ここへの投稿は初めてで、未だ設定等が慣れないためこれから学んでいく所存です。
誤字脱字がもしあればお知らせ下さいm(_ _)m
最後に、お気に入り・しおりの登録、感想や評価をしてくださりありがとうございます❀
拙い文章ですがお読みいただけると幸いです✿