五『お前本気で何なの??』
聖「悩める人々を救いし聖女だよ!!」
ー「君はとても強いだろう。
そしてこれから更に強くなっていく。
しかし、驕るのは良くない。
君は失くしてはならない仲間や友人がいる」
うるせぇ、そんなこと言われなくても分かってんだよ。
俺は“最強”なんだから。
それに、肩を並べられる
大事なものをみすみす失わせるわけがない。
大して知りもしない他人が俺を語るんじゃねぇよ。
めちゃくちゃ苛つくのに、心底腹が立つのに。
ー「彼らを守るためには、
強さだけじゃ駄目なんだよ」
ー…何で。
何で、アイツの耳に残って消えないんだ。
もはや呪詛か何かなのかと疑いたくなる。
ー『つまんねぇ雑魚ばっか』
唯一無二の六眼と無下限呪術を持って御三家の一つである五条家に生まれた俺は、いつも誰よりも常に“上”だった。
俺を前にした術師は皆畏怖するか、心が折れるか、嫉妬で捻じ曲がるか。
対して非術師は俺の特異な青い目や白髪を気味悪がった。
肩を並べられる奴はおろか直ぐに蹴散らせる雑魚ばかりで、自分より弱い奴等が酷く疎ましくて下に見ていた。
だから、呪霊が視えやしない、ろくに闘う力がない弱者になんて興味は一切なかったし、守る意味すら理解できなかった。
弱いものから淘汰されていく、そんな話はどこの世界も同じだろ。
唯一肩を並べられると思える
俺は“最強”だから。
弱さなんて概念そのものを理解できなかった。
ずっと、自分は特別で、強くて、偉くあるものだと思っていた。
でも、そう強く思う度に“アイツの言葉”が蘇って。
『…まぁ、せいぜい雑魚なりに頑張れば』
「煽ってます??」
少し、僅かに自分の中に芽生え出した未だまだ弱き者の存在。
『歌姫、生きてる〜?』
「死んでねぇよ!!」
少し、ほんの少しだけ誰かに与えることができるようになった“配慮”。
あんなたった一人のガキの言うことに従うなんて、本当に馬鹿みたいだ。
ムカついてしょうがない。
そのはずなのにー…。
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闘いに意識を戻す。
特級呪霊に刃物で刺された胸は致命傷ではあるが臓器は避けたため、直ぐに死ぬことはない。
俺はまだ闘える。
人の油断を狙って不意打ちしてくるような奴に負けて死ぬとかいう情けない展開だけはごめんだな。
「“
特級呪霊は辺り一帯に暗い暗い闇色の霞を出した。
色合いからして、恐らく直接触れれば悪影響を及ぼすものだろう。
無下限で防ぐものの、簡単には敵に近づけそうにない。
俺は息を潜めて、呪霊の在り処を探す。
コイツは霧靄霞を操る特級呪霊だ。
決して雑魚じゃない、侮れば恐らく死ぬ。
すると、呪霊は急に霧を引っ込めた。
そして、一瞬でどこかへ消えた。
驚いて目を見開いていると、入れ替わりで現れた人物。
「やぁ、久しぶりかな、五条悟」
『なっ…!お前は…!』
それは、あのクソ生意気な餓鬼だった。
改めて見ると綺麗な顔をしている。
…じゃなくて!コイツ、何で今現れたんだ?
まさかあの特級の仲間なのか?
咄嗟に身構えるも時すでに遅く。
ソイツは笑顔で掌印を結んだ。
「領域展開“
ソイツの領域展開後、脳内に途端に流れ込んでくる多量の“未来”。
思わず両手で頭を守るように抱えた。
ガンガンと頭が割れそうに痛む。
何を考えようと、何をしようと、誰をどうしようと、未来はぐちゃぐちゃに壊される。
脳が焼き切れるほどの莫大な情報量。
俺の無下限関係なく領域展開までできる“聖女”とか糞ゲーかよ!
次々と押し込む勢いで脳に流れ込む“もの”に脳の処理が追いつかず常にフル稼働しまくるせいで脳みそが沸騰しそうなレベルに熱くなる。
とうとう負荷に耐えきれなくなって、地面に膝をついた。
『ヴッ、ぁ…グッ……!!』
そして、ガクリと砂利が敷き詰められた地面にうつ伏せに倒れた。
痛い痛い痛い痛い…!!!
こんな痛みは、屈辱は、産まれて初めてだ。
頭が、脳が、全てが、おかしくなる。
餓鬼は俺を見下ろすだけで止めを刺す気配はない。
悪役のように、口角を釣り上げて笑っていた。
悪魔かよ。コイツ聖女じゃなくて魔女だろ。
「おやすみ、五条悟。
悔しかったら生き返ってみなよ」
…ふざけんな、ゾンビにでもなれってか。
スローモーションになる視界、ゆっくりと落ちていく目蓋、静かに動きを止めていく心臓。
あぁ、死ぬのだと思った。
ー…しかし、終わりは来なかった。
ドクンッ
漲る正の呪力に、俺は目を醒ました。
一瞬も満たない内に、頭の中で何が起きたのかを考えていたのかがはっきりと理解できた。
妙に頭がすっきりして、気分がじわじわ上昇していく。
嘘みたいだ、痛みも傷も全て失くなった。
あぁ、それにしても、何故だか今とても気分がいい。
今なら、不可能すら可能に覆せる気がしてくる。
俺は“変わったんだ”。
なんて、目覚めのいい朝だ。
『…っ、ククッ、ハハハハハッ』
あまりの高揚に思わず笑いが止まらなかった。
「ワァ…、おはよう」
パッと起き上がると、聖女はガチめの引いた顔で俺を見ていた。
ざまぁみろ、俺は“最強”なんだ。
お前如きに負けるわけねぇだろ。
『元気ピンピンだよ。
お望み通り生き返ってやったんだ。
だからさぁお前、俺の
ここから先は俺の独壇場だ。
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あれ覚醒してからできるようになった赫をぶっ放すが、聖女は尽く避ける。
術式以外は弱そうなのに、意外と長持ちするのな…!
『早く降参しろ、命くらいは拾ってやる!!』
「馬鹿言わないで、勝負はこれからでしょ?」
捕まる気は更々ないらしい。
散々人に言い逃げした挙げ句命狙っていてまた逃げるつもりかよ。
ソイツの煽りに俺は首をひねる。
『そうか?
そうだな…。
そうかもなぁ!!』
コイツはまだ俺に付き合える余裕があるのか。
捕まえる意志よりも頑強な玩具への好奇心に惹かれて口角が上がる。
…なら、もっともっと、力を出してもいいよな?
もう星奬体とか聖女とか、どうでもよくなってきた。
そんなことよりも。
今はただただ、この世界が心地良い。
『天上天下唯我独尊』
世界の中心は俺だ。
ー…しかし、厄介にも口を挟む奴がいた。
「“天は人の上に人を造らず、
人の下に人を造らず”、だよ。
驕るなって、
前にも言わなかったっけ?」
聖女は闘いの最中で平気で反発してくる。
…はぁあ、いちいち癪に障るな、コイツ。
『うるせぇよ、偽善者が。
俺は“最強”なんだ』
「2人で、でしょ?
大切な親友を置いてっちゃだめだよ。
君の強さは、力を示すためではなく守るためにあるんだから」
この状況下でも平気で諭してくるソイツにムシャクシャして、バッと手をソイツに向けて構える。
『うるせぇなぁ、黙れよ!!
虚式 “ 茈 ”!!』
五条家の中で無下限呪術を持つものでも少数しか使えない、術式順転“蒼”と術式反転“赫”の合せ技。
的中すると予測したが、瞬く間に聖女は幽霧とかいう特級呪霊に抱えられ“茈”を回避した。
チッ、アイツ邪魔だな、祓うか。
さっきは苦戦したけど、今なら多分余裕で勝てる。
聖女は凛とした姿勢を崩さなかった。
「私は引かない。
君がいつか全てを理解する日に、
苦しまないことをただ願っている」
『…ハッ、なんでそんな俺に構うんだよ!!
お前は何なんだ!!!』
「“聖女”だよ、それ以外の何者でもない」
ソイツは凛と背筋を正し、真剣な顔で言い放った。
…死にかけてまでお節介かよ、馬鹿じゃねぇの。
「…自分しか愛せない人間は大切な人の想いに気付き辛いんだよ。
後悔したくないなら、今の内に自分と…周りと向き合っておきなね」
最後に、聖女は眉を下げて笑った。
なんで、お前がそんな顔すんの。
まるでそれは、自分への戒めみたいにも聞こえた。
聖女は特級呪霊に抱えられたまま霧に包まれると、俺を置き去るように姿を消した。
はぁあ、何だったんだ一体。
俺をボコしにきたかと思ったら意味深な忠告をしてきて。
敵なのか味方なのかはっきりしろよ。
その後、完全にハイから通常のテンションに落ち着いた俺は天内達と合流した。
天内とメイドは幸いにも無事で、幽霧と闘ってボロボロになった状態の傑に再会し、労りの意味で拳をぶつけ合った。
それから天内理子と傑と話し合い、天内理子の意見により、天元との星奬体同化は取り止めにするように計らうことにした。
最後の最後で場を掻き乱しては去っていった自称聖女の尻尾は未だ掴み取れず。
俺もそれなりに大教会を外部から揺さぶって探っている。
…がしかし、それ以上に硝子のアイツに対する執着が飛び抜けてるんだよな。
任務後に硝子にも聖女と闘ったことを話したら胸ぐらを掴まれて「なら捕まえてこいよ、クズ」と理不尽にキレられた。
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▶白髪青年とサマーさん
『本気であのガキ次会ったら泣かす』
「そんなに強かったのかい?」
『アイツ多分特級レベルだぞ?
術式も手強いし、面倒。
でも何で態々あんな縛りしてんだか』
「え、特級?!
是非会ってみたいな。
確か大教会の“聖女”だったよね?」
『聖女??アイツは悪魔だよ、悪魔』
「(なんか悪寒がするんだが…??by聖女)」
お読みいただきありがとうございます(*^^*)
五条悟視点ですが、中々に難しかったです。語彙力や表現力や洞察力など、自分の未熟さを思い知りました。
今回の話で五条悟覚醒イベントが達成されましたが、アニメでの五条悟の覚醒シーンが凄くて、めちゃくちゃ鳥肌が立ったのが印象深いです。
最後に、お気に入りやしおりの登録、感想や評価をしてくださりありがとうございます❀
これからも精進致します✿