出張先で
そして、朝からあった微熱が悪化し、倒れたことも。
でも、私…今どこにいるんだ?
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『硝子、大丈夫?』
ー…耳元で、聖永の声がする。
熱で浮かされて、思考があやふやだ。
身体も重くて怠くて、しんどい。
反転術式で治そうにも、うまく扱えないし最悪だ。
ひんやりとした聖永の手が私の額に触れる。
ー…あぁ、そうだ、聖永を見つけて、その後熱で倒れたのか。
『結構熱あるね、しんどかったでしょ。
任務お疲れさま』
心配するような、我が子を見守るような優しい声にホッとする。
私は近くに感じる聖永の温もりを逃さないように、布団の中から手を出して聖永の服の裾を掴んだ。
『どうした?しんどい?』
聖永は止めもせず額から手を離すと、私が眠るベットの端に座った。
それから、そっと私の頭を撫でてくる。
私は起き上がることもできずに、ただ目を瞑って聖永の声や気配を感じていた。
ー…なんで、なんで、そんな優しいの。
“呪術高専”の生徒や…私を避けていたはずのくせに。
そう思っていたら思わず、口を突いて出てしまった。
「…なん、で」
『え?』
「なんで、私と会ってくれなかった、の」
今まで人との関係に執着したことなんてなかった。
皆私のことを大人びた人間だ、冷たい人間だと見做し敬遠してきた。
私は別にそれでいいと思っていた。
人との関わりは煩わしい事が多いし、一人のほうが楽だと割り切っていた。
だから、高専に入ってから出会った五条や夏油は遠慮なんて一切なく私を巻き込んできたから驚いた。
少ない同期にしては関係は良く保てている方だと思う。
五条と夏油は喧嘩しまくりで小学生かと呆れるが、まぁ、悪くはない日常。
そんな中、自分の反転術式を使っていくに当たって時間を問わず治療をしたり、死人を解剖し医学を学ぶ実習を繰り返すことになった。
人々の全ては救えず失う。
亡くなった人達の遺族から酷く批判される。
救えなかった責任が自己嫌悪に変わる。
グロテスクな現実に吐き気がする。
休む暇もなく呼び出され心や身体が疲弊していく。
どんどん自分の中の“頑張る”意義が失われていくように感じていた。
何のために私は私の力を奮っているんだろうか。
半ば自暴自棄になっていた頃に、アイツは私の前に現れた。
ー「気分転換をしよう、美少女!」
ー「聖永だよ、硝子」
人のことを遊びに誘っておいて、名前で呼んでおいて、とびきりの笑顔を見せておいて。
勝手に壁も何もかもぶっ壊して、私のことを救っておいてさ。
それであっさりバイバイとか、
割り切れるわけないじゃん。
『…会いたいって、思ってくれてたの?』
聖永は何故か泣きそうな声で、尋ね返してきた。
会いたいって?
思わなきゃ態々探すかよ。
私以外の連中とは会ってるし、腹が立って仕方がなかった。
私は聖永の手をガシッと掴むと目を開けた。
聖永は泣いてなかったけど、嬉しそうな顔をして見下ろしていた。
『…当たり前だろ、バカ』
「…そっか、ありがとう」
聖永は私と目を合わせると、柔らかく微笑む。
「硝子、ごめんね。
私も沢山硝子と仲良くなりたいけど。
私は聖女だから、硝子達とは交われないんだ」
立場とか建前とか、そんなの私にはどうでもよくて。
ただ、コイツと友人でありたい。
だから、私は覚悟を決めた。
『…じゃあ、高専には言わないから。
私と会ってよ』
「でも、そんなことしたら硝子が…」
こんな時でも他人を優先するとか、ほんとお節介。
けど、私も譲る気は毛頭ない。
『
だから…』
聖永が引こうとした手をグイッと自分の方へ引っ張った。
すると、バランスを崩した聖永が私が眠るベッドの上に倒れ込んでくる。
「わっ!?」
胸の辺りに聖永が顔をぶつけ、私はその子を抱きしめた。
私よりも小さな身体。
こんなんで五条倒したとか意味わかんねぇ。
私の腕の中で固まる聖永に囁く。
『もう黙って、何処にも行くなよ』
聖永は、強く握っていないとすり抜けてしまいそうな桜みたいで。
直ぐに現れては消えてしまう透明な朝露みたいで。
こうやって触れてでもいないと聖永と関われている実感が湧かないんだ。
「………」
聖永は、私の腕を解かなかった。
かといって、抱きしめ返すこともなかった。
聖永は黙った後、ポツポツと静かに話し出した。
「…勝手に消えたこと、ごめんね。
硝子に友達って、思ってもらえてたんだね、めちゃくちゃ嬉しい。
…でも、私、沢山沢山抱えてるよ?
それでも、硝子は私と関わりたいの?」
聖永の声は若干震えていた。
馬鹿だな、不安になる必要なんてどこにもないのに。
私の“答え”は変わらないんだから。
『何度も言わせんな、“友人”だろ』
「…ありがとう、硝子」
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聖永は私が眠るまで傍にいてくれた。
次に目を覚ましたら、日が昇りかけの朝だった。
私はホテルの一室で看病されていたらしい。
ホテル代は既に支払われているようだった。
ここって割と高いところなのに、
まぁ、聖永らしいと言えばそうだけど。
いつの間にか額に貼られていた冷えピタを剥がす。
熱は下がっていた。
起き上がると、枕元に紙が置かれているのに気がつく。
それを手に取ると、綺麗な文字でいくつかの文が並んでいた。
『“友達って言ってくれてありがとう(*^^*)
硝子が遠出した時にまた会いに来るよ。
身体は資本だから大事にね!!
聖女より”』
読み上げながら、ヒラヒラと笑顔で手を振りながら華麗に去っていく聖永を想像した。
『どうせなら最後名前で書けよ』
別に名前書かれてたって誰にも見せやしないのに。
抜け目のないヤツ、と思いながら、紙を丁寧に折り畳んでポケットにしまう。
次に会える日があることを楽しみに、私は軽い足取りで“呪術高専”へと戻った。
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▶幽霧と聖女。
幽「遅いし、長居しすぎだよ」
聖「それは本気でごめん!
でも聞いて!?
硝子がめちゃくちゃ可愛いかったの!!
というか、めちゃくちゃイケメンだった!!!」
幽「(スパンッと興奮状態の聖女の頭を引っ叩く)
知るか、馬鹿。
てか駄弁ってる場合じゃないから早く行くよ」
聖『痛い!!って、俵担ぎはやめてぇええ!!』
お読みいただきありがとうございます(*^^*)
今回は、家入硝子の視点で書かせていただきました。他のキャラクターはまた少しずつ書いていく所存です。次回はまた進めようと思います。
話は変わりまして。いよいよ再会した聖女と硝子。熱によりダウンしつつもちゃっかり会う約束をする硝子。2人はこれから間は空きながらも立場を気にしない友人同士として付き合っていきます。
最後に、お気に入り・しおりの登録、感想や評価をして下さりありがとうございます❀
これからも執筆・投稿に励みます✿