聖『怖いよー!!(ガクブル)』
夏「一体何なんだ??」
メ「早く堕ちろ(ん?邪魔な小娘が現れたなぁ^^)」
今日も元気に
最近新たに大勢の信者が我が教会に加入した模様。
お金になるからジャンジャン入って欲しい気持ちはあるけど、正直に言うと増えすぎるのも管理に困るんだよね〜。
あと最近は術師の割合も増えてきつつあるから、“第三勢力”とか言われてるらしいし。
下手に呪術界の御三家とかお偉いさん方に目をつけられるのもなぁ。
あと、信者の人達を危険に晒したくもないし。
信者の数が莫大な大教会とあれど、教主の私が捕まれば全部終わりなのである。
うーん、かといって戦力的人材を育成するのも何か違うし…。
いや、受付とか結界術とかそういう人材は要るんだけどね。
戦力を増やすことが目的では“呪術高専”と同じ類になってしまう。
あくまでも、私は悩める人々のための救済主なのだ。
目的を履き間違えるのは良くないよね〜。
『どうしよっかなぁ』
気分転換に夜の街を歩きながら黙々と考える。
すると、前方から歩いてきた人物がいた。
お?あれは、夏油傑…だっけ?
呪術高専の制服、長身+前髪にお団子。
間違いない、最強の片割れだ。
にしても何か痩せてるような?
オーラも暗いし、目元には隈ができてるし。
どう見てもメンタルヘルスチェックが必要そうですね〜。
夏油の隣にいるスーツの女性は…、うん?
目に入った瞬間、なんか本能が頻りに危険通告をしてくる。
全身が泡立つようにゾワゾワするの、なーぜ?
額に傷ありの女性は、夏油に何かを言っている。
女性の言葉に夏油は表情を暗くしていく。
アッ、洗脳してらっしゃいますね。
私とは別の教祖か何かだろうか??
それにしても、鳥肌がヤバい。
気になりすぎて女性を視てみると、衝撃が走る。
エッ、えっ?!メロンパン!?
何故そこにいる!!??
びっくり仰天、ていうか、心臓が止まりかけた。
夏油乗っ取り計画はもう既に始まっていたらしい。
補助役に化けて洗脳するとか恐すぎでしょ、この人!!
彼と女性(中身メロンパン)に声を掛けるか掛けまいか悩んで、私は立ち止まる。
だって、これ、メロンパンに目をつけられるフラグでは?
最強もそうだけど、この人物から逃げ切れる自信がまるでないんだが。
メロンパンって、この先の未来に現れし絶望の根源なんだよ!!
宿儺の受肉体を産んで、夏油の死体借りパクして、最強を封印した挙げ句宿儺と手を組み、天元と人類を合体させちゃおう作戦を企むんでしょ?
しかも、何が恐ろしいかって、全部“面白そう”から始まった思いつきなんだよ??
何だそれ、理解不能のサイコパスかよ!!
話しかけたくない、話しかけたくはないけど絶望フラグは止めたい。
私は救済の聖女なのだから、メロンパンはさておき、夏油は救わなければ。
夏油を見捨てる=メロンパン強化につながってしまう。
夏油をこのまま闇堕ちルートに陥らせてたまるか!!
私は決死の覚悟をして、声をかけることにした。
この一件で平穏ライフが強制終了するかもしれないけど、背に腹は代えられない。
気まぐれから始まったけど、自分のしたことには最後まで責任取らなきゃ。
『ねぇ、そこのお兄さん。
私とお茶しない?』
「…え?」
私は夏油に笑顔で話しかけた。
そして、隣のメロンパンナはスルーした。
中身に気付いてるってバレた瞬間何が起こるかわからないし、目に入ってない体でいく。
怖いよー、早くどっかいって、メロンパンナ。
「君は…あの時の?」
夏油はぼんやりしていたが、私のことは覚えていたらしく目を瞬かせた。
あ、待って、聖女だけは言わないで。
身バレしちゃうから、隣から視線突き刺さってて痛いから!!
イケメンを狙う肉食女子の振りをして夏油
をナンパして連れ去るのが私の目標なのだ。
『行きましょ、私美味しいお店知ってるの』
あざとく上目遣いをしながら夏油の腕に自分の腕を巻き付けて、連れて行こうとする。
しかし、行く手を阻むのはメロンパンナ。
「お待ち下さい。
彼は仕事終わりで疲れているので、あまり無理をさせたくありません。
お控え願えますか?」
待って、目が笑ってない、怖い。
メロンパンナの圧が強すぎて泣けてくる。
何千年も生きてるヤツ相手に正面からぶつかるとか正気じゃないよね!
でも、やるしかない。
ぐっと負けじと対抗しようとしたら、夏油がそっと制した。
「…補助監督さん、ご心配して下さりありがとうございます。
少し話してから行くので先に車で待っててもらえますか?」
夏油は一度私を見下ろすと、メロンパンナに告げた。
メロンパンナは「分かりました」と笑顔で引き下がったが、絶対内心舌打ちしてるよね…。
背を向けて去っていくメロンパンナを内心怯えながら見送る。
こわー、本気でこわー。
「…で、聖女様がナンパとは何用で?」
『…貴方が悩んでそうに見えたから、話でも聞こうかなって思っただけだよ』
半分嘘、でも話を聞きたいのは本当。
私は夏油から腕を離すと、夏油を見上げた。
可哀想に、ろくに休めていないのだろう。
疲れ切った顔をしている彼の頬に触れた。
ビクリと震える夏油の肩。
私は彼の未来を視させてもらった。
『“嚮後透視”』
「…なっ、一体何が目的なんだ、君は…!」
術式を使った瞬間、咄嗟に手で私を突き放そうとしてくる夏油に私は囁く。
『貴方の未来を視ただけだよ。
私は貴方の未来を救いし者』
「救う…?何故?」
そんな訝しげな顔しないでよ。
私は救済の聖女だよ、救えるものはこの手で救うって決めてるの。
『貴方は今のままじゃ墜ちる。
思考も何もかも悪によって縛られたまま、染められたまま、転落していく。
そんな人を私は放ってはおけない』
「…それは、どういう意味だい?」
『聞きたいなら移動しようか、お互いのためにも…ね』
そう言うと夏油は口を結んだ後、静かに私の手を引いて人目のつかない路地に入った。
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「で、説明してくれる?
何で私が墜ちるんだ?」
『わかってるんじゃないの?
原因は
「!?」
驚く夏油に畳み掛ける。
『弱きものを救う、その定義が分からなくなったんじゃないの?』
恐らくあのメロンパンナの洗脳有りきだけど、夏油は非術師に対してのヘイトが溜まっている。
それに今はどうやら術師にとっては繁忙期みたいだし、重労働と蓄積してゆく疲労に追い詰められてもいるのだろう。
今の彼は、何か
「………それは」
図星をさされて顔を歪めた夏油。
私は彼を諭すべく淡々と言葉を吐く。
『別に思考自体を否定するつもりはないけど。
大切な人の存在の貴方への想いを蔑ろにするようなことはしない方がいい。
あと、独りで道を違うより、仲間と道を選び直す選択も視野に入れれば良いと私は思う』
私は彼の未来を視た上で、必要なことを伝えた。
ごめんね、偉そうなこと言って。
私だって、人のことを言えるような人間じゃないのに。
夏油は俯いて唇を噛むと、バッと顔を上げた。
その表情は言葉では表しきれない程の憤怒と苦悶に満ちていた。
「…っ、それは、だって!
非術師を守れないなんて、術師失格じゃないか。
それに、悟だって最強だし、私がいなくともやっていけるんだ。
そんなところに…っ、私がいる意味なんてないだろ…!?」
夏油の弱音。
それでいて、痛いくらいの切実な本音。
一度脆くなった自分の意志と向き合うのは辛いよね。
置いてかれるのは寂しいよね。
でもさそういう時は、大切な人や、仲間がいるから乗り越えられるんだよ。
私は素直に吐き出した夏油に、ふっと微笑んだ。
『…本音、言えるじゃん。
それを大切な親友に、仲間に伝えなよ。
私に話すよりもずっと胸に溜まった澱がスッキリするはずだよ』
私は夏油の腕を横からポンポンと叩いた。
夏油は口を抑えて目を見開いたまま固まっていた。
大丈夫か?、と覗き込んでいたら途端に悔しそうな顔をする夏油。
え、どした?
「なんか、色々見透かされてて悔しいな…。
でも、そうか。
悟や硝子の言う通り、只者じゃないね」
『それ褒め言葉?』
「褒めてるさ、…ありがとう」
夏油は私の頭を撫でて、薄く笑った。
子供扱いとは、不服である。
私はこれでも長生きしてるのに!
夏油はスッキリした顔で帰っていった。
もうメロンパンなんかの言葉に惑わされないようにねー。
後日、風の噂で呪術高専の校舎が全壊されるほどの大喧嘩が起きたとか起きなかったとかいうことを聞いたけど。
まぁ状況はよく分からないが、無事に青春してるようで何よりだ。
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▶聖女とトラウマ。
幽「それ食べないの?てか何で顔真っ青なわけ?」
『メロンパン恐すぎる…』
幽「メロンパンに何かトラウマでもあるの??」
『トラウマどころじゃないよ!!
次会ったら絶対ヤラれる…(怯え)』
幽「はぁ?意味わかんないんだけど」
お読みいただきありがとうございます(*^^*)
いよいよ夏油傑の救済ルートです。過去編を軸にした物語ですがそろそろ終盤に入ってきました。
次回は閑話を入れようと考えています。
最後に、お気に入り・しおりの登録、感想や評価をしてくださりありがとうございます。
これからも執筆・投稿に励みます✿