今回は、過去編のAnother Side “家入硝子”の後話です。
出張先が硝子と被り、2人で遠出していた矢先。
夜までかかった仕事がやっとのこと終わり、速やかに帰ろうとした私を硝子が“この後聖永と会いましょうよ”と引き止めた。
「あ、歌姫さん!硝子!」
硝子に言われた通りに出張先の夜の街をぶらりと歩いていたら、聖永がふらりと前方に現れた。
白いニットのワンピースを着た聖永は満面の笑みを浮かべて此方へブンブンと大きく手を振る。
ほんとにあの大教会の聖女なの?あの子。
人離れした美貌を加味したとしても、信じられなくらいに普通の少女だ。
「聖永!!」
隣にいたはずの硝子は一目散に聖永の元へ駆け寄り抱きついた。
いつのまに、と思う間もなく一瞬の動作に驚く。
聖永は硝子の行動に目を見開きつつも、満更でもなさそうに硝子を受け止める。
「もー、硝子ってば。
そんなに急がなくても逃げないから」
「分かってる。
でもこの前も言い逃げしていったし」
「置き手紙置いてたでしょ?」
「…それはそうだけど。
連絡先とか書かれてなかったからさ」
硝子と聖永は名前で呼び合うほど仲良しらしい。
むすっと拗ねる硝子を仕方なさそうに宥める聖永。
硝子は人よりも大人びたイメージがあったから同年代の子とわちゃわちゃしてる様子は新鮮で微笑ましかった。
…でもまぁ、五条と夏油が同期だったらわちゃわちゃなんて無理よね。
なんだかんだであの2人に比べれば、硝子はまともな立場なのだから。
一緒になったらそれこそ学級崩壊しちゃうわよね…。
普段はそれなりに大人びてる分、硝子にとって同性であり恐らく年齢が近い聖永の存在は貴重なのだろう。
抱き合う聖永と硝子の元へ歩いていくと、聖永に声をかけた。
『聖永、久しぶりね』
「!!お久しぶりです、歌姫さん!」
聖永は硝子とくっつきながらも顔を私の方へ向けてニパッとはにかむ。
頭を撫でくり回したくなる可愛さだった。
この子やっぱり天使だわ、間違いない。
満点の笑顔に日々の苦労や疲れが癒やされる。
『どこか食事でも行く?』
「「行きたいです(!)」」
息ぴったりな2人に私は思わず吹き出してしまった。
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「うちの同期達が本気で面倒くさいんですよ…」
硝子はパスタを巻きながら、死んだ魚の目をして愚痴る。
言わずもがな、五条と夏油のことだろう。
『うーん、だろうね』
「あー、察するわ」
私と聖永は其々食事を摂りながら、硝子の言葉にうんうんと同意した。
そこで、はたと気付く。
どうやら聖永も五条と夏油のことを知ってるらしい。
…って、まさかあの2人聖永に何かしてないでしょうね?
もし仮に手を出してたら許さないわよ。
「…この前予備の制服を教室に置いてて、それを取りに行ったんですけど。
アイツら勝手に、私の制服着て、盛り上がってたんです…!」
思い出して怒りが再燃したのか、硝子はザクザクッとサラダのトマトを勢いよく突き刺す。
あぁ、特級って強さと引き換えに人間性を持ち合わせないのかしら…。
呆れ返る私に聖永は「あの体格で女装とか絶対似合わない!!」とケラケラと笑っていた。
「写真とかあったら面白いのに!!」
完全に他人事にしている聖永の反応に硝子は怒るわけでもなく、無言ですっと携帯電話を取り出した。
そして、画面を操作する。
「証拠として撮ったよ」
まさかの証拠写真を持ってたらしい。
流石硝子だわ、抜かりないわね。
恐らくその写真で2人を脅して何かを貰うつもりなのだろう。
硝子のことだから多分タバコなのだろうけれど。
そろそろ健康のためにも禁煙を勧めないといけなさそうね。
「これ、見ます?」
例の写真を見つけたのか蔑んだ目をする硝子に私は、仮にも食事中に絶対そんなもの見たくないと、静かに首を横に振る。
それとは反対に聖永はキラキラと目を輝かせて言った。
『見る!!』
その後、写真を見た聖永は過呼吸になるレベルで笑っていた。
「あははは!ヤバっ、無理ぃ!これ傑作っ!!」
店内で控えめに抑えられてはいるものの明るい笑いが響く。
仮にも、“あの”特級2人の女装を見て大笑いするのなんて多分聖永くらいよね。
私は色んな意味で絶対に笑えないわ。
硝子は無邪気に笑う聖永を保護者のような優しい眼差しで見つめていた。
「はーっ、これで向こう十年は笑えるなぁ」
「それは絶対ない」
『いや、アイツらにそんな価値ないわよ』
いつまでも笑いが絶えない聖永に、私達は真顔で声を揃えて手を横に振った。
あの2人を十年も笑えるほどの面白さはどこにもない。
聖永の笑いが引いた頃に、話題が移る。
「歌姫先輩は最近仕事とかどうですか?」
硝子に尋ねられて、私はうーんと首をひねる。
最近母校の教師になったばかりだけれど、それなりに生徒も良い子達が多いし、やりがいもある。
『大変だけど、充実してるわよ。
最近は特級2人にも会わないし楽だわ』
「いいなー」
「あはは」
あの2人は単体でも煽り属性なのに、コンビになると更に最悪なのよね。
会わなくていいなら、そっちの方が楽なのよ。
硝子が心底羨まし気に私を見てきたため苦笑する。
同期じゃどうしようもないものね。
「聖永はどうなの?
貴女あんまり自分の話をしないから気になるわ」
「確かに」
私はニコニコ黙って聞いていた聖永に話題を振る。
硝子も興味津々に聖永の方を向いた。
「え、私ですか?
そうですね〜」
聖永はパクっとデザートのアイスを口に含みながら考える仕草をした。
その仕草がとても可愛いと思ったけれど心の内に秘めておいた。
「あ、そうだ」
聖永は何かを思い出したようで、一旦アイスを食べる手を止めて話しだした。
「私聖女で色々な信者さんを視てるんですよね」
聖永が、今呪術界でも噂だという大教会の聖女であるという話は硝子から聞いていた。
本当に人助けしてるのね、偉い子だわ(※聖永にとっては
『「うん」』
「それでこの間、信者さんかなって思って中に入るのを許可したんですよ」
『「うんうん」』
相槌を打つ私達に、聖永は口元に手を当てると、ふふと含み笑いをして言う。
「そしたら、なんと、“
一瞬、場がフリーズした。
「……は?」
『!!??』
思わず、大きな声を出しそうになった。
硝子は見たことがない顔をし、聞いたことのない低音ボイスを放っていた。
聖永、それは笑い事じゃないわよ!!??
「まぁ瞬殺して、その後信者さんに渡したんですけどね!」
どうなったかは知りません、とケロッとして言う聖永が末恐ろしく感じた。
中に入ってきたのが自分を狙う呪詛師なんて肝が冷えるレベルじゃないわよ。
それと、突然の
見た目は天使だけど、意外にイカれ具合が凄いわねこの子。
硝子は邪気を孕んだ黒い笑みを浮かべながら聖永に「ソイツ
そんなこんなで今日の食事会では、人と関われば関わるほどにその人の色々な面を知っていくものだということを身に沁みて実感した。
お読みいただきありがとうございます(*^^*)
以前のアンケートで歌姫の人気が高かったので先に書かせていただきました。プラスで家入との交流の様子も一緒に書き入れました。今後もまだまだAnother Sideは続きます。
気付けばUA数の5万超えやお気に入り・しおりの登録の数の増加があったり、評価や感想を沢山貰えてとても書き甲斐を感じております。
本当にありがとうございます❀
これからも精進致します✿
❀過去編完結後の流れにつきまして❀仮に完結後に本編に突入する場合、新しく分けるか、そのまま追加するか、どちらの形がより読みやすいか思考中です。もし時間があれば投票よろしくお願いします。
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そのままGO!派
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どっちかな〜(迷い)。
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キッパリ別れる派。