また明くる日の夜、幽霧と共に夜の街へ抜け出していた。
え?暇人かよって?暇人だもの、仕方ない。
夜は本当にすることがないんだよ。
幽霧と共に空を飛行していたら、コンビニの上空を通過する際に、疲れ切ったオーラを醸し出す少女を見かけた。
あ、先日相見えた白髪青年の未来の中に登場していた子。
悩むなー、あまり関わると白髮青年にも影響するかもしれないし。
しかし、見過ごせないほどの暗いオーラに遭遇したからには、声をかけられずにはいられなかった。
私は何と言っても“聖女”だからね。
幽霧にまた無理を言って降ろしてもらう。
説教は後で聞くからとりあえず行かせて欲しい。
私はてくてくとコンビニの前へと歩いていった。
それからどこか物憂げなタバコを吸うダウナー系美少女に話しかけた。
『今晩は、悩める子羊ちゃん』
話すノリに迷った末に出た厨二病発言。
美少女は警戒しながらも顔を上げる。
アッ、完全にノリ間違えちゃったヤツだこれ。
ごめんね、年頃の女の子と素で話すの久しぶりで血迷っちゃった。
私いつも聖女用の修道服着てるし、見てくれはコスプレした変人だもんね。
「…誰、アンタ?」
目を細めた美少女はタバコから口を離し、白い息を吐き出す。
未成年でタバコって最近のJKはマセてるなぁ。
私はベンチに座る彼女の隣に腰を下ろすと
返答に少し間を置く。
名前なんて久しぶりに聞かれるな。
いつもは聖女様としか呼ばれないから。
『聖女だよ』
ここは偽名をと思ったが何も考えつかなくて結局いつもの呼ばれ方を使ってしまった。
「厨二病?頭大丈夫?」
割と真面目に心配そうな顔をして見て美少女。
あ、あれ?何か私のほうが心配されてる??
だがしかし、それが職業なんだなぁ。
もっと正確に言うと“聖女”というよりも“占い師”に近いんだけど。
『まぁまぁ、そんなことはさておいて。
何か悩んでることがあるんじゃない?』
鋼のメンタルをもつ私はニコッと微笑んで美少女に話を振った。
美少女は図星だったのか一瞬顔を歪めたが直ぐにそっぽを向いた。
「……何で知らない奴に話す必要があんの」
当然の正論に私は『それはそう』と心の中で頷いた。
出会ったばかりでしかも怪しい他人に心を開けなんて無理な話だ。
しかし、私にはある考えがあった。
『身近な人よりもさ、全然知らない他人に話した方が楽になることってない?』
私はずっと聖女として誰かに頼られて生きてきた。
だから、あまり頼る側の気持ちは分かれずにいる。
でも、私を信仰している人達はいつも血の繋がりなんてない赤の他人の私に沢山いろいろなことを話してくれる。
私は聞くだけしかできないし、たまに長過ぎる話や恨み言は聞き流しているけど。
その度に彼らは救われたような顔をして、涙を浮かべていた。
つまり、聞くだけならどんとこいというわけである。
私の言葉に美少女は黙り込むと、やがて口を開いた。
「…嫌なこと続きで参ってるんだよ。
毎日毎日見たくもない現実と向き合わされて投げ出したくなったんだ」
美少女は自嘲的な笑みを浮かべると、タバコを咥えると吸って吐き出す。
「…馬鹿だよな、自分で決めた道なのに」
私は美少女の未来を見ることはしなかった。
ただ、今の少女と向き合う。
見たくもない現実が何かは分からないけど、私も毎日毎日同じことを続けることに飽き飽きしていた。
数十年聖女を続けている私にだって自分で決めたことをたまには破りたくなる日だってある。
だから今こうやって気晴らしをして鬱々しさを追い出しているのだ。
そこまで考えてハッと閃く。
あ、そうだ。
よし、そうと決まれば!
私はバッと立ち上がった。
そして驚く美少女に手を差し伸べる。
『一緒に気分転換をしよう、美少女!』
「…は?」
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混乱する美少女の手を引いてやってきたのはゲームセンター。
実はゲームセンター行ってみたかったんだよねー。
途中美少女の更に後方から“何やってんのお前”と呆れ果てた視線を向けられたが無視。
心の中で幽霧へ謝罪した。
ごめんよ、1時間で終わらせるから。
「なんでゲームセンター?」
『来てみたかったから!
それに高校生ってよくここ来るんでしょ?』
「…アンタって同い年じゃないの?」
驚く美少女を見て自らの失言に気付いた。
おっと、気軽に身バレ情報口走っちゃったよ。
気を取り直して美少女に聞き返す。
『ふっふっふ、何歳に見える?』
このセリフ言ってみたかったんだよね。
幽霧は真面目に数えて答えやがったからムカついて足蹴りしたけど。
美少女はサラッと答えた。
「…7歳かな」
『低っ!それは嘘!嘘!!』
私が幼児体型だとでも!?
まぁ美少女ほどスタイルに自信はないけど。
美少女はからかうのが好きらしく弄ってくる。
警戒心が解けてきたのか、よく口角を上げる美少女が可愛い件について。
完全に弄ばれてて悔しい。
くそぅ、私は年上だぞ。
…おい、今年増って言ったヤツ誰だ、◯すよ?
美少女の紹介でいくつかゲームをやった。
銃のゲーム、リズムゲームは楽しかったけど、最後のパチンコは良くわからない。
適当にジャラジャラしてたら大当たりが出て、小さな銀の玉が滝のように溢れてきて困った。
周りからの視線も凄かったし、美少女は何故か銀の玉でいっぱいの私の台を見て引いていた。
私もここまでなるとは思わなかったよ。
その時ばかりは案外私って神様に好かれてるのかもなんて柄にもなく考えたよね。
その後、当てた分の大量の銀の玉はお金やお菓子に換金・交換して、ゲームセンターの店員に貰った紙袋に全て突っ込んだ後美少女に押し付けた。
『あげる、友達と分けて』
「え、でもこれアンタの…」
『お金には困ってないからいいよ。
それに多分怒られちゃうから』
遠慮する硝子に、いいから、と無理やり渡すと渋々貰ってくれた。
いやー、聖女がパチンコとかギャンブルで大儲けして帰宅とか大問題だよね。
最悪見つかった場合、穢れた金とかいって焚き上げられかねないし。
自分で得た金に汚いも綺麗もあるか!って話なんだけども。
まぁ、せっかくの札束を使われないまま溝に捨てるよりかは誰かに使ってもらった方が助かる。
「…私は硝子。
アンタ、名前は?」
別れ際、美少女から再度名前を聞かれた。
どうやら不審者扱いではなくなったらしい。
硝子、か、可愛い名前。
私の名前は知る人しか知らない。
国家機密にすら値するくらいの情報。
渡して良いものか、と迷ったが、結局応えることにした。
口が固そうな彼女なら信用してみても良いのかもしれない。
『…聖永‐セナ‐だよ、硝子』
私はその日一番の笑顔を向けた。
多分、二度と会わないだろうけど、可愛い私の友人。
出会ったばかりで勝手に友人なんて迷惑だろうからせめて心の中だけでも思っておきたかった。
これはあくまで予感だけど、将来硝子は今よりもっと良い女になるよ。
だから、折れずに頑張れ。
硝子の可愛さを目に焼き付けて、私は煙に巻かれて消え去った。
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▶リズムゲームと銃のゲームをしている時の少女二人
『えっ、何これ、ボタン光ってる?!
どれ押すの!?何が正解!?』
「下手すぎてウケる」
『うわぁあん、笑わないでー!』
「次は銃のゲームな」
『え、これ銃?偽物?』
「当たり前だろ、本物なら銃刀法違反で捕まるわ」
『だよね!(信者の中にたまに本物持ってる奴いるんだけどねー)』
「さっさとやるぞ」
『はーい』
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