今日も今日とて、夜の街に出かけています“聖女”です。
本日はイメチェンして修道服からシンプルな白いワンピースに服装を変えてるよ!
私は永遠の16歳(文字通り)であり、ピッチピチのうら若き美少女だから何を着ても似合うのだ。
え?見た目だけって?
そんなことを言った暁には許さないし、未来捻じ曲げるよ?
飛行していたら美味しそうなお店を見かけたから食べに訪れたのである。
流石にお店に修道服は目立つからね。
公の場で教主自ら宣伝なんてするもんじゃない。
写真でも撮られて全国にばら撒かれたら即アウトである。
詳しくは知らないけど、全国に信者いるらしいからね。
権力等で揉み消すにも時間とお金がかかりそうだし、そう考えると、なるべく身バレは避けたいところだ。
プラスして、そう遠くない未来ではSNSとかいうものが現れて恐ろしいほど情報が広がる世界になるのだ。
今ある平穏を崩したくないのであれば、警戒は怠るべきではない。
(※ ここで教主が平然と外に出ている時点で警戒もクソもないのは触れないでおく。 )
あと、私があまりに勝手にあちこち行くから、幽霧は遂に止めることを諦めてしまったよ。
まぁ行った後に怒られる結末は変わらないんだけどね!
それにしても、何か最近術師とのエンカウントがやけに多いような…。
どうやら私が目をつけたところは人気店だったみたいで席が空いてなくて相席を頼まれた。
それは構わないけれど、相席するであろう人物がまさかの“術師”。
それも思い詰めた顔をしているではないか。
白髪青年といい、硝子といい、あちら側にどんどん引きずり込まれていく気配がする。
何か縁でもできちゃったのかな。
私は“聖女”だから術師にはなる気は全くありませんけど!
人間たるもの誰しも自分が“可愛い”ものだから。
あくせく命削るより、楽に商売してたいよね。
とはいえ、迷える者達を救うのが“聖女”の役目なのだから、救える内に救ってしまおう。
『相席してもよろしいですか?』
先に食事をしていた厳つい顔と身体付きをした男性に声をかける。
「…構わないが」
許可されたので席に座ると、メニュー表をパラパラと捲るフリをして前をチラ見する。
その男性は見るからに疲弊していた。
威厳のある目に光がなく、どこかぐったりしている。
一体何をしたらそこまで精気が削られるんだろう?
あまりの疲れ具合に心配もそうだけど何だか気の毒に思った。
余程大変な毎日を過ごしているんだろうか?
闇金に金を借りてしまったとか、離婚したとか?
下世話な想像が膨らんでいく。
まぁ何はともあれ悩める人よ、私が聞いて進ぜよう。
夜我さんは自棄酒したようでそれなりに酔っていたため、割とすんなり話が進んだ。
夜我さんは宗教系の学校に教師として勤めていて、その中でも生徒のことについて悩みがあるらしい。
愚痴なら掃いて捨てるほど聞いてきた私だ、流さず聞くことなんて余裕余裕。
「ー…それで、うちの五条と夏油と家入がやらかしまくりで叱っても糠に釘なんですよ。
上からもこっ酷く注意されてこのまま生徒達を止められないとクビにされかねないし…」
『そうなのですね』
食事を摂りながら延々と暗い顔をして愚痴を零す夜我さんの話に親身になって相槌を打つ。
話を聞くに秒で察した。
最初は笑顔で聞いていたが、夜我さんの生徒達のトンデモ話が出てくる度に思わず頬が引きつりかけた。
生徒の名前として浮上した五条悟と家入硝子。
まさかの白髪青年とダウナー系美少女の担任だったとは奇遇すぎる。
そっか、いつかの晩に出会った彼らはかなりの問題児だったんだな。
白髪青年は目つきギラついてたし、硝子は未成年でありながら堂々とタバコ吸ってたし。
確かに改めて思い出してみたらヤバそうな子達ではあったけど、それほどとは。
私の周りにまともな人間なんていなかったからスルーしてたよ、感性が狂ってたな、危ない危ない。
夏油という名の生徒は白髪青年を未来視した時に顔しか見たことないけど、あの少年・少女は確かに手を焼くかもね。
うーん、この人放って置くとその内胃に穴空いて病院送りか辞職しそうだし、ちゃちゃっと未来を視て助言しますか。
いつも金巻き上げてばかりだし、たまには
酔っているから多分聞こえないだろうけど一応小声で術式名を囁く。
『“嚮後透視”』
そして、視えたものに私は頭痛を覚えた。
…わぉ、この人の運命も中々にヤバいな。
もしかして術師って世界一過酷すぎる職種では?
あ、出世してる、おめでたい。
……でもこれが“最期”とは、やりきれないだろうね…。
愚痴を話し終えたのか、閉口して頭を抱え出した夜我さんに私は伝えることを決めた。
『話を聞いて、教師の務めの大変さをお察しします。
生徒達と向き合う中で辛いこともさぞや多いことでしょう。
しかし、生徒達は、まだ蛹なのです。
立派な蝶へと羽化し、羽ばたく前身。
どんなに、強くとも、聡くとも、大人びていようとも、彼らは守られるべき子どもです。
彼等を孤独にするのではなく、
見守り、寄り添い、育てていくこと。
それが教師である貴方にできる最大のことなのではないかと私は思います』
“周りに味方が何人いようと、
死ぬときは一人だよ”
誰かの未来で印象に残ったセリフを思い出す。
そうだね、その通りだ。
辛いとき、死ぬときは誰しもが孤独である。
だけど、辛いとき程、あるいは死ぬまでは、誰かといたい、誰かと繋がっていたいと願うものでしょ?
心強い思い出や絆がある限り、独りは怖くないから。
彼らの
私は胸に手をあてて、そっと聖女らしく微笑んだ。
まぁ偉そうなこと言ってるけど、私は生まれてこの方聖女一本だから教師なんてやったことないし、大変さも何もかも分からないんだよね!
ただ未来を視た上での独自の見解にすぎないのだ。
黙って動かなくなってしまった夜我さんに生意気言いすぎたかなとヒヤヒヤした。
何か見知らぬ他人が上から語っちゃって申し訳ない。
でもまぁ選ぶのはその人自身だから私の言葉は助言か何かだと思ってもらえるといいかな。
食事も話も済んだことだし早く撤収しようと席を立ったら、それまで無言だった夜我さんに「ありがとう」と言われた。
『えっ?』
突然のお礼の言葉に私は目を丸くする。
「君の意見に何だか救われた気分だ。
私なりに頑張ってみようと思う」
夜我さんは会ったときとは別人のような凛々しく頼もしい表情で笑っていた。
救われた気分か…、そんな大層なことはしてないけどな。
とはいえ、無事に“聖女”の役割を果たせたようで良かった。
これで彼の行く先が少しでもマシになることを願おう。
私は『お礼は勘定でいいですよ』と言って身を翻した。
これで貸し借りはなし、無事に釣り合いは取れただろう。
ルンルンで幽霧の元へ戻る。
話聞くだけで奢られちゃったや、なんか得したな。
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▶その後の幽霧と聖女。
「夕飯食べたのにまた食べてさ、太りたいの?」
『ちょ、乙女になんてことを!
デリカシーないの?!』
「呪霊に人間の常識を求めないでくれる?
22時以降に食べたらカロリー2倍なんだってよ」
『デリカシィイイ!!!』
お読みいただきありがとうございます(*^^*)
ちなみに聖女が食べていたのは“ふわとろオムライス”です。
大きな教会の教主とはいえ、建前では質素に暮らしているため、たまには贅沢がしたい聖女なのでした。
私もオムライスが食べたくなってきてしまった…。
最後に、お気に入り・しおりの登録、感想や評価をしてくださりありがとうございます❀
これからも精進致します✿