未来予知できる“聖女”の気まぐれ。   作:utsis❀

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聖女『変態!!』
幽霧「完全なる風評被害だよ!!」



四人目 “伏黒甚爾”

 

 

 

 

今日も夜遊びするぞー!と思いながら慈善活動(お金稼ぎ)に張り切っていた主人公こと“聖女”だったが、今日はいつもと違う展開になった。

 

 

 

聖女様も日々人々を救済し、お疲れでしょうから湯治に参りましょうか

 

 

 というわけで、信者の一人であり教会を運営する男の人に京都の温泉宿へ行く手配をしてもらったのだ。

 

しかも泊まり込みとか何それ天国か?

 

 現地の人々の救済は必須事項だけど、それ以上のメリットがある。

 

 

私は即座に快諾した。

温泉大好き、心地いい温度でトロけたい。

 

なんて気の利く配慮をしてくれるんだろう。

今度良い未来を視てあげようと決めた。

 

 出発は直ぐにするように伝えてホクホクと準備を進める。

 常に教会という名の箱庭にいる私(※夜遊びは別枠とする)にとっては旅行みたいなものだ。

 

 

 

「熱湯に浸かることの何が楽しいのやら。

 煮込まれたいわけ?」

 

 

 恐らく、というか絶対に憑いてくるであろう幽霧は呪霊らしく捻くれたことを吐き捨てる。

 コイツ、サラッと人をマゾみたいな言い方してくれちゃって可愛げのない。

 

 

マグマに入るんじゃないんだからっ!

 温泉は癒やされるから好きなの!!

 

「ふーん」

 

 

幽霧は心底興味なさげに私の話を受け流した。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

というわけで、やって来ました京都!!

 

 

 

 私は教会からあまり遠くへは行ったことがないため、京都も久々の訪問である。

 黒塗りのベンツに乗りながら、窓の外を眺める。

 両脇にガタイのいいお兄さんがいるし。

 たかが聖女一人のための送迎が豪華すぎて泣けてくるよ。

 そんなに警備固めなくても…まぁありがたいけどさ。

 

 

とにかく今は京都を楽しもう。

窓の外の古き良き町並みがとても美しい。

うん、夜になったら幽霧と観光しよう。

 

 

やがて、宿に到着した。

 

 

 車って肩とか腰が疲れるな、幽霧の飛行なら一瞬なのに。

 

ん?車と特級呪霊を比べるな?

 

 より便利なものを知ってしまった人間に何を言おうと手遅れだよ。

 

 

 身体の疲れはともかく、窓越しでも京都の町を見れたことに満足し、内心ニコニコで宿の暖簾を潜った。

 そして宿に上がろうと中へ入ったら、眼の前にズザザッと大勢の人が滑り込んできて平伏した。

 

 

 

な、何事!?

予想外のことに驚いて無意識に構えてしまう。

 

 

 

「「「お待ちしておりました、聖女様!!!」」」

 

 

 

暫く呆けていたが、やがて意識が戻った。

 

 

見渡す限り、信者、信者、信者…。

 

その数の多さに感心というよりはゾッとしてしまった。

 

 

 ちょ、ちょっと待って、宿の客が全部信者説とかそんなことある!?

 

今日のためにわざわざ集まったわけ?!

 

京都の民私のこと好きすぎでしょ!!

 

 

我ながら人気のエグさに引いた。

いや、信仰は自由だけどここまでとは思わないよね。

 

 

 もしも全国の民がこうなのだとしたら私はどうリアクションを返すのが正解なのかを誰か教えて欲しい。

 

 

 とりあえず信者の人達に声をかけ落ち着いて貰って私は目的である湯治に行った。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

温泉気持ちいい…、溶ける〜

 

 

ふわ、と欠伸をこぼしながら湯船に浸かる。

 最近ゆっくりできてなかったから最高の休息だな。

 暫く湯船で癒やされていたら、ふと過去のことを思い出した。

 そういえば、数年前も同じように京都来てたような…ー。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

ー 数年前の回想 ー

 

 

 

 極楽極楽と湯船に浸かって温まっていた私は、新たな人の気配に気づいて顔をそちらへ向けた。

 

 

ん?信者の人かな?

 あー、でも、信者の人達には『聖女様と温泉を共にするなど恐れ多い』って凄い剣幕で拒否られたんだっけ。

 

だとしたら一般の人かな。

 

 

お隣いいかな?

どうぞー

 

 

 温泉が極楽すぎて上機嫌になった私は気分よく答えた。

 湯気が立ち上る中、隣でチャプンと音がした後人が座り、湯が揺れる。 

 

 

お、素敵な美女さんだ。

この人は私の話し相手になってくれるかな。

 癖っ毛らしくツンツンした黒髪をもつスタイル抜群の美女は私の顔を見て目を丸くした。

 

 

「貴女とても綺麗な肌ね、羨ましいわ」

 

 

なんて褒め上手な人なのだろう。

嫌味には感じず、素直に嬉しかった。

 

 

えっ、そ、そうですか?

 貴女もとても綺麗ですけど』

 

「若い子に比べたらそんなことないわよ!

 甚爾にも老けたなとか言われちゃったし」

 

 

 思い出したら腹立ってきた、と夫であろう人物のことを愚痴る美女さん。

プリプリして怒る様子が微笑ましい。

 何だか可愛いな、おかげで惚気にしか聞こえない愚痴を聞いてもイラッとしなかった。

 

 

『今日は湯治ですか?』

「えぇ、最近妊娠したのよ。

 子どものためにも良いと思ってね」

『そうなんですね』

「そうなの、無事に産まれてきてねー」

 

 

 美女さんは自身の腹部にそっと手をあてて撫でると、幸せそうに笑う。

 私は彼女の安産を祈る言葉を聞いて、笑顔のまま口を閉じた。

 

 術師ならまだしも、一般の人の未来を盗み見ることはあまり良くないのだろうが、何だか嫌な予感がしたのだ。

 まるで邪悪な何かが彼女に近づく気配がする。

 

 

 何回も考えて、考え直した上で私は彼女を視た。

 

 

 そして、息を呑む。

 

 …なるほど、この人はこの先多くの人にとっての悲劇を生むキーパーソンか。

 

 

 今は元気な彼女だが、もう殆ど“時間”が残されてない。

刻一刻と迫る死の運命が視えていた。

 

あぁ、どうしよう。

 

更に決断が増えてしまった。

 術式を使えば死なせずに済むけど、変えてしまった先の未来を保障できなくなる。

 

 

 

……でも、人として、“聖女”として、見捨てることなんてできない。

 

 

 

 

だから。

 

 

 

 

『“宿世攪約スクセカクヤク”』

 

 

 

 

だからね、私がその運命を書き換えるよ。

 

 

 

 

「?何か言った?」

 

『いいえ、無事な出産と健康をお祈りしてますね

 

 

 

 呟いたのが聞こえたのか不意に此方を見た美女さんに私はにっこりと微笑んだ。

 この先、彼女に私がしてあげられることは祈りの他にない。

 どうか、彼女とその家族の未来が明るいものになりますように。

 

 

 私は美女さんよりも先に温泉から上がると、出口に男の人が立っていた。

 わ、デカいし強面だけど、どこか甘さのある美丈夫。

ストレートな黒髪に切れ長の目が印象的なその人。

 私はその人に見覚えがあったけれど、むこうからすれは初対面であるため気にせず通り過ぎた。

 

 

おい、お前

『…?はい』

 

 

 呼び止められてドキッとしたけど、そこは平静さを保って振り返った。

 目があったけれど、あなた誰?的な顔をして男の人を見つめたら、直ぐに顔を逸らされた。

 

 

「…いや、何でもねぇ」

 

 

 ひぇー、怖、流石未来の最強を殺した“術師殺し”。

 いくつもの人の未来の中に貴方が何回出てきたことか。

 私も首に賞金かかってるみたいだし、狙われたらと思うと怖すぎる。

 おかげでもう名前も覚えてしまったよ。

 禪院甚爾、いや、今は伏黒甚爾か。

 奥さんができてから丸くなった様子。

 後で一応遠くから視とこうかな、奥さんの未来を変えた影響がどれくらいか知りたいし。

 

 

 今後彼が未来で見たような闇堕ちルートには入らないことを願う。

 てか頼むからそうであってほしい(※希望的観測)!!

 

 内心震えながら後ろから突き刺さる彼の目から逃れた。 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

あったねー、そんなことも

 

 

湯船の温かさと共に沁み沁みと思い出した。

 今じゃ未来視で彼の名前は滅多に聞かなくなったけど。

上手く行ったってことかな。

まぁ、そうであることを願おう。

 あの2人にはどうか末永く幸せであってほしい。

 

 

 

 

「いつまで長風呂してるつもり?逆上せるよ」

 

 

 

 眼の前でにゅっと湯船から顔を出した幽霧に私は胸から下を隠したタオルを押さえてザバッと音を立てて飛び退く。

 

 

 

キャアアアア!変態!!

 

「は?何言ってんの、呪霊が人間相手にそんな下らない情を抱くわけが…「「「どうされました聖女様!!??」」」

 

 

 

私の悲鳴を聞いて中に入ろうとしてくる信者達。

 

 

 

貴方達も来なくていいからぁあ!!

 放っといてぇええ!!

 

 

 

一瞬で場はカオスと化し、私は羞恥心で死んだ。

 

 

 

 

 

 

 




お読みいただきありがとうございます(*^^*)
何だかんだコメディで終わりました。
 二次創作で伏黒夫妻の話を読むのが好きなので、今回書くことができて光栄です。
 追記 : 幽霧は聖女に執着していますが、愛などの感情は抱いていません。
 最後に、お気に入り・しおりの登録、感想や評価をしてくださりありがとうございます❀
 これからも執筆・投稿に励みます✿
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