白髪青年&ダウナー系美少女「「絶対捕まえる」」
金髪青年「(先輩方の圧が面倒だな…)」
聖女『アッ、これ捕まったら絶対ヤバいヤツだ、逃げよ』
京都から戻った私は変わらず“聖女”として活動を続けていた。
人を救って、夜を駆けてのサイクルの果てに気付けば春が巡ってたよね!
時の流れは早いものだねぇ、不老不死の私には関係ないけれど。
春は結構好き、花や桜も綺麗だし、風もふんわり暖かくて心地いい。
特に、丁度良く穏やかな日差しを浴びて微睡むのが最高なんだよね。
だがしかし、私は基本的に日中は外に出ること無くずっと慈善活動してるから、春の景色も早々堪能できないでいる。
そのため、時折窓の外に見える桜を眺めるだけ。
何だか惜しいなー、手を伸ばせば届くような景色なのに。
「聖女様?どうかなさいましたか?」
『?どうして?』
「いえ、ぼうっとしていらっしゃったので具合が悪いのかと」
来訪者悩める民が入ってくるのを待つ間に桜を見ていたら、側守りの信者から心配する声をかけられた。
不老不死だし具合悪くなることなんてあり得ないのに。
…って、ん?
私は今具合が悪く見えている?
もしかしなくとも、使えるな、それ。
『ちょっとクラクラするかも…』
手を額にあてて頭痛が辛そうな演技をしてみれば、見事引っ掛ってくれた。
慌てて信者の救済をストップさせ、私を自室まで連れていってベッドまで案内してくれた側守りの信者。
ごめんね、仮病なんて嘘を吐いて困らせちゃって。
でも、そろそろ夕方だし、
その後、幽霧を呼んで外に連れ出してもらった。
昼間だから修道服ではなく、白いワンピース。
幽霧は夜だけに飽き足らず外に出たがる私に呆れていたけど、私を教会から遠くの場所に降ろすと、「また呼んで」とだけ言い残して去っていった。
降ろされた場所の近くに美味しそうなパン屋さんを見かけて中に入り、パンを買うと公園の長いベンチに腰を下ろした。
パンは教会でも良く食べているけど、食パンとかロールパンとかシンプルなのが多いから一味違うものが食べたくなるんだよねー。
今日買ったのはカスクートというもの。
パクリ、と一口食べたところでふと誰かの気配がした。
顔を上げると、前から人が歩いてきていた。
どうやら私がいるベンチの隣スペースに座るらしい。
あ、私が購入したパン屋と同じ袋持ってる。
パン好きなのかな。
「すいません、お隣いいですか?」
別に許可なんて取らなくても勝手に座っていいのに律儀な人だな。
『ん?いいですよ』
「ありがとうございます、失礼します」
金髪に大人びた綺麗な顔つきをした高校生らしき男の子が私に声をかけた後静かに隣に座った。
…って、ん?
よく見ると、金髪の青年が去年私が声をかけた白髮青年とダウナー系美少女と同じ制服を着ているのに気付いた。
おぉ、“呪術高専”の子か、遭遇するのは1年振りくらいかな。
恐らく白髮青年らの後輩なのだろう、彼等は去年担任の夜我さんから1年生だと聞いていた。
金髪の青年は何だか青くて若い生き生きとしたオーラを感じるし、多分入りたてなのかな。
真面目で良い子そうな人だから、後々苦労しそうな節も感じた。
無言でそんなことを考えていたら、隣から「あの」と声をかけられる。
顔をパッと金髪青年の方に向けると、金髪青年は真剣な眼差しで私をジッと見ていた。
『何でしょうか、金髪青年』
「…いや、その呼び方は流石にないでしょう」
金髪青年は私の呼び方が気に入らなかったらしく途端に真剣な顔を崩して、呆れたような不満そうな表情を浮かべた。
あれなんかこの顔、幽霧を思い出すぞ…?
金髪青年は、キレのあるツッコミ役らしい。
「…七海です、変な呼び方は勘弁して下さい」
『ナナミン君ですね、分かりました』
「1ミリも理解していませんね、学習能力ないんですか?
やめて下さい」
ナナミン呼びで睨まれた。
てか初対面なのに風当たりが強いな、この子。
丁寧な敬語使ってるけど、少しも尊敬度が伝わってこない。
幽霧とどことなく辛辣さが似てるし親戚かなんて思ってしまう。
ナナミンとか可愛いあだ名じゃんか。
「
なので普通に呼んでください」
余程その人が嫌なんだね、七海。
真面目で善人の彼が苦痛な顔をするレベルに嫌われている奴の顔を見てみたいな。
『分かりました、七海君ですね』
「はい、あの、それで聞きたいことがあるんですが」
『?何ですか?』
「貴女はうちの先輩方が探してる“聖女”ですか?」
『………』
いきなり爆弾を投下した七海に思わず絶句してしまった。
私が“聖女”だと気付いたのも結構驚いたけど。
七海の先輩方が探してる“聖女”??!!
先輩方って、あの白髪青年達だよね?
私探されてるの?
たった一晩会っただけなのに?
探している容姿の特徴を聞いたら間違いなく私だった。
うん、不味い事態だな、これは。
『知りませんね、そのような人は』
サラッと平然とした顔で嘘をついた。
とりあえずシラを切ろう。
嘘吐きは逃げるための常套手段だ。
嘘なら自信あるよ、演技は私の得意分野からね!
それでも聖女か?聖女だよ!!
「…そうですか、急にすいません。
先輩方の言っていた容姿に似ていたもので…」
よし、騙されてくれた。
気まずそうな顔をして引き下がった七海に心の中で謝りつつガッツポーズする。
前に硝子とかの前で出した破天荒キャラは一応しまっておいてよかった。
あんな厨二病発言連発する人間は私くらいだという自負があるからね。
『いえ、その人をお探しなのですか?』
何故探しているのかが気になって知らないフリをして聞いてみた。
すると金髪青年は「それは…」と言い淀んだ。
え、なんか嫌な予感…。
「一人の先輩は“あのクソ生意気な餓鬼を取っ捕まえる”って言ってて、
もう一人の先輩は“私を名前で呼んでおきながら逃げるとか許さない。絶対見つける”と言ってまして…」
『…それは大変ですね』
「後輩である私達にまで探すように命令してくるので本当に困ります」
逆らいたいがパワーで勝てないと愚痴る七海に心から同情した。
流石は夜我さんが言っていた問題児達。
発言がどれも物騒で危うすぎる。
うわぁ、私の命が危機にさらされてる…!!
硝子はなんか病んでるね?どうした??
絶対に会わないようにしよ、特に白髪青年は次エンカウントしたら間違いなく問答無用でヤりにくるね。
未来の最強と戦いたいと誰が思いますか?
誰も思わないよね!
私はまだまだ穏やかな聖女ライフを満喫していたいんだ!
少しだけ七海の“先輩方”の愚痴を聞いた後、七海はベンチを立った。
この後やらなければいけない用事があるらしい。
私は彼の未来をちゃんと視ていない。
だけど、確かな予感があった。
『真面目なのは良いことですけど、
時には自分にも甘くしてあげてくださいね』
お節介かもしれないけど、伝えたかった。
七海は私の言葉に目を見開いた後、静かに首を縦に振った。
「…ありがとうございます」
私は律儀に礼を言って去っていく七海の綺麗に伸ばした背を見送った。
そして、これから厳しい世界で闘うことになる彼の未来に幸福を祈った。
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食べている途中だったパンを完食してベンチから立つと、近くを散策する。
ここら辺は大きな桜が多くてとても綺麗だ。
宛もなく歩いていたら桜並木があってヒラヒラと散りゆく花びらが綺麗で通り抜けることにした。
桜を眺めながら歩を進めていると、視線の先に此方側へ歩いてくる親子の姿を見た。
桜並木の下を小さな黒髪の男の子と両手を繋ぐ仲よさげな夫婦が歩いている。
幼い子どもは両親のそれぞれと良く似た顔をしていた。
桜の木々を見上げながら笑い合う3人。
特に目も合わせず、やり取りもせず、一瞬の空間だけが共にあった。
ー…けれども、どうしようもなく幸せな光景を見れたような気がした。
通り過ぎてから、不意に3人を振り返る。
ここで“彼女達”に出会えたことは、私にとっても“幸い”だった。
良かった、“彼女達”は幸せになれたんだね。
私は独りでに笑っていた。
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▶七海と聖女の小噺
『七海君はカスクート好きなんですか?』
「え?あぁ、はい。
パンが好きで、中でもカスクートはお気に入りです」
『そうなんですね!
私今日初めてカスクート食べたんです』
「美味しいですよね」
『はい』
お読みいただきありがとうございます(*^^*)
一番の推しである七海を書けてとても幸いです。
聖女は問題児兼黄金世代から逃げ切ることを目標にしますが、今後もまだまだ呪術高専の生徒等と関わっていきます。
最後は、偶然の巡り合わせですが聖女が悩んだ末に救済したその後をチラッと書いてみました。
最後に、お気に入り・しおりの登録や評価、感想ありがとうございます❀
これからも精進致します✿
好きなセリフなどシーンがあった場合もお知らせしてもらえると今後の参考になるので宜しければお願いします❀