見たいだろ、テイオーがふとしたきっかけでギターを始めて夕暮れ時に旧校舎からギターの音が聞こえるという噂を頼りにアコギを弾いてるマンハッタンカフェと出会いそこからゴールドシップの提案でテイオーを餌にマックイーンをバンドに釣ってなし崩し的にメジロ家の別荘を勝手にスタジオ化して機材を持ち込んだ挙句入り浸る二次創作がよ

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トウカイテイオーがギターを買っちゃった!

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 ギターを買った。

 一度も弾いたことないくせに。

 

「……」

 

 何か特別な思いがあったわけではない。これといった理由があったわけでもない。ただ、気まぐれに寄った楽器屋で一目惚れした。あるいは、運命と呼べるのかもしれない──なんて、トウカイテイオーは衝動買いの言い訳を頭の中でいくつか並べていた。

 一緒に買ったケースから取り出して、これまた一緒に買ったスタンドに立てかけて、改めて眺めてみる。

 青と白を基調とした、飾りっ気のないシンプルなデザインのギターだった。店員曰く、初心者向けのモデルだということだったが、それはあまり気にならなかった。

 とにかく、想像がしやすかったのだ。自分がこれを持って歌う姿が。確かに勝負服と色味が似ているというのもあるが、それ以上に、このギターは自分のために作られたのだと、そんな自己陶酔的な気分になるほどトウカイテイオーはこのギターを気に入っていた。

 とはいえ、まあ、どれだけ気に入ったとしても、想像は想像であって。

 

「どうしよう、これ」

 

 心なしか寂しそうに佇むギターを眺めながら、トウカイテイオーぼそりと呟いた。

 何度か向き合おうとは思った。

 それこそ買ってからしばらくは手慰みに触っていたし、音楽室にあった教本を勝手に拝借して、コードもいくつか練習してみた。自発的に練習しようとしただけいいと思う。それにケースを背負って登校してみると、同級生からも何度か話しかけられたし、トレーナーからも声をかけられた。それも注目の的になって気分がよかった。

 ただ、言ってしまえばそれだけだった。コード進行や音楽理論は難しすぎて知恵熱が出そうだったし、同級生やトレーナーの興味も既に冷めている。何ならほとんど飽き始めている頃だった。

 しかしファッションで終わらせるには、あまりにも高い買い物である。それをなんとかするために、トウカイテイオーはこうしてうんうんと悩んでいるのだが。

 

「……もうインテリアにした方がいいかな」

 

 卒業したら実家に送るの面倒だな、なんてことを考えながら、トウカイテイオーはギターをケースの中へ収めた。

 

 結局、機会に恵まれなかった。

 もっと単純に言えば、周りに音楽をやってる人間が少なかった。

 夕陽の差す廊下をとぼとぼ歩きながら、ギターを背負ったトウカイテイオーは今日もそうやって言い訳を考えていた。

 一人で練習すればいい話なのは分かりきっている。だが、そうした努力を共有して、同じ立場に立ってくれる仲間が必要なことも、トウカイテイオーというウマ娘は知っていた。

 トウカイテイオーにとってそうした仲間の筆頭であったメジロマックイーンは、今回不参加。ナイスネイチャも右に同じ。そういえば、と思い出したヤマニンゼファーにもかなり期待を寄せて声をかけてみたが、「私はトランペット専門なので……申し訳ありません」と今までで一番マトモな対応をされて、驚いているうちに話が終了した。

 いや最後のはもうちょい粘ればいけたのかも? でもあの調子で教えられても逆に何も分かんないんじゃないのかな……、なんて考えているうちに、だんだんと背中の重みが鬱陶しくなってくる。

 

「……トレーナー室に置いてけばよかったかな」

 

 かすかにそれが聞こえてきたのは、トウカイテイオーがそんな呟きを漏らしたときだった。

 

「え……」

 

 ギターだ。

 どこかでギターを弾く音がする。

 僅かに残った自分の自尊心が生み出した幻聴かと最初は思ったが、続けざまに聞こえてくるその音がそれを否定した。

 でも、だから何だ。

 どうせもう飽きがきてるし、それこそ今さっきこれを鬱陶しいと思ったばかりなのだ。コード練習はしたけど、本当は弦も全然抑えられなかったし、多分自分には向いていないんだと思って諦めたばかりじゃないか。

 だから、今更ギターを弾いてる人間が見つかったからって、何だ。

 ──なんて考えをかき消すように、またギターの音が聞こえてくる。

 それはさっきよりも大きくて、音もいくつか鮮明になっていた。

 それは自分が音のする方に近づいているからだ、ということに、トウカイテイオーはようやく気がついた。

 音を頼りに校内を歩き回り、辿り着いた扉の上にある室名札を見上げる。

 

「旧理科準備室……」

 

 入ったことすらない場所だった。用もなければわざわざサボるために選ぶ場所でもない。縁もゆかりもない部屋だが、しかしそのきっかけは今でも向こうから聞こえてくる。

 扉に手をかけるのに、そこまで時間は要らなかった。

 

「前々から思っていたけど……君、何気に多趣味だよねえ」

「アナタみたいに一辺倒よりはマシでしょう」

「はは、手厳しいじゃないか。まあ、いいさ。君の演奏をこうして独り占めするのも、なかなかどうしても悪くない気分だからね」

「……また、アナタはそういう言い方を……」

 

「カフェセンパイ、ギター弾けるの!?」

 

 演奏は止み、二つの視線がこちらに向けられた。

 

「……テイオー、さん?」

「あのねあのね、ボクも最近ギター買ったんだけど、全然わかんなくって! それに一緒に練習してくれる人も見つからなかったからさ! もうどうしよっかなー、って諦めてたトコなの!」

「ちょっと……落ち着いて……」

「ねね、カフェセンパイがよかったらボクにギター教えてよ! カフェセンパイ、ギター上手なんでしょ? だってさっきから聞いてたけどすごいスラスラ弾いてたじゃん! ね〜え〜、お願いだから教えてよ〜」

「……タキオンさん」

「こういう時だけ私を頼ろうとするの、君のよくないところだぞ」

 

 じとっとした視線とぐうの音も出ない正論を返されて、マンハッタンカフェはにべもなくため息を吐いた。

 とりあえず、さっきから尻尾をぶんぶんと振りながらキラキラ目を輝かせているトウカイテイオーを一旦、引き剥がして。

 

「まず……部屋に入るときは、ノックしてからですよ……」

「ごめんなさーい……」

「それと……自分のそばに楽器がある時は、暴れないこと。楽器は、繊細ですから……それこそ、アナタの背負っているそれは精密機械です。……間違って壊したら、大変です」

「うん!」

 

 聞き分けのいい犬を相手にしているみたいだった。ふんすふんすと息を荒くするトウカイテイオーにそうやって言葉を渡したところで、改めてマンハッタンカフェが口を開く。

 

「それで……私に、ギターを教えてほしい、ということでしたが」

「うん」

「……残念ながら、私はアコースティック派です。なので、エレキは専門外ですよ」

 

 ほら、と示すようにマンハッタンカフェがギターを今一度、小さく掲げた。

 

「確かにエレキと通じるところは多いですし、アナタにも色々と教えられることがあるとは思いますが……逆に言えば、どこかでつまずきます」

「そうなの?」

「芝を走れる生徒に、ダートの走り方を聞くようなものだと思えば、分かりやすいかと……」

 

 マンハッタンカフェの喩えは非常に腑に落ちた。確かに自分にダートの走り方を教えて欲しいと頼まれても困ってしまう。フォームや読み合いなどのコツは共有できるが、いざ実践となるとどこかで歪みが生じてしまうかもしれない。遠慮するのも頷けた。

 ただ、それでも。

 

「……やっと、一緒に練習できる人が見つかったと思ったのに」

「……」

「……ダメ?」

「ぐっ」

 

 などと鈍い鳴き声がマンハッタンカフェの口から聞こえてから、しばらくして。

 

「……どうしても、というのなら」

「やったー!」

「(甘っ……)」

 

 もうちょい粘れよ、と喉まで出かかったその言葉を、アグネスタキオンは紅茶と共に飲み込んだ。

 

「……では、さっそく見せてもらってもいいですか?」

「え、今から!?」

「言葉だけで伝えてもわかりづらいでしょう……それに、丁度ギターもアナタの背中にあることですし。もちろん、都合が悪ければ構いませんが……」

「ううん、そんなことないよ! こんなに早く教えてもらえるんだって嬉しくなっちゃっただけ!」

 

 なんだか出来のいい後輩ができたような気分になった。いそいそとケースを下ろし、ギターを取り出すトウカイテイオーを眺めながら、マンハッタンカフェが側のテーブルに置いてあったコーヒーを啜る。

 直接的な繋がりはない。レースという点においてもそうだし、学園生活における点でもそうだ。顔も名前も互いに認知はしているが、だとしても一生交わることもないような生徒だな、という認識はおそらく向こうも同じだろう。

 だから、まあ。

 

「いやはや、趣味は持つものだねえ」

「……アナタまで始めないでくださいよ?」

「まさか。私は聞く専門でいいさ」

 

 アグネスタキオンが答えるのと、トウカイテイオーから声がかかるのはほとんど同時だった。

 

「カフェセンパイ、準備できたよ!」

「……思ったより似合いますね」

「えへへ、そうでしょ? 実は一目惚れして買っちゃったんだよね」

 

 無造作に開放弦を鳴らしながら、トウカイテイオーがそう答える。

 ……なるほど。

 

「今ので大体、分かりました」

「え、もう!? やっぱりカフェセンパイ、只者じゃ……」

「まずはチューニングから教えないといけない、ということが」

「あれ?」

 

 どうやら先は長そうである。

 ともあれ。

 

「携帯にチューナーのアプリは……?」

「あー……入れたけど使い方わかんなくて放置してた。なんか色々いじってたらシの音しか鳴らなくなっちゃったんだよね。それも、あの、ほら。黒い鍵盤の方の」

「やけに玄人向けのものに行き着いたのも気になりますが……よろしければ、チューナーを買うのもアリですよ。メリットやデメリットは色々とありますが……私は、好みでそちらを使っています」

「じゃあボクもそうする! だってカフェセンパイとお揃いにしたいもん!」

「……そう、ですか」

 

 学園の誰もが知っているようなトウカイテイオーの、おそらく誰にも見せたことがないような一面と。

 マンハッタンカフェが今まで自分には見せたこともない、見守るような表情を眺めながら。

 

「もう独り占めできなくなってしまったねえ……」

 

 呟いたアグネスタキオンは、すっかり冷め切った紅茶の入ったカップを傾けた。

 

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気が向いたらor楽器描写の監修してくる人がいたら続きます
何でも良いからトウカイテイオー×マンハッタンカフェを書きたいので
問題はうp主がベースとドラムしか弾いたことないことです

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