ワニ人間はバタバタと不恰好な足音を立てながらハツミが乗るジープに一直線に向かってきた。
大声を上げようか、走って逃げようか――だが、そのどちらをとってもあまり見込みがなさそうだということは明らかだった。そう判断したハツミは左側の運転席に滑り込み、ガンボットが差しっ放しにしておいた車のキーをひねってエンジンを始動させ、クラッチを左足で踏み込むとギアを一速にし、思い切りアクセルをふかしながらクラッチを離した。
吼えるようなエンジン音を立てながらジープはガクンと急発進した。ワニ男は車のバンパーに激突するとジープのボンネットに引っ掛けられて宙を舞い、次にジープの天井の幌の上をバウンドし、最後に車の後ろの道路に音を立てて落下した。
ハツミはブレーキを踏んで車を減速させると、クラッチを踏み込みながらもう一度ブレーキを踏んで停車させた。振り返ると、後部座席の幌の窓越しに、ワニ男が何事も無かったような様子で立ち上がるのが見える。
「信じらんない!何で平気なのよ」
そう罵ると、ハツミは今度はギアを後退に切り替え、またアクセルを踏み込みながらクラッチを離した。車はワニ男に突き当たるとたちまちその上を乗り越えた。ガクンガクンとジープが揺れ、ハツミはシートの上で跳ね上がったが、十メートルほど後退したところでブレーキを踏んで再び停車した。
だが自動車に撥ねられ轢かれたはずのワニ男はまたむくりと立ち上がった。まったく何も感じていないようだ。
ひい と悲鳴を上げると、ハツミは再びギアを一速に入れ、クラッチを離してアクセルを踏み込んだ。だが三度目の攻撃は加速が足りなかったらしい。ワニ男はボンネットの上に乗り上げるとフロントガラスに横ざまに貼り付いた。ワニの醜い口がちょうど運転席にいるハツミの目の前でシャーと威嚇音を立てる。ワニ男は腕を伸ばすと、運転席の窓から手を突っ込んでハツミを捕まえようとした。
ハツミは声にならない声を上げながら相手を振り落とそうとハンドルを左右に切った。だがこれが災いして、ジープは道路脇にある潅木に突っ込んでたちまちエンストしてしまった。ハツミは右側の助手席に移るとドアを開け、一目散に駆け出した。だが相手もそう簡単には諦めてはくれないようだ。ワニ人間は不恰好に音を立てながら地面に転げ落ちると、立ち上がってまっしぐらにハツミを追ってきた。
「ガンボット!」ハツミはロボットが歩いていった町の中心部に向かって走りながら叫んだ。「助けて!」
後ろを振り返ると、ワニ男はそれほど足は速くなかったが、それでもハツミが振り切れるほど遅くもなかった。舗装の行き届いていない田舎の砂利道を走っていると、ハツミはたちまち息が切れてくるのがわかった。
「ガンボット!」ハツミはもう一度叫んだ。「どこにいるの?早く来て!」
だめだ、このままじゃ追いつかれてしまう――ハツミがそう思った瞬間、町の目抜き通りのはるか向こうにロボットの姿が見えた。ガンボットは真っ直ぐこちらに走ってくる。だが、ハツミからの距離は百メートルほどもあった。
「伏せろ!」ガンボットが大声で言うのが聞こえた。
伏せろ?ハツミは耳を疑った。こんな状況で走るのをやめて伏せたらたちまちワニの口でバクリとやられてしまう。ハツミは脇腹が痛くなってくるのを感じた。息がどんどん苦しくなる。振り返ると、もうワニとの距離は二メートルもない。
「伏せろ!早く伏せるんだ!」ガンボットが再び叫んだ。
その時ハツミはやっと気づいた。ハツミがワニ男の前にいるかぎり、ガンボットは撃てないのだ。
「伏せろ!」またガンボットの声が聞こえた。もうハツミはほとんど息が限界だった。ワニとの距離はじりじり縮まっている。だけど、もし伏せた後ガンボットが撃ち損じたら――そんな考えが頭をよぎった。
だが、もう迷っている余裕はなかった。意を決したハツミは両手を前に出し、砂利だらけの道路に身を投げ出した。
その瞬間、ハツミの頭の上をヒュンと音を立てて何かがかすめ、それが硬いものに激突するバシッという音が連続して聞こえた。一瞬遅れて、まるで大砲のような物凄い銃声が五つ鳴り響く。銃声は右手の山の斜面に何度もこだました。
銃声のこだまが消えたころ、ハツミは両手を地面について顔を上げたが、背後でバタンという音がしたので驚いて慌てて振り向いた。二メートル近いワニの体がすぐ後ろで倒れ込んでいる。座り込んだ彼女の靴の足先からほんの数センチのところに牙だらけのワニの口の先端があり、その下あごはまだ細かく震えていた。
ガンボットは拳銃に弾を込めながら走り寄って来る。ハツミはしばらく地面にペタンと座り込んで呆然としていた。
「怪我は無いか?」ガンボットはようやくハツミのいる場所にたどり付くと尋ねてきた。だが聞かれたほうのハツミはただ肩で息をしながら頷くのが精一杯だった。
「君に車の運転ができるとは驚いた」ロボットは通り沿いの潅木に突っ込んで停車したジープのほうを見やりながら言った。「もし俺が戦闘で損傷したら運転を頼みたい」
まるで大したことは何も起きなかったかのようなガンボットの口調に、ハツミは急に腹が立ってきた。
「どうして呼ばれたのにすぐ来ないのよ」ハツミはまだ荒く息をつきながら言った。
「ていうかあんたのセンサーって本当に奴らが見えてるの?なんでわたしの目の前にあいつがいきなり出てくんのよ」
「わからない」ガンボットは簡潔にそう答えると、拳銃をホルスターに収めた。
「もう、わからないって……」ハツミは諦め気味に言うと、よろよろと立ち上がろうとしたが、膝がまだガクガクしていて、再び座り込んでしまった。
「町の中心部には奴らはいない」ガンボットはハツミに手を貸して立ち上がらせた。
「君はかなりの恐怖を感じたようだな」
「すごく怖かった」ハツミは素直に答えた。膝はまだ細かく震えていた。
「捜索を中断して国境地帯の町に戻ろう」 ガンボットはさっき入ってきた町の入口のほうに顔を向けた。「俺に同行していれば君はこの先何度こういう目に遭うかわからない。やはり君をアリゾナに送り届けることを優先すべきだった」
「グランコミューはどうするの?」ハツミは尋ねた。
「俺が探し出して狩る」ロボットは答えた。
「わかった」ハツミは言った。「あんたに任せる」
ハツミは下を向いて大きく溜息をついた。義憤とかなんとか偉そうなことを言っても、やっぱり自分は危険が怖いのだ。ガンボットみたいに闘うこともできないし、それどころかガンボットの助けなしには身を守ることさえできない。ガンボットに対して大見得を切った自分が急に情けなく思えてきた。
ハツミは車に向かって歩き始めた。だが、ロボットが同じ場所に突っ立ったままなのに気づき、振り返ってみると、ガンボットは町の中心部のほうにじっと顔を向けている。
「何やってんの?」ハツミがもう一度声をかけると、ガンボットは左手を挙げて応え、右手に拳銃を抜いた。
やがてグエッグエッという声が遠くから聞こえてくると同時に、百メートルほど先にあるもう一つの交差点の角からワニ人間が現れるのが見えた。ニ匹、三匹、四匹、五匹。目抜き通りに次々に姿を現したミュータントどもは、左右を見回すと、ハツミたちの存在に気づいたらしい。隊列を組むようにして、合計五匹のノコギリワニたちがヒタヒタと歩いて来る。
「迂闊だった」ガンボットは言った。「町の中心部から捜索を開始したのが間違いだった。奴らは多分家畜が飼われている町外れの家々から先に襲ったんだろう。それで腹ごしらえを済ませた頃銃声を聞いたのでやって来たんだ」
「どうする?」ハツミはガンボットに尋ねた。
「行こう」ガンボットは答えた。「今慌てて狩る必要はない。君を家に送り届けてからまた来るさ」
ハツミとガンボットは踵を返した。五十メートルほど北に行ったところの通り沿いの潅木に突っ込んだままハツミが放置してきたジープに向かう。だが、あのワニ特有の嫌な匂いがいっそう強く漂ってきたので、ハツミはぎょっとして立ち止まった 。
その瞬間、ちょうど車が突っ込んだ潅木のあたりの、道路の左右の家並みの間からグエッグエッっという声が聞こえてきたかと思うと、通りの右側からも、左側からも、家と家の間や木立から次々とワニ人間たちが姿を現した。ハツミが後ろを振り返ると、交差点からやってくるワニ達もいつの間にか数が増えていて十匹、いや十二匹になっていた。
再び振り返ると、既に新手のワニたちはハツミたちと車の間に入る格好になっていた。こちらも全部で十五匹ほどいる。
完全に挟み撃ちだ。
ガンボットはいきなり拳銃を上げると二発発砲した。木立に間から出てきたワニ達の間に鉄砲ワニが一匹いるのを見つけたのだ。鉄砲ワニは頭に弾丸を喰らって倒れた。その音を合図にしたかのように、ノコギリを構えたワニ人間たちはバタバタと音を立ててハツミたちに向かって突進してきた。
ガンボットは慎重に狙いをつけて、木立から出てきた集団に向け三発拳銃を撃った。撃つごとに、頭に弾丸を受けたワニがもんどり打って倒れる。ガンボットが弾丸を補充しようと左手を拳銃に添えた瞬間、ハツミは叫んだ。
「わたしが弾を込める。銃を貸して!」
ガンボットはそれを聞くが早いが右手でM五〇〇をハツミに差し出すと、左手で黒光りするM二十九を抜き出した。木立の間から現れたワニたちが急速に迫っている。ガンボットが四十四マグナム弾を六連射すると、たちまち三匹のワニが崩れ落ちた。だが他のワニたちはまったく臆する様子もなく突進してくる。
ハツミは地面に膝をつき、左手で拳銃を支えながら右手でグリップを握ってスイッチを押し弾倉を振り出すと、弾倉中央の棒を押して排莢した。ガンボットもM二十九の弾倉を空にし、自分のガンベルトから弾を抜き取ってあわただしく装填している。
交差点から出現した連中も既に五十メートルほどの距離に迫っていた。ハツミは右手を伸ばすとガンボットのコートのポケットに突っ込み、五〇〇マグナム用のスピードローダーを探し当てて引っ張り出した。手に持った拳銃の弾倉に弾丸を差し込んでローダーのラッチを捻る。弾丸をするりと弾倉に落とし込むと、ローダーを投げ捨てて拳銃を両手で持ち、パチリと弾倉を閉じた。
ガンボットがM二十九に弾を装填し終えたのと、ハツミがガンボットにM五〇〇を差し出したのはほぼ同時だった。ロボットは、左手にM二十九を持ち、右手にM五〇〇を構えると、木立から出てきたほうのワニたちに向け猛然と射撃を開始した。マシンガンのようにマグナム弾が発射され、七匹がバタバタと倒れた。
だがその集団のうち生き残った一匹がまだこちらに向かっていた。交差点からやって来た連中の先頭も二十メートルほどの距離に迫っている。
M二十九を右手に持ち替えると、ガンボットは再びハツミにM五〇〇を託した。ハツミがまた拳銃の薬莢を排出していると、ロボットは「頼む」と叫んでコートのポケットからスピードローダーを取り出して彼女のほうに放り投げ、木立から出てきた集団の最後の一匹の生き残りに向き直った。もう距離は五メートルもない。
そいつはシャーと威嚇音を出すと、ガンボットに向かって回転ノコギリを勢いよく振り回した。ガンボットは何度も横に飛びのいてこれを避け、右足を上げると相手を蹴倒した。ワニは電動ノコギリを取り落とし、不格好によろよろと後ろによろめいてばったりと倒れた。
ハツミはその間、目の前の地面に落ちたスピードローダーを拾い上げる。だが途端にラッチが解除され、マグナム弾がバラバラと地面に散らばった。「ああもうっ」ハツミは呻くと手を伸ばして、震える指で拳銃弾をつまみあげて一発づつ装填していった。ガンボットもM二十九を左手で持って弾倉を振り出し、ガンベルトから弾丸を取り出して装填しはじめる。だがワニは思いのほかの速さで立ち上がると両手を振りかざしてガンボットにつかみかかった。ワニが両手でガンボットの首をつかみ口を大きく開け噛みつこうとしたその刹那、六発装填し終わったロボットは弾倉を閉じ、銃身をワニの胸に押し当てて二発撃った。そいつは途端に全身の力が抜けたかのように膝から地面に崩れ落ちた。
だが、ハツミがやっと五発の拳銃弾をM五〇〇に装填し終わって目を上げた瞬間、交差点から来た敵の群れの先頭に立っていたワニが目の前に迫っていた。ワニはシャーと音を立てながらノコギリをハツミに目掛けて振り下ろしくる。ハツミは思わず首をすくめる。すると頭の上を何かが高速でかすめる音と銃声が二発同時にして、そのワニは途端に動きを止めた。さらに二発銃声がし、その後ろから続いていたもう一匹のワニの胸に二つの穴が開く。
「ハツミ!」二匹のワニが崩れ落ちると同時にガンボットの叫び声が聞こえた。ロボットがハツミに駆け寄ってきた。
残り十匹のワニたちがグエッグエッと声を立てながら回転ノコギリを振りかざして迫ってくる。 「ガンボット!」ハツミは叫ぶと、M五〇〇の弾倉を閉じ、両手で重い拳銃を持ってガンボットに放り投げた。ガンボットはM二十九を投げ捨て片手でM五〇〇を受け止めるとマシンガンのような速さで五発速射し、五匹のワニたちがバタバタと倒れる。だが残りのワニたちのうちの一匹がハツミに狙いを定めてノコギリを振り下ろしてきた。
ハツミが思わず息を呑んだ瞬間、ガンボットは飛び込み前転しながら彼女を抱き上げた。さっきまでハツミがいた地面に回転ノコギリの刃先が深く食い込んでけたたましい音を立てる。だが他の四匹のワニどもがノコギリを振り上げ四方から殺到してくる。
そのとき、ガンボットはハツミを抱えたまま高くジャンプした。
ハツミは一瞬後、自分が地上十メートルほどの高さにいることに気がついた。ガンボットのコートの裾が風を切るバタバタという音が聞こえる。宙がえりを打っているのだ。周囲の光景がぐるぐると回転し、どちらが上か下かわからなくなった。
次の瞬間、信じられないことにガンボットは空中でハツミから手を離した。
ハツミは、自分とロボットがジャンプの最高地点に達したあと、放り上げられたボールのようにくるくると回りながらゆっくりと地面に落ちていくのを感じた。だが重力の法則に従って落下の速度はみるみる早くなる。
うわわわわわわわわわわわわ
叫び声がハツミの口を突いて出た。ちらりと横を見るとガンボットは平然とした様子で拳銃の弾倉から薬莢を排出し、右手でポケットからスピードローダーを取り出して装填している。
地面がどんどん近づいてくる。地面に叩きつけられる衝撃を予期したハツミが目を硬くつぶり身を縮めた瞬間、ハツミは自分がロボットの片腕に抱き上げられるのを感じた。次に、耳を聾するほどの銃声が五回聞こえたかと思うと、ドン という着地音がした。
ハツミは目をぱちくりさせた。さっきまで真っ逆さまに落下していた自分が、今はガンボットの腕の中で再び静止している。周囲を見渡すと、どうやら戦闘は終わったらしい。 残りの五匹のワニたちがうつぶせになって倒れている。皆頭頂部に弾丸を喰らっていた。
「終わったぞ」ガンボットはハツミをそっと降ろすと言った。
「今回はちょっと危なかったな」ロボットは ヒュー という口笛のような音を出すと、左手で額を拭うしぐさをした。
「なんか吐き気がする」ハツミは地面に降り立ったあとも、頭がぐらぐらして真っ直ぐ立っていられなかった。
「それは済まなかった」ガンボットは言った。「君はジェットコースターは好きではないのか?」
「人を放り投げてからまた空中キャッチするジェットコースターなんてありえなくない?」だがハツミは文句を言うつもりで、かえって くっくっくっ と笑い出してしまった。
「もうあんたってやることがムチャクチャ過ぎてなんか笑っちゃうんですけど」
「俺は人間の常識には囚われない」ガンボットは大真面目に答えながらM五〇〇から空薬莢を排出し、新しい弾を装填した。「複数のミッションを同時に成し遂げるのに最適な行動をとったつもりだ」
「わかったわかった」ハツミは言った。「ありがと。またわたしの命を救ってくれたね」
「礼には及ばない。俺はプログラムに従ったに過ぎない」ガンボットはそう言いながら、足元にゴロゴロと転がったワニどもの死骸の一つを足でつついた。「肩にグランコミューの入れ墨がある。奴さんはおそらくこの近くに住んでいるんだろう」
「ガンボット、わたしやっぱり行く」ハツミは言った。
「なぜだ?」ガンボットはハツミのほうを見た。
「なぜって、わたしが行かなきゃいけないような気がするから」
「行かなきゃいけない、とはどういう意味だ?」ガンボットは尋ねた。「君は俺とは違って誰の所有物でもない。家に帰ることを選んだとしても誰にも責められる筋合いはないはずだ」
「わかってる」ハツミは言いよどみながらも言葉を探した。「でも、やっぱ行かなきゃって気がする。なんて言うか」
「何だ?」
「それがわたしのミッションって気がする」
「君のミッション?」
「そう」
「だが君は恐怖を感じているんだろう?」
「そりゃそうだけど」
「ならなぜ逃げない?」
「なんていうか、やらなきゃって気持ちのほうが強いから」
「人は二つ、あるいはそれ以上の異なる感情や衝動の間で揺れ動く生き物だということを書物で読んだことがある」ガンボットは独り言のように言った。
ガンボットは少し考えた後言った。「つまりこういうことか。君は、自らが自らの所有者として、全ての感情に優先するものと定義されるそのミッションを自らに与えたというわけか?」
「なんかよくわかんないけどそんな感じ」ハツミは同意した。
「書物によるとそれを『自由意志による選択』という」
「そうそう、それ。なんかパパが昔似たようなことを言ってた気がする。『自分でよく考えて選択しろ』って」ハツミは言った。「なんかそのときは全然意味わかんなかったけど。今はわかる気がする。自分で何かを選ぶってことが大人になるってことなんだね」
「俺は君がうらやましい」ガンボットは言った。
「え?」ハツミは相手の言ったことの意味がわからず聞き返した。
「俺は君がうらやましい。ロボットには自由意志による選択というものは存在しないからだ」ガンボットは、ハツミが放り捨てたスピードローダーと自分のM二十九を地面から拾い上げながら呟いた。
「うらやましいって」ハツミは言葉に詰まった。「じゃああんたが自分で自分のやりたいことを選べばいいじゃん」
ガンボットは何も言わなかった。その瞬間、ハツミははっとして自分の口を押えた。
どれほど人間くさいしぐさをしようと、ガンボットはあくまでもロボットなのだ。ハツミはいつの間にかガンボットが人間みたいに思えてきた自分に驚くと同時に、どれほど学習しようとも彼は決して人間にはなれないという事実に改めて気づき、何か自分が言ってはいけないことを言ってしまったような気がした。
ガンボットは足早にジープのほうに向かっていった。