小説 ガンボット 『神の子ら』の野望   作:nocomimi

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エピソード4 ミッション・ゼロ
泣くロボット


 

 「そのお方の名はデイヴィッド・ノヴァク博士。お前の父親だ」

 

 

 グランコミューは最後の力を振り絞ってそう言うと息絶えた。

 

 ハツミもガンボットも、しばらくの間黙っていた。ハツミとしては、ミュータントとはいえ人間そっくりの形をしたグランコミューが目の前で死んだことに重苦しい気分だったが、一方で、自分の「やるべきこと」の大詰めが予想よりはるかに早く近づいていると感じた。

 

 ハツミはガンボットの顔を見た。「いよいよだね、ガンボット 」

 

 「ああ」ガンボットは気の無い返事をした。「奴を叩けば君の言ったとおりミュータントどもはバラバラになるだろう」

 

 「デイヴィッド・ノヴァク博士?」ハツミはその名前を繰り返した。聞いたことがあるような気もするが思い出せない。

 

 「ねえその人誰だっけ?」

 

 ハツミにそう問われ、ガンボットはまるで辞典を読み上げるような口調で話しはじめた。

 

 「デイヴィッド・ノヴァク博士。千九百七十五年チェコ共和国生まれ、二千年にアメリカに帰化。人工知能およびロボティクスを専門とする科学者。特に人工知能の分野で画期的な発明を多数成し遂げ、ノーベル賞候補にもなった」

 

 「社会の授業で聞いた気がする」だがいつも社会の授業は落書きしているか、居眠りしているか友人とメモの交換で忙しかったのでなかなか記憶が蘇ってこない。

 

 ガンボットは解説を続けた。「ノヴァク博士は二千二十五年に反軍事行動自動監視・介入プログラム『アイゼヤ』を世界各国に配布した」

 

 「機械学習を利用したアシスタントソフトウェアに偽装し、このプログラムを世界中にばらまいた。このプログラムの利用者は政府機関関係者からインフラ運営会社まで広範囲にわたり、また旧ロシア、中東、アフリカにまで及んだ。このプログラムの隠されたコードが一度発動すると、各国の軍隊組織が軍事行動をとろうとするたびに、全てのインフラとネットワークはハッキングで機能を停止し経済は大混乱に陥った。やがてそれがその後二千二十九年国連により世界平和条約と国境廃止条約が採択される原因となった」

 

 「あ、そうそう。思い出した。たしかそんな人だったよね」ガンボットの説明を聞いたハツミはうなずいた。 

 

 「よく知らないけどその人って世界を平和にしたヒーローだったんでしょ?」

 

 「それはそれぞれの解釈による」ガンボットは言った。「軍隊が廃止され、戦争はなくなったが、テロ、暴動、組織犯罪などは続いた。低強度紛争はかえって世界各地で増加した。発展途上国では人々が猟銃やナタを武器に殺し合う事態もいまだに多い。軍隊がなくなったことで、むしろそれらの現象がより一層ひどくなったという議論もある」

 

 「わたしはよくわかんないや」ハツミは降参のポーズをした。「そういう話パパがよくするけどややこしいから眠くなっちゃう」

 

 「でもさ、その博士があんたの父親って言ってたよね?」ハツミは尋ねた。「ロボットに父親なんているはずないのに。どういう意味なんだろ?」

 

 「ノヴァク博士は昔マサチューセッツ工科大学で自律型人工知能の開発チームを率いていた。俺の電子頭脳プログラムはもともと彼の設計だ」ガンボットは言った。

 

 ハツミは息を呑んだ。「じゃあ、あんたを造った人ってこと?」

 

 「そうだ」ガンボットは答えた。

 

 グランコミューの体はもうピクリとも動かない。講堂のそこここに散らばるワニたちの死骸からくすぶる煙はとうに収まっていた。ハツミたち以外に周囲に動くものはなかった。完全に戦いは終わった。

 

 だが、いつもなら無駄な時間というものを嫌い、極力効率良く行動しようとするガンボットが、ノヴァク博士についての解説を一通り終えてしまうと、珍しくしゃべりもせず動こうともせず、立ち尽くしていた。

 

 ハツミもまた、すぐに動く気分になれなかった。

 

 自分を『神の子』や支配者と呼び、人間をペットにするなどと豪語していた嫌な奴だったが、やはりハツミにとってその死はあまり良い気分ではなかった。それと同時に、こんなものたちを勝手に造り出して野に解き放ったノヴァク博士に対するやるせない怒りがふつふつと湧いてきた。

 

 「なんでミュータントなんか造ったんだろ?」ハツミはガンボットのほうを見た。「その人平和を作りたいから一生懸命研究してたんでしょ?ほんとわかんないよね大人って」

 

 ロボットは動かなかった。

 

 「どう思う?」

 

 ガンボットは全くしゃべらず反応もしない。

 

 「ねえちょっと、大丈夫?」ハツミはロボットの肩を叩いて声をかけた。「もしもし。大丈夫?」

 

 ハツミは何度も何度もガンボットの肩を叩いたがそれでも動かない。

 

 「ちょっと、壊れた?」ハツミは不安が高まってきた。「ねえ、壊れてないよね。返事して?ガンボット?」

 

 すると突然、ガンボットは叫び始めた。

 

 両手を広げて天を仰ぎ、ガンボットは耳を聾するような音量で叫んだ。その声の激しさは 、まるでそれまで全く表すことのなかった感情というものが、実はロボットの中にも存在していて、それを押し止めていた堰が突然壊れてしまったとでもいうかのようだった。ハツミはただ口を開けてガンボットを眺めるしかなかった。

 

 ロボットが叫ぶなんて。その叫びは嘆きなのか、怒りなのか、それとも別の感情によるものなのかは分からなかったが、ハツミにはどこか、獣の遠吠えのような、物悲しい響きが感じられた。

 

 

 おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお

 

 

 ガンボットは一分間もそうやって叫び続けただろうか。声が講堂中にこだまし、ガンボットが本当に壊れてしまったのではないかとハツミがパニックになりかけてきたとき、叫び声はぴたりと止まった。

 

 

 「ガンボ……ット?」ハツミはおずおずと呼びかけた。「ガンボット。大丈夫?」

 

 「大丈夫だ」ガンボットは全く何もなかったのような声で答えた。

 

 「どうしたの?」

 

 「何か俺に異常があったのか?」ガンボットは聞き返した。

 

 「だって」ハツミは絶句した。「もしかして覚えてないの?」

 

 「グランコミューは死んだ」ガンボットは質問には答えずに言った。「危険は排除された。ハツミ、君の仕事を始めるべき時だ」

 

 「仕事?」

 

 「誘拐された人間の捜索と救助だ。君が君自身に課したミッションだろう?」

 

 「そうだね」ハツミは答えた。「じゃあ探そう」コンピューターは誤作動するときがあるとお兄ちゃんが前言っていたことを思い出し、ハツミは目の前のやるべきことに集中することにした。

 

 「あいつが出てきたところ」ハツミはグランコミューが出てきた回廊に続く出入り口を指差した。「怪しくない?」

 

 「奥にグランコミューの部屋があるとしたら、重要なものや情報はその近くにあるはずだな」ガンボットはハツミの考えを読み取るように言った。

 

 「そう。それにあいつ人間のことを『ペット』って言ってたから、捕まえた人間は自分の目の届くところに置くはずだと思う」

 

 ハツミとガンボットが回廊を進むと、すぐそれは地下に降りていき、左右に分かれた右手にはがっしりとした扉、左手には鉄製の格子がはまった部屋があった。牢屋だ。

 

 ハツミが牢屋を覗きこんでみると、その中には十人ほどの男たちが力なく座り込んでいた。みなひげをぼうぼうにはやして、体はやせ細り目はうつろで、重労働をさせられてきたのか手足は泥だらけだった。

 

 牢屋からただよってくるひどいにおいを我慢しながら、ハツミはガンボットに扉をこじ開けさせ、囚人たちにスペイン語で呼びかけた。

 

 「みなさん、もう大丈夫です。あいつらはいなくなりました。みなさんはもう自由です」

 

 男たちは最初わけがわからずポカンとした顔をしていたが、やがて若い者たちから順番に事態を飲み込んで、たがいに顔を見合わせて抱き合い、喜びあった。そして、あの老婆にそっくりな顔をした初老の男が、若者たちに肩を抱かれ立ち上がりやっと笑顔を浮かべると、ハツミはガンボットにハイタッチした。

 

 ハツミとガンボットは車から食糧と水をありったけ持ってくると解放された囚人達に配った。男達は食事しながら皆口々に、この山で家畜に草を食べさせていたら突然誘拐されたと話した。家畜は全てミュータントたちに喰われたという。そしてガンボットが推測したとおり、彼らはレンガ焼きや建築の労働に使役されたと話した。昼は一日中働かされ、夜から朝までは牢に閉じ込められていたらしい。

 

 ハツミが男達と話している間、ガンボットは建物群をくまなく捜索した。残されたミュータント虫を片付けているのか、銃声が散発的に聞こえる。一時間ほどすると戻ってきて、何枚かの書類をハツミに示した。英語で書かれている。

 

 「何これ?」

 

 「グランコミューの部屋にあった。計画書だと思う」

 

 「なんて書いてあるの?」ハツミには読んだこともないような形式の書類だった。

 

 「奴らの本拠はここから東の方向にあるエル・ミゲル近辺だ。ここグラナドスには出張所のようなものを作る計画だったようだ。そして周辺で人間を誘拐したり物資を強奪して一旦ここに集積し、最終的には本拠に移送する」

 

 ガンボットは書類の中から地図を一枚引っ張り出すと、地下牢の床に広げ、指でいくつかの地点とそれを結ぶ線をなぞった。確かに、川沿いに砦を示す印があり、その東へだいぶ離れた場所に、大掛かりな施設を思わせるマークが印刷してある。

 

 「やっぱり、あんたの言ったとおりやつらはミュータントと人間を混ぜて進化させるつもりだったのかな?」ハツミは尋ねた。

 

 「そのようだな。書類には『ネフェリム計画』と書いてある」

 

 「何?何それ?ネフェ?」ハツミは聞き返した。

 

 「『ネフェリム』というのは旧約聖書に出てくる巨人のことだ」ガンボットは言った。「その昔、『神の子ら』は人間の娘たちが美しいのを見てそれぞれが好むものを妻にした、とある」

 

 「あんた聖書なんか読んだことあるの?私そんなの初めて知った」ハツミは驚いて尋ねた。

 

 「俺が聖書を読んだのは人間の考え方を理解するためだ。アメリカ大陸では多くの人間が聖書を読むからな」

 

 「それで、そのあと聖書ではどうなったの?」

 

 「地上には『ネフェリム』が現れた」ガンボットは言った。「博士は、グランコミューをその『ネフェリム』の最初の一人に見立てたのだろう。奴のような者を次々と世に送り出し、やがては人類を支配させるのがノヴァク博士の狙いだったのだな」

 

 ガンボットは淡々と説明したが、それを聞いたハツミはたとえようもない恐ろしさに寒気がした。

 

 しばらくぶりのまともな食事をしたことで、男達は少し元気を取り戻したようだったので、ころあいを見計らうとガンボットはハツミとともに白髪頭の男や、その他脚をひきずっていた者何人かを乗せてジープで下の村に向かった。

 

 歩く元気のある男たちは徒歩で降りていき、結局その日の昼までには全員があの老婆がいた掘っ立て小屋にたどりついた。

 

 男達の歓声を聞いて小屋から出てきた老婆は最初信じられないという顔をしていたが、やがてひげぼうぼうの群れのなかに自分の息子や孫たちの顔を認めると、大きな声をあげて皆と抱き合った。

 

 次に老婆はおいおいと泣きながらハツミにとりすがった。「あんたがたは神の使いじゃ。なんと、なんと礼を言っていいか」 老婆はハツミの顔を見上げると言った。

 

 「おばあさん、いいんですよ、当然のことをしただけですから」天使とまで呼ばれてハツミは居心地が悪かったが、老婆はなかなか離してくれなかった。

 

 その日の夜、以前はミュータントにおびえてはるかふもとの町まで逃げていた女たちが、朗報を聞いて村に戻ってきた。女たちは手に手に食べものをたずさえており、久しぶりに村のかまどに火を入れ、料理をふるまってくれた。

 

 料理を食べながら、なまりの強い村人たちのスペイン語を聞き取ってなんとか会話を成立させようと苦闘するハツミの傍らでは、ガンボットが焚火を前にして座り、男たちと雑談していた。男たちはしきりに酒を勧めたが、ガンボットは「俺はロボットだから酒は飲まない」と何度も断っていた。

 

 しかし、男たちは酔いが回っていて聞いたことをすぐ忘れてしまうのか、何度も何度もガンボットに酒を勧めていた。それとも彼らはロボットという言葉自体を理解していないのかもしれない。ガンボットは、それに嫌気がさしたのかついと席を立っていなくなってしまった。

 

 ハツミもまた、村人たちの歓迎を楽しみつつも、ミュータント砦への潜入で神経が疲れていたので、もはやスペイン語の会話に集中するのが難しくなってきていた。ハツミが席を立ちジープの置いてある村のはずれに向かうと、ガンボットは川岸の縁に立ってミュータント町のあった山のほうを眺めていた。夜空はまたたく星々で埋め尽くされていた。

 

 

 「お疲れ」ハツミはロボットの肩に手を置いた。「やっぱここにいたんだ」

 

 「見張りをしていた。連中の生き残りがまだうろうろしているかも知れない」

 

 「ねえ、あんたってさあ、ああいう場、苦手でしょ」ハツミは聞いてみた。

 

 「ああ。数人が一度に話すのを聞き取ろうとすると処理エラーの確率が倍増する」ロボットは答えた。

 

 「わたしも。なんか疲れちゃうんだよね」

 

 「君は疲れているはずだ。テントを張ってあるから休むといい」

 

 「うんそうする。あんたは?まあ寝る必要はないんだろうけど、少しは休んだら?」

 

 「俺は見張りを続ける」ロボットはこちらを見ることもなく答えた。

 

 「ねえ、どうしてあのとき泣いていたの?」ハツミはガンボットの顔を見上げて尋ねた。

 

 「泣いた?」ロボットははじめてハツミのほうを向いた。

 

 「泣いてたじゃん。おおおおおおんって」

 

 「あれはエラー信号だろう」ガンボットはまた山の方向に向き直った。

 

 「エラーって」ハツミは思わず噴き出し、ロボットの脇腹をひじでつついた。「あんた、もしかして恥ずかしがってんの?」

 

 「そもそも俺は泣くということがわからない」

 

 「そりゃそうでしょ。生まれて初めて泣いたんだから」

 

 「あれが泣くということなのか」

 

 「そう、たぶんね」ハツミは改めてロボットの肩をたたいた。「ショックだったんでしょ?まさか自分を造ってくれたひとが敵のボスだったなんて」

 

 「父親だ」

 

 「父親って、もののたとえでしょ」

 

 「いや、あながちそうとばかりも言えない。確かに父親とも言える」

 

 「なにそれ?どういうこと?」

 

 「ハツミ、君が信じるかどうかは知らないが、造られた当時、俺のプログラムは数世代先をいくきわめて画期的なものだった」ガンボットは回想するように少し上を向いた。

 

 「俺は個性を持つようにプログラムされているんだ」

 

 「個性?ん、まああんたってむちゃくちゃ変人――じゃなかったヘンなロボット――なのは確かだけど。それがどうして画期的なの?」

 

 「人間は生活していくなかで一日に数十回といった決断をするという。この、瞬時に決断を下すという作業は本来人間に特有の能力で、機械は本来これを苦手としている」

 

 ガンボットはハツミのほうを向いた。「なぜだと思う?機械は全ての情報を客観的に評価するが、人間は好き嫌いで判断するからだ」

 

 「好き嫌い?」ハツミは首をかしげた。「わたしはパパによく好き嫌いするなって言われるけど。ないほうがいいとおもってた」

 

 「むしろ、好き嫌いがあるからこそ人間は素早い判断ができる」ロボットは言った。「俺の頭脳はそれまでのロボットにはない自律的な行動能力を備えられるようにするため、その好き嫌いを持った人間のパーソナリティを模倣して設計されたらしい」

 

 「へえ、だからあんたっていっつもずけずけモノを言うんだね」ハツミは腕組みして納得した。「好き嫌いがはっきりしてるってわたしもよく他人に言われるけど、あんたには絶対負けるわ」

 

 「ノヴァク博士には息子がいたらしい」ロボットは無視して一方的に話し続けた。「スティーブンといって、アメリカ軍の兵士だったが、中東の紛争地で作戦中死亡したという。優秀な男だったと記録されている。墜落し炎上したヘリから仲間を助け出そうとしたらしい」

 

 「それがあんたのプログラムとどう関係あるの?」

 

 「自律型人工知能ロボットの頭脳を作るに際して、博士はそのモデルとして息子を採用した」ロボットは淡々と話し続けた。

 

 「スティーブンの、生まれてから死ぬまでの全ての画像、動画、彼の書いたもの、その行動の記録、周囲の人間の証言。そういった全てを集めた膨大なデータを人工知能に学習させ、いわば疑似的な人格を電脳上に再現した」

 

 「え?」やっと話を理解し始めたハツミは息をのんだ。「じゃあまさかあんたって……」

 

 

 「そう、それが俺だ」ガンボットは言った。

 

 

 ハツミはしばらく黙っていた。ガンボットと話していて、いかにも機械らしいことを言うかと思えば、異様に人間くさいしぐさやせりふに仰天させられることもあった。それにはこういうからくりがあったとは。

 

 「じゃあ、じゃあ……」ハツミはやっと口を開いた。「ノヴァク博士って、あんたにとっては」

 

 「父親だ」ロボットは迷いなく答えた。

 

 ガンボットは少し口をつぐむと、上を向いて言った。「公園で遊ぶ幼い男児と、見守る男。学校の門の前で少年と並んで立つ男。フットボールのユニフォームを着た青年の肩を抱いて立つ壮年の男。俺の初期メモリーはそういった画像で埋め尽くされている。それがノヴァク博士だ」

 

 ハツミは黙って聞いていた。

 

 「そういうわけで俺はノヴァク博士を父親と認識している。そのように造られているのだ」

 

 ハツミは長い間黙っていたが、やがて恐る恐る聞いた。

 

 「で、どうするの?」

 

 「もちろん行くさ。エル・ミゲルにな」

 

 「それで……?」

 

 「君が提案した方法をとると効率的に奴らを狩ることができるとわかった。だからエル・ミゲルでも同様の結果になるだろう。危険は大きいが戦果もまた大きい」

 

 ガンボットはまた山のほうに顔を向けた。

 

 「行くのは早ければ早いほど好都合だ。時間が経過するほど奴らは防備を固める。その前に突入して殲滅するのがいい」

 

 「でも、博士はどうするの?」

 

 ガンボットはしばらく考えていた。

 

 「その話はもう明日にしよう」ガンボットは話題を打ち切った。「ハツミ、君はとても疲れているはずだ。早く寝たほうがいい」

 

 「わかった」ハツミは素直に言った。「おやすみ、ガンボット」誰かから早く寝ろと言われて素直に早く寝るなんて自分でもありえないと思ったが、なぜかこのときは逆らう気になれなかった。

 

 「おやすみ、ハツミ」

 

 

 ガンボットの声を背に聞きながら、ハツミはぼんやりとしたランタンの明かりに内部を照らされたテントの中に入った。歯を磨いてしまうと、そのまま、ランタンを消さず寝袋に入り考え事をした。

 

 ミュータントを狩るというミッションを続けていれば必ずノヴァク博士と対峙する必要がある。ガンボットは父親である博士もまた撃つのだろうか。そのことを考えていると、ハツミの気分は重く沈み、なかなか寝付くことができなかった。

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