ニューヨーク・タイムズ 二千三十〇年〇月〇日 朝刊
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賢すぎるワニ『ビリー』は人間との混血なのか
ニューヨークで開かれた国際生命科学学会で、遺伝子改良されたワニ『ビリー』が元マサチューセッツ工科大学教授デイヴィッド・ノヴァク博士によって発表された。アリゲーター科の一歳のワニ『ビリー』は、人間の声に従って指定されたボタンを押したり、複雑な迷路を解くなどの実演を行い、チンパンジーに匹敵するほどの知能があることを証明した。学会終了後、ノヴァク博士には『ビリー』の遺伝子の由来について記者の質問が集中し、多くの記者が『ビリー』には人間の遺伝子が混じっているのではないかと疑った。ノヴァク博士は詳細を答えず、『ビリー』の研究が人類の問題解決につながるかも知れないとの言葉のみを残して会場を去った。
『ビリー』の出現については、懸念を示す科学者も存在する。生命倫理学の専門家ニック・ゴードン教授はこう話す。「『ビリー』がもし人間の遺伝子を持っているとしたら、我々は大きな問題に直面することになります。人間の遺伝子を動物に導入することは以前から行われていましたが、あくまでもその動物にある特定の機能を果たさせるためであり、『ビリー』のように全く別種と言っていいほど性質の異なるものを生み出すためではありません。『ビリー』の誕生は将来モンスターを造り出すことにつながりかねません。我々人類はまだ、動物の『種別』を超えるものが生み出されたとき何が起こるかということについてほとんど知識を得ていないのです」
ノヴァク博士は人工知能の大家でもあり機械学習を応用して遺伝子配列の意味を解明するという快挙を成し遂げた。また、世界百九十カ国の軍事行動を監視し紛争を抑止する自動プログラム『アイゼヤ』の開発者としても知られている。だが現在ノヴァク博士はメキシコに居を移しており、その研究拠点の場所は公開されていない。ニューヨーク・タイムズは、生命科学学会を通してワニの『ビリー』の遺伝子構成についてノヴァク博士にコメントを求めたが、現在まで博士からの返答はない。
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