こどものかみさま、かんなさま   作:龍翠

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 社に戻ってかんな様に報告すると、かんな様の頬がほんの少しだけ引きつった、ような気がします。

 

「募金とかは知らなかった。そんなところからお金が出てたんだ……」

 

 どうやらかみさま募金についてはかんな様も知らなかったようです。きっと昔の人がかんな様への感謝を形にしようと始めたものなのでしょう。それがずっと続いている、というのはとても素敵なことだと思います。

 

「かんな様の人望ですね」

 

 昔からずっとかんな様はここの人たちに感謝されて、親しまれているのでしょう。やっぱり私のかみさまはとても素敵なかみさまです。ですが、それを聞いたかんな様は、珍しくはっきりと困惑の色を浮かべました。

 

「そんないいものじゃないんだけどね……」

「かんな様?」

「何でも無い。ここの町の人は物好きだなって思っただけ」

 

 すぐにかんな様は無表情に戻して手を振ります。ただ、その仕草は少し悲しげですらありました。何か、声をかけた方がいいのだとは思いますが、私には何を言っていいのか分かりません。私はかんな様の昔のことなんて何一つ知らないから。

 

「まあ、それよりも。明日でいいの?」

 

 気を取り直したようにかんな様が言います。私は逡巡しつつも、頷きました。

 

「はい。明日の朝九時にここ集合でどうでしょう?」

「集合も何も、私はずっとここにいる」

「あ、そうでした。じゃあ九時出発ということで」

 

 ついつい、友達と同じような感覚で約束をしようとしてしまいました。幸い、かんな様は特に怒るようなこともなく、淡々と頷きました。

 

「ん。せっかく行くんだし、期待しておく」

 

 あれ? なんだか、さらりとハードルを上げられたような気がします。本屋さんに行くだけのはずだったんですが……。

 

「ま、任せてください!」

 

 ただ、後に引くこともできず、結局私は自分の胸を叩いていました。

 

 

 

 翌日。いつもの時間に家を出て、いつも通りに社やその周辺の掃除をしておきます。いつも通りに来た私にかんな様は呆れているようでした。ただ、これは時間をずらすことができないことなので、仕方がないのです。遅くにしてしまうと、部活の人に見られる可能性があります。

 

「週末ぐらい休めば?」

 

 かんな様はそう言ってくれますが、私は首を振りました。私が好きでしていることです。

 掃除を終えて、かんな様と一服。おにぎりを頬張るかんな様の隣で、私は頭の中で計画を思い出します。昨日の夜の間に、しっかりと計画を練っておきました。お昼ご飯の場所も決めています。予算が限られているのでファミリーレストランですが。

 

「さつき。出発は何時にするの?」

「九時ですよ。早くに行っても、本屋さんが開いてません」

「ん……。そっか」

 

 心なしか、かんな様が残念がっているような気がします。お出かけを少し楽しみにしてくれていたのでしょうか。もしそうなら、嬉しいのですけど。

 

「それじゃあ、少し早めに出てコンビニでも寄ってみますか?」

「コンビニ?」

 

 あ、かんな様の目がちょっと輝いたように見えました。どうやら興味を示してくれたみたいです。私は頷いて言います。

 

「はい。そこにも雑誌ぐらいなら置いていますから、暇つぶしとかもできるかもしれません」

「ん……。行く」

「分かりました」

 

 かんな様の視線が持っている本に向かいます。先ほどよりも、少し機嫌が良いように見えます。もっとも、表情の変化は相変わらずないので、気がする程度の違いしかありません。

 ともかく、少し早めに出てコンビニに向かう、という新しい予定ができました。私は頭の中で計画に微修正を行いながら、残りの時間はのんびりと過ごしました。

 

 

 

 部活の人のお参りを木の陰からこっそり見守ります。かんな様は社の前で、お参りをする生徒をじっと見つめています。この時のかんな様はとても凜々しく見えます。

 何人かの生徒は、次の試合で勝てますように、といった願い事をしていきます。かんな様はそういった願い事を聞くと、聞こえないと分かっているためか簡潔に答えを言っていました。

 

「知らない。自分でがんばれ」

 

 今日もそういった返答をこっそりと行っています。お参りが一段落すると、かんな様は私が隠れている木へと振り返り、肩をすくめました。どうやら今日はかんな様が直接叶えるようなお願い事はなかったようです。

 かんな様の元へと戻りながらスマホを取り出して、時間を確認します。八時を少し過ぎたところでした。あまり早く行き過ぎると本来の目的の本屋さんが開いていないので、コンビニの寄り道はどうやら正解のようです。

 

「もういいんですか?」

 

 念のため、かんな様にそう聞いておきます。おそらく夕方まで戻ってこないことも伝えると、かんな様は少し考えながらも、しっかりと頷きました。

 

「問題ない。早く行こう」

 

 かんな様がちらちらと校門の方を見ています。どうやら私が思っている以上に楽しみにしてくれているようです。嬉しく思いつつ、それ以上にプレッシャーを感じながらも、私は分かりましたと頷きました。

 

「では行きましょう!」

「おー」

 

 かんな様が可愛らしく手を上げます。ですが、いつもの無表情なので不気味なだけです。少し頬が引きつっていることを自覚しながらも、私は裏門へと歩き始めました。

 

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