こどものかみさま、かんなさま   作:龍翠

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エピローグ
こどものかみさま


 新学期。私は二年生になりました。新入生も入ってきて、私は先輩になりました。そして待ちに待った巫女の後輩も……!

 

「あ、あの、かんな様。そんなに落ち込まなくても……」

「落ち込んでない。やけ食いしてるだけ」

「落ち込んでるってことじゃないですか……」

 

 入学式の後、かんな様は社の前でお供えのお菓子を食べ漁っています。すごい勢いです。

 残念ながら、今年の巫女候補には断られてしまったそうです。今年も巫女は私だけになりました。少し寂しくはありますけど、何かを教える経験なんてなかったのでちょっと安心していたりもします。

 

「ご時世ってやつなのかな……?」

「最近は色々と厳しいって言いますからね。私もよく分かりませんけど」

「んー……」

 

 かんな様が私のことをじっと見つめてきます。私が首を傾げると、かんな様が立ち上がって社に入っていきました。すぐに戻ってきて、紙を一枚、差し出してきます。

 

「何ですか、これ?」

「ん。雇用契約書」

「こよう?」

「雇用」

 

 なんだか、聞き慣れない言葉を聞いているような。いえ、知っている言葉なのですけど、中学生の間はまず関係ない言葉のような。読んでみると、労働条件とか労働内容とか勤務場所とか書かれています。労働条件は応相談になっていて、労働内容がかんな様のお世話で、勤務場所か社の周辺を含むこの町。

 はい?

 

「簡単に言ってしまえば、私の巫女として就職しない? ということ」

「いや、えっと……。え? でも、あと卒業までですよね?」

「んーん。卒業後もずっと」

 

 卒業後。ずっと。それは、想像もしていませんでした。お別れが少しずつ近づいていると思っていたのですが、この言い方だと、気にせずに続けられるような……。

 

「ん。続けられる。ちゃんとした神格があるから、神力にも余裕がある。だから大丈夫」

 

 それに、とかんな様が続けます。

 

「毎年毎年、一人になるかもしれないって不安になるより、さつきがずっと側にいてくれるって分かっている方が、気が楽」

 

 だから、どう?

 かんな様が小首を傾げて聞いてきます。予想もしていなかった問いかけです。ずっと続けられる。かんな様と一緒に。

 

「もちろん、強制もしないし、今すぐ決める必要もない。他にやりたい仕事があるなら断ってもいいし、結婚する時にやめるとかでもいいし……」

「やります!」

「ん……。いいの?」

 

 愚問です。愚問すぎます。ええ、いいです。もちろんです。私が笑顔で頷くと、かんな様も嬉しそうに笑ってくれました。

 

「ありがと。まあでも、まだ卒業まで時間はあるから、しっかり考えておいてね」

 

 かんな様がそう言ってくれますが、もう私の中では決まっています。卒業の後も巫女を続けられる。それだけで、私はとても幸せです。

 私の笑顔を見ていたかんな様は、

 

「ん……。聞いて良かった」

 

 とても可愛らしい素敵な笑顔でした。

 

   ・・・・・

 

 その町の学校には神様の住む二つの社があります。一方はこの土地を守る龍の神様が住む社で、もう一方はこの土地の子供を見守る神様の社です。この二つの社は、たった一人の巫女が毎日丁寧に掃除をしています。

 

 子供の神様はかんな様と呼ばれています。ずっと昔、この村の始まりの頃から私たちを見守ってくれている神様です。巫女はこのかんな様に直接選ばれるとされていて、今の巫女はとても明るく、優しい人だとご近所さんでも評判です。社の掃除が終わった後は、かんな様と巫女は社の前で寛いでいるそうです。

 

 もし、君に悩み事や相談したいことがあるのなら、巫女を訪ねてみると良いでしょう。とても優しい彼女なら、貴方の悩み事に真摯に向き合ってくれます。解決に向けて、一緒に考えてくれることでしょう。

 

 もし、君だけではどうしようもないことがあるのなら。がんばってもがんばっても、それでも解決できないことがあるのなら、かんな様を訪ねなさい。君が子供である限り、かんな様は君を助けてくれます。巫女と一緒にかんな様を呼びなさい。そうすれば、きっと。

「ん……。いいよ」

 そんなのんびりとした、けれどとても安心できる声が聞こえてくるはずです。

 君が子供である限り、かんな様は君を守り、助けてくれることでしょう。

 

 

 かんな様は、君たちの、こどものかみさまなのですから。

 

 

                                   

 

 了




壁|w・)最終話でした。最後までお付き合いいただきまして、ありがとうございました。
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