こんな一発ネタじみた物の為に…!
凄まじい衝撃波で吹き飛ばされたシュタルク達は地面へと落下していく。
ディエゴはザ・ワールドで落下の衝撃を受け止め、シュタルクの方は飛行魔法で飛んでいたフェルンに間一髪で回収された。
「な、何が起こったってんだ…!?」
粉微塵になった屋敷の惨状を見て開いた口が閉じないシュタルク。
フェルンも動揺を隠せないでいた。
―これは「スタンド攻撃」…!!
―間違いない…あの小娘、リーニエとかいう奴……「遺体」の一部を持っている!!
一番エネルギーを感じたのは彼女の胸部。
即ち持っているのは遺体の心臓か脊椎の部分である可能性が高い。
「だが…何故だ…!?ありえん!!」
彼の知る「聖人の遺体」は、前世彼が最後に戦っていた「基本世界」にしか存在しない。
にも関わらず、遺体は確かにこの世界にも存在していた。
聖人は死後に奇跡を齎す存在。
どうやって手に入れたかは知らないが、それはリーニエにスタンドという奇跡を与えたのだ。
「お前ら!奴を迂闊に攻撃するな!!どんな能力を使ってくるか分析するんだ!!」
スタンド使い同士の戦いで重要なのは相手の能力とその弱点を知る事。
どんなスタンドにも必ず弱点が存在する。
それで「基本世界のディエゴ」も大統領を追い詰めたのだ。
やがて粉塵は晴れ、中から人影が見える。
間違いなくリーニエだった。
「私一人になった……けどアウラ様の為、この戦い…必ず勝つ…!!」
その時のリーニエの精神は、魔族らしからぬ勝利への執念と闘志に満ちていた。
何故ここまで気持ちが昂るのか、彼女自身分からなかった。
ただ、自分が守りたいと思う者の為に彼女はスタンドを発現させたのだ。
「使い方、何となく分かる…!!」
そう言いながらリーニエが腕を振るうと、先程と同じような空気の震えが始まった。
「来るぞ!!」
シュタルクの掛け声と共に3人はその場から飛び退く。
数秒後、3人がいた場所は凄まじい衝撃波で地面が抉れた。
屋敷の庭園まで退避した彼らは標的を絞らせないように散開し、リーニエの様子を伺う。
その間にもディエゴは彼女のスタンド能力について考察を行っていた。
―衝撃波が発生した時、飛来物は何も無かった…つまり、アレは衝撃波だけを発生させるスタンドか?
ある程度推測を立て、ディエゴが先に動き出した。
「先ずは奴のスタンドの射程を測る…!」
素早く、されど用心深く走り寄り、彼女が攻撃してくるタイミングを見計らう。
ある程度の距離まで近付くと、彼女から衝撃波が撃ち出された。
―射程は20〜30mって所か。
大体の射程を把握したディエゴは衝撃波が到達する前に時間を止めた。
その間に側面に回り込みながら3方向から魔法で火球を3発放った。
5秒後、彼女の目の前に現れた火球だったが前方の1発は直撃する前に衝撃波で吹き飛ばされ、残りの左右から来た2発は跳躍で躱した。
ここでディエゴは敵スタンドの弱点が明らかになったと確信した。
―やはり…奴は一度に1つしか衝撃波を発生させることが出来ない!
「そこの戦士!奴の攻撃を誘導してくれ!!」
「お、おう!!」
「私も援護します!」
フェルンがゾルトラークによる援護射撃でリーニエの動きを制限し、その間にシュタルクとディエゴが距離を詰めた。
特にディエゴは魔法がロクに使えない以上、ザ・ワールドの射程内に彼女を収めなければ勝ち目が無い。
次に攻撃すべきタイミングは、リーニエがシュタルクに攻撃を仕掛けた瞬間だ。
シュタルクはディエゴよりも足が速く、一足先にリーニエに肉薄した。
「…来る!」
予測通り、リーニエは最も距離が近いシュタルク目掛けて衝撃波を放つ。
「ザ・ワールドッッ!!時を止めろッ!!」
衝撃波がシュタルクを吹き飛ばす直前に時間を止めた。
既にリーニエを射程内に収めたディエゴは、シュタルクを安全圏へ突き飛ばしリーニエの元へ向かった。
無防備な彼女の前に立ち、胸部へ狙いを定める。
「貴様に、「それ」は不釣り合いだッ!!」
容赦無く胸にザ・ワールドの右手を突き刺し、中にある物を抉り出した。
引き抜いた手の中にあったのは、血に塗れた「干からびた心臓」。
間違いなくそれは聖人の心臓であった。
時が動き出すと、胸を貫かれたリーニエは大量の血を吐きながらその場に力無く倒れる。
シュタルクは突然見えない何かに突き飛ばされて地面に頭を打ち、昏倒している。
フェルンは干からびた心臓を右手に持つディエゴを不審な目で見ている。
「まさか本当にあるとは…だが確かに手に入れた…!」
喜びの余り高笑いをしそうになった時だった。
「気を付けて下さい!!まだ生きています!!」
それに気付き、ディエゴが振り向く頃には既にリーニエは攻撃を繰り出していた。
「
刹那、ディエゴの右腕は彼女の持つ巨大な戦斧によって切り飛ばされていた。
「WRYYYYYYYYAAAAAAッッ!!!?」
断末魔を上げながら肘から先を失った右腕を抑えるディエゴ。
苦悶の声を上げつつも反撃しようとしたディエゴだったが、戦斧による更なる連撃で胴体を切り裂かれた上に、飛び蹴りを腹に食らい後方に吹き飛ばされた。
「これは、渡さないッ…!!」
心臓を大事そうに握り締めるリーニエ。
奪い返す事は困難かと思われたが、真っ先に動き出したのは地に伏しているディエゴだった。
―奴の手に渡るくらいならッ!!
「ザ・ワールドッ!!」
停止した時間の中、残された力で彼女の右腕にナイフを2本投げる。
5秒後にナイフは彼女の右腕に狙い通り刺さり、思わず彼女は心臓を取り落とす。
その隙にディエゴは「物を浮かす魔法」で事前に浮かせておいた彼女の背後にある瓦礫に向けて「物を引き寄せる魔法」を放つ。
すると、引き寄せられた瓦礫が5秒後には心臓を弾き飛ばしていた。
瓦礫は弧を描きながら飛んでいき。
そしてちょうどそこで伸びているシュタルクの胸元へ着地した。
「何イイィッッ!!?」
遺体の心臓はシュタルクの胸の皮膚を捲るようにして潜り込んでいき、完全に彼の一部となってしまった。
シュタルクが、遺体の力を手にしてしまったのだ。
「しゅ…シュタルク様…!?」
「待て!まだ下手に近付くな!」
リーニエですら一時的に戦いを忘れ、未だ動かぬシュタルクに目を見張っている。
そして、彼の体が一度ドクンと跳ねた。
目をゆっくりと開き、上体を起こすと周囲をこれまたゆっくりと見渡し少し考える素振りを見せ立ち上がった。
「シュタルクさ……ま…?」
取り敢えずシュタルクが生きていたことに歓喜したフェルンが走りよろうとするがある違和感に気付いた。
立ち姿が、表情が、仕草が。
シュタルクではない。
右手の平で前髪を撫でるような仕草。
表情からは常人離れした「覚悟」を感じる。
ディエゴはその仕草と表情に見覚えがあった。
彼はディエゴの姿を見て何か頷くと、彼らに向かって両手を大きく広げた。
「どジャアァぁぁぁン」