死ねと言われたので死んでみた   作:高菜太郎

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無限ループって怖くね?①

 

 「飽きた」

 

 念仏を唱えるような声と、黒板をチョークで叩く音

 そこにいる者の大半がその声に耳を澄ませながら、ペンを片手にノートへ黙々と文字を書き連ねる。

 

 そんな中、静寂を突き破る声。

 それは僕にとっては産声のような、はたまた欠伸のような何とも言い難い声色。

 

 その表現はどちらも正しく、これまでの日々は夢かと錯覚するほどまでに消え行き、新しい世界が始まったからだ。

 

 「───?」

 

 「───」

 

 「──────ッ!」

 

 ()()()()()()人々がこちらを眺めながらヒソヒソと小話を始め、壇上に立つ教員が一瞬は惚けたかのような表情浮かべたかと思えば、青筋を浮かべながら何かを叫んでいる。

 

 見飽きたという言葉も使い古された年代物に感じさせるほどの日々。

 

 何万、何億、ひょっとすると百回くらいかもしれない。

 

 とにかく数えるのが億劫になるのを通り越して、最早関心すら示せなくなってきた程に繰り返してきたループの起点。

 

 文字通り、親の顔より見た光景というやつだ。

 いや親というか家族の顔も忘れたから、あらゆる全てが親の顔より見た扱いになるのか?

 

 まあいいか。

 

 そんなこんなで僕は所謂タイムリーパーだ。

 

 原因は知らない。

 どういう訳か今日から3日後、僕は強制的に記憶を保持したまま、今日に戻される。

 

 3日間で輪を閉じて完結する世界と考えれば分かりやすいかな?

 

 ちなみにこんな感じでモノローグしてるのは最近の遊びさ。

 何せ時間は無限にあるし、とてつもなく暇なんだ。

 

 いやね、初めの頃は何とかループから抜け出そうとね。

 うん、頑張ったんだよ?

 

 ホントだよ?

 

 

 いや、まあ諦めてゲームだったり映画鑑賞だったりに耽ってた時期もあるよ。

 ほんの数百年くらいの話だし、忘れてきた頃にもう一回やっても、連続でやってもスルメみたいに楽しめるから結構……いやかなり時間を潰せたよ。

 

 けれどあくまで娯楽(それ)娯楽(それ)

 

 僕以外誰も覚えてないけど、何度もループを抜け出そうと試行錯誤したのは確かだ。

 

 非日常的な行動をとってみたり……例えば銀行強盗とか、殺人とか色々やったし、街中でいきなり人を殴ったり、全裸で走り回ったり、実家に火をつけたりしたよ。

 

 最初は罪悪感が癖になって楽しかったんだけど、今じゃ無味乾燥としたものだね。

 

 何というか罪の意識が薄れてるのかな?

 

 ニュースで全く知らない人が死んでるのを聞いても何も感じないように、僕は僕以外を完全に()()と感じてしまったワケ

 

 この世には人間は2種類いる。

 僕と、それ以外キリッ!

 と平気で言えるくらいには感受性諸々がご臨終している。

 

 今でもみんなの前でオットセイの真似をするくらいは余裕だね。

 

 というか偶には学校で暴れるのも良いね。

 前は確か何したっけ?

 

 確か……ああ!そうだ!

 

 初日でこっそり学校内に残って前教室でバリケードを作って休校にしたんだった。

 

 結構大変だったな。

 ほぼ徹夜で作業したし、身体がひ弱だから机の運搬がね。

 

 とにかく疲れた記憶しかないけど達成感はなかなかだったよ。

 問題は僕が外に出れなくなった事くらいで……うん、携帯を弄るくらいしかやることが無かったから、結構暇だったな……

 

 

 とりあえず今回は学校で暴れよう。

 

 何しようかな……

 

 分身でもできたら男のロマン学校に襲来してくるテロリスト!みたいなのも出来たんだけどなぁ。

 いっそどこかの国の機密情報を……いや、そもそも往復するだけで3日潰れるぞ!

 いや待て、()()()()はハッキングして命狙われ始めたし、いけるのでは?

 

 なんだ、存外面白い事は当たり一面に広がってるじゃないか!

 

 今日からパソコン教室に通おう!

 

 そうと決まれば……

 

 

 

 「ちょっとちょっと、あんたどうしたのよ」

 

 小声で囀る誰かの声。

 

 普段ならこんな声耳に入らなかったけど、突然服を引っ張られたからビックリしてしまった。

 

 碌に人と触れ合うような生活?をしてこなかった影響は、僕はかつてないほどに震えていた。

 

 さながら人の心を理解したモンスターのように

 

 「これが、人の心?暖かい……」

 

 「何言ってんの!」

 

 まあ別に †僕には感情がない† とい訳でもなく、感情はある。

 

 単に久しぶりにビックリしただけ。

 

 偏見だけどこの作品を読んでいる諸君はおそらく重度のオタクで、その約半数はゲーマーだろうからわかりやすく説明しよう。

 

 何時間と同じ作業を要求される周回やRTA

 皆好きだし嫌いだろ?

 

 僕はそれを何年も続けている。

 

 そんな中、何の乱数か分からないけどNPCだったりエネミーがすごい挙動をした感じ。

 

 『このゲーム十年くらいやってるけど、その挙動は初見すぎる!』

 

 廃人の君達なら理解できるはずだ、何千回と繰り返した作業、見慣れた光景。

 初見時には感動を覚えた色鮮やかな新たな世界は、今となってはただの色褪せた風景に過ぎなかった。

 だがある日、姿を見せたイレギュラー。

 

 世界に再び、色が宿るような感覚。

 

 

 

 うん?

 

 学生生活ってそんな彩鮮やかだったかな?

 

 割と灰色だったような……

 いや、そんな事はなかったはずだ。

 

 えーっと、何あったかな。

 

 「ぐぁっ、ダメだ!忘れたーっ!」

 

 イベントどころか、同級生の顔も全員忘れてしまっている!

 

 だつて仕方ないじゃないか、何をするにしても三日間しかない。

 できる事は結構限られるし、時間は無限にあるのにタイムリミットもある。

 

 勉強しようにも集めた資料とかもすぐにリセットされる。

 僕の頭じゃ果てがない。

 

 本当にやる事が無くなったらやるかも知れないけれど、全部覚えながらというのは相当な苦行だ。

 五億年ボタンですら地面に落書きできるというのに、僕の場合は真っ更からやり直し。

 

 研究成果を作り上げたとしても、何も起きないし、意味もないと知ればやる気はなくなる。

 

 だから僕は古今東西あらゆる創作物の消化を始めてただこのループが終わるのを待ってたんだ。

 

 でも多分存在する作品はほとんどリピートしてしまったし、往年の古参ファンみたいになってしまった。

 

 元々飽き性な僕には生涯新作が来ないというものはかなり厳しい。

 

 で、何の話してたっけ?

 

 あーそうそう、初心に帰って学校生活を送ってみようって話だったような気がする。

 

 とりあえずそうしよう。

 でも今回は目立っちゃったから、リセット案件。

 再走はやり込んでるゲームのRTAで慣れたさ、乱数の絡むRTAは特にね……

 

 

 にしても騒がしい人達だ。僕もこのくらいの非日常でキャッキャウフフできた頃に戻りたい。

 

 いや、戻りたいからこそ初心に帰ろうとしているんだ。

 

 僕は彼らをここらの底から妬……羨ましがりながら教室の扉をガラガラと開けて、教室の人達に向き直る。

 

 「イモウトガシンパイナンデソウタイシマース」

 

 このセリフを使うと、病弱の妹のセリフを知る教員達は二の足を踏みますのでその隙に早退できます。

 これにより家に帰るまでのタイムを5分ほど短縮できます。

 

 なお帰りのルートは遠回りが要求される裏門を使いましょう。

 通常のプレイの際は正門からの方が1分18秒早く帰れますが、あくまでそれは下校時に限っての事です。

 授業時間中の正門には鍵がかかっており、門衛に話しかけて開けてもらうまでの約2分24秒と()()()()帰宅後のイベントによるタイムロスがかなり厄介ですので、塀の低い裏門をよじ登って帰宅しましょう。

 ボタン連打は必要ありません。

 

 桜並木を突っ切り、親の顔よりも見た坂の上で迷子になっている女性を無視して自宅を向かいましょう。

 親切にしたところで所詮3日だけの縁です、ゴミ箱へポイしましょう。

 

 ちなみにうp主は近所の少年に老婆心から親切をしたところ公衆の面前で泣かれて、あわば警察沙汰でした。

 落とし物拾っただけなのに……

 

 閑話休題

 

 では2分ほど真っ直ぐに走って自宅に入るだけなので、今回のRTAの目標についてお話しします。

 今回はany%のリセット用のルートを走り、この三日間を無かったことにします。

 どう足掻いてもタイムは縮まらないという糞みたいな本作ですが、とある裏技を使えば体感時間におけるタイムの短縮、実質的なIGT(ゲーム内時間)短縮になります。

 

 はい、玄関に到着しましたね。

 

 ここで間違ってた家に入ろうとしないで下さい。

 病弱な妹が自宅警備をしているため、丁寧に施錠が施されています。

 そのためボタンを連打していると扉の音に妹が反応して、会話イベントを挟んでしまいます。

 ここで最悪の場合30秒以上のロスです。

 

 妹の話は冗長ですので、話を巻いても中々目的地へと向かわせて貰えません。

 無理矢理黙らせても良いのですが、一定確率で近所の人を呼ばれたりしますので避けましょう。

 

 幸いというべきか数百回程ヤクザの事務所に殴り込みをかけているので隠密スキルはカンストしています。

 素人の妹に気づかれる事はありません。

 

 ただしこの時点で1分以上のタイムロスをしている場合は扉の前で20秒ほど待機してください。

 

 妹が玄関近くのトイレから出てくる途中です。

 20秒も経てば妹は自室に戻っている頃でしょう。

 

 幸いにもこの3日間、両親はハネムーンです。

 

 幼馴染は押しかけてきません、理由は忘れましたがどうにかして初見時の僕がフラグを追ってくれたようですね。

 

 結果的に妹が定期的に廊下をウロチョロする程度ですので、これから3日間遭遇する事はありません。

 

 何故ならば、()()からです。

 

 基本的に寝ている間は意識が途切れます。

 

 そのため、丸3日間寝れば人間関係リセット完了です。

 

 では扉を開けて、自室に向かいます。

 

 途中で妹の部屋を通過しますが、自室でナニカに耽っているのでそっとしておきながら、自分の部屋に入って鍵を閉めて布団に入ります。

 

 これにてタイマーストップです。

 

 記録は12分48秒

 

 今回の走りは初動で想定外の乱数に絡まれたため、少しばかりかタイムが悪いですが、面白いものも見れたのでよしとしましょう。

 

 

 

 

 

 

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