【完全版】相棒〜杉下右京の幻想怪奇録〜   作:初代シロネコアイルー

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第14話 名女優 その2

 

「彼との最初の出会いは三年前。私は劇の公演を終えて、酒場谷風で一人お酒を飲んでいた。そこに勝次さんが現れたのよ」

 

 当時、私はそこそこ人気が出てきたばかりの女優だった。

 町を歩けば声をかけてくれる人もちらほら。皆、良い演技だったと褒めてくれるけど、私は物足りなさを感じていた。

 

 劇団を立ち上げた外来人の座長には本当に感謝している。私に表のことを色々と教えてくれたのだから。オペラ、ミュージカル、ブロードウェイや四季を巡る劇団とか色々ね。

 でも同時に嫉妬した。私がその世界に足を踏み入れることないから。

 この人間の里は妖怪たちに囲まれた世界にポツンと存在する場所。皆、里から出ることはない。里の中で生まれ、里の中で一生を終える。それが運命。

 

 そりゃあ、目の前の黒い魔女や赤い巫女なんかは強力な力を持ってて妖怪相手に戦える。私のような一般人には無理。私たちは一生、里で暮らすしかない哀れな生き物。自分の非力さを嘆いたわ。

 そこに現れたのが新井勝次。易書を持った冴えない男。最初はそう思った。けれど彼は私の隣の席に着くと。

 

 ――その、今日の演技、最高でした……。

 

 ――ありがとうございます。

 

 どうやら、私のファンだったようで、私を見るなり顔を赤くした。その姿に少しだけ可愛さを覚えた。まるで子供のようで。

 私は折角だから彼と一緒にお酒を飲んだ。彼は緊張しているのか自分からあまり話さない。

 もっとグイっと来なさいよと言ってやりたかったけど、可愛そうだと思って止めたわ。そんな時、彼は言った。

 

 ――俺、占いやってます。見習いですけど……。

 

 ――まあ、その本を見ればわかるわね。

 

 ――よかったら、俺にあなたを占わせてください。

 

 ――いくらで?

 

 ――タダですよ! 決まっているじゃないですか!?

 

 ――なら占って貰おうかしら。

 

 私が頼むと彼は私を占った。「これからもっと人気が出ます。特に女性に」と言った。私は「ありきたりね」と茶化したが、彼の行為に感謝してお礼を述べた。

 

「それから、程なくて王子様役を演じたらヒットしたのよ。自分でも驚くくらいにね」

 

「なるほど。それから男装してお会いするようになったわけですか」

 

「そうです」

 

 杉下さんの言う通り、私は男装して彼と会うようになった。理由は交際禁止だから。周りの女の子たちはファンと仲良くなったりするそうだけど、バレるから途中で止めるらしい。

 だけど、私は変装に自信があるので乱暴されない限りはバレれない。意外とスリルがあって楽しかった。こんな緊張感もたまには悪くない。

 

 彼と会う理由は占って欲しいからもあったけど、自分でも占術を学びたいと思ったからね。こう見えて、色々な方面に手を出していて、彼の学ぶ占術にも関心があった。

 彼は私が男装で訪ねると最初は正体がわからず、困惑するんだけど、私が人目に付かないところで声色を戻すとびっくりした顔で私を見た。

 その時の顔ったら間抜けだったわ。私は彼に正体を明かし、それからたまに会う関係になった。

 

 最初は占いの話だけだったけど、彼の技量が上がるにつれ、外の世界が見えるようになった。それで私も外の世界に興味があったから、色々と見えたものを教えて貰った。その度、感動して喜んだものよ。

 時には占い、時には表の話、時にはデート、時には―――。など、まぁ男女の関係を満喫していたわ。楽しい日々だった。

 

 私も彼から話を聞いたおかげで簡単な占術を使えるようになり、劇団の女の子たちに教えて回ってたっけね。それがきっかけでこの紳士さんに関係がバレるとは思わなかったけど……。

 

「そんなこんなで人生を謳歌していたわけです」

 

「男装しながらの関係を続けるとは。大した演技力ですね」

 

「あなたにバレてしまいましたけどね」

 

 どんな関係にも終わりは訪れる。彼は次第に魔術へのめり込んで行った。私も途中までは付き合ったんだけど、怖くなって会いに行くのを止めた。

 

 自分の力を高めるために暴走しつつあった彼を止めればよかったのだけど、そんな勇気もなかったわ。それくらい彼は狂気じみていた。

 そして彼は破門されて自殺した。その頃には関係は消滅していたけど、私にはどこか罪悪感があった。

 

 何故なら彼にもっと表の世界を見て欲しいと頼んだのは私だからね。つまり私がきっかけであの人は破滅した。悪い女よねぇ。自分でもうんざりしちゃう。

 それを教えると黒い魔女が私をまるで化け物を見るかのような目で見てきた。私からすればあなたのほうが化け物なのにね。中身は子供って奴ね。

 しんみりしている私に杉下さんが質問する。

 

「あなたは暴走した勝次さんと別れた。ですが今現在、妖怪の力を持っている。何があったのですか?」

 

 隠す必要がないので私は素直に教えることにした。

 

「彼が死ぬ直前に私のところを訪れて一冊の本を置いて行ったんです。『数か月したら貸本屋にでも忍ばせておいてくれ』と。今、思えば遺言だったのでしょうね。それで半年くらい経ってから鈴奈庵に本を借りるフリをしてこっそりと本を混ぜました」

 

 それからほどなくして鈴奈庵の娘さんが占いをやり始めたわ。しかも、それは彼の使う技術そのもの。私は何か違和感を覚えて娘さんを観察した。

 

 数日後、事件が起こった。

 何気なく遠くから観察していると急に客が飛び出し「出た!」と騒いでいた。

 私は彼の祟りでも出たのかと思ってたけど、直後、正面上空をこの巫女が飛んでいくのを見かけた。

 

 いつもはのんびりしているけど、その時の雰囲気は少し違った。さっき私に迫った勢いそのものだった。私は陰に隠れながら様子を見ていた。しばらくすると巫女が帰ってきて、娘さんたちに「復活した人間は退治した」と語った。

 

 そこで私は彼が何らかの方法で蘇り、この巫女に倒されたと知った。それから彼女たちは勝次さんの本を燃やし始めた。娘さんは「落書きが多いから――」とか言っていたけど、私にとっては思い出深い物だった。積もった雪の里でその光景を見ながら私は泣いたわ。

 忘れていた感情が蘇ったのかもね。都合が良いように聞こえるかも知れないけど。

 

 それから、私はまるで彼の意思を引き継ぐかのように研究を始めた。彼から教わった占術や表の知識、魔術を駆使して劇場に立つ傍ら、実験をしていた。

 最初は上手くいかなかったけど、結果が出せるようになると嬉しくなってさらにのめり込んだ。

 そうしていく内に止まらなくなった。だから、劇団に迷惑をかけないために訳も言わず辞めた。巻き添えにしたくなかったの。そこから狂ったように実験を行ったわ。幾度の失敗を経て、ついに独自の降霊術を完成させた私は本格的な実験に手を出した。

 それがあの日の夜だった――。

 

 雲の切れ目から月の光が差し込むあの日、私は里人が寝静まったのを見計らって、里の外へ出て実験を開始した。

 それなりの時間を費やした結果、呪文を唱えて自分が従えられる程度の悪霊(恐らく人外の霊魂)を身体に降ろすことに成功した。

 ところが、そいつが中々言うことを聞かない奴で私の身体を乗っ取ろうとした。私は予め男装して買っておいた『博麗神社の魔よけのお札』を使って払おうと思ったのだけど、そいつは激しく抵抗した。

 その話をし出すと赤い巫女は「は!?」と叫びながら、信じられないといった顔で私を見た。そうよねえ、自分のお札が逆に私の研究を手助けしていたんですからねえ。

 この娘の呆気に取られた顔を見てちょっとだけ満足した私は「いつも除霊する際はあなたのところの御札を使わせて貰っていたのよ。あなたのおかげで研究が捗ったわ」とお礼を告げた。

 

 話を戻すけど、抵抗する悪霊に苦戦する私は精神を乗っ取られかけた。

 その時だった。あの子が現れた。

 

 ――あの、七瀬さん、大丈夫ですか!?

 

 そう、お人よしの敦君。彼は私を見かけてついて来たのよ。もう家で休んでいると思ったけど、違ったみたい。

 私は叫んだ。

 

 ――来ないで!

 

 でも敦君は私を心配して近寄って来た。それに反応した悪霊が懐に忍ばせたナイフを勝手に取り出して敦君を攻撃。逃げようとする彼を執拗に追い回し、揉み合いの末、彼は転倒して頭を石にぶつけてもがいた。

 彼が倒れた際、私は木に身体を打ち付けた。それにより一瞬だけ悪霊の力が弱まった。その隙にお札を使って悪霊を浄化した。

 正気を取り戻した私の目に飛び込んできたのは敦君が頭を打ち付け、身体をビクンビクンと痙攣させている姿。

 なんてことをしてしまったんだと後悔したけど、気が動転した私は降霊に使ったアイテムを抱えてその場を離脱した。後は杉下さんの言う通り。

 これが事件の真相――。

 

「――ということです」

 

 私が話を終えると辺りが静まり返っていた。

 どうやら結構、堪えたみたいね。私自身は妙に落ち着いているのに。

 私も外道に落ちたってことか……。あの人と同じく……。けれど、案外よいものだったわ。禁忌に触れながら好きだった人のことを思い出してる時が一番幸せだった。

 

 私はふと赤い巫女に視線を移すと、どこか怯えていた。

 彼女は自分が退治した相手を愛する者がいて、その者が起こした一連の騒動にショックを覚えているみたいね。

 なら――もう少し()()()()しましょうか。あの人を殺したんだしねぇ。

 私は右手で瞼を抑えながら、涙を堪えるフリをした。

 すすり泣く姿に意識が集中したところで私は切り出す。

 

「馬鹿よね私って。別れた男のことを思い出して禁忌に手を染めるんですもの……。自分でも呆れるわ。でもね、幸せだったのよ……。自分の専門分野以外まるで喋れない人だったけど、それが余計に愛おしさを掻きたてたわ。暴走を止められず、彼の復活に協力しちゃったけどね……」

 

 皆が私の演技に引き寄せらている。杉下さんさえも聞き入っている。

 黒い魔女は目を背けているけど、赤い巫女は少しだけ手を震えさせている。

 このタイミングで一撃お見舞いしてやりましょうかね――

 

「ねえ、お巫女さん……?」

 

「――ッ!」

 

 顔は幽霊のように顔面蒼白っぽくして、首を斜めに構えて、力なさを表現。

 脱力している状況から自身の目を見開き彼女の顔を覗き込むようにしてから――

 

「カレ、どんな死に方をしたの?」

 

 巫女は後ずさりを始めた。

 

「どうせ、呆気のない最後だったと思うけど、教えて貰えないかしら……私の愛した人の最後を……ねぇ? ねぇ? ねぇ? ねぇ? お願いだから教えて……ねえ!?」

 

 まるで怪談話に出てくる女の怨霊みたいな演技で私は巫女を威圧した。

 すると――

 

「おい、霊夢!?」

 

 後ずさりした巫女は足を絡ませてその場に尻もちを突いた。

 その瞬間、私はこう言い放ったわ。

 

「ふふ、冗談よぉ、冗談! 本気にしたのぉ? クスクス♪」

 

 飛びっきりの笑顔を作りながら彼女に語りかけた。彼女は身体を抑えながら、こちらを見ていた。黒い魔女が心配して身体を揺さぶるが、反応はイマイチ。

 その光景を見た杉下さんがため息交じりに皮肉を吐いた。

 

「はぁ。……さすがは『名女優』ですね」

 

「それほどでも。うふふふっ」

 

 私と杉下さんの会話に二人は得体の知れない恐怖を抱いていた。

 まぁ、ざまあ見ろって奴ね。クスクス。

 

  ☆

 

 春菜の話が終わったのを見計らい、右京が確認を取る。

 

「敦君殺害をお認めになりますね」

 

「はい」

 

 彼女はすべてを認めた。しかし右京からすればあまりに呆気なかった。論理武装で交戦すると身構えていたが、そうでもなかったからだ。

 

「随分と簡単にお認めになりましたね? 僕はもう少し時間がかかると思っていましたが」

 

「身体の妖気を故意に隠していたのがバレた時点でこの里にはいられませんから。隠す必要がなくなっただけです」

 

 この里では妖怪に関する研究はご法度。無意識ならまだしも、わかってやっていたのならバレた瞬間、追放されるだろう。すなわち妖怪の餌食だ。友人に権力者でもいれば多少は変わってくるが、彼女は後ろ盾を持たない。

 おまけに右京の卓越した推理力の前には隠し通せる気がせず、色々しつこく調べられ、劇団にも迷惑がかかるかも知れないとの危惧もあった。

 また彼の追求を逃れたとしても博麗の巫女が自分を許さない。先ほどの殺意を抱いた目が春菜に与えた影響も大きかった。

 事実、霊夢は容赦しない。易者が関わっていると知れば直のこと。そういった複数の要因が自白へと繋がったのだろう。

 

 右京は「なるほど」と頷いた。その近くには力が抜けて座り込む巫女とそれをなだめる魔女がいた。霊夢は女優の話術と演技にほぼノックアウトされていた。

 しばらくは役に立たないだろう。魔理沙も霊夢をなだめてはいるが、どこか身体が震えている。まるで真夜中に怪談を聞かされて恐怖する子供のようだ。そんな情けない姿を見た右京は彼女たちを気遣った。

 

「大丈夫ですか?」

 

 霊夢は返事をしなかったが、魔理沙は強がった。

 

「だ、大丈夫に決まってんだろ!? て、てかさ、いつから気が付いていたんだ? この人が犯人だって」

 

「最初から疑ってました」

 

 魔理沙は目を点にする。「なんだそれ?」と呟く。

 春菜も右京の発言が気になったらしく、訊ねてきた。

 

「あら? そうだったんですか。私――それなりに演技できたと思ってたのだけど」

 

「ええ、だからこそ違和感を覚えました」

 

「と、言いますと?」

 

「あなたの演技は完成度が高く、普通に会話していたらなんの違和感もなかったことでしょう」

「じゃあ、どうしてわかったんだ?」

 

 魔理沙の質問はもっともだった。右京が人差し指を立てた。

 

「他の方に比べて警戒心がやや薄かったというのがポイントです。ここは閉鎖的な地域ですから、よそ者にはどこか冷たい。ところが七瀬さんにはそれがあまり感じられなかった。人馴れにしてるにせよ、殺人事件の直後です。もう少し動揺を見せてもおかしくありません。不自然な対応にならないよう、配慮なさっていたのですね」

 

 彼の推理を前に本人はわずかに頷く。正解のようだった。

 

「しかし、それだけで疑ったわけではありません」

 

 右京は立てた人差し指を玄関側に向ける。

 

「この部屋はとてもホコリひとつ見当たらないほどキレイに掃除されていますが、軒下周辺には雑草が残っていました。ここまでキレイ好きな方が果たして雑草を抜かずに放置するでしょうか。そして」

 

 続けて右京は霊夢のほうを見た。

 

「霊夢さんに腕を触られそうになった際、あなたはついつい目を鋭くしてしまった。その三点により、僕はあなたを疑うに至りました」

 

 外来人に慣れた対応、チリ一つない室内に比べて軒下の雑草は放置されたままかつ巫女へのわずかな敵意。これだけの根拠があれば和製ホームズは調査に乗り出す。

 細かいところが気になるのが彼の悪癖であるが、捜査においては長所でもある。

 

「とんでもないお人ですね。杉下さんは……」

 

「全くだ。人外なんじゃないかって思うぜ」

 

「ごく普通のことです。この程度、表の刑事なら誰でもできますよ」

 

 当然のように言ってのけるが、同僚たち(捜査一課のトリオ)なら見逃す可能性が高い。春菜は表の刑事の観察力に呆れていた。

 だが魔女まだ納得がいかないようで。

 

「てか、狩人のおじさんも怪しかったと思うんだが? それにおばさんの証言も気になったぜ」

 

「幸之助氏は左指には大きなタコがあり、右指にはそれがありません。その時点で左利きだと判断し、候補から外れつつありました」

 

「あのおじさん、左利きだったのかよ!」

 

「そうだと思いました」

 

「じゃあ――おばさんの正面道路から二回物音がしたって話はどうなるんだ!?」

 

「おそらく寝相が極端に悪かったのでしょうねえ。奥様に睡眠の話を振られた幸之助氏が『だからお前と付き合えるんだ』と呆れたように言っておられましたし、そういう意味も含まれているのではないかと僕は捉えました。

 月明かりがあっても室内は暗く――おまけに寝ぼけているので、寝相の悪さと相まって自分がどこにいるかわからなくなったのでしょう……。行き詰まったらもう一度訪ねようかと考えていましたが、その前に証言が集まったので、その必要もなくなったというわけです」

 

「なんじゃそりゃ……」

 

 右京は一目見ただけで幸之助が左利きと見抜き、恵理子の寝相の悪さを感じ取ったのだ。ちなみに信介と会った時も目を擦った際、咄嗟に左手を使ったので、左利きの可能性を疑っていた。

 つまり幸之助と信介が左利きだと初見で見抜いていたのだ。

 魔理沙が彼を人外認定するのもわかる。春菜も苦笑いを浮かべながら視線を台所のほうに移した。

 

「実は血の付いた衣服がまだ残っているのですが、持ってきてもよろしいかしら? そのほうが信憑性が増すでしょうし」

 

「ええ、是非」

 

 彼女は笑顔で頷いて台所へと向かい、右京がその後をついていく。

 

 春菜は床下から血の付いた衣服と降霊術に使用したアイテムを差し出した。刑事がその品を確認するために目を離し、僅かな隙が生まれる。その隙に彼女は戸棚から深い青色の花びらを数枚ほど隠れて取り出し、ポケットに忍ばせた。

 

 そして、女優は最後の芝居を打つ。

 

「少しやりすぎたわね――捕まる前にあの子たちに謝ってきます」

 

 先ほどとは打って変わった態度に右京は違和感を覚える。ふと視線を床に移すと青い花びらが散らかっていた。

 刹那、刑事の表情が変わった。

 

「僕としたことが――」

 

 ――ドタン!

 

 直後、居間で何かが倒れた音がした。右京が急いで駆けつけると春菜はもがきながら苦しんでいた。

 その姿に何が起きたのかわからず、少女たちは戸惑っている。刑事が声を張り上げた。

 

「彼女はトリカブトの花びらを摂取しました!! 吐き出させてください!! 今すぐ!!」

 

 トリカブトは猛毒である。摂取すれば呼吸困難に陥り、数十秒で死亡に至る。彼女が呑み込んだのはその花びら。しかも状況から見て、複数の花びらを口に含んだと推測できる。もはや手遅れだった。

 痙攣する春菜は、震える身体で最後の力を振り絞り。

 

「敦……君……舞……花ちゃん……勝次……さん。ごめん……なさ……い」

 

「それは死んで償えるものではなりません! 死んではいけません! あなたはッ!!」

 

 右京の健闘むなしく、春菜は数十秒後に息を引き取った。遺言は自身が不幸にした人々への謝罪だった。

 刑事は七瀬春菜の遺体を前に悔しさをにじませる。その姿を少女たちも呆然としながら眺めているしかなかった。

 見事、三人の猛者を手玉に取った七瀬春菜とは一体なんだったのだろうか。今わかるのはただ一つ。

 

 杉下右京および霧雨魔理沙と博麗霊夢は『名女優』に()()()()されたという確かな事実だけだった。

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