【完全版】相棒〜杉下右京の幻想怪奇録〜   作:初代シロネコアイルー

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第18話 特命係VS妖怪記者 前編

 

 右京は彼女の苗字に覚えがあった。

 

「射命丸……確か、里で出回っている新聞の――」

 

「おお! 文々。(ブンブンまる)新聞をご存じでしたか。それ、私が発行している新聞なんですよ!」

 

「そうでしたか。鈴奈庵で何部か拝見しました」

 

 鈴奈庵で資料を漁った際、ついでに小鈴が読んでいた新聞にも目を通していた。その新聞の名前が『文々。新聞』であり、発行者は射命丸文だった。

 特徴的な新聞の名前と発行者の苗字に妙なインパクトがあったので忘れようにも忘れられない。また幻想郷のスペルカード使いが放つ個性的な技――通称 、弾幕が写真つきで載っているのでのそれを知るには持ってこいだった。

 天狗の少女は外来人が新聞の読者だと知ると声を大きくして喜び、新聞の感想を訊ねる。

 

「私の新聞はどうでしたか?」

 

「とても独創的で素晴らしい内容でした。事実を客観的に捉えた上で余計な脚色をつけ足さないように努力されている記事は記者としての信念を感じさせられます。それと、スペルカードを好む方々が使う弾幕の写真がよく撮れていて、色々な妄想が掻き立てられましたねえ」

 

「そ、そうですかぁ~。いやぁ、よかった、よかったっ」

 

 右京に褒められて気をよくした彼女は軽くガッツポーズを作った。「なんか胡散臭いな」と思いながら尊がスマホを弄った。

 嬉しそうにする彼女を余所に右京はそれとなく話題を変える。

 

「ところで射命丸さん――僕にどのような用件でしょうか?」

 

「あやや、一人で舞い上がってしまいました。……実はですね、今回の事件についてお聞きしに参りました」

 

「事件についてですか?」

 

「はい。里で起きた殺人事件。それを解決したのが表から来た杉下さんであることは里人なら皆、知っています。かく言う私も里の方に教えて貰いました。何でも、熱心に聞き込みして回って情報を集め、事件を早期解決なされたのですよね? できれば、その時のお話を詳しく教えて欲しいのですが――どうでしょうか?」

 

 壁に背を預けながら話を聞いていた尊が息を飲む。

 

(里の方に教えて貰ったってことは……やっぱり、この女は――)

 

 何故なら、人間はごく一部を除いて里の中で生活しているからだ。彼女の口ぶりはまるで里の外に住んでいる者のそれだ。加えて、時折見え隠れする人間らしからぬプレッシャー。事前に右京から幻想郷や里の話を聞かされた元部下も文の正体を妖怪だと結論づけた。

 幻想入りの直後、アクシデントに見舞われて醜態を晒した尊だったが、冷静さを取り戻すといつものキレのよさを見せる。

 警察庁戻って七年。右京とは違った形で場数を踏んできたのだろう。戸惑いを顔に出さず、黙って二人の会話に耳を傾けた。

 右京は表情一つ変えずに返答する。

 

「今回の事件で僕は知り合いたちと協力して犯人を追い詰めました。結果は掲示板の通りです」

 

「……そこの部分を詳しく教えて貰いたいのですが?」

 

 文は少し困ったような表情で相手の目を見た。

 刑事は淡々と言う。

 

「これ以上の内容は僕の口からは言いかねます」

 

「どうしてでしょうか? 何か不都合なことでも?」

 

 文はダメと言われて引き下がる記者ではない。当然、食い下がる。

 

「初対面の方かつ関係者でもないあなたに事件の捜査情報をお教えする義務がないからです。例え、それが記者であったとしても同じです。どうしても言うなら、この里の顔である稗田阿求さんに許可を貰って来てください」

 

 刑事は文の要求を一切、受けつけなかった。

 それどころか、阿求に許可を求めるように促すなど、記者の嫌がることをさらりとやって退ける。隠ぺい体質の里で事実上、権力を握っている阿求が文に許可を出すはずがない。

 

「ほんの少しだけでも」

 

 右京が首を横に振った。

 

「ほんのちょぴっとだけでも……」

 

「ここで阿求さんたちの許可なく事件の内容をお話しすれば信用を裏切ってしまいます。ただでさえ、よそ者の僕が事件を捜査させて貰えたのですから、筋は通さねばなりません」

 

 この時、新聞記者はこれ以上事件について訊ねても簡単には口を割らないだろうと理解した。

 もっとも過ぎる見解に文が一瞬黙るも、すぐに思考を切り替える。

 

「……なるほど、さすがは表の刑事さん。お口が堅いですね……ここは素直に質問を変えましょう。あなたがこの幻想郷に足を運んだ理由をお聞かせください」

 

「理由ですか」

 

「そう、理由です」

 

 不気味に微笑み合う二人。

 

 尊は「随分、あっさり引き下がったな」と思ったが、どこか違和感を覚える。

 普通に考えれば、表の世界の人間が入って来た理由など迷い込んだからしかない。そこをあえて強調しながら訊ねるなど不自然なのだ。

 情報に精通する記者ならそのくらい知っていて当然。この場において彼女がこの質問を選んだ理由は一つしかない。

 右京は内心思う。

 

(こちらのことはある程度、調べてきた。その意思表示でしょうか)

 

 右京がここに幻想入りした理由は手紙の主を探すためである。それを知っているのは霖之助、魔理沙、霊夢、慧音、小鈴、阿求、舞花、淳也と豆腐屋の店主、裕美だけ。

 もちろん、その場にいた他の人間たちが立ち聞きしていた可能性もあるが、だとするならストレートに手紙の話を訊いてくるはず。このような回りくどい訊き方をする必要はない。つまりこれは()()()()()()調()()()()()()というアピールになる。

 

 右京は射命丸文という人物がかなりの負けず嫌いだと悟った。

 しかしながら手紙の件を隠す必要はないので素直に話した。

 

「この手紙の主を探していたら偶然、幻想郷に迷い込んでしまいました」

 

 そう言って手紙をテーブルに広げてみせた。

 文は興味深そうに手紙を眺める。

 

「ふむふむ、これを読む限り、幻想郷に迷い込んだ表の人間の文章って感じがしますね」

 

「どこかで、このような字を書く方を見たことはありませんか?」

 

「ありませんね」

 

 文は表の字を難なく読んでから知らないと言った。右京は「そうですか」と一言、発するだけ。

 そんな中、記者が我に秘策あり、とでも言いたげに。

 

「で・す・が、私の新聞に載せれば、手紙の主を知っている方が現れるかも⁉ 自慢じゃありませんが、それなりに愛読者も多いですしね。人間、妖怪問わず」

 

「……手紙のことを記事に載せて貰えるのですか」

 

 彼女の提案は願ってもない話だった。同時に右京は彼女が手紙の話題へ話を持って行ったのはこれが理由であるとも理解した。

 手紙の主の情報の手がかりがまるで掴めず、行き詰っていたところにメディアからのお誘い。おまけに『文々。新聞』は里の外にいる妖怪にも届く。手紙の件を知ってもらうには非常に有効であり、証言が集まる確率がグッと上がる。

 情報媒体は強い。表の人間、それも情報の有用性を知っている者ならば尚更無視できない。

 きっとこの記者はこの外来人が手紙の主を探していると聞き込みで突き止めていたのだろう。そして、相手が情報の重要性を認識していると確認した上で自分が主導権を握るため、有利な方へと誘導したのだ。

 文は笑いながら胸を張りながら芝居がかった演技を披露する。

 

「もちろんです。これも世のため、人のため。この射命丸文、一肌脱ごうではありませんか!」

 

「頼もしいですねえ」

 

 愉快そうにする二人。「絶対、見返りを要求してくるな」と元部下が白ける。

 それは刑事も承知している。この流れの中、右京はごく自然に先手を打つ。

 

「で、その対価はなんですか?」

 

 その言葉に文はわずかに顔を引きつらせる。

 尊が「妖怪相手にもお構いないなーこの人」と呆れたのだが、彼が先に対価の話を出したことで相手が交渉し難い状況を作った。これが杉下右京の対妖怪戦術である。

 

 幻想郷の妖怪または一部の強者は自分よりも下だと思う者を対等とは認めず、劣っていると思われた時点で高圧的になる傾向がある。舐められたら終わりなのだ。

 そこで本来、初対面の相手には行わない言い方でけん制する。

 これが正しい幻想郷での信頼の作り方だ。右京は自身の経験と幻想郷縁起などの書物から住人たちの傾向を見抜いていた。

 文は少しばかり崩れた笑顔をすぐ元に戻す。

 

「いやですねぇ~。私が表から来た人に手紙の写真や記事を載せる対価を取ろうなんて言うわけないじゃないですかーあはは!」

 

 同時に心の中で「この男……中々……」と呟く。

 事件の情報は聞けず、見返りも要求し難い状況になったにも関わらず、記者はどこか楽しんでいた。ここ最近、相手にしていた人間や妖怪たちは駆け引きらしい駆け引きをしなかった。

 そんな中、起こった殺人事件――しかも表の刑事が捜査を行って解決したとあっては文も黙っていられない。

 

 事件初日から里を訪れたかったが、大天狗から押しつけられた仕事の処理に追われ、出遅れてしまった。何としてでも情報を聞き出して記事にしたいがそれを表に出しては舐められる。

 平静を装いながら取材対象とやり取りをしているのだが、相手もガードが堅い。それが文の眠っていた記者魂を呼び起こした。

 射命丸文は可愛らしい笑顔の内側にその本性をざわつかせて始める。

 

「ふふっ」

 

 ワザとらしく笑う文。特命係の二人がその様子を静かに見守る。

 すると突然と笑顔が消え、彼女の背後から微かにオーラが流れた。

 

「――とはいえ、印刷料がかかってしまうのである程度の見返りが欲しいのは事実です」

 

 文は「本来の自分」を少しだけ見せた。里の人間なら感じ取り次第すぐに委縮してしまう代物だった。

 元部下は少しだけ固まったが、すぐにハハっと笑うが、元上司はいつも通りのポーカーフェイス。

 瞬間、文は尊を「エリートそうな見た目に反して中々、肝が据わっている」と評価。まるで動じなかった右京を「只者ではないな」と認めた。

 戦いは第二ラウンドに突入する。

 

「こちらとしてもタダで評判のよい新聞に載せて貰うなんて話は心苦しいので、そう言って貰えると助かります」

 

「いえいえ、個人出版なので印刷費を捻出するのも一苦労なこちらの都合です。すみませんね!」

 

 表では互いに配慮しながらもその裏で両者は思考を巡らせ続ける。

 右京は今後の捜査の手がかりを掴むため、文はネタと新聞の売り上げ確保のために。

 

「僕個人としてはとても魅力的なお話です。しかしながら、こちらに来たばかりで大した手持ちがありません。とても印刷料をお支払できるかどうか……」

 

 すかさず記者が反応する。

 

「お金なんてとんでもない! こちらへ来たばかりの方からお金を取ろうなんてやましい発想はしませんよ」

 

「おやおや、それでは印刷費を回収できないのではありませんか?」

 

「そうでもありません。新聞が売れれば元は取れますから!」

 

「随分、大胆なことをおっしゃいますねえ~」

 

「ネタさえあれば可能です。ネタさえあればね」

 

 楽しげにそう語る記者。尊は「新聞に載せてやるから代わりにネタを寄越せってか」と催促する文に若干、憤りながらもさっきから手に握っていたスマホを懐の内ポケットにしまう。

 右京が確かめるように訊く。

 

「ネタというのは……まさか、事件の真相なんて言わないでしょうねえ?」

 

 両手を振りながら文が否定した。

 

「そんなの要求するわけありませんってば! ただ……刑事さんたちのことをお聞かせ願えればなと思いましてね」

 

「僕たちのことですか?」

 

「そうです」

 

 特命係の二人は顔を合わせながら、文の出した要求が予想以上に軽いことに驚く。

 先ほどのオーラを出してまで威圧した意味は何だったのか、と。

 文が話を続ける。

 

「お二人は表の世界からやって来た方々。しかも杉下さんは刑事で、そちらの神戸さんは元同僚だと聞き及んでおります。幻想郷に表から刑事が二人もやって来るなんて珍しいですからね。おまけに、出で立ちもカッコ良いと来たら、それだけで手に取って貰えますよ!」

 

 若干、興奮気味の彼女に二人は再び顔を合わせる。

 右京としても手紙が新聞に掲載されるメリットは大きい。それを、料金を払わずにやってくれると言うのであれば尚更だ。胡散臭い記者ではあるが、彼女の新聞が客観的な目線で書かれているのは確認済み。必要以上の脚色もしないと予想できる。今のところはだが……。

 

 その対価も自己紹介レベルなら特に問題はない。右京と尊なら余計な情報を漏らさずに切り抜けられる。右京は判断に困って相棒に相談する。

 右京が「どうしましょうねえ?」と尊に問う。元部下は「お任せします。今のぼくは刑事ではありませんけどね」と返した。

 

「表での仕事や普段の日常など話しても差支えないもので結構ですから」

 

 文が笑顔を振り巻く。一泊置いて右京は「わかりました。ですが……仕事のノウハウなどはお教えできません。それと僕達の紹介が載る新聞で今回の事件に触れるような事は一切、書かないでください」と釘を刺した。

 

「何故でしょう?」

 

「英雄気取りだと思われたくないからです」

 

 手紙のために記事を出すわけであって、事件解決を自慢するために出すのではない。

 相手の考えを文が汲み取る。

 

「了解です。手紙とお二人の自己紹介だけにとどめます」

 

 ついでとばかりに尊も「後、面白おかしく書かないでくださいね」と念を押す。

 

「わかっていますよ」

 

 それならば、と右京は了承した。

 

「ありがとうございます!」

 

 礼を述べた文が手帳とペンを取り出し、二人はインタビューを受けることになる。

 右京は自分が警察組織に属して仕事をしていて、特命係という一風変わった部署で働いていると語った。

 文が「名前からして凄そうな部署ですね! 間者専門の部署ですか?」と問えば右京が「とんでもない。どこにでもある普通の部署ですよ」と答えるも「そんな名前の部署がどこにでもあるんですか!? 表の警察組織ってカッコいいですね。だからこそ気になります。特命係ではどんな活動をしていらっしゃるんですか?」と食いつかれる。

 興味津々の記者に苦笑いする二人だが、特命係の主な活動内容は「雑用」である。

 まさか、本当のことを言えるはずもないので、それっぽい言葉を並べる。

 

「特命係は生活安全課に属する部署です。東京都民のために働いております」

 

 続いて尊が付け加えて。

 

「小さなことから大きなことまで様々な仕事をこなす『警視庁のなんでも屋』みたいな場所です。ね、杉下さん?」

 

「そうですねえ」

 

 七年ぶりとは思えない連携で文に対抗する刑事たち。しかし少女の瞳はキラキラを増していき。

 

「なるほど! 警察組織のなんでも屋とは驚きました! なんでもできるから配属されているんですね? ち・な・み・に、大きな事件とか解決しちゃったりするんですか?」

 

 子供のような態度で右京が詰め寄るも両手を挙げられて「それはご想像にお任せします」と言われる。

 今度は尊のほうを向くがビジネススマイルで「それはご想像にお任せします」と右京の言葉をそのまま繰り返された。幻想郷が異国と同じとは言え、新聞記者に余計なことは話せない。

 その濁した態度に文は何かに勘付いたようで、したり顔で言った。

 

「あやや、もしかして雑用係だったとかですか?」

 

 ニヤニヤ顔で二人を見やる文。右京たちも苦笑する他なかった。大小問わず、様々な事件を解決してきたが、特命が島流しの部署であることはなんら変わりない。

 

「案外、当たりっぽいですねぇ~。ふふ、ご安心を。特命係が雑用部署だなんて書きませんから! 記事の印象が悪くなるので」

 

 フフンと鼻を鳴らす文に右京はどこか心外そうに「それはどうも」と述べた。

 先ほどのお礼と言わんばかりに棘のある一言を怒られない程度に混ぜてくる姿を見て尊も冷笑する。当の記者は「こんな肝の据わった連中が単なる雑用係な訳ないじゃん」と心の中で吐き捨てた。

 その後も右京への質問は続き、警察組織の話や趣味の話などを聞かれるが、当たり障りのない範囲で答えるにとどめた。ちなみに趣味は紅茶、読書、チェス、英国巡りと回答する。

 

「まるで英国紳士ですねー! 東洋人なのに!」と文が返す。元部下は「一言余計だろ。……確かにその通りだけどさ」と吹き出しそうになるも気合で我慢した。

 それを察した右京が横目で冷やかな視線を送るも、尊はしらんぷりを決め込む。

 白々しい彼を見て記者は「そんな白々しい演技だとバレちゃいますよ?」とチクリ。尊も引かずに「ご心配なく、ネタみたいなものですから」と返した。

 文が尊の言葉に反応する。

 

「なるほど! ネタですか。あ、ネタと言えば……神戸さんは今回の事件の結末を知っていますか?」

 

「知りませんね」

 

「あらあら、掲示板に書いてあって住民なら大抵のことは知っていると言うのに。杉下さんから教えられていないのですか?」

 

「ぼくは今日の朝、この里に連れて来られた直後、杉下さんと再会しました。腰を痛めていたのですぐこの部屋に連れて来られ、幻想郷と里について簡単に説明を受けました。ですが、あなたが欲しがるような情報は教えられていません。聞いても無駄ですよ?」

 

 実際は事件についてそれなりに聞かされているが、追求されるのが厄介なので尊は息を吐くように嘘を吐くことにした。

 

「あはは、そんなに警戒しないでくださいよ。無理やり聞こうだなんて考えてませんから。でも、記者を長年やっているとつい癖で訊いてしまうんですよね。職業病ですかね?」

 

「そうじゃないですか」

 

「今後は気を付けます」

 

 文はこのやり取りの後も右京に他愛もない質問を続けて、記事に使えそうなネタを抜き取っていく。

 右京との会話の間にも尊にそれとなく事件に関係する内容を訊ねるも全てかわされ、終いには「詳しいことは杉下さんへ」と笑顔でブロックされてしまう。

 表情にこそ出さなかったが、途中から若干、文の演技が白々しさを増したように見えた。

 

 右京から一通り話を聞き終えた文が、尊へのインタビューを開始する。

 尊は自身が十年前に警察庁から警視庁の特命係に異動して三年間働いていた事と現在は警察庁でお偉いさんの宮仕えをしていると語った。もちろん皮肉である。

 文が冗談交じりに「えーと、特命係に回されたってことは……左遷?」と小声で呟くも尊は即座に「ハハ、違いますからね!」と否定して右京に同意を求めたが、速攻で明後日の方向を向かれた。

 

(やり返しやがったな!)

 

 尊が内心で叫んだ。

 

 文はその光景は思わず、吹き出した。

 

「あはは! お二人とも、仲がよいんですね!」

 

「「いえ普通です(から)」」

 

 まさかの同時発言に二人は顔を見合わせながら真顔になった。()()()()と言わんばかりに。

 文は「やっぱり仲いいじゃないですか!? 知的でクールな英国紳士の刑事さんと落ち着いた雰囲気のベテラン宮仕えさん。いいですねぇー、絵になります。後で写真取らせてください」とテンションを上げていく。

 右京と尊は文の厄介さを肌で感じていた。

 時には真面目になってみたり、時には威圧してみたり、時にはふざけながら相手の懐に潜り込もうとしてきたりと表情をコロコロと変える。おまけに、あの手この手で目的の情報を手に入れようとするし毒も吐く。

 十代の少女の顔と明るい笑顔だからなせる技だ。これが大人なら上手くは行かない。気持ち悪がられる。そのような状況であっても、右京と尊は大事な情報を何一つも漏らさずに彼女のインタビューを受けている。

 

 右京はこの調子でインタビューが終わってくれることを切に願うが、途中で無理だろうと諦め、彼女から飛んでくるであろう質問を想定しながらその返しを考えていた。

 尊も妖怪相手とはいえ、容姿が十代の女に舐められたくないので細心の注意を払いながら会話する。

 文のほうも特に焦る様子はなく、着実にしかけるタイミングを見計らっていた。

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