【完全版】相棒〜杉下右京の幻想怪奇録〜   作:初代シロネコアイルー

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第3話 探偵と魔法使い

 

 伝説の国、幻想郷。知る人ぞ知る妖怪の楽園。胡散臭い連中しかおらず、どいつもこいつも捻くれているので、何かあるとすぐ手製のカードを片手に殺し合いに興じる。そんな場所だ。

 私は今、薄暗い森の中に居る。そこいらに生えている茸と暇そうな妖精を横目に森を出て行く。

 といっても、特にやることもないので香霖堂に行くだけなのだが……。

 アイツの顔を見ても大して面白くはないとは思うが、暇つぶしくらいにはなるだろう。まぁ、修繕に出した衣装が直っていれば引き取ろうかな。そう思っていた。

 しかし、この時の私はまだ知らなかったのだ。

 香霖堂が()()()に乗っ取られてしまったことを――。

 

  ☆

 

 昼下がりの青空の下、ひとりの少女がのんびり歩いている。金髪に白黒の衣装と帽子さらには箒を携えて香霖堂の正面に立ち、慣れた手付きで扉を開ける。

 

 ――カランカラン!

 

「いらっしゃいませ。ようこそ香霖堂へ」

 

「よお、香霖(こうりん)。今日も来てやった――あん!?」

 

 白黒の少女は目の前の光景に口を大きく開けながら固まった。

 何故なら、そこに居たのは店主森近霖之助ではなく――エプロン姿をした()()()()()()()()()()()だったからだ。

 紳士はメルヘンな少女の姿に驚くこともなく、キレのよい対応を見せる。

 

「おや、黒と白の衣装に大き目の帽子と手に持った箒……もしかして――霧雨魔理沙(きりさめまりさ)さんでしょうか?」

 

「あ!?」

 

 紳士は白黒の少女を霧雨魔理沙と呼んだ。彼女は大層困惑したが、すかさず手を降って否定する。

 

「そんな奴は知らん! 人違いだ」

 

「おやおや」

 

「てか、アンタ一体誰なんだ? ここは白髪で眼鏡を掛けた陰険な店主の店のはずだが?」

 

「香霖堂店主、森近霖之助氏は今、体調を崩して休んでいます」

 

「なんだと!?」

 

 少女は紳士の言葉に思わず目を丸くしたが、冷静さを取り戻して彼の言葉を嘘だと断じた。

 

「そんな訳あるか! ここの店主は妖怪とのハーフなんだぜ? 体調を崩すなんてありえん!」

 

「確かに妖怪の血を引く方は病気に掛かりにくいと店主から聞きました」

 

「本当に聞いたのか怪しいもんだが……そういうことにしておいてやろう。それでだ、ここの店主は人間よりも頑丈だ」

 

「ええ」

 

「だから、体調不良で休むことはない。あったとしてもズルで休むくらいだ」

 

「ほうほう」

 

「それに、ここの店主がアンタみたいな胡散臭いおっさんに店の管理を任せるとは思えん。あの店主は神経質だからな。物に少し触っただけで怒り出す。他人に管理を任せる訳がない」

 

「胡散臭いかどうかはわかりませんが、体調が優れない霖之助氏の代わりに僕が店番を引き受けたのは事実です。何なら、寝室の霖之助氏に直接、伺ってみたら如何でしょうか?」

 

 紳士は少女に霖之助を見に行くように促すが、彼女は首を縦に振らない。

 

「はん! そうやって油断させる気だな! 判り切っているんだぜ?」

 

「何がでしょう?」

 

「とぼけたって無駄だ。私を寝室に行かせて背後から不意打ちでも浴びせるつもりだろ? 泥棒の手口なんてそんなもんだ」

 

「泥棒とは人聞きが悪い」

 

「事実を言ったまでだ」

 

 

 疑いの目を向けるどころか泥棒扱いする少女に紳士は、口元を緩ませてクスクスと笑う。

 

「尻尾を出したな?」

 

「そうじゃありません。あまりにも他者を信用しない人だなと思っただけです」

 

「お人よしじゃ幻想郷は生きていけないんでな」

 

「なるほど。よいでしょう」

 

「なんだ観念したのか? 意外と早いな」

 

「観念も何も僕は泥棒じゃないので」

 

「じゃあ、何者だ?」

 

「そうですね……。昨日、幻想入りした表の世界の日本人と言えばよいでしょうかねえ」

 

「なんだって!?」

 

 少女は声を裏返しながらも、目をあちこち動かして紳士を隅々までチェックする。

 

(まぁ、幻想郷の人間って雰囲気でもないが……新手の妖怪であることも否定できん……)

 

 首を傾げて判断に困る少女。不審者の身なりはワイシャツにエプロン、質のよさそうなズボンだ。

 

(品物的にも結構、いい物使ってるんだよなぁ。アレは香霖でも作れん……)

 

 少女はその辺りの事情に精通しているのか、紳士の身に付けている品物を見て彼が幻想郷の外から来ていると認めざるを得なかった。

 

「ま、幻想郷の外から来た日本人ってのは認めてやる」

 

「ふふ、ありがとうございます」

 

「が、泥棒って線は消えた訳じゃないぜ」

 

「そこは認めて貰えないのですね?」

 

「当たり前だ! アンタは外から来た癖に堂々とし過ぎだ。私はそんな奴を見たことがない――たぶん!」

 

「おやおや。随分、曖昧な言い方ですね。もしかして前例があるのでは?」

 

「そんなものはない」

 

 魔女は頭に緑髪ロングの少女の姿を思い浮かべるが片隅に追いやった。

 困った表情をする紳士だが、どこか余裕がある。

 

「やれやれ、困りましたねえ。僕は霧雨魔理沙さんへ衣装を手渡すために店番をしていると言うのに――これでは魔理沙さんがいらっしゃっても遠慮して入って来られません」

 

「……嘘だな」

 

「どうしてそう言えるのでしょう?」

 

「どうせ、適当にでっち上げてそれっぽい話を作っているだけだ」

 

「ふむ。では何故、僕は霧雨魔理沙さんの名前を知っているのでしょうかね」

 

「店主の話を盗み聞きしたんだろうよ」

 

 少女は反論した。

 

「それは難しいかと。霖之助氏から霧雨魔理沙さんとは親しい間柄だと聞かされています。フルネームで名前を言う機会なんてまずないでしょう。だとしたら僕が知れるのは名前だけになりますね」

 

「店の中に苗字が記された物でもあったんだろうよ」

 

「例えば?」

 

「た、例えばだな……。その魔理沙とか言う奴の衣装の内側とかな!」

 

「なるほどっ」

 

 紳士が少女の言葉に納得したように頷いた。少女は「ようやく、胡散臭いおっさんを一歩追い詰めた」と確信した。

 しかし、紳士は予想外の行動に出る。

 

「でしたら、衣装の内側を調べてみましょうか」

 

「なんだと!?」

 

 少女は急に焦り出した。まるで止めて欲しいと言わんばかりに。

 紳士は少女を無視して霖之助から預かっていた衣装をテーブルに置いて内側を調べようとする。

 白黒の魔女は慌てふためいた。

 

「ま、ま、待て!」

 

「どうかしましたか?」

 

 少女が冷や汗をかきながらテーブルの服を奪おうとするが、一瞬早く、紳士に服を遠ざけられ、その童顔を真っ赤にした。

 

「か、返せ!」

 

「おやおや、何故ですか?」

 

「何故だと!? そんなの――」

 

 少女は紳士に自分の名前を名乗っていないと思い出して発言内容を変えた。

 

「女が自分の衣装を見ず知らずの男に触られるのは……その、誰だって嫌だと思う」

 

「そうでしょうね」

 

「だから私が確かめる」

 

「それはできません」

 

「はぁ!?」

 

「当然です。これは霧雨魔理沙さんの衣装なのですから。持ち主以外の人物に調べさせる訳にはいきませんよ」

 

「いや、その理屈は通らん! 男が女の衣装に触るなんてあってはならん!」

 

「ここの店主森近霖之助氏は()()ですが?」

 

()()()は別だ!!」

 

 店主の話題になった途端、声を裏返して反論する少女。

 紳士はそこを見逃さない。

 

「アイツですか……」

 

「それがどうした!?」

 

「親しい仲なのだなと思いましてね」

 

「アイツって言ったくらいで親しい仲になるのかよ、表の世界では?」

 

「その割には必要以上に言葉に感情が入っていた気がしますがね」

 

「気が立っていただけだ。文句あるか?」

 

「特には」

 

「ふん!」

 

 少女は歯ぎしりしながら紳士を睨みつける。

 紳士は「やれやれ」と呟いて首を横に振る。

 

「どうしたら信用して頂けるんでしょうか?」

 

「私はアンタを信用しない」

 

「……さすがは()()()()()さん。霖之助君から聞いた通りの女の子ですね」

 

 彼女は紳士の言葉に眉をひそめる。

 

「あん? なんで私が霧雨魔理沙なんだ? 私は自分の名前なんて一言も言ってないぜ?」

 

「聞かなくてもわかりますよ」

 

「どうしてだ?」

 

「あなたは最初に店内へ入る際()()と言って入って来ました。僕は彼から『魔理沙は僕のことを香霖と呼ぶ』と聞かされていましたのでね。それにこの服も魔女風の物です。霧雨魔理沙さんは()()()()()使()()だそうですからきっと、普段から魔女の恰好をしていると思われます。そう、今のあなたのように」

 

「……幻想郷には魔女なんていくらでもいる」

 

「まぁ、皆さん空を飛べるそうですしねえ。あなたも飛べるのですか?」

 

「飛べるかも知れんし、飛べないかも知れん」

 

「そんな言い方をされたら余計、気になりますねえ。詳しくお話をお聞きしたくなります」

 

「はぁ……」

 

 少女は疲れたのか、目に入った椅子に腰を掛けた。

 一方、紳士はまだ余裕がありそうだ。ニコニコと笑っている。

 不毛な言い争いには自信があった少女もこれにはウンザリだ。

 

「ったく、やってられん」

 

「そうですか。僕は結構、楽しいですよ?」

 

「どうかしてるぜ……」

 

 少女は舌を出しながら紳士を挑発するも、その涼しい顔を変えることはできなかった。

 それから数分後、グロッキー気味の霖之助が店内にやって来て、ようやく紳士の疑いが晴れた。

 同時に店内で知り合いの少女がぐったりしているのを見た霖之助は「()()()の奴も()()()()にやられたな……」と内心憐れんだ。

 

  ☆

 

 霖之助が事情を話したことで黒白の魔女霧雨魔理沙は。胡散臭いおっさん改め杉下右京を泥棒ではないと渋々認めた。

 右京は「霖之助君どうもありがとう」とお礼を述べると霖之助が「いえいえ……」と目線を逸らしながら、近くにあった椅子に腰を下ろす。

 店主から聞いた事実を独自解釈した上で魔理沙が簡潔にまとめる。

 

「つまり、表の世界から幻想郷に迷い込んだおっさんが香霖堂にやって来て接客していたら何時の間にか居座ってたってことか」

 

「僕は居座った覚えはありませんがねえ。ただ、右も左もわからないので泊めて欲しいと頼んだだけです」

 

「そして、店主の代わりに店を管理して、よい品物がないか物色する機会を伺っていた」

 

「あなたはたった今、僕が泥棒じゃないとお認めになったではありませんか」

 

「次は詐欺師の線を疑っているんだぜ」

 

「本当に疑り深い方ですね。親御さんの顔が見てみたいものです」

 

「ふん、大した顔じゃないがな!」

 

 親の話が出た途端、彼女がへそを曲げた。右京は相変わらず、スマイルのままだ。

 話を逸らすべく咳払いした魔理沙が霖之助へと視線を移す。

 

「ところで香霖。お前が身体を悪くするなんて随分、珍しいな。何があった?」

 

「いや、そうじゃないが……」

 

「む。らしくない態度だな」

 

 ばつの悪そうな霖之助を見て訝しむ魔理沙。次第にとある人物の関与を疑い始める。

 

「おっさん、香霖と何があった?」

 

「あなた――もう少しマシな言い方があるでしょう?」

 

「あん?」

 

「目上の人物に()()()()はないでしょう?」

 

「だが、私からすればおっさ――」

 

 直後、右京は笑顔で魔理沙の視界を塞ぐように顔を近づける。

 魔理沙は驚いて仰け反った。

 

「あなたの年齢からすれば()()()()と呼ぶのが適切です」

 

 笑顔という名の圧力であった。魔理沙は顔を引きつらせ、その圧に屈した。

 

「あー……わかった、わかった、わかったぜ……おじさん」

 

 目当ての単語を少女から引き出した彼は満足したのか、元の位置に戻って話を再開させる。

 

「ふふ、何でしょうか魔理沙さん?」

 

「……香霖と何かあったのか?」

 

「特に変わったことがあった訳ではありませんが、昨日お会いしてからずっと幻想郷の話や妖怪、幽霊、道具などの話で盛り上がってしまいましてね。夜遅くまで付き合わせてしまったのですよ。いやー、申し訳ない」

 

 確かに霖之助は疲れたような表情をしている。目に隈を作り、昼を過ぎたとの言うのにボサボサ頭だ。本当に休んでいたのだろう。だが、魔理沙はそれだけではないと直感する。

 

「なるほどねぇ。どうりで寝不足って感じな訳だ。しかしだな、たかが寝不足で香霖が仕事を休むとは思えん」

 

「久しぶりの徹夜だったから疲れたんだよ。僕だって疲れることくらいはあるさ」

 

「そこのおじさんは元気なのにか?」

 

「僕は徹夜には慣れていますから」

 

 同じ時間を過ごした両者のテンションは明らかに違っていた。右京は笑顔、かたや霖之助は暗い顔。まるで勝者と敗者である。

 何かあると悟った魔理沙は真相を探りに掛かった。

 

「おじさん、幻想郷に来てからのことを一から教えてくれ」

 

「一からと言うと……どの辺りからにしましょうか?」

 

「そうだな――幻想郷に足を踏み入れた時からでいい」

 

「わかりました」

 

「!?」

 

 彼女の問いに右京は快く頷く。

 霖之助が「おいおい、魔理沙――」と口を挟もうとするが、顔をニヤつかせた魔理沙に制止された。

 

 右京はとある神社を散策中に偶然、石と骨が無造作に置かれた広場に迷い込み、見えない物や害虫と鼠、さらには怪しげな歌が聞こえてきたので咄嗟にスマートフォンのアラーム音を鳴らし、隙を作って逃げたことを話した。

 

 魔理沙は「表からやって来た人間がよく無縁塚から生還できたもんだな……」と呆れ顔で語った。

 無縁塚は幻想郷で一番、危険な場所である。身寄りのない者たちの集団墓地みたいな場所であるため、外からの漂着物がしょっちゅう流れ着くので、それを狙う妖怪や命知らずの人間が定期的に訪れているらしい。

 

 霖之助も商品を集める理由で定期的に無縁塚へ足を運ぶそうだ。彼は妖怪とのハーフなので人外たちも手を出さない。

 

 しかし、人間のような弱い生き物は妖怪の餌でしかなく、軽い気持ちで訪れた里の者や偶然辿り着いた表の世界の人間は食べられてその生涯を終えるケースが後を絶たない。

 霖之助から実情を聞かされた右京は「僕は運がよかった訳ですか」と真顔で答えていた。

 そして話は右京が香霖堂を訪れて店主と交渉している所に差し掛かる。

 

 やけに霖之助が慌てているので、魔理沙は「詳しく教えてくれ」と念押しし、右京が要望通りに詳細を語った。

 数分後、先ほどの不機嫌が嘘のように少女が腹を抱えて笑い出した。

 

「だっははははははッ!! そういうことかー! 香霖が寝込んだ理由がわかったぜー!」

 

「それはよかった」

 

「ぐぬぬぬぬぬぬぬぬ……」

 

 爆笑する魔理沙は悔しがる霖之助を余所に、この面の皮の厚い店主が体調不良に陥った真相を饒舌に語り出す。

 

「まさか、天下の香霖堂店主である森近霖之助様が外からやって来たばかりの何も知らないおじさんにタダで拾った本を一冊一円で吹っ掛けようとしたら思わぬ反撃に遭い適正価格で買われてしまったなんてな!」

 

「それくらいの……価値がある本だと思ったのさ……」

 

「おまけに雑談ついでに幻想郷のことを教えて知識を与えた挙句、寝床も用意するハメになった――くくく、それは私でも寝込んでしまうぜっ」

 

「うぐぅ……」

 

 魔理沙の解説にぐうの音も出ない霖之助。

 さすがにそれは可愛そうと思った右京が助け舟を出す。

 

「いえいえ、そうとは限りませんよ。僕にとって幻想郷の本は貴重です。それを加味して霖之助君は値段を設定したのです。そこを僕があの手この手で値切っただけです。それに霖之助君は僕が選んだ本を拾ったとは口にしませんでした。

 なので、僕は普段通りの値段で買わされたと言うことになります。つまり、商売人として霖之助君は利益を得た。利益を出した以上、この勝負は霖之助君の勝ちだと言えますねえ」

 

「確かにおじさんの言う通りだな香霖! ぷぷっ!」

 

「……」

 

 香霖堂の商品は拾い物がほとんどなので実質ゼロ円である。

 おまけに買いに来る者もあまり多いとは言えないので、儲けられる時は少しでも儲けたかった。そこに幻想郷のレートを知らない右京が現れたので本来ならチャンスのはずだった。

 それを右京の手腕で潰された挙句、商売人の命たる情報を聞き出されて寝床まで用意するハメになったのだ。

 

 これは香霖堂始まって以来の大敗北である。年齢も妖怪とのハーフである霖之助のほうが年上であり、年下の――それも外の人間にこんな真似されては、さすがにショックを隠せないだろう。

 おまけに自分を追い詰めた相手にフォローされるという何とも情けない結末に霖之助は反論するのを止めた。

 右京が霖之助を気遣う。

 

「霖之助君、随分とお疲れのようですねえ」

 

「ええ……」

 

「それはよろしくありませんね。是非元気になって貰いたいところです」

 

「そんな簡単に元気になれるような物ではありませんよ……」

 

「心の傷だもんな~」

 

 魔理沙はそう呟きながら霖之助の肩をポンっと叩いた。

 励ましか追い打ちなのか、よくわからない行為に当の本人はムスっとした表情を見せた。

 その光景を見てか、右京はある提案をする。

 

「でしたら、僕が一役買わせて頂きましょう」

 

 彼の言っている意味がわからず、二人は顔を合わせた。

 キョトンとする両名を尻目に右京が霖之助に訊ねる。

 

「霖之助君、君の家にはティーポットがありますね?」

 

「ええ、ありますが……」

 

 見せた訳でもないのに何故、知っているんだ? という顔を浮かべる霖之助。

 右京は両手をパンと叩いた。

 

「それはよかった! これで僕、自慢の紅茶を淹れることができます」

 

「「紅茶?」」

 

「ええ、僕は紅茶が大好きでしてね。いつでも飲めるよう、常にカバンの中に入れて持ち歩いて居るんですよ」

 

「紅茶ですか」

 

「はい、僕オススメの疲れに効く紅茶です。当然、味も保障しますよ」

 

 霖之助は面倒なことを言い出したなと思い、怠そうな態度を取った。

 そんな店主の姿を面白く思ったのか、友人である魔理沙は右京を援護する。

 

「いいじゃないか香霖! せっかく外の紅茶が飲めるんだし、ご馳走になろうぜ! だから、早いとこティーポットを用意してやれよ! もちろん、ティーカップもだぞ」

 

「魔理沙……」

 

 彼女にまで言われてしまったら、どうしようもない。

 霖之助は渋々、ティーポットとティーカップを用意しに台所へ入って行った。

 その際、魔理沙は「私の分もよろしく」と右京に告げ、彼もまた「もちろんです。あなただけ除け者なんてマネはしませんよ」と返す。

 彼女は「良い心掛けだぜ」と親指を立てた。

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