【完全版】相棒〜杉下右京の幻想怪奇録〜   作:初代シロネコアイルー

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第7話 その時は突然に

 

 朝の七時。里の人間が本格的に活動を始める頃、右京と霖之助は里へと続く道を歩いていた。通るルートは昨日と全く同じである。

 

「自然が豊かですね、霖之助君」

 

「それだけが取り柄の場所ですから」

 

 空は雲一つなく晴れ渡っている。降り注ぐ太陽の光もまるで笑っているようだ。絶好の外出日和に右京は心を躍らせていた。反対に霖之助にとっては珍しくはないので軽く返した。

 右京は歩きながら周囲に目を配る。

 

 舗装された道と両サイドの生い茂った木々が里まで続くだけの道。これだけなら表の日本にも存在するので幻想郷ならではの風景とは言えない。

 しかし、彼は自分が幻想郷でこの道を歩いていることに意味があると考える。

 

「とても素敵な場所ですよ。幽霊や妖怪と人間が共存しているのですからねえ。表の日本でこんなことを言っても、オカルト扱いなのが非常に悔やまれます」

 

「でしょうね。ですが、僕は表の世界に憧れています。あっちの世界へ行ったら是非とも高性能の()()が欲しいところです」

 

 霖之助の言う式神とは、古来日本に伝わる紙の式神ではなく、数々のメカメカしい部品で作られた現代の式神――つまり()()()()()()()である。

 右京は霖之助との会話で彼がそれを式神と呼んでいると知り、思わず「そういう見方もできますねえ~」と感心していた。

 

「式神も色々な種類がありますよ。君が持っている大型の式神よりも小型で高性能の式神が」

 

「折り畳み式の式神ですか?」

 

「ポケットサイズの式神もありますよ。ここに」

 

 右京はポケットからA社製のスマートフォンを見せる。

 

 独特のカバーに覆われた黒い物体は幻想郷人の視線を釘付けにさせる。

 

「スマートフォンですか……」

 

「非常に高性能な式神です」

 

 霖之助は喉から手が出るほどスマホを欲しがる。

 

「むむむ、是非とも欲しい……」

 

「僕が表の世界と行き来できるなら、君にスマホやノートPCの一つや二つ、買ってきてあげたいのですがね」

 

「簡単には通れませんからね。この結界は……」

 

「残念ですねえ」

 

 幻想郷の結界はとても強固で現代の技術を以てしてもこじ開けられるものではない。その強固さ故、幻想郷内からであっても、一部の存在を除いて行き来さえままならない。

 妖怪とのハーフとはいえ、非力な霖之助ではどうしようもない。だからこそ右京のような存在との交流は貴重なのだ。

 

 しかしながら、霖之助を含む幻想郷の妖怪は癖が強く、商売人としてのプライドが強い彼は右京に挑んだ末、コテンパンにされる。

 それ以降、霖之助は杉下右京を侮れない相手として認識――対等な関係を築く方向にシフトしたのだ。

 

 右京は思う。これがもし、元相棒の亀山薫だったら、いいように利用されていたのだろうと。

 元相棒の顔を思い出すと、ついつい右京の口元が綻ぶ。

 

(亀山君は元気にしていますかねえ~)

 

 異国の地に居る元相棒と、日本であり日本ではない場所に居る自分を重ねたのか、和製ホームズはあの時を懐かしんだ。

 何故、こんなことを思うのか、今の彼にはわからなかったが、次第に不思議な気持ちに駆られた。まるで()()()()()()()()()のように。

 十分後、里が見えてくる。

 

「もう少しで里ですね」

 

「ええ」

 

 里まで後、百から五十メートルの距離に二人はいる。

 そのタイミングで、右京は左前方から複数の鴉が茂みの中で騒いでいるのに気付く。

 霖之助も同様で、鳴き声に反応した。

 

「やけにうるさいですね。しかも、こんなに居るとは……」

 

 数えただけで十羽以上の鴉が茂み上空を旋回している。

 

「この辺りは鴉が多いのですか?」

 

「いや、ここまで多いのはちょっと珍しいですね」

 

 霖之助の話を聞いた右京が通路の端に身体を寄せて、臭いを嗅ぐ。澄んでいるはずの空気の中に刺激臭のような異臭が漂っていた。

 刑事の脳裏に電流が走る。

 

「死臭がします――霖之助君、ここで待っていてください」

 

「はい?」

 

 状況が読み込めない霖之助を置いて右京は茂みの中へとグイグイ進んでいく。

 途中、霖之助が「危ないですよ!」と叫んでいるのが聞こえたが、その臭いの正体

を確かめずにはいられなかった。警察官の本能だ。

 茂みの中を進むこと三十秒。右京は開けたスペースにて鴉が何かに群がっているのを突き止める。

 彼はジッと目を凝らし、そして――

 

「これは!?」

 

 叫んで周囲を囲む鴉たちを脱いだ上着で追い払う。

 心配になって後方から追い掛けてきた霖之助は右京の行動が理解できず、立ち尽くしている。鴉がその場から逃げていくにつれ、横たわる物体が姿を現す。

 それは右京が日頃から見慣れているものだった。

 

「霖之助君! 人の遺体です!」

 

「なんですって!?」

 

 後方で待つ霖之助には右京が邪魔でその物体が見えてなかったが、右京にははっきりと見えていた。

 遺体は若い男性で、鴉などの動物によって食い荒らされており、ぱっと見では判断が付かないほど、その表面がグチャグチャになっていた。

 内臓こそ出ていないが、顔周辺は啄まれた影響か、損傷が激しく、皮を剥がされ肉を千切られて、髪型くらいしかまともに確認できない。

 それはチラっとしか見ていない霖之助が悲鳴を上げながら尻もちを突くほどに酷かった。

 刑事が遺体に近づき、その特徴を探す。

 

「遺体は男性ですね。歳は若い……これは――」

 

 遺体を観察し、思いつく限りの特徴を挙げる。

 

(比較的高い身長、現代風の髪型であった痕跡、肌の色、骨格、そして動き易そうなスニーカー……)

 

 そこから、とある人物が浮かび上がる。

 その人物は昨日、酒場で出会い、表の社会で居場所を失いつつも人間の里で新たなスタートを切り、好意を寄せる女性と共に働く軽いノリだが、一途な人物。

 

(なんてことですか――)

 

 和製ホームズは右拳をギュッと握りしめ、絞り出すような声で零した。

 

「敦君……」

 

 目が充血し、顔面をプルプルと震わせながら右京は遺体を凝視している。そこには言葉では言い表せない悔しさがにじみ出ていた。

 後方から霖之助がそっと近寄る。

 

「お知り合いですか!?」

 

「……僕同様、表からやって来た日本人の青年です。昨日、酒場で働いていると聞いてお話を伺いました。とても、よい青年で酒場の店主の舞花さんを非常に慕っていました。きっと……生きていたら結婚だって夢ではなかったでしょう」

 

「そうでしたか……」

 

 惨状を目の前にしてハーフの青年は半ば放心状態だった。かたや右京は手を合わせ、遺体の隅々までチェックする。

 霖之助は敦が何らかの理由で夜間、外に出てしまい、野犬に襲われて命を落としたのだろうと考えて同情する。

 幻想郷の掟で人間の里の周囲には人を食う妖怪は近付かない。

 人里のすぐ近くで亡くなったので、妖怪ではなく、凶暴な野犬の犯行を疑うのが一般的で、その後、明るくなって遺体を発見した鴉に啄まれた。

 遺体の損傷度からすれば通常ならば、そこで終わる――が、この場にいる男は他とは違う。

 右京は首や腕に野犬ではマネできない傷や身体の何か所かに不可解な痕跡があるのを突き止め、叫んだ。

 

「霖之助君、これは――――()()()()です!」

 

「はい!?」

 

 殺人事件と聞いて霖之助は激しく動揺した。

 

「これは……野犬による仕業ではないのですか?」

 

「ええ。遺体には刃物を防いだとされる防御創がいくつか見られます」

 

「刃物……? 爪痕では?」

 

 霖之助は吐き気を催しながらも遺体に目を通す。遺体の左掌と両腕には鋭利な物で切り裂かれた痕が残っているが、それだけで断定出来るものではないと霖之助は考える。

 右京は左掌の切り傷を指差した。

 

「よく見てください。刃の破片が残っています。おそらく犯人と揉み合う最中、固い何かにぶつかった衝撃で刃こぼれを起こしたのでしょう」

 

 右京は左掌をスマホで撮影してからカバンの中に入っている手袋とピンセットを取り出し、遺体に余計な痕跡を付けないように破片を回収。小型のビニール袋に保管する。

 その手際のよさに霖之助は「さすが表の刑事だ……」と息を飲んだ。

 

 次に彼は鴉に啄まれた頭部を見やる。うつ伏せで倒れている敦の後頭部には出血した痕跡が見られた。

 遺体周辺を荒らさないよう、そっと頭部へと回り込む。後頭部の下には野球ボール程度のゴツゴツした石が半分埋まっており、血がベッタリ付着していた。

 

「直接的な死因は後頭部を殴打したことによる脳挫傷でしょうか」

 

「首や喉付近にも切り傷が付いてますが……?」

 

 霖之助が指摘する。

 

「確かに付いていますが、どれも浅く致命傷にはなりえないでしょう」

 

 霖之助の指摘通り、首筋や喉周辺にも切り傷らしい外傷が存在した。刑事の見立てでは傷は浅く、致命傷には至らないだろうとのことだ。半人の青年は「なるほど……」と呟く。

 口元を抑え、恐怖から息を荒くする霖之助に右京がある頼み事をする。

 

「霖之助君、至急、上白沢先生のところへ行き、ここに人の遺体があると伝えて人手を寄越すように言ってください。出来れば医療に携わる人も連れてきて貰えると助かります」

 

「僕がですか!?」

 

「他に誰かいますか?」

 

 厄介事に巻き込まれるのが嫌いな霖之助は自分から率先して動こうとはしない。

 右京はそれを見越して先手を打つ。

 

「彼は表の世界から来たとはいえ、人里で受け入れられ、酒場で働く明るい青年でした。交友関係も広く、顔見知りも多いと思われます。そんな彼が帰らぬ姿で見つかったのにも関わらず、遺体の第二発見者となった君が知らん顔だったなどと知れたら人間性が疑われますよ?」

 

「うっ!?」

 

「そういうことです。お願いします」

 

「……はい」

 

 右京は有無を言わさず、霖之助を慧音のところへ行くように仕向けた。ハーフの青年は軽くため息を吐くも正論過ぎて反論できない。

 くるりと背を翻して里に向かおうとする霖之助に刑事が更なる注文を付ける。

 

「それと、ついでに六十尺程度であまり太くない縄を持ってきてください」

 

「……わかりました」

 

 霖之助は損な役回りだと思いつつも、里へと急いだ。右京はその間、スマホで遺体の写真を撮っていた。かなりグロテスクな遺体だったが、顔色一つ変えずに作業を続ける。

 その目には敦への憐みと犯人への怒りが込められていた。

 十分後、話を聞いた慧音と複数の若者達が駆けつける。

 この惨状に慧音は言葉を失う。

 

「敦君……どうしてこんなことに――」

 

 悔しさを滲ませながら言う。自分が助けた子がまさかこんな形で亡くなるとは思っていなかった。酒屋でいつも舞花と夫婦漫才をしていた彼はもう居ない――居ないのだ。彼女は右拳を近くにあった木に激しく叩きつける。

 荒れる慧音を尻目に右京は霖之助が持ってきたロープで遺体の周辺を囲むように木々に固定していく。

 慧音が絞り出すように訊ねた。

 

「杉下さん……敦君は……本当に……誰かに殺されたのですか……?」

 

「はい、誰かと争った形跡があり、かつ左掌から刃物の破片が出てきました。間違いないかと」

 

「そう、ですか……」

 

 慧音はショックを隠し切れない。気遣い程度に右京が「お気を確かに」と話しかけたが反応はない。

 その後、刑事は鑑識レベルとまでは行かないが、的確な手順で現場の調査と保存を行った上で若者たちに周囲を荒らさないように遺体を移動させ、麻袋で覆わせてから担架に乗せて村の診療所まで運ばせる。

 残った霖之助と慧音に和製ホームズは遺体現場から発見した情報を伝えた。

 

「お二人とも、よく聞いて下さい。敦君の死亡推定時刻は大体、深夜一時から二時の間だと推測できます」

 

「死亡した時間!? そんなのまでわかったんですか。この短時間で?」

 

 驚く霖之助に答える。

 

「大まかではありますが、死後硬直や死斑などで割り出しました」右京が続ける。「僕たちと魔理沙さん、霊夢さんが酒場を出たのは二十三時頃です。その際、敦君は舞花さんと一緒に僕たちを見送りしてくれました。その後、三時間以内に敦君は殺されたとみていいでしょう。僕は舞花さんにお話を伺いに行きます。お手数ですが上白沢さん――どこか空いている小部屋等を貸して頂けないでしょうか?」

 

「小部屋……ですか?」

 

「事件の考察をするにも外ではやり辛いので……。お願いできますか?」

 

「わかりました……。用意します」

 

「それと霖之助君」

 

「はい?」

 

「重ねて申し訳ないのですが、魔理沙さんと霊夢さんを呼んできて貰えませんか?」

 

「え?」

 

 霖之助は戸惑う。また自分なのか? と。

 

「今回の事件は里のすぐ近くで起きました。ですが、犯人が人間か妖怪かまでは判別しかねます。そこで対妖怪専門家である彼女たちの意見がどうしても聞きたい――ですので、呼んで来てください」

 

「え、あ……」

 

 霖之助は断ろうとも思ったが、落ち込んでいる慧音の姿が目に入り、断り辛くなって渋々了承する。

 

「……わかりました」

 

「どうもありがとう」

 

 手短に礼を述べ、右京はこの場を去った。里に戻った彼は舞花の元を訪ねる。

 

「舞花さん。いますか?」

 

 閉まっている酒場の扉を何度かノックするも返事がない。

 すると隣人が出てきて「舞花ちゃんなら診療所へ向かったよ」と教えてくれた。そのまま診療所の正面に着いた右京は女性の泣き叫ぶ声を耳にして舞花が居ると確信する。説明の段取りを脳内で整え、深呼吸ののちに敷地内に足を踏み入れる。

 診療所先生に事情を伝えて遺体が置かれる部屋へと案内して貰う。

 そこには予想通り、敦の死体に涙を浮かべる舞花の姿があった。

 

「敦君! どうしてこんなことに……」

 

 顔を手で覆い隠しながら呟く彼女に診療所の先生は残念そうに肩を落とす。右京はそんな彼女を見てまだ話を聞ける段階ではないと判断し、先生と一緒に一旦部屋を出る。

 

 その場所を離れた彼は先生に自身の素性を打ち明けて、遺体に何か変わったことがないか訊ねた。

 先生も動揺しているのか「今までこんなことはなかったのでよくわからないのよ。怪奇事件ならそれなりの頻度で起こるけど、ここまで凄惨なものは……」と言葉を濁した。続けて「この里では殺人事件は起こらないのですか」と重ねて質問する。

 先生は「そりゃあ、里の外で妖怪に食われることはあるわよ。でも里の中や目と鼻の先の茂みで殺人が起きるなんて前代未聞よ」と答えて長いため息をついた。

 

 損傷の激しい遺体を目の当たりにした影響か、彼女は平静さを失っているように思える。この遺体を処理しなければならないのが重荷になっているのだろう。

 有益な情報を得られないと判断して会話を切り上げ、右京は外に出た。

 診療所の外で彼は一人思考を巡らせる。

 

「ここは平和な里だったのでしょうね」

 

 妖怪に囲まれた閉鎖空間でありながらもこの里の中では殺人事件が発生したことがない。

 それはきっと、慧音や霊夢のような里を守ろうとする者たちの働きによるものだと右京は勘ぐった。

 数十分後、右京は再び診療所内へ入り、舞花と面会する。

 

「舞花さん、大丈夫ですか?」

 

「はい……何とか……」

 

 右京の正面に座っている舞花は突然の出来事に茫然としている。酒場で笑っていた舞花とはまるで別人であり、小さな声で敦の名前を繰り返し言っていた。

 右京は舞花に訊ねる。

 

「舞花さん。非常に申し訳ないのですが、昨日、僕たちと別れた後の敦君についてわかる範囲で教えて頂けませんか?」

 

「え……? 敦君の……こと……?」

 

 何故そんなことを聞くのか理解できない舞花はその赤くなった眼で正面の男をジッと見つめる。

 刑事は静かに告げた。

 

「落ち着いて聞いてください。敦君は何者かに殺害された可能性があります」

 

「え……」

 

 衝撃の事実に舞花の開いた口が塞がらなかった。

 

「もちろん、野犬などの動物がやった訳ではありません。明らかに人並みの知性を持つ者の犯行です」

 

「そ、そんな……」

 

 敦が死んだショックとその彼が意図的に殺されたという内容に舞花は両肩を抱きながら震える。

 説得するように右京が語り掛けた。

 

「僕は敦君を殺した犯人を必ず追い詰め、捕まえてみせます。そのためにはあなたの協力が必要です。お辛いかも知れませんが、どうか僕に力をお貸し欲しいのです」

 

 舞花はしばらく無言だったが、次第に状況を理解したのか、目線を下に落としながらもコクンと頷いた。

 

「僕たちが帰った後の敦君について聞かせてください」

 

「……はい」

 

 舞花は敦との閉店後のやり取りを話す。二人は後片付けをしていた。

 

 ――今日やって来た杉下さんって人、随分変わった人だったわね。

 

 ――そうっすね。俺もあんな人初めてっすよ。警察ってもっと怖い人たちばっかりだと思ってましたけど、あの人は違うって感じでした。

 

 ――どちらかって言ったら探偵よね?

 

 ――あー言われてみればそうかもっすね。なんか小説とかに出てくる探偵のイメージっす。

 

 ――ああ、それは私も思ったわ。

 

 ――舞花さんもですか!? 一味違う大人ってイメージっすよね~。俺もあんなカッコいい人になりたいっすわ。

 

 ――敦君、キャラ違うでしょ?

 

 ――えー、いいじゃないっすか~。憧れたって。

 

 ――敦君は今のままでも十分、魅力的だと思うけど?

 

 ――あ……そうっすか……。

 

 ――ちょっと、顔赤くしないでよ!? 私まで恥ずかしいじゃない!!

 

 二人は初々しいカップルのような会話を楽しみながら掃除を終え、明日の作業内容を確認後、少量のお酒を飲む。それから間を置かず、敦は深夜一時に店を出て家へと戻った。

 自分の知っている敦の行動を全て話した舞花は暗い表情で懇願する。

 

「杉下さん。どうか……敦君を殺した犯人を捕まえてください……お願いします」

 

 右京は彼女の想いを受け止め「もちろん。全力を尽くします」と返して診療所を出て行く。

 正面入り口の門を潜るとそこに魔理沙と霊夢が上空から滑り降りるように着地して、彼に詰め寄った。

 

「おじさん、香霖から聞いたぜ!? 酒場の店員が何者かに殺されたって本当か!?」

 

「僕はそうみています」

 

「犯人は誰なんですか!?」

 

「まだ、調査中で何とも言えませんが、知的能力のある者の犯行だと思います」

 

「「――ッ!」」

 

 右京の話を聞いて動揺を隠せない魔理沙と憤る霊夢。

 二人の反応を見た右京は協力を依頼する。

 

「僕は敦君を殺した犯人を捕まえたいと考えています。お二人とも、協力して貰えませんか」

 

 右京の要請に魔理沙は「わかった」、霊夢は「はい」と承諾する。

 同時に慧音が右京たちの目の前に姿を表した。

 

「杉下さん、先ほど仰っていた部屋ですが、寺子屋の近くに空き家があるらしく、所有者から使ってよいと許可を得られました」

 

「それはよかった。皆さん、詳しい話はそちらで致しましょう。上白沢さん、案内をよろしくお願いします」

 

「わかりました」

 

 右京とその協力者たちは慧音に案内される形で空き家まで向かう。

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