『本編完結』「魔族でも美味しく酒が飲める魔法」   作:照喜名 是空

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カス魔族はロリババアと麻雀する

 こいつものすごい魔力のロリババアじゃん……

 エルフの真似してたら本物エルフのかなり偉い人が来ちゃったよ! 

 どうしよう……よし、ここは煽ろう。煽ってこっちのペースに引き込もう。

 

「これが我々の文化ですー。地方が違うだけじゃないすかー?」

「ほう、ではお前どこの氏族だ。地方は? エルフだと主張するからには当然言えるよな?」

「ポコペン村」

「殺すぞ」

 

 今だ! 今しかない! アタシは立て板に水と早口でしゃべりまくる。

 いやーな汗が出てきたよ! 

 

「じゃあ嘘だって証拠はあるんすか? これ以上言っても埒があかないですよね? じゃあ賭けで決めませんか? あなたほどの大魔使いがまさかこんなクソガキの賭けから逃げて暴力に走りませんよね? それに見たくないですか? もしアタシが負けてすべて毟られて真っ青になるの。どうすか? 一手ゲームしません?」

 

 言い切ったー! 言い切る前に殺されなくってよかった! 

 ロリババアは垂れ目をさらにジトっとした怒りの顔でアタシを見上げる。

 

「お前いい度胸だな。良いだろう安い挑発にのってやる。それに貴様が震え上がるのもたしかに見たくなった。楽に死ねると思うなよお前」

「グッド! じゃあ何にします?」

 

 よし! 番外戦術に持ち込めた! まずは即殺はされない……はずだ。

 

「ワシェズマージャンだ。聞いたことないか? んん? エルフに古くから伝わるクソみたいな賭けだぞ。クソガキには早いゲームだったか?」

「マージャンすか? できますよ。鷲頭麻雀じゃなくって? それってひょっとして牌が透明で血液をかけたりするやつであってます?」

「クハっお前どこでその正確な発音も知ったんだ。それだ。やるよな当然。んん? お前が持ちかけた勝負だぞ」

 

 アレかあ~! 陰険な勝負を仕掛けやがるよこのババア! ムチムチしやがってよ……

 アタシは動揺を顔に出さずに平然と見えるように淡々という。

 

「いいすよ。レートは?」

「お前は百点100cc、私は点10日お前を見逃そう。持ち点は二十万だ」

「あたしら全員見逃してくれません? 魔力も賭けますよ」

「なら点一日だ。これ以上は負からんぞ。それに……お前が賭けるのは魔力の最大容量だ。本当にいいんだな? 今なら楽に死ねるぞ」

 

 これは逆にチャンスだ。魔族なら絶対受けない。魔族にとって魔力量は尊厳だ。

 人間で言えば負けるごとに顔の皮はがしますよ、くらいのアレになる。

 だからこそアタシは受ける!そしたら鬼族は魔族とはちょっとは違うなって生かす方向に興味がわくかもしれないじゃん?

 

「いいすよやりましょう。そっちのオヒキは?」

「クク……本当にいい度胸だな。当然いる。おいレルゲン!」

「はい。ここにいますゼーリエ様」

 

 なんか……誰も気づかないレベルで隠れてた爺さんが出てきた……なにこれ怖っ、このロリババア暗殺者でも育ててるの? 

 

「久しぶりに打つぞ。お前がオヒキをやれ」

「光栄です」

「お前の方は?」

「アウラ。お前がオヒキだ」

「わ、私吐きそうなんだけど……」

「やらなきゃ死ぬだけだ。腹くくれ」

「なんで私もこんな目に合わなきゃいけないのかわからないじゃない……!」

 

 アウラは歯を食いしばり滂沱の涙を流しながらアタシとレルゲンを名乗るじいさんと共に麻雀卓をセットしていく。

 なんということでしょう。街角の一部が素敵な雀荘に。

 床にはふっかふかの絨毯です。その上にはコタツになりそうな正方形のちゃぶ台。

 机の上にあるのは禍々しい麻雀パイです。一体何人を殺してきたんでしょうか。

 ちなみに歌を聴いてたギャラリーは全員逃げました。楽団員は腰が抜けてます。

 

「はじめるぞ」

「あっ、はい……」

「ひい、ひいい……」

 

 あれから交渉で血液と魔力はアウラではなくすべてアタシ持ちにした。

 アウラは乾いた笑いをしていたし、アタシは腕から血管に針ぶっ刺されていた。

 つなぐ先はなんかヤバそうな魔道具だ。

 アウラの牌を握る手がぶるぶる面白いくらい震えている。落とすなよ。

 落としたらこれ罰金発生するルールだからな。

 ジャラジャラ、ジャラジャラと牌を混ぜる音が続く。

 

「それさ……たぶん半分は周りの人間を気遣ってるか試してるんだろうけどさ。アタシは気にしないけどすごい失礼だからやめなよ」

 

 とりあえず探りを入れてみるか……こいつこれでも実力隠してるんじゃないの? 

 

「何のことだ? 心当たりが多すぎてな。そも魔族に尽くす礼などない」

「だろうね。でもやっぱそうなんだ。ごまかしてるでしょ魔力」

「だとしたら? なぜそう思う?」

「顔に書いてあるよ。実力も計れない間抜けがってドヤ顔してる」

「そうか? だとしてもそんなことを気にするのは狭量な魔族だけだろうな」

 

 アウラがこいつマジか、という顔でひゅっと息をのんだ。

 まあこの時点でもうおかしい魔力だからね。見たことないもん。

 七崩賢が子供に見えるレベルだからね。

 淡々とゲームは続く。アウラは過呼吸になっていたので紙袋を与えた。

 絵面があまりにもヤバい。

 

「かもね。アタシは気にしないよ。人は金か腕力で地位を計る。魔族は魔力か腕力で地位を計るってだけ。そこをごまかして得するのはズルじゃんって思うのが魔族の脳の限界だけど」

「お前は違うかのような言い草だな?」

「くだらなくない? 誰が強いだの誰がエラいだの。等しくクソだよ」

「違いない。それ天和」

 

 ちなみに天和は初手で33万分の一の確率で全部そろえるやつだ。

 絶対イカサマだが、魔法発動の気配はしなかった。

 魔法を使わずにイカサマしたのか、それとも七崩賢クラス二人でも気づかないレベルの静かさで魔法を使ったのか……いずれにせよ、こいつやり慣れてやがる。

 

「絶対サマじゃない……こんなんこんな早く揃う筈がないやつじゃない……」

「さあなあ? 日頃の行いがいいんじゃないか」

「そうだね。はい九蓮宝燈」

「ククク、やるじゃないかお前……その役は珍しすぎてやったら死ぬと言われているぞ。お前今日死ぬなあ?」

「かもね。覚悟の上だよ」

 

 ちなみにアタシは方法は伏せるが全部魔法を使わずにイカサマをした。

 つまり……この麻雀卓はこれよりルール無用のバーリトゥードとなる。

 

「ところで人は亡骸に敬意を払うが、何故だと思う」

「魔族らしい答えなら、親しい相手の身体を弄ぶのはそいつを大切に思う自分を舐めてるから。とかかな。大抵の魔族はここまで言語化できないよ。そもそも死んだヤツに執着しない。だって魔族は塵になるから」

「人間なら? 人間だと主張するなら当然わかるな?」

「生きてる間一生懸命生きたんだから、死んだ後くらい傷つけられなくてもいいでしょ」

 

 アタシがそう答えるとゼーリエは少しだけアタシの方を見て、今度はキセルで煙草を吸った。

 なんか凝ったキセルだね。どこかの先住民族とかが使ってそうな羽根のついたバカでかいやつ。

 火はレルゲンって爺さんがつけてた。なんか将来孫か甥っ子あたりが同じことしてそう。

 ロリコン野郎なのか……?いや、ロリババア好きなのかもしれない。

 

「ふん……よく観察していることだ。だがなぜそこまで至れた? お前は魔族にしても若いだろうに」

「アタシはさあ……嫌なんだよ。人間にしても魔族にしても盲いてるも同じだ。脳に瞳が必要なんだよ。私の中の獣性を檻で閉じ込めたい、いや、脳という檻の外の世界を見たい……そう思わない?」

「お前誰からその言葉を聞いた」

 

 ゼーリエが一瞬真顔になった。やっぱあいつヤバいよね。

 

「頭に檻被ってる学者のオッサン」

「クズにはクズが集まるものだな」

「同感だね。はい一気通貫」

 

 良し……イカサマ合戦は水面下で続いているが、今はアタシが有利だ。

 ちなみに、何度かゼーリエのイカサマをアタシは阻止している。

 アウラはもう泣きながら煙草を吸い、震えながら牌を切っていた。

 あれはもうカカシにしかならねえな……

 

「お前、好きな魔法は何だ? 欲しい魔法でも良い。あるよな? お前が魔族じゃないというなら」

 

 魔族だったら自分の魔法が一番!ほかの魔法は欲しくないって言うからな……

 アタシは普通にシナジー見つけ出したり、パーツごとに分解して組み合わせて新しいの作るの好きだけど。

 

「あー……それはどのレベルの話? マジで一生一度のチャンスとか? 逆に子供が南の勇者と北の勇者の……ええと、ヒンメルだっけ。どっちが強いって話すレベル?」

「両方話せ」

「ガチで遊び無しで答えるなら『魔法を記録する魔法』かな。自分の使える魔法をコピーして記録して他人が使えるようにする」

「お前、厄介な事を考えるな……お前はカスだ。世界中が魔法を売り買いする世界にする気か?」

 

 ゼーリエはまたジトっとした目で見てくる。睨むなよ……本当に怖いんだって!

 

「だからアタシはそれは欲しくない。でも一番便利だし、与える影響が大きい。何より魔法は組み合わせてシナジー作るときが一番楽しい」

「フン、では好きな魔法は? ガキの話すレベルで良い」

「なら戦う手段としてなら『 石を弾丸に変える魔法(ドラガーテ)』だね。ああいう素直でシンプルなのが一番良い。殺しの道具はシンプルで頑丈なのがいいんだよ」

「面白みのないやつだ」

「ちなみに今一番必要な魔法は「空気を任意に振動させる魔法」かな。新しい楽器が必要なんだよ。あー、『高速で移動する魔法(ジルヴェーア)』の加速理論はパーツ取りとしても欲しいし……」

 

 欲張りだなって顔で見られてる……

 

「ああ、でも……一番いいなって思ったのは『夜空に花火を咲かせる魔法』だな。ロマンがある。花はパッと咲いて散るからいいんだよ」

「くだらんな」

 

 おっ、ちょっと笑った。

 

「そうだね。じゃあ逆に聞くけど『この世にあってはならない魔法』があると思う?」

「ない。全ての魔法は発展に必要な物だ。停滞しきった世界は終わった世界だ」

「……そっか。じゃあそれが有効範囲15kmくらいで、殺傷範囲3km、手段は……アレと同じくらいの温度と光で焼き殺す。あと爆風。そんなのがあったらどうすんの」

 

 アタシは沈みつつある太陽を指さす。ロリババアは明らかに顔色が変わって立ち上がった。

 

「お前! ……お前、あれを知っているのか……おい、ウソ偽りなく答えろ。お前は、今、アレができるのか」

 

 こ、こええー!なんか手に見たことがない魔力が集まってる……ウソ判別だけじゃないだろそれ。絶対なんかもっとヤバい魔法だろ。

 

「できないし、したくない」

「ウソではない、か……使うなよ。あれだけは絶対に使うなよ」

「だから言ったじゃん。『この世にあってはならない魔法』だって」

「……一本とられたな。そうだ。あれは『まだ』この世にあってはならない魔法だ」

「あんなんこの世の終わりまで作られない方が良いよ。世界が終わるじゃん」

「ハン、人間は案外強かなものだ。滅びんさ。ロン。国士無双」

「そうかなあ……あ、それロン、槍槓。ご無礼……キキキ」

「このクソガキが……!」

 

 そして勝負は、ぎりぎりでアタシの勝ちだ。

 途中でマジで死ぬかと思うような量の血を取られたりしたけどなんとか取り返した。

 

「勝ったわ! これ勝ちよね! じゃあ見逃してください……! もうこりごりじゃない……!」

「いつ私が半荘だけと言った? もう半荘だ……! エルフのマージャンは徹マンが基本だぞ」

 

 逃げ出そうとするアウラを魔法で強制着席させて目を光らせて牌を混ぜるゼーリエ。こええよ……

 だがアタシも博徒だ。腹をくくって淡々と牌を混ぜる。賭博続行だ……! 

 

「今度は金も賭けて下さいね。点10で」

「良いだろう。おいレルゲン! 私たちの今の有り金は?」

「三百万までならすぐにでも。残りは私が手形で払います」

「いや、私が借金しよう。いくらまでなら借りれる?」

「1億ほどなら無担保でいけるでしょう」

「そういうことだ。続けるぞ」

「じゃあやりましょう」

 

 この時点でアウラが気絶して倒れた。ぱたりと横になったアウラを介抱しているのはマハトだ。リーニエ含めほかの楽団員はもう腰が抜けてる。

 マハトも最初からいたが、アタシが戦わずに場を収める流れにしたので黙って観察していたのだ。

 

「おやおや、オヒキがいなくなってしまったな? どうする?」

「俺がやろう。ルールは見ていてだいたいわかった」

「命知らずがまた一人か……面白くなってきたな」

 

 ジャラジャラ、ジャラジャラと麻雀は続く。

 ちなみにマハトは普通に強かったしイカサマもやれてた。

 どうなってんだよお前の勝負強さは……

 そのおかげで割と大きめの勝ちを拾えた。

 

「ゼーリエ様、恐れながらもうとても払える額では……」

「チッ……命拾いしたな」

 

 金貨袋を投げつけて立ち上がろうとしたゼーリエの手を掴んで止める。

 

「いや……まだいけるじゃないですか……! じゃあこうしましょう……これは融資……! 1万年、無利子で私たちが借りてるということで……! もちろん私たちだって魔族じゃありません……現金化は年一億まで……どうです……? 

 ほんの一億……あなたの魔法でなくとも……その知識をちょっと本に書いて売ると言うだけで何億でも出す人はいくらでも……さあ続けましょうよ……エルフのマージャンは徹マン……そうでしょう……? やりましょうよ……青天井ルールで……!」

 

 ざわ……ざわ……と風がそよぐ音がする。それともこれはアタシの血流の音だろうか?

 

「後悔するなよこのクソガキが……!」

「クカカ……狂気の沙汰ほどおもしれえんだよ……!」

 

 こうして、レートの上下する狂気の賭けでゼーリエから執行猶予1万年と150億の借用書、現金一千万を手に入れた。

 この借用書がある限りあいつは一万年無利子で現金1億を年一で私に貸さなければならない! 

 打ち出の小槌ってやつだな。

 

 なお、後日なぜかアタシ達が賭けてた領地では一週間前から賭博が禁止されてた事になり、賭博での借金は無効とされた上、借用書をよくよく見ればゼーリエの息のかかった商会でしか現金化できないことになってた。

 当然アタシ達は永久出禁とされている。

 

 やられた! 一本上手だったよあのババア! 

 

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