『本編完結』「魔族でも美味しく酒が飲める魔法」   作:照喜名 是空

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カス魔族と勇者パーティーその②

 

「あんだぁ-? もう酒がないってかー?」

「ハハハ、少し飲みすぎましたね。お開きにしますか?」

 

 結局ハイターの回復魔法ありきで店の酒全部飲んじゃったよ……ハイターこいつ僧侶としての才能すごすぎない? どうなってんの。

 

「んじゃあもう一杯だけ! もう1杯だけな! お前の呑みっぷりに敬意を表してアタシの魔法を2つみせてやるからなー『安酒を出す魔法(オニコーロ)』!」

「すごい! 酒が出てきた! 変わった酒ですね」

 

 アタシはハイターと自分のジョッキに鬼殺しを魔法で出した。っていうかハイター褒めるの上手いな。マジで喜んでくれてるのがすごいうれしい。

 

「穀物から作ったヤツだよ。マジで身体に悪い安酒だからあんま沢山飲むもんじゃないねー」

「ハハハ、ハイター向けだな。いや、逆に覚えたらまずいのかな?」

 

 ヒンメルはフリーレンを寝かしつけた後になんか戻ってきた。まあ……いろいろあるよね。年頃の女の子と男とは。まあ原因アタシなんだけど。

 

「あんま良い酒じゃないからビール飲んだ方がマシだね。まあ呑むけどアタシは」

「いただきます。うーわ安酒だぁ!」

「だろ-? すげえ安っぽい味! でも、姉さんが破滅的な酒飲みだったからなあ……思い出の味なんだよ」

「そうだったんですか……」

 

 ハイターはなんか申し訳なさそうな顔をしてるけど、姉さんはたぶんそういう顔でこれ飲んで欲しくないと思う。

 

「いや、謝らなくっていいよ。姉さんは優しい人だったけど酒に関してはマジでダメな飲み方してたから。アンタも気をつけなー」

「ハハハ、いやあ……」

 

 照れる所じゃないだろ。でも酒飲みになるとそういう所で照れるよねわかる。

 

「っつーわけで二日酔い止めをつくっとくわ『二日酔いの薬を出す魔法(カーフトカクマ)』」

「今度はシロップ薬がでてきた-!」

「どうする? 鬼の薬だぞー? 飲むかー?」

 

 ヒンメルはためらいなく飲んだ。こいつマジで勇者じゃん……どんだけ高潔なんだよ……

 

「僕は飲むよ。このままだと二日酔いがつらそうだしね。それに、なんとなく君はやらかす人だけど、悪いやつじゃあない。そう思うんだ」

「じゃあ私も。甘い! この薬甘いですよヒンメル!」

「まずくはないけど独特な味かな……」

 

 じゃあ、こいつらがついてるならこの情報公開できるね。

 

「光栄だねえ。じゃあついでにこれ、あのエルフに渡しといてよ。今使った二つの魔導書だ」

「魔導書が薄い冊子になってる……」

 

 アタシの書く魔導書は基本紙一枚か、薄い本だ。だって鬼族の他人の魔法への関心度から考えてこんくらいの長さじゃなきゃ読まないでしょ。

 

「紙一枚とかはたまにあるけど、これは初めて見るなあ」

「薄い本だよふふん」

「ろくでもない意味なのはわかりましたよ。では、この辺でお開きにしましょう」

「だってさー! ハイお開きお開き! おやすみー!」

「ええ、良い夜を」

「また明日会おう。少し遅い時間にね」

「うん、ほんじゃね」

 

 うえー飲みすぎた気持ち悪い……

 まあ、そういう訳でその日はお開きになった。問題は翌日、楽団のみんなは脳を薬で改造ってるけど補助脳ないじゃん! と気づいた時だった。

 

「えー、そういうワケでつじつま合わせるために悪いんだけど……ほんと悪いんだけど全員補助脳つけてくれるかな……あっ! 前回のマハトみたいにはならないから! 今フォルトに配ってる『今までのやらかしには罪悪感をあんまり覚えないけど、これからやる殺しについては罪悪感がその分上乗せされる』タイプだから!」

「うへえ、そんなの配ってるのお姉様……」

「自殺者が大量に出る海賊版よりマシじゃん。あとこれは市民用であって兵士用はまた微妙に設定変えてるからね」

「まあ上手くいってるならいいけど」

「で、悪いんだけど……ほんと悪いんだけど全員飲んでくれる?」

 

 アタシはワインの酒瓶に麻酔薬とナノマシン錠剤を入れる。いきなり言うことじゃないよな~とは思いつつも、意外にも楽団の奴らは覚悟を決めた顔で笑ってきた。

 

「やりますよ。イブキ様の後始末は今に始まったことじゃないですし」

「ほら、イブキさまもいつも言ってるじゃないですか~。毒食わば皿までって~」

「これだから天才は……我々凡人は乗りかかった船に乗るしかないんです。今更ですよ」

「ありがとうな、馬鹿野郎共。愛してるよー! ほんじゃみんな盃出せー。固めの酒ってやつだー。私の血中で培養したもんで悪いんだけど」

 

 ナノマシンはワインに混ぜて出された。まるで本当に血みたいだ。

 

「なーに厳かにしちゃってんだよー。ぐいっと行け! 麻酔入れてあるから!」

「こうなりゃヤケじゃない! 最後までつきあってやるわよー!」

 

 アウラが杯に注がれたワインを一気に飲んだ。続いて全員が飲む。

 

「あれ~? あんまり変わりませんね?」

「そりゃそういう風に作ってあるからね。半年くらいかけてじわじわ後から後悔すると思うよ。めんどくせーけど、まあ反省するってそういうことだから……」

「嫌だなあ~……あっ、この感じか~……すごい嫌な気分ですねこれ」

 

 飲んだ奴らが微妙な顔をし始めた。うーん、このくらいの嫌さならまあ成功だね。

 

「これが……罪悪感、か……耐えられないほどではないが、嫌な物だな」

「朝から嫌な気分です。どうしてくれるんですかイブキ様」

 

 リュグナーとリーニエが顔をどんよりさせている。アウラはきょとんとしてた。

 

「えっ!? みんなもう効果でてるの?! どうしよう私あんまり気分が変わらないんだけど」

「個人差あるからね。でもまあちょっと数日おこうか。休業だ-! みんな休め-! とりあえずその間はアウラとマハト、アタシの3ピースバンドでしのぐからゆっくりしとけー」

「ああ、ドラムならもうできる。みんな安心して休んでくれ。今は自分に向かい合うべきだ」

 

 ちなみにマハトはすでにリーニエ経由でドラムの技を身につけていた。お前本当にドラム担当って顔してるよ……

 

「は~い……うう、つらい……」

「ねえ! 私なんもないんだけど! 私だけ異常者みたいじゃない!?」

「まあおいおいね、おいおい」

 

 実はアタシもこいつマジでどうなってんだよ、と思っていたのは言わない事にする。

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