せめて、死後の世界くらいは救いを…!と思いながら書きました
一応、本編のネタバレもあるのでご注意ください
水木の彼女ということはゲゲゲの女房だ(違う)
ということで、いきものがたりの『ありがとう』のパロも少しあります
他所の小説投稿サイトにも掲載しています
平成27年某月 哭倉村
鬼太郎との長い死闘の末、今宵も狂骨が綺麗な光の粒へと変わり天へ昇って行く。
「沙代ちゃんであったか。数日前にあの男が亡くなっておるが、これも縁かのう」
鬼太郎の髪の毛の間から目を飛び出させて目玉のおやじが感慨深く呟いた。
「上手くいくでしょうか?」
鬼太郎の問いに目玉おやじは大きく頷く。
「あの二人なら大丈夫じゃ」
おやじの大きな目玉には満点の星空が映っている。その中を狂骨を形作っていた光の粒が飛びさってゆく。おやじには一瞬それが天の川にかかる橋のように見えた。
あの世へと続く道を沙代は一人歩いていた。
怖かった。どんな場所か想像がつかないし、誰がいるのかもわからない。
誰がいるのか
それを考えると気が重くなる。会いたくない方がいた。酷いことをしてしまった方。勝手に期待して、自分の汚い部分を隠して付き合おうとして、幻滅された途端に憎しみをぶつけてしまった殿方。
足元で小さな音がする。引きずるように動かしていたせいか、草履の鼻緒が切れてしまったのだ。無性に辛くなってその場に座り込んだ。
「お嬢さん、鼻緒を直しましょうか?」
懐かしい声が聞こえハッと顔を上げる。先ほどまで頭に思い浮かべていた男の姿がそこにあった。
「水木様、どうして?」
そう言ってから沙代はすぐに後ろを向く。彼の前からすぐに去らなくてはいけない。そう思って走り出そうとするところを腕を掴まれた。
「どこ行く気ですか、沙代さん。ちょっと待ってください」
「駄目です。水木様にこんな私を見せるわけにはいきません」
「いや、何のことですか?」
「だって私は水木様に酷いことを」
途中から涙声になってしまう。見る見るうちに視界がにじんでいく。こんなことならずっと狂骨の方がましだったのでは。そんな黒い考えが頭に浮かび、体が冷たくなっていく。まるで地下に封じられていた骨のように。
「沙代さん!」
しゃがんだ水木が沙代の頬に触れる。彼がじっとこちらの目を覗き込んでくる。水木の両手のぬくもりが沙代の体を温めるがそれでも涙が止まることはない。
「ゲゲ郎から何も聞いてないのですか?」
突然の水木の問いかけに訳が分からないまま頷くと、彼は困ったように頭を掻いてボソッと呟く。
「ゲゲ郎の奴、手筈通りにって言っただろ」
困惑する沙代を前に水木があの惨劇の後の話をし始めた。それによると彼は村を脱出した後一時的な記憶喪失に陥ったらしい。最終的に一部の記憶は戻ったのだが、あの惨劇の最中の記憶は全く戻らなかったそうだ。
「だから、沙代さんがあの時何をしたかとか、村の秘密とか、正直よくわからないんです。ゲゲ郎も詳しくは教えてくれませんでしたから」
そう言って水木は恥ずかしそうにはにかむ。
「だから、もう泣くのは終わりです」
水木がハンカチを取り出し沙代の涙を丁寧にふき取ってくれる。一辺がちぎれたいびつな台形のハンカチに見覚えがあった。
「水木様、このハンカチは」
水木は笑いながらハンカチを噛む。あのときと同じハンカチをちぎり同じように沙代の草履を鼻緒の代わりにしてしまった。
「もう一度やり直しましょう。あのトンネルの前から」
そう言って水木が手を差し出す。沙代は頷いてその手をぎゅっと掴んだ。
二人で並んで歩き始めてから沙代は違和感を抱く。一緒に村から出ようとしたあの時、確か水木は沙代の犯行にも沙代と時貞の関係にも気づいていたはずだ。トンネルの前からやり直そうと言った彼は全て思い出しているのでは。沙代はそっと彼の顔を見上げる。
「どうしました?」
水木はまっすぐな目でこちらを見つめてくれている。龍賀の因習の生贄でも狂骨にとらわれた妖でもない沙代自身を見てくれているのがわかる。
「もしかしたら、ゲゲ郎様はこうなるとわかって水木様に任せたのかもしれませんね」
水木は立ち止まりぽかんとした表情で問うようにこちらを見る。
「水木さん、ありがとうございます」
沙代は彼の疑問には直接答えずに笑顔でお礼を述べ手を強く握る。彼の手がそっと握り返してくる。その右手は今まで出会った誰よりも優しく沙代の思いを受け止めている。
「行こうか、沙代ちゃん」
水木も柔らかな笑みを浮かべる。
「はい、水木さん」
いつまでもあなたと笑えますように。そう願いながら沙代は水木と一緒にゆっくりと歩いていく。
映画が切なすぎた
そんなの嫌だ!!水木が沙代さんを忘れるなんて!!一生沙代さんだけを想っててほしい!!映画の後もしばらく…10年以上は引きずっててほしい!!
という思いで書きました