ひろがるスカイ!プリキュア・地を這う獣は宙舞う蝶の夢を見る 作:幻水
(拓狼…)
(お兄ちゃん…)
(拓狼君…)
暗闇から良く聞き馴染んだ声で俺を呼んでくる。
(誰だ…俺を…呼ぶのは…)
聞き慣れた声のはずなのにそれが誰なのか思い出す事が出来ない。
(拓…狼…本当にそれは俺の事なのか?…)
思い出せず次第にその名前が自分の事ではないのかもしれないそう思えていた。
(ねぇお願い!!拓狼!!目を覚まして!!)
(…ッ!!…思い出した…)
一際暖かな声と共に暗闇だった世界に暖かな光が差し込み、先程までの不安や絶望が消え名前を呼んでくれた人物も、自分が誰なのかも思い出す事ができた。
「皆…あげは…」
差し込んだ光に手を伸ばすとより強い光に包まれ、目を覚ますと子供の頃によく見た天井が広がっている。
どうやらここは病院らしい。
「拓狼!!良かった!!」
「あげは!?良かった!無事だっ…痛ってぇ…な…なんだ?」
涙ぐむあげはの頭を撫でようと手を少し動かしただけで身体中に激痛が走る。
「大丈夫!?拓狼!」
「あまり身体を動かさない方がいいよ、拓狼君」
「そうだよ!!お兄ちゃん!身体中いっぱい骨折してるんだって」
「京子さんにましろちゃん?…」
首を何とか動かしベッドの足側を見ると涙ぐむ従妹の虹ヶ丘ましろと会社に居るはずの京子さんだった。
「怪物に襲われたと聞いてね、家族の緊急事態だから会社を暫く休んだんだ」
「私も昨日京子さんから連絡もらって急いできたんだよ!」
(あの怪物は夢…じゃなかったのか…つまり…俺の狼男になったのも夢じゃないって事か)
「そっか…って怪我は大丈夫なのあげは!?」
「あなたが庇ってくれたから私はかすり傷だけ、拓狼最初息してなかったんだから!…一命を取り留めたとしても意識が戻るか分からないって言われて…だから…だから意識が戻って言われて…本当…よがっ”だよ…」
「そう…だったのか…」
喜びのあまり泣くあげはの頭を痛みに慣れた手で優しく撫でる。
(俺が怪物を倒した後一度死にかけてたなんて…)
「あげは君、3日ぶりに目を覚ましたんだ拓狼君もまだ完全じゃないからそろそろ休ませてあげよう…ましろ君もね」
「はい…」
「かわりました…」
「それじゃ拓狼君店は木場さん達に任せてあるから、ゆっくりやすむんだよ?あ、後2人の薬指の指輪の件は後ほど聞かせて貰うよ」
「「あっ…」」
「お兄ちゃん!あげはちゃんまさか!!」
「まぁ…まぁ俺が退院したらね」
皆が帰った病室。俺は何とか夕方の病院食を自力で食べ切り味気なさに不満を持ちつつ、俺達を襲った怪物のニュースを真剣な表情で見ている。
「流石に怪物のニュースでもちきりだな…」
幸い死亡者は出ていないとの事だが被害はかなり大きく、怪物の正体に至っては他国の新型兵器説や宇宙人の侵略兵器なんて噂が上がっている。
「怪物はあの一体だけなのか?」
大きな不安が頭をよぎる。
「もしまた現れたら…」
(ここで臨時ニュースです!ソラシド市にて再び怪物が出現したとの情報が入りました!)
「…ッ!?」
恐れていた事が起こってしまい、テレビに釘付けになる。
「やっぱりあの一体だけじゃなかったのか!?」
(現場のアナウンサーと中継が繋がっています!)
アナウンサーのフリと共に映像が見慣れた風景に変わり、ロードローラーの様な怪物が街を破壊している。
「また怪物が…」
姿は多少違えどテレビに映る怪物に自分達が襲われたあの日を思い出し、窓辺に向かったが、いきなり身体を動かしたのに体の痛みは全くなかった。
「守る…皆を…あげはを…」
身体が熱くなり、あの日初めて自分が変身した時の様に激しい怒りが込み上げてきた。
「守るんだ!!俺がッ!!」
青い炎に包まれまた狼の様な怪物に変身し、窓枠を踏み台にして怪物が暴れる方向に向かった。