真面目マッサージ!趣味全開です!
ぼっちって猫背だし、押し入れで作業するし、電車で少なくとも1時間以上座りっぱなしだし、おっぱい大きいしで絶対すごく肩凝ってるだろうなって思ってます。
そしてうちのぼ虹毎回お泊りしてる問題。もう一緒に暮らして?

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ほぐし屋伊地知店にようこそ!

ぼっちside

 

「ぼっちちゃーん、お風呂の湯加減大丈夫? 熱くない?」

「い、いえ、大丈夫です」

「良かった。着替えはここに置いておくからね。ちゃんとゆっくり浸かるんだよー? ぼっちちゃんのお母さんにも連絡はしてあるからね」

「あ、はい。ありがとうございます」

 

 ここは店長さんと虹夏ちゃんのお家のお風呂。

 何故今ここで私が湯船に浸かっているかというと、それは1時間程前、STARRYでのバイトが終わった頃……。

 

 

 

 

 

ガシャーン!! っと私の手から滑り落ちライブハウス中に響き渡る音を立てて無残にも砕け散ったグラス。

 

「ぼっちちゃん!?」

 

 私がグラスを割ったことに気づいた虹夏ちゃんが駆け寄ってくる。

 ああ、段取りが悪くてもこれまで何かを壊したことはなかったのに遂にやらかしてしまった。きっと給料泥棒なくせに店に損害まで出した罪として処されるんだろうな……。

 少しでも罪を軽くするべく片付けるためにガラスの破片に手を伸ばそうとしたけど虹夏ちゃんに慌てて止められた。

 

「ちょちょちょ、危ないから触ったらダメだよ。箒持ってくるから。それより怪我はない? 大丈夫?」

「ぼっちちゃん大丈夫か!? 救急箱持ってきたぞ!」

 

 店長さんも慌てた様子で救急箱を持ってきてくれた。うう、二人とも優しいなぁ。

 うっ、頭痛が酷くてめまいがする……。今日は特にひどいや……。

 

「わ、私は大丈夫です。それよりごめんなさい、お店のグラスを割っちゃって……」

「それくらい気にすんなって。怪我が無くて何よりだ」

「でもぼっちちゃん大丈夫? 確かに怪我はしてないけど顔色が悪いよ?」

 

 うっ、やっぱり虹夏ちゃんには気づかれちゃうよね。

 ここ最近私は頭痛とめまいに悩まされていた。でもそれは別に体調を崩してるとか、病気になっているとかじゃない。

 その原因自体は大した事ないけど対処することもできず日に日に状態は悪くなっていき、遂に今日バイトに支障が出てしまった。

 

「だ、大丈夫です。少し貧血気味で……、もうバイトも終わりましたし家に帰って休みます」

「そう? それならガラスの方は私が片付けておくからぼっちちゃんはもう上がっていいよ?」

「ご、ごめんなさい、じゃあお言葉に甘えて……。うっ……」

「うおっ、危ねぇぼっちちゃん!」

 

 割れたグラスの近くでふらついた私を店長さんが抱きとめてくれた。

 

「ちょっと、本当に大丈夫!? そんな状態で家に帰れるようには見えないよ!?」

 

 ううっ、確かにどんどん頭痛が酷くなってくる……。多分このままSTARRYを出てもあまりの痛さに蹲って動けなくなるのが目に見えてる……。

 これはもうダメだ、限界すぎる……。

 

「あ、あの……、迷惑なのは重々承知なんですけどお願いがあるんです……」

「どうしたの? 病院? 連れて行こうか?」

「い、いえ、病気ではないのでそれは大丈夫です……。それよりも」

 

「お風呂貸してもらえませんか? 肩凝りが酷すぎて頭が痛いんです……」

 

「……ん? 肩凝り? お風呂?」

 

 そう、私の頭痛や目眩の原因、それはこの酷すぎる肩こりだった。

 本当ならマッサージ屋さんに行ってほぐしてもらえば良いんだろうけど、美容室にも行けない私がそんなところに行ける訳もなく、だからといってお母さんたちに揉んでもらうなんて申し訳なくて頼むことが出来なかった。

 だから毎日湯船に浸かって少しでも和らげてたんだけどそれだけではやっぱり追いつかなくて、どんどん症状は重くなっていき今に至る。

 

「そ、そんなに酷いの?」

「はい……、肩から背中までガチガチになっちゃって……」

「そういうことなら早く言ってくれれば良かったのに! ほらほら、揉んであげるからあそこの椅子に座って座って!」

「そ、そんな! 虹夏ちゃんに肩揉ませるなんて!」

「良いの良いの、私マッサージ得意だから。それにぼっちちゃんもマッサージ屋に行けなくて困ってるんでしょ?」

 

 うう、やっぱり虹夏ちゃんにはお見通しか……。

 で、でもこれ以上ないくらい有り難すぎる申し出だ。やっぱり虹夏ちゃんは天使、いや女神なんだ……。

 

「一生虹夏ちゃんを信仰していきます……」

「何怖いこと言ってるの!? ほら早く座って。あ、お姉ちゃんごめん、破片片付けといてー」

「あいよ」

 

 虹夏ちゃんに手を引かれて椅子に座る。

 人に肩揉んでもらうなんて生まれて初めてだ。申し訳ない気持ちもあるけど、肩揉んでもらうのってすごく気持ちがいいって聞くし楽しみかも。

 

「それじゃあ力抜いてねー。よいしょっと」

 

 グイッと虹夏ちゃんの指が肩に沈み込む。

 その瞬間私が感じたものは快楽ではなく、

 

「ぐええっっ!!!」

「ええっ!?」

 

 脳天を貫くような激痛だった。

 

「どうした!? なんか今絞め殺されたアヒルみたいな声が聞こえたぞ!」

「い、いやぼっちちゃんの肩を揉んだんだけど……」

 

 い、痛い……。マッサージ受けてる人たちはこれが気持ちいいって言ってるの? マッサージ好きの人は痛いのが好きなタイプの人たちなのかな?

 そう思いながら蹲っていると虹夏ちゃんが私の肩や背中をスリスリと摩ってきた。

 あ、これは少し気持ちいいかも……。

 

「あーなるほど、これは確かにひどいな……」

 

 ――スリスリ

 ――シュッシュッ

 

 うーん……、と唸りながらも摩り続けてくれる虹夏ちゃん。気持ちいい……。

 

「ぼっちちゃん、やっぱりまずはお風呂に入ろうか。それから改めてマッサージしてあげる。お姉ちゃん、お風呂沸かしてくるからその間ぼっちちゃんの肩とか摩っててあげて。それだけでも少し楽になると思うから」

「わ、私がか!?」

 

 そ、そんな。店長さんに摩らせるなんてそれこそ恐れおお

 

「良いのか!?」

 

 ……なんか反応おかしくないかな? 手も心なしかワキワキしてる気がする……。

 

「……念のため言っておくけど手を滑らせたとか言ってぼっちちゃんの変なところ触ったりしたらその手を握りつぶすから」

「…………………………………そんな事する訳ないじゃないか」

 

 よく分からないやり取りをして虹夏ちゃんはSTARRYを出て行った。

 

 

 

 

 そしてしばらくの間、店長さんに肩や首を摩ってもらって夢心地になっているとお風呂の準備が出来たと虹夏ちゃんが呼びに来てくれた。

 ヤケにツヤツヤしている店長さんにお礼を言って、私は虹夏ちゃんに「階段でふらついたら危ないから」と手を繋いでもらって虹夏ちゃん達の家まで連れて行ってもらい、そして今湯船に浸かっている状態にまで至るという訳だ。

 

そして充分温まってからお風呂を上がって虹夏ちゃんの用意してくれた薄手の服に着替えて、お風呂に入る前に上がったら部屋に来るように言われていたので虹夏ちゃんの部屋に向かった。

 そして虹夏ちゃんのお部屋に入ると

 

「お、来たね。ほぐし屋伊地知店へようこそ! ……なんちゃって♪」

 

 イタズラな笑みを浮かべた虹夏ちゃんがお辞儀して出迎えてくれた。……可愛い。

 

「さぁさぁ、お風呂で温まったところで早速マッサージしちゃおうか。ほら、ベッドにうつぶせになって」

「あ、はい」

 

 虹夏ちゃんに促されてベッドにうつぶせになる。

 ……虹夏ちゃんのベッド、いい匂いがするなぁ。何だか安心する匂い。これだけで眠くなっちゃいそう。

 

「じゃあ始めるね。お風呂に入って少しは柔らかくなったと思うけど、さっきみたいにいきなり揉んだら痛いかもしれないから摩っていくよ」

 

――シュッ、シュー

――グッ、グッ、スリスリ

 

 肩から背中まで摩りながら、硬さを確かめるように掌で軽く押し込んでくる。

 ――あ、気持ちいい。

 

「うん、硬いことは硬いけどさっきよりもずっと柔らかくなってるね。それじゃあぼっちちゃんを悩ませてる肩のコリをほぐしちゃおうかな」

 

 虹夏ちゃんが私の肩を掴むと、親指で肩の凝り固まった箇所をグリグリと揉みほぐしていく。

 

――ギュッギュッ

――グリグリ

 

「うっ、あう……」

「大丈夫? 痛くない?」

「だ、大丈夫です。少し痛くもあるんですけど」

 

――グッグッ……

 

「ぅぁっ……、気持ちいいです……」

「そっか、良かった。このまま続けるね」

「はい……」

 

 STARRYで肩を揉まれた時と全然違う……。

 さっきは肩を揉まれた時全身に電撃が走ったのかと錯覚するくらい痛かったけど、今は虹夏ちゃんが親指で私の肩をグリグリと揉み込むたびに全身に甘い痺れが走る。

 きっとさっきは力加減を誤って強く揉んじゃったんだろうな、と思っていると

 

「ぼっちちゃん気付いてる?」

「あっ、え? 何をでしょうか?」

「今私が肩を揉んでる力加減、さっきSTARRYで最初に揉んだ時と同じなんだよ?」

「えっ、……え?」

「今も硬いけどさっきは本当に酷かったからね~。今まで相当我慢してたんでしょ?」

「は、はい。も、元々中学生の頃から肩は凝ってたんですけど、押し入れで練習するようになってからは余計に悪くなっちゃって……」

 

 最初は普通に部屋で練習してたけどギターがまともに弾けるようになって、ギターヒーローの投稿も始めるようになってからお母さんから流石に少しうるさいって注意されちゃったんだよね。

 それから押し入れで防音対策もしてギター弾くようになったんだけど、その頃くらいかな? 徐々に徐々に酷くなっていって、ここ最近で限界を迎えた感じだ。

 

「そっかそっか、まあ押し入れで練習してたら猫背になって余計に体中バキバキになっちゃうだろうしね。……ところでさ」

「あ、はい」

「中学生の頃から肩が凝ってたんだよね?」

「はい、そうですけど……」

「そっかー、じゃあ中学生の頃から『立派』に育ってたんだろうねー」

 

 な、何を言ってるんだろう虹夏ちゃんは。声から伝わる温度もさっきの温もりに満ち溢れた声と違ってかなり冷え込んでる気がする。あ、あ、切腹。後で切腹をしなければ……。

 

――ギュゥゥゥゥッ……、グイッグイッ……

 

虹夏ちゃんが首と頭の付け根の、真ん中から少し横にズレたところを強めに押し込みながら揉み込んでいく。

 

「うっ……はぁぁ……、そこっ、響く……」

「ここは確か、風池、だったかな? 目が疲れてると効くみたいだけど、ぼっちちゃんも硬いねー」

 

 ううっ、多分動画の編集とかを暗い押入れの中でやってるからだろうなぁ。

 

「次は背骨と肩甲骨の間を揉んでいくね」

 

――ギュッギュッ、グリッ、ゴリゴリ……

 

「あぅ……くぅ……」

 

 すごい……、自分の体から聞いたことない音がする。でもやっぱり多少の痛みもあるけど、それ以上に、いや痛みさえも含めて快感になって身体を駆け巡ってくる。

 

「ぼっちちゃん気持ちよさそうだね。お姉ちゃんもここ揉んであげるとすごく気持ちよさそうな声出すんだよね」

「ぅぐっ……あう……。て、店長さんにもよくマッサージしてあげるんですか?」

「うん、お姉ちゃんがライブハウスを経営するために勉強するようになってからかな。お姉ちゃんがよく肩凝ったって言ってたからマッサージしてあげるようになったんだよね。で、結果私のマッサージの腕は磨かれてこの通りという訳なのだー」

 

――ギュッギュッ、グリグリ、グイグイ……

 

「う……ぐぅ……、ふぅ……」

 

 そ、そういうことなんだ……。

 でもそんな店長さんのために磨き上げたマッサージを私なんかのために……。

 

「……ぼっちちゃん今の話聞いて、私なんかの為にマッサージさせるの申し訳ないって思ってるでしょ」

「ヴエッ!?」

 

 エ、エスパー!?

 ま、前々から虹夏ちゃん私の考えを読んでるところあったけど、顔も見えない状態で気付かれちゃうなんて……!

 

「へへー、ぼっちちゃんのことなら何でも分かっちゃうよー」

 

 なんてね、なんて虹夏ちゃんはおどけるけど冗談に聞こえない……。

 

「で、でも私みたいな役立たずのためにこんなことさせてしまって……」

「……ふん」

 

――グリィッ!!

 

「い! イタタタタ!! 虹夏ちゃん痛いです!!」

 

 これは確実に力入れすぎのやつ! や、やっぱり私みたいなのにマッサージするのが嫌だったから怒ってたんだ!!

 

「今のはぼっちちゃんが自分のこと役立たずなんて言ったお仕置きだよ」

「……え?」

「あのね、私がマッサージしてあげてるのは、ぼっちちゃんだからしてるんだよ?」

「え……と? どういうことでしょうか?」

「内緒。でもまた自分を卑下するようなこと言ったり考えたりしたらお仕置きするからね? さあどんどん解していくよ」

 

――ギュウゥゥッ……ギュウゥゥゥッ……、グリグリ……

 

 虹夏ちゃんが揉んでいく箇所を背中から腰、そしてまた肩まで指圧しながら上がっていく。

 す、すごい気持ちいい……、けど気持ちよすぎて眠くなってきちゃった。このままだと虹夏ちゃんのベッドで寝てしまいそうだし、名残惜しいけどベッドから退かなくちゃ……。

 

「に、虹夏ちゃん、私このままだと寝てしまいそうなので……」

「ん? 気にしないでそのまま寝ちゃっていいよ。それとも、私のベッドじゃ不服かな?」

「そ、そんなことないです! 虹夏ちゃんの良い匂いもするし最高です!」

「に、におっ……。そういうことは言わなくていいの! じゃあ次は叩いていくね」

 

――トトトトトトトッ

――パタパタパタパタパタパタッ

 

「ふふーん、現役ドラマーの肩叩きはいかがかなー?」

「気持ちいいです……」

 

 上から下まで虹夏ちゃんがリズミカルに叩いていく。

 軽やかに叩いてるけど決して弱くはなくて、凝りの深部にしっかり刺激が届いてる。

 

――トントントントントンッ

――パンッパンッパンッパンッパンッ

 

――グググッ……、グィッ、グィッ…

 

 今度は刺激の感じ方的に手の平で背中を押して込んでくれてる……。

 

 あぁ……、もう起きてられないや。

 マッサージの気持ちよさと、ベッドの虹夏ちゃんの香りに包まれながら、眠気が限界に達した私は意識を手放した。

 

 

 

 

 

虹夏side

 

 ふぅ、肩も背中もほぐれて柔らかくなったしこんなもんかな?

 さてぼっちちゃんの様子は……。

 

「うん、眠ってる」

 

 ぼっちちゃんも私のマッサージが気持ちよかったのかぐっすり眠ってるや。

 しかし本当、普段は顔が前髪で隠れてるし、奇行や顔が崩れたりしてわかりにくいけどこうしてるとぼっちちゃん可愛いな。ちゃんと整えればモテるだろうに。でもぼっちちゃんが可愛いのを知ってるのは私達だけで良いかな。

 

「よいしょっと」

 

 うつぶせのままだと寝苦しいだろうからぼっちちゃんを起こさないように、ゆっくりと仰向けにして掛け布団をかけた。

 

 それにしてもぼっちちゃんは分かってないよなあ。自分のことを役立たずなんて。

 リョウがスランプになった時、喜多ちゃんがボーカルとしての自信を無くした時やバンドを続けられなくなりかけた時、……私が自分の夢を諦めそうになった時、いつだって私達を助けてくれたのはキミなのに。

 私のヒーローを悪く言う人は、例えキミでも許さないよ。

 

「大好きな人の為に磨き上げたマッサージだからね。だから大好きな人にしかマッサージしてあげないんだよ、ぼっちちゃん」

 

 さーて、私も寝る前にお風呂に入ろう。お布団出すのも面倒だし、今日はぼっちちゃんと一緒のベッドで寝ようっと。明日のぼっちちゃんのリアクションが楽しみだな。




この日以降定期的に伊地知家で定期的にマッサージしてもらうようになりました。(STARRYでやると十中八九リョウがマッサージしてくれって言うだろうから)

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