復讐を胸に秘めている者でも日常はあります。
それもなく、日々を憎悪のみで生きていたなら犯罪者と変わらないのかもしれませんね。
ママ!
伸ばした腕がママに触れる前に痛みが走る。そして目の前のママの姿が消える。
違う! 私が消えたんだ……
最後に見たママの顔は笑顔だった、何かをつぶやいていたがそれは聞こえなかった。
【闇の書―失われたモノ達―】
第二話 ラッへ
――ピピピッ ピピピッ ピピピッ ピピピッ
部屋に微かに鳴るアラーム。その微かな音に反応して目を開ける。
管理局の仮眠室で目が覚めた。
簡易ベットの回りには着替えや端末だけでなく、本棚やぬいぐるみまで置いてある。
家に帰れない日にはここにいつもいるからか私物が増えたわね。
それにしても夢見が悪い…… きっと昨日の彼女達に会ったのが原因でしょう。
私は彼女達を直視できなかった。一番冷静じゃなかったのは私だったのかもしれない……
着替えはじめながらそんな事を考えていると通信が入ってきた。
『「課長おはようございます。本日は13:45より陸士98部隊及び陸士102部隊との合同会議がありますが内容につきましては先月から摘発されている違法研究所の大元を叩く作戦と考えられます。12:00に迎えに行きますのでまだ休まれていても構いません」』
事務的な口調で淡々と言ってくれる。優秀なんだけどもうちょっと優しく言ってくれても良いのに。
でも知ってる。通信をしてきた子だけじゃなく、昨日の子達もみんな私を心配してくれてるんだ……
「了解! 皆には無理しないでって伝えてね」
私達の部署で午前中に仕事がない訳ないのに、多分私を休ませようとしてくれてるんでしょう。
でもまずは着替えよう。少しやる事ができた……
会議室にいるのは各部隊の隊長職やその補佐官達数人……
陸士98部隊と陸士102部隊、私達の補助管理3課…… それと陸士108部隊がいる。
「108部隊の方々はなぜこちらに? 本日の出席は聞いておりませんが?」
別の隊の人から疑問が出る。
私としてはそれどころではない。昨日の彼女、
「急な出席で申し訳ない。こちらの部隊で行っていた摘発データの中に今回のそちらの作戦対象の違法研究所があった。想定よりも規模が大きい事が確認されたので参加する事になる。こちらは追加戦力とでも思ってくれて良い」
108部隊隊長のゲンヤ・ナカジマ三佐の言葉に他の部隊は納得したようだ。
私は納得できませんが……
昨日の今日で疑いたくありませんが私達を見に来た、と捉えた方が自然ですね。
会議が終わり、その内容を課に持ち帰って話し合う。
翌週に行われる作戦での私達の行動予定と目的、実際の配置と連絡確認をしている。
する事はいつもと同じ。目標施設の全域把握とその情報を他部隊への転送、その後は各部隊の補助。
皆は説明を聞きながらお菓子を食べている。私が今朝作ったお菓子だ。
大量に作っていたので別部隊にもお裾分けしている…… 夜天の書の主にも。
「コーヒー飲む奴いるかー? ついでに煎れるぞー」
「飲むー」
「やっぱ姉ちゃんの菓子美味い」
「あ! それ俺の分」
まったく……
職務に集中してほしい。喜んでくれてるのは嬉しいけど……
「そこ! 姉ちゃん言わない! それといっぱいあるから喧嘩しない!」
「「「はーい」」」
返事は素直なんだけど…… でも端末はちゃんと見ているみたいだから問題はないか。
それにしてもこの子達とも長い付き合いだ。孤児院ではイタズラばかりしていたのに今では立派な管理局局員なんだから。
いつも助けられてる。だからこそ今回は伝えておかなければいけない事がある。
「それから今回の作戦に夜天の書の主が参加します」
皆の手が止まった。
何を考えているのかは分かるつもりだ……
少しづつ怒りの表像が浮かんでくる。
「皆の言いたい事はわかるわ…… でも私は、私達は何の為にここにいるの?」
私達は管理局で人々を守る為に働く。自分達の様な子供を作らないように、そんな子供達でも幸せになれるように。
皆は何も言わない。
「夜天の書…… あえて言いましょう、
作戦当日、私達は第19無人世界にいた。
本来はこの世界には何もない…… 大気圧の上下が異常で鳥どころか生物が繁栄しにくい環境。
気圧による温度高低差による植物の育ちにくさも手伝って人の住める環境ではない。
少なくとも地上は!
「手はず通りにまずはこちら98部隊が地上を通常捜索をする」
「それに同行する私達補助3課のメンバーの内、四人が地下施設の入口を探します。随時映像を送りますが発見と同時に内部構造の把握に努めますので98部隊とは別行動になるかもしれません」
「範囲にもよるが複数の入口を発見した場合には102部隊がそこに、単一の場合は戦力の間欠投入で援護する」
「補助3課の残りのメンバーは各部隊にて突入メンバーの映像解析を」
事前に打ち合わせていた事の再確認。
108部隊には後方にて情報の確認とイレギュラー発生時の保険として待機してもらう。
「各部隊の配置が完了したら作戦開始やな」
闇の書の守護騎士と名乗った女性達が現れ、結界内に閉じ込められた私達を襲ってきた……
パパが私とママを庇いながら戦ってるけどどんどん追い詰められていく。
パパとママが短く会話したと思ったら大きな魔力がパパから空に向かって飛んだ。同時にママから私に魔力が流れてくる。
この感覚は知っている。転移魔法、逃げるんだ。
怖かったけどこれで大丈夫。
そう思っていた直後にパパが小型の鉄球みたいなものにぶつかり落ちていった。
そしてママに抱きしめられた時に衝撃があったが私は痛くなかった。
ママと一緒に落ちながら私は泣いていた……
ママが血を流していたから、それなのにママが笑顔だったから。
転移魔法が発動する。
体全体が魔法陣に包まれて、後少しというところに何かが飛んできた。
ママが私を突き飛ばし、私だけが魔法陣の中にいる。
ママ!
伸ばした腕は届かない。
気づいた時は病院だった…… 私一人だった。
泣いた。泣いた。泣いた。
闇の書の守護騎士達……
特にママを斬ったあの女、剣の騎士シグナム!
許さない。
パパの仇を! ママの仇を! そう無くした右腕に誓った。
これは過去の映像…… 私の最初の記録。
私はなんて醜いのだろう……
あの子達に言った言葉、管理局の仲間。
この言葉に憤りを感じているのは間違いなく自分自身だと思っている。
油断すれば怒りをぶつけてしまうかもしれない。だからこの作戦中は心を閉ざそう……
作中にもありますが設定の補足説明をします。
闇の書事件から4年後の世界ですのではやてとなのは、フェイトは中学一年生の時期です。
なのはは撃墜からの復帰済みで魔導師ランクS
フェイトは執務官試験合格済みで魔導師ランクS
守護騎士の無償奉仕期間が正確にわからなかったのでまだ期間中としました。
また、原作設定では同年ではやての上級キャリア試験取得とありますが作中時点では未取得にしてあります。(原作設定のはやてが陸士108部隊への研修時期の明言がなかったのでこれを利用してます)
無人世界や部隊等は適当な数字となっていますが原作と被らないようにしています。
次回は原作組を中心とした話と今回の作戦の内容描写を頑張ります。