一級呪詛師の青江さん   作:白白明け

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皆様の暇つぶしになれれば幸いです。
m(_ _)m





クソみてぇな計画

 

 

 

「新田さん。僕が話した虎杖の話を高専関係者には話さないという“縛り”を、結んで貰えますか?」

「・・・断ったら、どうするっスか?」

「殺す。なんて、物騒なことは言いませんよ。でも、リスクは背負って貰います。此所から貴女の仲間がいる場所まであと少し・・・その足で気絶している二人を引きずって行けない距離じゃないですけど、キツいですよね。呪霊や改造人間たちに見つかればTHE END(ジ・エンド)。賢明な判断とは、言えないんじゃないかなあ」

「順平サン。本当に顔に似合わず、性格悪いっスね」

「えっ、本当ですか。ありがとうございます」

「・・・ええ。・・・どうして、嬉しそうにするんスか」

「憧れている人に似てきたって言われれば、嬉しいに決まっているじゃないですか」

 

呪詛師-吉野順平と補助監督-新田明がそんな会話をしている頃、話題の中心にあった近年まれに見る根明呪術師にして灰原(はいばら)雄(ゆう)以来の逸材、虎杖悠二は手枷足枷をされて拘束された状態でスターバックスコーヒーの店内に転がされていた。

 

虎杖には地下通路で青江&順平と会話をして以降の記憶がない。

気が付けば此所に転がされていて、目の前には見覚えのない仮面を付けた少年がいた。

 

「フンッ!」

 

敵と思(おぼ)しき術師を前にした虎杖の行動は速かった。

四肢を呪力で強化し手枷足枷を破壊すると、直ぐさまに仮面の少年に殴りかかる。

仮面の少年-与(むた)幸吉(こうきち)は鉄製の手枷足枷を容易く破壊した虎杖のフィジカルに驚きながらも、両手を突き出して待った(マッタ)をかけた。

 

「待て待てマテ!味方だバカ‼オレだ!京都校のメカ丸だ!」

 

虎杖の拳が与の眼前で止まる。

拳圧で靡く前髪にビビりながら、与は虎杖が拳を止めた事に安堵の溜息を吐く。

 

「メカ丸?え、でも、ロボじゃないじゃん。・・・嘘か」

「本当だ!確かに今のオレの身体はロボじゃないが、時間がない。一度で聞き分けろ」

 

交流戦を通じて虎杖のキャラクターを与はある程度、把握している。

あ(・)の(・)東(・)堂(・)と、義兄弟の契りを交わした男。

つまりは大馬鹿者だ。遠回しな言葉選びは不要を判断し、事実のみを伝えた。

 

「五条悟が裏切った。特級呪霊と手を組んで、夏油傑の【受肉】を企てている」

「五条先生が、裏切った?・・・・・・・・・嘘じゃん」

「待て待てマテ!拳を振り上げ直すな!・・・言い方が悪かった。オマエ達の事は裏切っていない。だが、総監部のことは裏切るつもりだ。夏油傑の【受肉】とは、そういう事なんだ!」

「・・・・・・・・・うーん、詳しく聞かせてよ」

 

与の口から語られる五条悟と夏油傑の関係性。

そして、其処に付け加えられる青江貞次という呪詛師。

虎杖にとって担任教師の青い春で終る筈だった過去編(物語)は、青江貞次が死後に呪いに転じた存在で有る特級呪霊-青江によって歪められた。

 

「・・・それで五条先生は親友を生き返らせようとしているって訳か。うーん、ない話じゃないと思うけど、そんなことって出来るの?俺もあんまり詳しくないけど、呪術ってそんな万能じゃないんじゃない?」

 

呪術で人を蘇らせることは出来るのか?

その問いに与は否と答えた。

 

「死んだ人間を生き返らせる呪術はない。だが、降霊術は存在する」

「降霊術って、所謂(いわゆる)、イタコ的な?」

「そうだ。用意した器に魂を降ろす。広く知られた呪術の一つだ」

「それで“生き返りました!”って、無理あるだろ。五条先生が納得するとは思えないし、寧(むし)ろ、親友相手にそんなことされたらガチ切れしそうなんだけど」

「詳しい説明は省くが、今回限りは青江が五条悟を納得させるだけのカードを持っていた。それに五条悟が乗った。そういうことだ」

 

与の話を聞いた虎杖は腕を組んで頭を悩ませる。

 

「何を根拠にそれを信じればいい?」

「オレがこの身体で此所に居ることだ。オレは10月19日に真人という特級呪霊に殺された。その後、青江との契約で半霊半人の状態で生き返った。人を半呪霊化させる特級呪具、この【メルキド四面】を使ってだ」

 

虎杖の視線は与が頭の横に付けている仮面に移る。

虎杖は吉野順平も同じようなのを付けていたことを思い出していた。

 

「話を聞いた限り、お前もそっち側だろ。なんで俺に情報を漏らすんだ?騙すためじゃないって言うなら、教えてくれ」

「正直、夏油傑の【受肉】はオレにとって重要じゃない。五条悟が総監部と敵対するのも、五条悟の性格を考えればいずれ起こった事だと思う。だから、其処は静観しているつもりだった。だが、青(・)江(・)の(・)目(・)的(・)だけは・・・阻止しなきゃならない」

「その青江って特級呪霊には、五条先生に語ったモノとは別の目的があるのか?」

「オレはそう考えている」

「その目的って、なんなんだ?」

 

与は青江が五条悟にすら秘匿していた事(・)実(・)を語る。

 

「特級呪霊の【降霊】だ」

 

特級呪霊-青江は生前の青江貞次の記憶と性格を色濃く残し、その存在は最早、転生と言ってもいい。

そして、故に両者に共通する最重要パーソナリティーとして“意外と仲間思い”という点が上げられる。

 

そんな彼が“同胞”と呼んだ特級呪霊たち-漏瑚・花御・真人の三人が祓われたとして、何もしないで居られるだろうか。

確かに漏瑚は呪霊がニンゲンになる世を望み、全身全霊で五条悟に挑んだのだろう。

五条悟もまた呪術師として、一を捨て十を取る選択の末に彼らを打破せしめたのだろう。

その結末は淀みなく。正しく廻る呪いの戦いだったに違いない。

青江は同胞として、先輩として、その結末を受け入れたに違いない。

 

し(・)か(・)し(・)、そ(・)れ(・)は(・)そ(・)れ(・)と(・)し(・)て(・)、ヤレることはヤっちまうか。

 

そう言って全てを台無しにするのが、青江という“呪い”だ。

青江貞次は夏油傑以前に“最悪の呪詛師”と呼ばれていた男だ。

その男が呪いに転じて、真面で居られる筈がない。

 

「【メルキド四面】。付けて分かった。これは人間を半呪霊化させると共に、成(・)ら(・)し(・)を行う為の呪具だ」

「成(・)ら(・)し(・)?」

「ああ、人間を呪霊の入れ物(器)にする為の成(・)ら(・)し(・)だ。勿論、器は誰でもいい訳ではない。魂が成熟していない未成年(子供)が望ましい。オレや、お前も出会った吉(・)野(・)順(・)平(・)の様にな」

 

虎杖の脳裏に与と同じ仮面を頭に付けた吉野順平が、青江に向けていた笑顔が浮かんだ。

あの時、青江はどんな表情(かお)で吉野順平を見ていた?

弧を描く口元。瞳の色は黒渦の様に暗かった。

それを思い出し、全身が総毛立つ。

 

「仲間なんじゃ、ないのかよ」

 

虎杖から漏れた呟きは、善性に満ちていた。

 

「青江(アレ)は、呪いだぞ」

 

それを笑い飛ばすからこその、呪いだった。

 

「青江はおそらく夏油傑の【受肉】を望むのと同じノリで、五条悟に祓われた特級呪霊の【降霊】を狙っている。奴からすればその行動は一貫していて、裏表のない“願い”なのだろう。やられる方からすれば、クソだがな」

「どうすれば止められるんだ?その仮面を壊せばいいのか?」

「それは無理だ。特級呪物の殆どが他に害を為さないという“縛り”で存在が保障されている。基本的に破壊できない」

「めっちゃ害、為してんじゃん」

「悪用しているのは青江だ。奴が使わなければ、【メルキド四面】はただの仮面だ」

「なら、その青江を祓うか」

「それが一番望ましい。が、オレとお前だけじゃ無理だ。少なくとも生前の青江貞次を斃した時と同じく一級術師三人以上の協力が居る」

「俺、さっきまで冥さんと一緒に居たから、たぶん近くに居ると思う」

「ああ、それと七海健人と禪院家の当主が来ている事も把握している。幸い、既に三人の特級呪霊が五条悟に祓われた。残る特級は青江を入れて二体。彼らの協力が得られれば勝機は―――

 

 

「かか。」

 

 

―――ッ⁉」

「ッ⁉」

 

店内のカウンターテーブルに青江が胡座かいていた。

いつから其処に居たのかもわからない。

何故、気が付かなかったのかもわからない。

しかし、気づいてしまえば唾を飲む程の呪力を秘めた特級(存在)が、クソガキ二人(与と虎杖)を見ながら嗤っていた。

 

「勝機が、なんだよ?俺様は気にせず話を続けて良いぜ。与」

「・・・・・・・・・」

「かかか。黙(だんま)りか。相変わらず、俺様の前では無口な奴だぜ。良いぜ、それなら、喋りたく成るようにしてやる」

 

そう言って青江が懐から取り出し、虎杖と与の足下に投げたのは見覚えのある(七海健人の)眼鏡だった。

それを視界に収めた瞬間、虎杖は青江に頸部への蹴り(ギロチンキック)を放っていた。

青江はそれを片腕で防ぐ。衝撃音が店内に響いたが、両者の体幹は揺らぎなく、睨み合う形となった。

 

「お前、ナナミンになにしやがった」

「かかか。ガキに心配されるなんざ、クソみてぇだとは思わねぇか?」

「ナナミンはクソじゃねえ」

「敗者はみんなクソさ。勝者だけが、ちっとはマシなクソだ。知らねぇのか?五条の奴、教え子に一般常識も教えてねぇのかよ。まあ、あの野郎に真面な教育なんざ、無理か」

「流れる様に五条先生までディスるなよ」

「別に良いだろ。良くねえのは、テメエだ。いつまで俺様に足を向けていんだ?」

 

青江は虎杖の足を掴むと、そのまま店外へと投げ飛ばした。

 

「これで二人きりだ。なあ、与。腹割って話そうぜ?」

 

青江は格好を付けながら与の居た方向へ振り返るが、其処に既に与の姿は無かった。

 

「ああ?」

 

青筋を立てながら、青江は店外へと出る。

店に面した大通りには、既に呪(・)術(・)師(・)た(・)ち(・)が集結していた。

 

「やっと見つけたよ。虎杖君。どこに行って居たんだい?」

「冥さん!ごめんなさい。拉致られてました」

 

一級呪術師-冥冥。

 

「街中の改造人間たちが一斉に動きを止めた。どういう状況だ?」

「ハア~ア、酒が足らんぞ」

 

四級呪術師-禪院真希。

特別一級呪術師-禪院直毘人。

 

「やっと追いつきましたか」

「伏黒!ナナミン!良かった。無事だったんだ!あれ、猪野さんは?」

「猪野さんは別行動だ。逃げた呪詛師を追っている。それより、お前の隣に居るのは誰だ?」

「メカ丸だよ!今はロボじゃないけど!味方!」

「京都校の?」

 

一級呪術師-七海健人。

二級呪術師-伏黒恵。

 

奇(く)しくも与幸吉の狙い通り、三人以上の一級相当の術師による青江包囲網が完成していた。

 

「幸運だ。これなら祓える」

 

与は笑った。

数の差のみをみれば1対7の状況。五条悟が真人を祓い、渋谷中の改造人間たちが動きを止めた事で、呪術師たちは未だに戦闘音がしていた場所に集結した嬉しい誤算。

故の笑み。

しかし―――呪いもまた集(つど)う。

青江の背後から、幼子の声がした。

 

「ぶふぅー、ぶー、じょうごぉ、まひとぉ、はなみぃ」

「かか、悲しいなあ、陀艮。みんな、居なくなっちまったよ・・・」

「うぅ、よくも、よくも皆を・・・殺したな‼」

 

特級呪霊。その呪胎。陀艮が同胞の死を経て、変態(へんたい)を遂げる。

舌足らずな声で喋る蛸芋虫の様な姿から、クトゥルフ神話において語られる“深きものども(ディープワン)の統治者(ダゴン)”の様な姿へと変態を遂げた陀艮が堂々とした足取りで青江の隣に並ぶ。

 

これで数の差のみをみれば2対7。

しかし、等級(実力)の差は―――

 

「陀艮。与と一級二人は引き受けた。あとはヤれるよなあ?」

「駄目だ」

「ああ?んだよ、自信を持てよ。産まれたばっかとはいえ、テメエは母なる海の化身。海の畏れが産んだ特級だ。一級の一人や二人、瞬殺できるだろうが」

「駄目だ。私が―――

 

二人の特級呪霊の会話に割って入ったのは、禪院直毘人だった。

 

「オマエ達、ちと鈍すぎるな」

 

五条悟を除く最速の術師と呼ばれる禪院直毘人の術式【投射呪法】が二人を襲う。

しかし、それを二人が意に介する事はなかった。

 

―――三人を受け持とう。青江はあの少年と話があるのだろう?」

 

陀艮は直毘人の攻撃を受けても不動。

対して吹き飛ばされた青江だったが、ダメージを負った様子はない。

土埃を払いながら立ち上がると、直毘人を無視して陀艮との会話を再開した。

 

「ああ~、陀艮。テメエは優しいなあ。誰に似たんだ?花御か?」

「・・・皆、死んだ。殺された。なら、後は“約束(縛り)”どおりだ。だが‼」

「かかか、わかってる。その殺意を俺様は止めねえ。腸(はらわた)が煮えくり返ってんのは同じだからなあ」

「殺して良いんだな」

「かまわねぇって。確かに後で五条の野郎にうだうだ言われるかも知れねぇが、知った事か。俺(・)様(・)と(・)ア(・)イ(・)ツ(・)は(・)対(・)等(・)だ(・)。俺(・)様(・)た(・)ち(・)が(・)そ(・)う(・)で(・)あ(・)る(・)よ(・)う(・)に(・)な(・)あ(・)」

「そうか。・・・やはり青江も、優しいな」

 

陀艮は進み、青江は背を向けて歩き出した。

 

「与。付いてこいよ」

「・・・」

「一級三人なら、特級呪霊一人を祓えるってのが、テメエの試算だろ?特級呪霊二人を相手にその人数で勝てると思ってんのか?まだ、油断しまくっている俺様と一対一(タイマン)張った方が勝機があるとは思わねぇか」

「・・・わかった」

 

一級相当の呪術師である直毘人の術式が陀艮にはダメージを与えられなかった事実を目の当たりにして、与は青江から与えられた最善で最悪の選択をする。

 

「待て!それなら、俺もそっちに行く!」

 

虎杖はそれに異を唱えた。

青江は意外にもそれを受け入れた。

 

「かか。かまわねぇよ。ガキが増えたところで、俺様はな」

 

背を向けて歩き出した青江の背中は隙だらけだったが、陀艮の存在によって青江に許可された二人を除いた全員が動くことが出来ずにいた。

 

「虎杖」

「大丈夫。そっちは任せた」

 

虎杖と伏黒恵のすれ違い様の会話。

 

「さて、勝てるかな」

「負ければ、この国は終わりです」

「クックッ、確かに一級が三人も揃って祓えぬとなれば、由々しき事態だな」

 

冥冥、七海、直毘人の三人が陀艮へ敵意を集中させる。

 

「・・・恵。私らは三人のサポートに回るぞ」

「はい」

 

虎杖を見送った伏黒は、真希の言葉で自身の立ち位置を再確認していた。

 

「・・・かか」

「・・・」

 

人間達が言葉を交わし合う中、呪霊(彼ら)には言葉はい(・)ら(・)な(・)か(・)っ(・)た(・)。

 

 

 

 

 





今、明かされる直江の裏切り!
始まった特級呪霊との激闘!

そして、明かされるクソみたいな真の目的とは⁉

次回‼与幸吉、死す⁉



少しでも暇つぶしになれれば幸いです。
\(^_^)/


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