陰の実力者に出会うのは間違っているだろうか   作:加佐麻央

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更新2年近くかなり遅れました。スランプに陥ってしまいました。

そして、ついに公式でダンまちと陰実のコラボ来ました!!


第17話 小人族の娘

事は数時間前に遡る。

 

リリルカは雇われサポーターとしてヘスティア・ファミリアの二人と指定の場所で会おうとしたが、その一人シド・カゲノーが柄の悪い男に絡まれているのを見かけた。

 

「(あれは前にリリが嵌めた冒険者!!)」

 

恐らくバレたのだろう。

自分の悪事が知れ渡ってしまう。

シドと揉めた後、男は何か捨て台詞を吐いて、その場を後にした。

男が消えたのを確認したら、シドはリリの方に視線を移す。

 

 

「あっリリ来てたんだ。」

 

「シ、シド様!!さっきの男は」

 

「さっきのおっさん。僕とリリが組んでいたのを知っていたのか、『あのサポーターを嵌めるのを手伝え』と何故か提案されたんだよね。でも断っておいたよ。最近あんま良い冒険者がいないよね。」

 

シドは雑談のように語っているのだが、何故かリリを狙ってきているのかは疑問に思ってなさそうだった。

 

 

「...それで今日はどうしますか?」

 

 

「ダンジョン探索しよう。あっ今日はベルは用事があって来れないんだ。僕たち二人で行こうか」

 

「はい そうします。」

 

リリはシドが何も考えていない新人冒険者と変わらないと思い、今日もパーティを組む。

 

 

「(もうリリには後は無い。一か八かやるしかないですね。)」

 

 

シドの腰に携えているもう一つの黒い剣を見る。

 

______________________________________________________________________

 

「10階層まで来たけど大丈夫?」

 

「シド様の実力なら大丈夫です。」

 

ダンジョン10階層

 

上層の洞窟から濃い白い霧に枯れた森のような景色が現れた。

 

「霧…………リリ、離れないでね。」

 

「………はい。」

 

 

「………!」

 

視界が開けた。枯れ木が辺りに点々と生えていた。少し不気味だ。

 

 

『ブグゥゥゥゥ………。』

 

オークだった。背丈は3Mメドルと、ミノタウロス高い。そして、何より豚頭で体が丸々と太い。

 

 

 

『ブギッ、ブォオオオオオオッ………!』

 

相手のオークが動いた。1〜2Mメドルほどの枯れ木を引き抜いた。『迷宮の武器庫ランドフォーム』と呼ばれる、こういう地帯に生える『天然武器ネイチャーウェポン』である。厄介なダンジョンの特徴の一つだ。

 

 

 

『ブゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオッッ!!』

 

オークはシドに向かって突撃してくる。相手は巨体。一撃が痛いので攻撃は貰えない。

 

『ォオオオオオオオオオ!』

 

その代わり、相手は大きいので、小回りは効かない。そして今─────天然武器ネイチャーウェポンを振りかぶる。

迷わず突進した。振り下ろすのは縦にしか範囲がない。薙ぎ払う横より圧倒的に範囲が狭いのだ。だから、畳みかける。

 

「おわっととと」

 

『ブグウウウウッ!』

 

オークの攻撃を紙一重でかわす。

 

「当たりぃっ!」

 

『───ゲブォア?!』

 

振り下ろされた木の棍棒を余裕回避してすれ違いざまに斬撃を入れながら脇を抜ける。そして、ガラ空きの背後から右足を狙う。

 

 

右足切断。右の支えを失って地面に倒れる。すぐに頭に刃を通した。

 

 

 

 

 

 

「よっしゃー!やったよ、ぉ………リリ?」

 

辺りを見渡した。だが、そこにはシド以外の人影はなく、霧が立ちこめるばかりだった。そして、慌てて辺りを走っていると、異臭がした。根源を探すと直ぐに見つかった。木の根元に肉塊が転がっている。

 

「これって………モンスターを誘き寄せるための?」

 

狩りの効率を上げるためのトラップアイテム。なぜ今これがここに転がっているのか。

 

『────』

 

「………これってどういうこと?」

 

血肉の臭いに誘われたオークがやって来てしまった。────4体も。これは相手できない。そう思ったがふと、もしリリが怪我とかで動けないのだとしたら。もしかしたらここに残っているかもしれない。そうだとすると、置いていけない。

 

「いっ?!」

 

急に、ヒュンと音がして腰辺りに何かに当たった。見れば、腰に取り付けてある剣の柄に金具がついたロープのようなものが巻き付けられ、次の瞬間中に一気に釣り上げられ、離れていく。

 

「ちょ...待ってちょっとちょっっと!!」

 

命を預ける武器が目の前から消えて思わず狼狽する。

 

『オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!』

 

「っっ?!」

 

入れ替わるように、二匹のオークが棍棒を振りかぶる。慌ててよければ、残り二匹がシドに掴みかかろうとする。

 

「ぅ、わぁっ?!」

 

スレスレを避ける。

もう一度振りかぶられる棍棒を避けたその時、少し離れた場所にリリを見つけた。

 

「ごめんなさい、シド様。もうここまでです。」

 

「リリ、何言ってるの?!」

 

「シド様はもう少し人を疑うことを覚えた方がいいと思います。」

 

リリは手に持つ剣を掲げた。小さな笑みを浮かべている。────少し寂しそうに。

 

「幸いもう一つ剣を持っているようなので何とか切り抜けて逃げ出してくださいね。──さようなら、シド様。もう会うことはないでしょう。」

 

そのまま、リリはバックパックを背負い直して踵を返していった。

 

______________________________________

 

「はぁはぁ・・・」

 

 

そのまま、7階層へと進んだ。この先の階層はあとは余裕なのだ。だから、ここが関の山だ。

 

黒い剣を見る。

刃から柄まで漆黒で統一され、無駄のない洗練されたデザインの剣だった。

オラリオに住んでいるリリから見て、珍しい剣でもあったので、どこかで売れそうな気がしていた。

 

 

「(シド様のよく使っている剣は奪えなかったのですが、これなら...えっ!?)」

 

 

手に持っていた黒い剣が溶けてしまった。

残ったのは地面に落ちたスライム状の液体だけだった。

 

手には剣が存在しない。

 

 

「ど…どうして!?」

 

思えばシド様は冒険者にしては隙が多そうで

まさか

リリは嵌められたのか

 

 

 

「嬉しいねぇ、大当たりじゃねぇか。」

 

「え?」

 

油断して、狭い通路をぬけた時、横から出された足に突っかかり転んでしまった。咄嗟に起き上がろうとしたが、頭を掴まれて殴られた。

 

「ふぎっ?!」

 

「詫びを入れてもらうぜぇ?………このっ、糞パルゥムがあっ!」

 

「───ぁ?!」

 

鼻血が出る間にも一発、そして蹴り、そしてバックパックが離れた後に、つま先を腹にお見舞される。そのまま吹き飛んで地面を転がった。

 

「あっ、づっ、うあぁっ………?!」

 

「はっはははははははっ!いいザマじゃねえか、コソ泥がぁ!そろそろあのガキを捨てる頃だと思ってたぜぇ?こうして網を張ってりゃあ、絶対会えるってもなぁ!」

 

「あっう………?!」

 

「ありえねえほど広え迷宮ここで、俺一人がてめえを待ち伏せすんのはつまんねえ博打だからなぁ。協力者・・・ってやつを募って、要所を抑えてたんだよ。」

5階層から下は確かに広いが、次層へのルートは4つだけ。そこで待ち伏せば必ずどこかで会えるのだ。

 

「見覚えのある黒髪のガキ・・・・・にチビが付き纏っているのを見た時にはまさかとは思ったがよ………何だ、あのガキは目も眩んじまうほどいいもんもってたのか?迂闊じゃねえかよ?」

 

「………っ!」

 

「まぁんなことはどうでもいい。ブッ殺す前に、俺の剣を盗っていってくれた落とし前、つけさせてもらうからなぁ………!────魔石に、金時計にぃ…………おいおい、お前、魔剣なんて持っていやがったのか?!ひゃっははははははっ!これも盗み取ったってわけかよ!くくくっ………!いいぜ、許してやるよ糞パルゥム。」

 

「あぐっ?!」

 

腹を二度も蹴られてまともに呼吸ができない。そんな中、

 

「派手にやってんなぁ、ゲドの旦那ァ。」

 

「………っ?!」

 

「おー、早かったな。」

 

嫌な声が聞こえた。ソーマ・ファミリアのカヌゥだった。

 

「聞けよ、カヌゥ。こいつ魔剣なんて持ってやがってよ、てめえらの読み通り、たらふく金を溜め込んでいるみたいだぜ、くははっ。」

 

「………そうですかい。ゲドの旦那。一つ提案があるんですがね………。」

 

「なんだ、魔剣これを寄こせってか?おいおい、俺がこの小人族《パルゥム》を捕まえたんだ、これくらいの役得は───」

 

「いえ、ね。魔剣それだけじゃなくて、奪ったもん全部・・・・・・・置いてってほしいんでさぁ。」

 

「は?」

 

ゲドと呼ばれた男は怒って切り返そうとするが、カヌゥは背中に隠していたものを放る。

 

「キ、キラーアント………?!」

 

生殺し。悶え苦しむように片腕を力なく振り回している。───キラーアントは、瀕死になると、呪詛のような呻き声で、仲間を呼び寄せるのだ。

 

「しょ、正気かってめえらぁあああああああああああああっ?!」

 

「俺たちとやり合っている間にそいつらの餌食なんてなりたくはねえでしょう、旦那ァ?」

 

「ひっ?!」

 

ゲドの背の通路から五匹のキラーアントが入ってきた。このルームの出入口は4つ。そのうち3つはカヌゥ立ちに抑えられ、一つはモンスター。ゲドは舌打ちをして手にしていたものを全て放り投げ、

 

「く、くそったれがぁっ?!」

 

一目散に逃げた。

 

「大丈夫かぁ、アーデ?」

 

「カヌゥ、さん………、」

 

「来てやったぜ、お前を助けるためにな?何せ【ファミリア】の仲間だからなぁ。」

 

口だけの『仲間』発言にリリは拳をにぎりしめる。

 

「そうだぜぇ、来てやったんだぜぇ、アーデ?お前のために、こんなヤバいところへ危険を顧みないでな?」

 

「………は、いっ。」

 

「……俺の言いたいこと、わかるよな?」

 

屈辱だった。カヌゥはリリを見ていない。その先に待っている『酒』だ。腹立たしかった。

 

「おい、早くしろ!本当にやべえ!」

 

「わかってる!………お前、昨日は金はないって言って出さなかったよな?もうネタは上がってるんだ。もしまた誤魔化そうとしたら───」

 

「わかりました!わかりましたからっ?!」

 

出し惜しみしている暇はないと、隠していた小さな鍵の首飾りを差し出そうとしたが、

 

 

「何だ、これは?」

 

「オラリオの東区画にある、ノームの貸し出し金庫の鍵です。」

 

「保管庫セーフポイントのことを言ってるのか?あの小さなボックスに大金を保管できる余裕なんて………、」

 

「はいっているのは、ノームの宝石です………。」

 

「………なるほどなぁ。」

 

リリは『男』に変身してあのノームに換金してもらい、それを宝石として受け取り、保管していたのだ。カヌゥはそれを知ると、リリを持ち上げた。

 

「カ、カヌゥ、さんっ………?なにをっ………、」

 

「ちょっとヤバいんでなぁ周りを見てみろ。もうかこまれかけちまってる。───囮になってくれや。」

 

「?!」

 

「アーデがあの虫どもを引き付けてくりゃあ、俺たちはあの通路から抜け出せる。あそこにはまだそこまで群がっていねえし、時間を稼いでくれりゃあ、俺達でも蹴散らせるだろ。────金がねぇならお前はもういらねえよ。最後に俺たちをしっかり支援してくれよ、サポーター・・・・・?」

 

そして、キラーアントの群れに投げ込まれた。仰向けになりダンジョンの天井を見る。

 

「………は、ははははっ。」

 

諦めた。壊れたように笑った。

いや、もうはるか昔からとっくに壊れていた。最後の最後でこれか。そんな自分への嘲笑もあったかもしれない。

 

(………ああ、でも、)

 

やっと楽になれる。開放される。これが、冒険者なのにちっともリリの知る冒険者らしくないあの少年への報いだというなら、不思議と受け入れられてしまう。滲む視界に、キラーアントが口を開けているのが見える。

 

「………悔しい、なぁ。」

 

リリは、こんな愚図な自分が心底嫌だった。

 

「神様、どうして…………どうして、リリを、こんなリリにしたんですか………?」

 

どうして神は偉そうなくせに何もしないのか

 

どうして両親はリリを残して死んでいったのか

 

どうして生まれ育ったのがこんなファミリアなのか

 

どうしてオラリオの冒険者はこんなクズばかりなのか

 

どうして小人族はこんな目に遭わなきゃいけないのか

 

どうして勇者(ブレイバー)を名乗るロキ・ファミリアの小人族は英雄面して、同族を救おうとしないのか

 

 

 

なぜリリこんな世界を生きなきゃいけないのか

 

 

 

 

 

 

 

この世全てに絶望しながらリリは終わりを実感する。

 

 

 

 

 

 

______「まだ終わりではない」______

 

 

 

 

 

 

黒い衣を着た男が目の前に立つ。

 

 

キラーアントの群れは瞬く間に灰となった。

足元には逃げ出した男の屍がある。胴から首は見当たらない。

辺りにリリの敵はすべて消えた。

 

男は地に伏せたリリの瞳に視線を向ける。

 

男は手を差し出し、リリの方に紫色の魔力を流した。

 

それがリリの体を覆い、暴力を受けていたリリの傷を癒した。

 

 

 

 

 

 

「我が名はシャドウ。リリルカ・アーデ。いや聖女フィアナの転生者よ。この世の不条理を正す気はあるか」

 

 

 

「フィアナ?何を言っているんですか?」

 

理解できない。

フィアナってあのフィアナの騎士団の聖女!?

リリがその転生者!?何を言っているのかこの男は

 

「古代には小人族達の戦士のみで結成された組織があった。それが小人族最初にして最後の象徴。フィアナ騎士団。」

 

 

「だが、当時仕えていた王族は弱小の種族が強大すぎる力を持ったことに恐れをなした。」

 

「躍進し続けたフィアナ騎士団は怪物ではなく、欲深い人間達の手によって、嵌められ、壊滅させられた。」

 

 

「だが、聖女フィアナはただでは死ななかった。いつか未来、自身の魂が転生し、自分を嵌めた者に復讐することを誓って。」

 

「それがリリ...」

 

馬鹿馬鹿しい

こんな訳の分からない戯言なんて信じなかった。

 

でももうどうでもいい。

目の前にいる男がリリを救う救世主でも、闇派閥に引き込む外道でも

とにかくこの世全てが憎い

 

「問おう。リリルカ・アーデ。お前はフィアナの力を取り戻し、この不条理を糾す覚悟はあるか

それとも何も果たせず、魂を腐らせるか」

 

「なぜ貴方は小人族にそこまで拘るのですか。」

 

「我が宿願のために最強の小人族が必要だからだ。勇者(ブレイバー)となる偽物じゃ役不足だ。」

 

この男はリリを利用する気でいるのか

 

だけどこれはチャンスでもある。

クソったれの人生から決別できる。そして、リリを酷い目にあわせたクズ共の復讐できる。

こっちも利用してやる。

 

 

「貴方が何者かはどうでもいいです。リリはこの世界が憎い。甚振ったあいつらを今すぐぶちのめしたい。」

 

「よかろう。では選別だ」

 

男の黒衣のから一本の黒い槍が出現する。

 

「これは聖女の槍だ。お前には振るう価値はある。」

 

リリは槍を受け取る。

槍は持ったはずなのに、なぜか歴戦の戦士のように馴染むのを感じた。

 

本当にリリはフィアナの来世なのか

 

「ありがとうございます。この恩は忘れません。」

 

 

 

 

 

 

 

 

「(うんうんコレコレ!昔から考えていた小人族を実力者に導く陰の実力者ロールプレイやりたかったんだよね。)」

 

この神時代の世界において小人族は最弱の種族である。

 

フィン・ディムナやガリバー兄弟など第一級冒険者はいるのだが、それでもごくわずかで、小人族全体で見ればの実力者は少ない。

 

僕はふと思ったんだ。

最強の小人族の実力者を導く陰の実力者ってなんかかっこよくない?

 

偶然出会ったリリルカ・アーデは逸材だ。

冒険者は恵まれてはいないが、サポーターとして能力が優秀。

生まれ育ったソーマファミリアが、ゴミすぎて復讐にたる動機がある。

 

「(リリの魔力回路を適当に弄ったら、何か禍々しい残滓みたいのが残っていたみたいで、もしかしたら隠された潜在能力を覚醒させたら何かすごい力を手に入るパターンか)」

 

 

 

 

リリはソーマファミリアも潰すこともできて、僕も陰の実力者ムーブができてお互いWINWIN。完璧だ。

 

昔のアルファ達に似たような設定を話したけど、まぁ別にいいや。

リリも賢そうだし、どうせ後で気づいて去っていくだろう。

 

 

 

 




オラリオで陰の実力者やりたいことリストその1:不遇な小人族少女を実力者として導く謎の男ムーブ

アポロン・ファミリアと戦争遊戯することになったら助っ人は誰にするか

  • ジミナ・セーネン
  • ジョン・スミス
  • スタイリッシュ・盗賊・スレイヤー
  • アルフィア
  • リュー・リオン
  • 七陰の誰か一人
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