クラスで自己紹介が終わった後ですね。
さて、俺としてはなるべく陰キャ生活を送ろうと思っていた俺なのだが、せめて同じ男子の織斑一夏君くらいとは話しておこうと思い、声を掛けようとしたのだが、その直前で一人の少女が織斑一夏君に声を掛け、外に連れて行ってしまったのだった。
「オリムー連れて行かれちゃったね」
「(オリムー?)……今が声の掛け時と思ったんだが」
周りが牽制し合ってる今がチャンスと声を掛けに行ったが、さっきの少女……多分束さんが言ってた妹の篠ノ之箒さんだよな? 確か一夏君と幼馴染みで、彼にゾッコンラブらしい。もし話す機会があったら仲良くしてあげて欲しいとも言われている。
しかし、初っ端から出足をくじかれてしまったな。
「さて、どうするか」
「いつ戻って来るかも分からないし、一旦戻ろうよ。それで何かおやつが食べたいのだ〜♡」
どうしようか悩んでいる尚人に妹からのおやつタイム要求が入る。
暫し、兄妹のショートコントにお付き合い下さい(笑)
「おい。まだホームルーム終わったばかりだろ?」
「だって今日朝ご飯食べられなかったしぃ〜」
「それは本音が寝坊したからだろ? 始業式初日だってのに」
「おにいちゃんが起こしてくれなかったか――『起こしただろ!』」
「朝食は用意してたのに『あと5時間〜』とか言って何度も布団から出てこなかったのは本音だろ。結局ぎりぎりの時間で引っ張り出すまで起きてこなかったし」
「もっと早くに引っ張り出してくれてたら〜」
「じゃあ、今度からは初っ端からそうする」
「……それも困るんだなぁ〜なんて」アセアセ。
「ならどうしろと…………」
「あははぁ〜」
そんな兄妹漫談を繰り広げていた尚人が席に戻ろうと振り返ると、クラス中の視線が注がれている事に気づく。視線といっても十人十色、様々な感情のこもった瞳に見つめられ、布仏兄妹は体を硬直させるのだった。
「あっはは〜……お騒がせしましたー」
「しました〜」
恥ずかしくなった尚人は捨て台詞を吐きながら席に戻る。本音も流石に恥ずかしかったのか、俯き気味にそんな兄の後を追従する様に着いていくのであったが、肝心な事は覚えていたようである。
「おにいちゃん、おやつ〜♡」
「……はぁ…………」
ため息混じりにおやつのクッキーの入った袋を本音の前に出すと、ニコニコしながら本音はクッキーを食べ始めた。
そして尚人自身は本でも読もうかとしたら、本音の後ろに立つように二人の少女が現れ、尚人に声を掛けてきた。
「こんにちは〜うちらは本音の中学からの知り合いで、私は谷本癒子って言いまーす! よろしくお願いしまーす!」
「……私は鏡ナギです。よろしく」
「あっ、いつも妹がお世話になってます。そうだ、これも良かったらどうぞ」
尚人は本音の前に置かれたクッキーの入った袋をお近付きの印にとばかりに二人に差し出し、二人もお試しとばかりに一つずつクッキーを取ったのだった。
「あぁ〜私のおやつがぁ……」
「今日は昼までだからいいだろ?」
「むぅぅぅぅ……まぁ、かがみん達なら許すのだ」
「…………ふぅ(かがみん?……あぁ、鏡さんでかがみんね。てか、作ったの俺だから)」
尚人がそんな事を考えていたら、クッキーを食べた二人がフルフルと震えだす。
「美味しぃぃぃぃぃ☆」
「こっちのチョコクッキーも最高だよぉぉぉぉぉ♪」
二人の幸せそうな表情に一人、また一人と席を立ち、尚人の席に近づく。
「あ、あの私も一枚貰ってみても良い?」
「私も、私も!」
「えっ、あっ、はい……どうぞ」
「私のおやつがぁ〜って私もまだ食べるんだよぉー!」
「甘いものは正義!」と誰かが言ったが、またたく間に尚人の席の周りにはクラスメートが集まり、一枚、また一枚とクッキーはなくなっていく。波のようにやってくるスイーツ女子達に抗う術は尚人には無かった。
「ちょっと宜しくて?」
そんなスイーツ女子達の波をみていたら、金髪ロングの綺麗な女子が尚人へと声を掛けてきた。
※布仏兄妹漫談後の二人の密談。
谷本癒子(以後、癒)…………(いや〜本音から話には聞いてたけど中々のお兄ちゃんっぷりだね尚人君。これはこちらから話し掛けてみようじゃないか)ねっ、ナギ、ナギ(小声)
鏡ナギ(以後、ナ)……何、癒子ちゃん?
ニヤリとした表情で癒子は、席に戻る布仏兄妹の背中を指さす。
癒)声、掛けに行ってみようよ!
ナ)うっ……うーん。(まぁ、本音ちゃんもいるし大丈夫かな)
こうして二人は尚人の席へと向かった。
前作IS作品もお読みの方へ。
因みに今回はナギちゃん、ヒロインにはなりませんのでご了承下さい。