先代の楯無が亡くなった時の過去話で、更識姉妹の心情の変化が書かれています。
シリアスはツラい……という方は飛ばされて次話をお待ち下さいm(_ _)m
「お父さん、お願い! しっかりして! 目を開けてよ……」
ピーーーー
「……残念ですが…………」
「イヤだぁ! お父さん、お父さーん!」
泣きじゃくる簪ちゃんを見ながら私は決意する。大好きだった父が今逝ってしまった……この時から私は…………
「虚ちゃん……おじ様と協力して更識家の上層部をできる限り集めてくれる?」
「刀奈様……別に今すぐでなくて――『いいの』」
間を置けば私の決意が揺らいでしまいそうだから。
「…………刀奈姉」
「この協議をもって更識刀奈を新代の更識楯無と認める!」
布仏のおじ様の議長のもと、私が正式に更識家当主として【楯無】の名を受け継いだ。
私が若すぎるといった一部反論の意見も出たが、反対派の布仏のおじ様を一時的にと推す人々を、当のおじ様が抑え込み、大多数の賛同のもと私が楯無となり、皆の前に立った。
「未だ若輩者ではありますが、先代の意志を引き継ぎ、精一杯やるつもりです。宜しくお願いします」
覚悟はしているつもりだった……少し前、まだ先代の父が何とか会話をできた頃に話した時点で…………
「刀奈……俺が逝ったら次の楯無はお前だ」
「……何言ってるのよ! 逝くにはまだまだ早過ぎるんだからね……さっさと復活してバリバリ働いてもらわないと困るんだから!」
「ははは……刀奈は厳しいなぁ……布仏よ、刀奈を頼む……次代の楯無を支えてやってくれ」
「馬鹿野郎! なに弱音吐いてんだよ……俺の仕事はお前を支える事なんだ……俺より先に逝くんじゃねーよ!」
「二人して厳しい事言うんじゃねーよ……もういい、俺は不貞寝する」
そう言って父は布団を深く被り、不貞寝してしまった……しかしこの時点で父はだいぶ無理をして話していたのだと後で知った。
これが父と話した最後の会話だったから…………
お父さんが死んだ…………私はお父さんの遺体にしがみついて泣く事しかできなかった。
幼馴染の本音に支えられて家に戻って来た時には、既にお姉ちゃんが次代の楯無として承認されてて、皆が忙しそうに動いていた。
お父さんが死んだ時も、その後の葬式の時も、お姉ちゃんは一度も涙を流す事は無かった。私は葬式でも泣いた……たくさん…………
「……眠れない」
葬式の夜、私は眠りにつく事ができず、布団を握りしめていた。私はまだまだ引きずっている……心にポッカリと空いた穴を埋めきれないでいる。
「……お姉ちゃん」
私は起き上がり、自身の枕をぎゅっと抱きしめて部屋を出た。そして今日だけ一緒に寝てもらおうとお姉ちゃんの部屋に着いた時に見てしまった。
尚兄と抱きしめ合って、大粒の涙を流しながらお父さんの事を尚兄に泣き喚くお姉ちゃんの姿を……お父さんが死んだ時も、葬式の時も泣かなかったお姉ちゃんが……泣いていた。
暫く茫然とその光景を眺めていたら、私の存在に気づいた尚兄がこちらを見てきた。そして人差し指を唇に当てたあと、ハンドサインで「ごめんね」と謝ってきたんだけど、私は我慢できずその場をあとにして自室に戻った。そして自身のベッドにダイブしていた。
「お姉ちゃんは泣かなかったんじゃない……泣けなかったんだ。その立場故に……なのに私は…………お姉ちゃん」
この時、色んな感情が私の中で渦を巻き、ある時、それが私の中でストンと何かに落ちた。それはプラスでもあり、マイナスでもあった。けれどこの時の私はまだ、そのマイナス面ばかりしか見えていなかったのだった。
この時……
私は尚人君を本気で好きになってしまった。
私は尚兄への好きな想いを諦めてしまった。
現状ではここまでですが、物語が後半に進むにつれて、また少しずつ明らかになっていく予定です。
次はラブコメらしく笑える内容でオマケ話を書くつもりです★
では次のお気に入り人数達成まで本編をお楽しみ下さい☆