探求者たちのタイムクライム   作:Okubo Masau

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 華やかなGⅠウマ娘たちの活躍が世間を賑わす中、まだそこまでの大舞台には上がれていない面々も懸命にレースへと向かっていた。なかなか勝ちきれないレースが続くタップダンスシチーも、持ち前の強靭なメンタルと頑健な身体を武器に、次々とレースへ出走している。デビュー以降、不調の続くマンハッタンカフェとレースこそ違うものの、偶然ながら同じ日、同じレース場での出走となった彼女は、出走前にカフェへと会いに行く。マンハッタンカフェへ激励の言葉を贈るタップであったが、同時にカフェがかなり憔悴している様も実感することとなった。


競い合えば置き去るも易からず

 今年の新年度の始まりも賑わしく迎えられていた頃、タップダンスシチーは立て続けの本番レースを前に専念する日々を続けていた。

 

 本来はレースに一つ出走すれば、1か月は間を空けて休養と次への調整に時間をかけるのがセオリーであったが、タップを担当している片桐トレーナーはあえて1か月の間に複数のレースへ出走させる方針を採っていた。

 

 それは彼がメイショウドトウを担当していたころからのやり方であった。

 

 むろん担当ウマ娘が十分に頑健であることを確認し、疲労が過度に蓄積していないか、細心の注意を払い続けなければならないが……どれほどの熱狂に呑まれようとも平常心で想定通りのペースを維持し続けるには、本番のレース場の空気に慣れるに越したことはない。

 

「おや、次にタップさんに出走してもらう4月7日の大阪―ハンブルクカップは、ちょうどマンハッタンカフェさんが出走するアザレア賞と同じ日ですね。」

 

「Ha、だからどうしたってんだ?またカフェに話題を持ってかれんじゃないか、とでも心配してんのか。Ya worrying too much,わたしの勝利が、その日のトップニュースになるに決まってんだろ?」

 

「ま確かに、条件戦よりはオープン戦の方が格は上、かもしれませんがね。」

 

 しかし、かのレジェンド結城トレーナーに才能を見出されたというマンハッタンカフェの方に世間の注目が集まることは想像に容易かった。

 

 今世代のGⅠクラスウマ娘の中でも有力視される面々が才能を発揮しつつある一方、同世代でありながら年齢は一つ上のタップダンスシチーはなかなか勝ちきれないレースが続いている。

 

「勝てる実感は掴めてんだ、それに自分の足りない所もハッキリしてる。先頭でゴールを通過できるぜ、今度こそ。」

 

「前回の但馬ステークスは、レース展開自体もすっかり想定外となっていましたからね。」

 

 片桐への返答代わりに、ウォーミングアップを済ませたタップダンスシチーは芝地の表面を蹴立てて練習コースへと駆け出していった。

 

 最後に勝ったのは昨年末の天竜川特別レース、以降は万葉ステークス五着、関門橋ステークスにて三着、そして先月の但馬ステークスにて二着であった。

 

 殊にその但馬ステークスでのレース模様は、タップダンスシチーの中に忘れ難い悔しさを刻み込んでいた。

 

 距離も2000m、ゴール前の上り坂以外で速度が落ちる要素もない阪神レース場、タップダンスシチーは2番手という理想的な位置取りで安定したペースのまま、そのレースの前半を運ぶことが出来ていた。

 

〈向こう正面から3コーナーへ、先頭はメイショウバンバンですが徐々に位置を下げ始めたか、2番手はタップダンスシチー、先頭に並びかけている。3番手にはグランパドドゥ、1番人気のウマ娘、まだ仕掛けないか。サムソンゼットが並んで、その後トップコマンダー、シマノフリートと続く形です、残り800を通過。グランパドドゥ、どうやら失速か、じわじわと順位を下げていく。〉

 

 関門橋ステークスでは二着に食い込んでいたグランパドドゥは、得意とする先行の形に持ち込み切れず、前をタップダンスシチーに抑えられながら集団に呑まれ、スタミナを浪費してしまっていたらしい。

 

 1番人気のウマ娘が、ラストスパートでの競り合いに参加できもせず最後尾まで下がっていく様に、観客席からはどよめきが上がった。残すは2番人気のトップコマンダーか、3番人気のタップダンスシチーか、といった形となっていた。

 

(Do not guard down,Fight Commanderも上がってくるかもしれない……いや、まだだいぶ後ろの方か?)

 

 タップダンスシチーが警戒を向けていたのはファイトコマンダーであった。

 

 ファイトコマンダーは前回の関門橋ステークスで一着となったウマ娘、今回は4番人気に落ち着いていたが、最後の直線で一気に追い上げてくる末脚は健在である。

 

 しかしファイトコマンダーはまだ前から7番手の位置に居た。十分なリードを得るため、タップダンスシチーは最終直線へと向く前に先頭へと自らの位置を押し上げた。

 

〈さぁ先頭のメイショウバンバンをかわしてタップダンスシチーがハナに立った、残り400を通過しいよいよスタンド前の直線へと出てくる!先頭はタップダンスシチー、追う形でサムソンゼットが続くが、まだ伸びるタップダンスシチー!このリードは安定か……大外からファイトコマンダー!外からファイトコマンダーが上がって来た!〉

 

 コース外側から接近してくる蹄音を聞いた時、タップダンスシチーはつい数秒前の決断を後悔することとなった。

 

 ファイトコマンダーの末脚を警戒するあまり、最終コーナーで先頭へと出ようとする判断はミスであった。トレーナーと何度も練習した通り、自分のペースを守ってコーナーを回り切り、ゴール前の攻防に応じられるよう十分なスタミナを残しておくべきであった。

 

(Damn it!ビビッちまったのか、わたしが……!)

 

 1番人気のグランパドドゥが下がっていったことに、若干なりと安心感を覚えてしまったことも、タップの精神を揺さぶる一要因であったかもしれない。

 

 安堵しそうになる自分を引き締めようと、前回自分が敗れたファイトコマンダーへと過度の警戒を向けてしまったのだ……もはや、こうであればという仮定の話をいくらしたところで、レース結果を覆し得ないが。

 

 心もとないスタミナ残量で、追い上げてきたファイトコマンダーに懸命に追いすがるほか、タップダンスシチーに為せることは残っていなかった。

 

〈ファイトコマンダー上がってくる!凄まじい末脚、まだ伸びる!残り200を通過!阪神レース場はここから坂があるぞ!ファイトコマンダー、タップダンスシチーを交わして先頭に立った!タップダンスシチーも食い下がるが、上り坂が厳しいか、その差は広がっていく!約2バ身のリードをもって、ファイトコマンダー余裕のゴールイン!二着はタップダンスシチー、三着サムソンゼットという結果となりました!〉

 

 終わってみれば、ことごとくファイトコマンダーの作戦通りにハマったレース展開となっていた。

 

 ゴール前の上り坂では、十分にスタミナの余裕を残しておかなければいくら脚を早めようと急いたところで、失速は免れない。最後の最後まで、焦らずに位置をキープすべきだった……タップの後悔は明確なものであった。

 

 一度自分が敗れた相手が、背後から追い上げてくるというプレッシャーは拭い難い。そのプレッシャーの掛け方ひとつ取っても、レース歴で言えば先輩にあたるファイトコマンダーが一枚上手であった。

 

「奴にrevengeできるわけじゃないが、私ももうrookieってわけじゃない。1年先輩だろうが2年先輩だろうが、関係なくぶっちぎって勝てるってところを今度こそ見せてやる。」

 

「その願いは達せられそうですね、今回のレースでも先輩ウマ娘がたに囲まれて走ることになりますから。走りの改善点を具体的に見いだせたってのが但馬ステークスでの一番の収穫、勝算は充分ですよ。」

 

 単に身体能力を鍛えたり走りのフォームを改善するばかりではなく、本番でのプレッシャーの掛け合いや位置取りの駆け引きなどを学べたのならば、片桐トレーナーとしても狙い通りの成長をタップは遂げたことになるだろう。

 

 アザレア賞も、大阪―ハンブルクカップも、4月7日、同日共に阪神レース場で行われる。

 

 時刻も近い。アザレア賞は14時35分発走、大阪―ハンブルクカップは15時45分発走である。タップダンスシチーとマンハッタンカフェが顔を合わせるのは必然ではないのだが、会いに行かずにいられないのがタップである。

 

「Eyy!Cafee!調子はサイコーか?今日アンタと競争できるワケじゃないのが残念だぜ!」

 

「すみません、結城トレーナー。ウチのタップがどうしても応援しに行きたいと言い張りまして。」

 

 同日のレース場の出走ウマ娘であるのを良いことに、マンハッタンカフェの出走前控室へと威勢よく乗り込んでいき、朗らかな声を響かせているタップダンスシチー。その背後で、片桐トレーナーは恐縮して頭を下げている。

 

 鷹木トレーナーほどの小心者ではなく、むしろ図々しさの方が強い片桐トレーナーであったが、そんな彼でもレジェンドトレーナーの前では遠慮を表さずにいられなかった。

 

 結城トレーナーは白髪を戴いた頭を小さく頷かせながら、笑みと共にタップの訪問を受け容れていた。

 

「いや、来てくれてありがたいよ。カフェはどうしても不安が抜けないようだからね。」

 

「What's!?Let your hair down,Cafe!アンタの走りなら負けるワケねーだろ!このわたしがアザレア賞に参戦してたら話は別だけどな、Haha!!」

 

 タップダンスシチーはマンハッタンカフェの手を取り、勢いよく振りながら力強い言葉を与える。そこまでして、ようやくカフェの顔には和らぎが生まれた。

 

「応援ありがとうございます、タップダンスシチーさん……頑張って、走ってきます。」

 

 張りのある、部屋中に反響するタップダンスシチーの声とは対照的に、マンハッタンカフェの声は彼女の口元の空気にすら吸われてしまうかのような、細い声であった。

 

 むろんカフェは元よりさほど声を張らない類のウマ娘ではあったものの、その事実を差し引いてもなお、レース直前とは思えぬほどにカフェは気力を失せさせていた。

 

 結城トレーナーに付き添われながら出走前のパドックへと赴くカフェの背を見送りつつ、片桐はボソッと口を開く。

 

「どうやら本調子ではなさそうですね、カフェさん。結城トレーナーも、明らかに彼女を気遣い、慎重に見極めようとする目をしてました。出走を取り消すか否かの判断もよぎるほどなのでしょう。」

 

「カフェの手、メチャ冷たかった。レース前にテンション上げなきゃいけないってのに、病気ってことはないだろうな?」

 

 さすがのタップも、カフェが去った後は表情を僅かに曇らせている。

 

 この場にタキオンが居れば、マンハッタンカフェに与えている不安の元凶に気づけたかもしれない。自分のトレーニングを担当してくれる結城トレーナーにすら、相談できない悩み。

 

 カフェは、ハッキリと気づいていた。昨年と全く同じレース展開を示すレースが、幾つか既に行われていることに。世間では全く騒ぎになっておらず、その異常さに気づいているのが自分だけであるとも考えていた。

 

 もちろん今年に入ってからクラシック路線に乗るカフェ自身が出走するレースは、初めて行われるものであるはずだ。

 

(それでも、お友だちが示すレース結果を、ウマ娘が覆せず、繰り返すのだとしたら……。)

 

 ウマ娘がトレーニングし、鍛えた能力と技術でレースにて競い合うこと。その根幹を揺るがす不安は、マンハッタンカフェをますます痩せ細らせていた。

 

〈16名のウマ娘たちが揃いました、阪神芝2000m、アザレア賞。3番人気はシノグラフィー、今年最初のデビュー戦を勝利で飾って以来、好戦績を続けるウマ娘です。2番人気となりましたのはマンハッタンカフェ、今最も注目を集めるウマ娘ですが、今回こそ勝利なるか。1番人気はプレシャスソング、3月のデビュー戦では鮮烈な勝利を披露してくれました、勢いに乗るウマ娘。いよいよゲートインへと向かいます。〉

 

 ターフの上では、ただでさえ小柄なマンハッタンカフェがますます小さく見えた。

 

 勝負服ではなく、運動服の上にゼッケンをつけて走るアザレア賞。遠目であるほどに、マンハッタンカフェのほっそりした脚は冬の樹の枝のごとく頼りなげであった。

 

 自分たちの控室に戻ったタップダンスシチーと片桐トレーナーは、室内のモニター越しにその姿を見つめていた。

 

「いや、いかに結城トレーナーといえど、あの状態のカフェが勝てるとは考えていないはずです。カフェが体の不調を訴えずに走ろうとしているのなら、一旦長期休養に入らせるための経験を与えようとでもしているのでしょう。」

 

「I pray you're okay,Cafe.こんな所で故障だけはすんじゃないぞ。」

 

 そも、マンハッタンカフェが得意とする追い込み勝負は、この阪神2000mのコースではさほど有利とも言えない。

 

 何が原因でマンハッタンカフェが不調を正直に申告していないのかは不明であったが、無理な争いに巻き込まれない位置で、カフェを休養に入らせる直前のレースとして結城トレーナーが考えているのは明らかだった。

 

〈各ウマ娘、ゲートイン完了しまして……スタートしました!まずハナを切ったのはジャストマイタイプ、続きましては3番人気シノグラフィー、その外側にモニュメンタルが並んでいます。大外からバースウェージョン、そのウチ並んでテキラーショット、すぐ後ろにはニシノシシオウ、さらにはブラックシルエットと、先行集団はかなり詰まった形となりました。〉

 

 先月のタップダンスシチーが走った但馬ステークスと同様、ゴール前の上り坂以外は平坦が続くこの阪神芝2000mのコースは序盤からペースが速い。

 

 最初のコーナーに入る前に良い位置を取ろうと、逃げ、先行のウマ娘たちは我先にと前方へ殺到する。マンハッタンカフェはと見れば、後ろから2番手の位置につけていた。

 

「カフェさんが得意とする作戦を鑑みれば、何ら無理のない位置取りではありますね。」

 

「That's awsome……あんだけ痩せて冷えてた身体で、このペースに一番後ろでもついていけてんのが不思議なくらいだ。」

 

 タップダンスシチーは、常の彼女にしては珍しく、笑みを浮かべぬ真剣な表情でカフェの走りを凝視していた。

 

 言うなれば、マンハッタンカフェは絶不調の状態で出走しているのだ。それでいてなお、他のウマ娘に引き離されることなく、レースを走れているのは根本的な能力の高さを窺わせていた。

 

〈コーナーを回って向こう正面へと入っていきます、先頭は変わらずジャストマイタイプ、続いてシノグラフィー、3番手争いはテキーラショットとバースウェージョン、さらにはモニュメンタルと混戦模様が続いています。中団以降は最ウチにスタンドオフ、その外並んでセンターキュリオス、1番人気プレシャスソングも横並びの形、キングウィザードが間を進む、そのすぐ後ろマヤノムサシ、そしてマンハッタンカフェ、グッと詰まったバ群となっています。〉

 

 レースが中盤に差し掛かっても、先頭からしんがりまでの差は開かない。

 

 差しや追い込みのウマ娘が前方を追い立てているようにも見える形ではあったが、順位の入れ替わりがないというのは、逃げや先行ウマ娘の望むペースのままにレースが進んでいることの証でもあった。

 

「これは、目立った順位の入れ替わりが期待できないレースですね。せいぜい、コース外側に出ているウマ娘がこらえきれずに前へと出ようとするぐらいでしょうか。」

 

「あぁ、で、先頭の連中に追いつこうとして無駄にスタミナを使っちまう。カフェは無理すんなよ?」

 

 タップは画面越しに届くはずもない提言を口にした。

 

 マンハッタンカフェは常より冷静な振る舞いが目立つウマ娘であったが、しかし走るからには勝ちたいという思いが強まる点でもウマ娘の本性を備えてはいた。

 

〈向こう正面を抜けて3コーナーを回っていく、先頭はジャストマイタイプが死守していますがリードはほぼ無い、2番手シノグラフィー、3番手はモニュメンタル……ここで後方のマンハッタンカフェが一気に外へと出して前へ上がりはじめた!マンハッタンカフェ仕掛けた!観客席も大きく沸いています、ほぼ最後方から上がって行って、現在7番手の位置です!〉

 

「No,Stop it!ダメだカフェ、先頭の連中はたっぷり余裕を残してやがる!」

 

「いや、カフェさんも分かってるんじゃないですか?このレースへの出走を諦めたくはなかったものの、同時に自分自身の限度をも理解したいのかもしれません。」

 

 一気に追い込みをかけたマンハッタンカフェの走りに観客席が歓声を上げているのとは対照的に、タップダンスシチーは小さく溜息をつき、立ち上がりかけていた席に座り直した。

 

 片桐の推測は間違いではないのだろう。真面目に結城トレーナーのもとでトレーニングを続けていたカフェが、自分のスタミナが枯渇しかけていることに気づかないはずはない。

 

 レースに出走したいという思いをここで完全燃焼させ、夏以降の方針を定めることに集中するためにも、カフェは明確に自分の不足を感じ取りたいのかもしれなかった。

 

〈スタンド前、最終直線へと向きます!先頭は変わらずジャストマイタイプ、しかしシノグラフィーが並んだ!3番手争いはモニュメンタル、テキーラショット!バースウェージョンは下がっていくか、そしてマンハッタンカフェは来ない!1番人気プレシャスソングも後方集団のなか!先頭を奪ったのはシノグラフィー!シノグラフィー、モニュメンタルほとんど並んでゴールイン!勝ちましたシノグラフィー!〉

 

 結果としては、マンハッタンカフェは11着であった。

 

 1番人気のプレシャスソングが13着であったことが、このレースが終始、先行するウマ娘たちの有利に運んだことの証左ではあったが、しかしマンハッタンカフェ本来の実力とは程遠い結果に違いない。

 

 しばしの沈黙ののち、タップダンスシチーは立ち上がり、控室の出入り口へと向かった。地下通路にはウォーミングアップ用のコースがあり、出走予定ウマ娘はそこで身体をならすことができる。

 

 阪神レース場はこの後15時10分発走の播磨特別レースを挟み、15時45分発走の大阪―ハンブルクカップとなる。まだ、本番には時間がある。

 

「I can't spaced out,わたしはもっかい身体を温めてくるぜ。トレーナー、カフェには無理すんなって私が言ってたと伝えといてくれ。」

 

「はい、偶然会うことが出来れば、ですがね。さすがに結城トレーナーのおられる控室に、自分ひとりでずかずか入る胆力はありませんので。」

 

 タップダンスシチーは片桐の言葉には言い返さず、そのまま小走りで廊下へと駆け出していった。

 

 彼女の胸中には、どこか急かされるような思いが渦巻いていた。マンハッタンカフェはほぼ間違いなく、長期休養に入るだろう。あの様子では、クラシック路線に突入させるのは危険だ。

 

 強力なライバルが戦線離脱するという印象よりも、自分たちの世代、共に競うべき仲間たちが減ることには、理屈に持ちだせぬ焦燥感が伴っていた。

 

「今年の内に、GⅠにまで上がっておかなきゃな……わたしが居ることを忘れんなよ、タキオン、ポッケ。」

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