自らの意思の表明も済み、脚の状態が治るまでの休養期間へと突入したアグネスタキオンであったが、担当トレーナーである鷹木はヒマになった訳ではない。
毎日、タキオンの脚の状態を確認し、医務室にて日々の検査結果を確認しに行く必要がある。タキオンのトレーニング再開が可能と判断されるタイミング次第で、次に出走するレースを見定め、いつでも手間取らず開始できるよう練習メニューも予め組み直しておかねばならない。
外部からの取材申し込みは基本的にトレセン学園側が応対するため、鷹木自身が煩わされることはなかったものの、学園内においては他にも対処すべき用件があった。
その一つが、片桐トレーナーとの約束を反故にしてしまったことへの謝罪である。
「いやいや、鷹木トレーナーが頭を下げることじゃありませんよ。こちらは元より、自分の思い付きで用意した練習場の管理を他人に押し付けるつもりで話を持ち掛けたんですし。」
はやくも春の終わりを告げる陽射しを浴びた草地の前で、頭を下げている鷹木に対し、片桐はいつも通り飄々と本心を告げていた。
「今さらになって率直に話してもらっても、現状に変わりないんですが……ともあれ、タキオンもこの状態ですし、タップダンスシチーの練習場をお借りするわけにもいかなくなってしまいましたので。」
片桐が担当しているタップダンスシチーは、先週の大阪―ハンブルクカップにて脚の腱を痛め、治療のために長期休養に入っていた。
タップダンスシチーのため専用の練習場として、トレセン学園敷地内の使われなくなった芝養生地を管理していた片桐であったが、タップを走らせることの出来ない期間、鷹木に譲ってアグネスタキオンの練習に使って良いとの約束を取り付けていたのだ。
その実は、これから夏にかけて雑草が伸び蔓延る時期、自分の代わりに練習場の維持管理を任せる人間を求めていただけだったのだが。
「鷹木さんさえよければ、ここの雑草刈りだけでも担当していただいたって、こちらとしては大助かりなんですが。」
「いや、もう、それはただのボランティアでしかないんですよ。自分の担当ウマ娘を走らせることも出来ない状態で、その労力を支払うのは流石に……。」
むろん、片桐の立場としても同じことだろう。
元はと言えば片桐が秋川理事長からの許可を取り付けて、空いている土地を担当ウマ娘の練習場とし、代わりに維持管理は自分が担うと言い出したことではある。が、担当ウマ娘の練習に繋がらないのに、ただただ夏季の草刈りという重労働に身を投じる気力は、さすがに湧かないらしかった。
共に療養のため長期の休養期間に入っているアグネスタキオンとタップダンスシチーは、担当トレーナーたちの苦悩も知らぬ顔で、柔らかな若草が伸びつつある草地に並んで腰かけ気ままに喋っていた。
まだタップの方は怪我の完治まで遠く、傍らには松葉杖が寝かされている。
「Ya outdid me、一回も負け無しで皐月賞まで獲っちまうだなんてよ、Tachyon!しかもかなり手加減してた走りだったよな!」
「いやはや、全くだねぇ、トレーナーくんに全力での走りは止められてしまったものだから。本気で行けば、二着のダンツくんを6バ身か7バ身はちぎっていたところだったろうねぇ。」
「Ha!そりゃ大きく出たな!わたしも走れるようになりゃあ、いずれGⅠで8バ身でも9バ身でも差をつけて勝ってやろうじゃないか!」
先日の記者会見でも鷹木が記者から突っ込まれたのと同じ内容をタップは喋っていたが、彼女の朗らかな口調で語られればそれは、暗い疑惑からは無縁の賞賛を含めた物言いとなっていた。
鷹木も片桐も今、トレセン学園2年目となったウマ娘たちの身体能力がいよいよ本格化するという大事な時期に、担当ウマ娘が故障に見舞われるという状況に直面している。
トレーナーとしてウマ娘のメンタルを支えねばならないとの覚悟はもちろんあったのだが、底抜けに明るいタップダンスシチー、明るい性格とは言い難いが面の皮の厚いアグネスタキオンの振る舞いを前にして、自ずと表情は緩んでいた。
「そういや、鷹木トレーナーはご存知ですか?やっぱり結城トレーナーが、ダンツフレームの担当に決まったとのことです。正確には、決まっていた、と言うべきでしょうか。」
「あぁ、皐月賞の前に、ですよね。直接知っていたというわけではないですが、GⅠ出走ウマ娘に担当トレーナー無しというわけにもいかないでしょうし、それにあの皐月賞でのダンツの走りは、格段に強さを増したものでしたから。」
かのレジェンドトレーナー、結城の指導をダンツフレームが受けているだろう、ということは噂程度にしか流れていない情報であった。
鷹木の視点から確認できていたのは、タキオンの脚が無事かどうかハラハラしながら見ていた皐月賞の中、ダンツフレームの脚運びが迷いなきものになっていた様である。
以前は、瞬発力勝負に持ち込まれると他の身軽なウマ娘たちに先を越されていたダンツフレーム。しかし、そのがっちりとした体格を自らの強みとして活かし、あれだけの密集状態となった集団の中へ押し込まれっぱなしにならず、最終直線ではいち早く抜け出てきたのだ。
スタートにて出遅れたとはいえブロックされることなく大外から上がって来たジャングルポケットの、更に前を駆け続けたダンツフレーム。本来の作戦からかなりペースを狂わされただろうに、スタミナを切らす気配も無かったのだ。
「先が楽しみでもあり、脅威でもありますねぇ。結城トレーナーが担当したウマ娘は、必ずGⅠを勝利しますから。」
「ホントに、そうですよ……ダンツフレームは非常に素直な性格でもありますし、あの恵まれた体格、磨かれれば着実にトップクラスのウマ娘になります。」
もとは、タキオンやタップ、ポッケ等の目立つウマ娘の振る舞いを、遠巻きにクラスメイト達と眺める側だったダンツフレーム。
その体の頑丈さもあいまって、今後はウマ娘レース界の中心にまで躍り出てくることはほぼ確定したようなものだった。将来の成長に期待の掛かるカフェもしばらくレースから離れ、皐月賞ウマ娘となったタキオンも復帰がいつになるか分からない。
当のタキオンは、タップとのお喋りの中でジャングルポケットのことを話題に挙げ、弄っている最中であった。
「そういやポッケとは話したのか?皐月賞のレースが終わったあと。」
「あぁ、向こうから来たさ。走れなくなった者のことなど捨て置けばよいものを、相変わらず律儀なジャングルポケットくんだ。ま、私は、キミが勝つべきは私ではなく、まずダンツフレームくんだろう?とだけ伝えておいたがねぇ。」
「Woo、サラッとsevereな言い方だな!今朝からポッケが随分と殺気立った様子で走ってたのも、今なら納得だ!」
長期休養のため自分が走れなくなっても、ライバルウマ娘を煽り立て、闘争心を駆り立てることについては余念のないらしいタキオン。
結城トレーナーによって担当されたダンツフレームの先着を許した今、ジャングルポケットに少なからず焦燥が生まれているだろうことは明確だった。
とはいえポッケの担当トレーナーを務めているキングヘイローには、皐月賞で惜しくも勝利を逃し、その後の日本ダービーにて焦りが出てしまった経験がある。彼女ならば、ジャングルポケットの焦りが悪い方向へ進まぬよう導くことも可能だろう。
「さて、他のウマ娘について展望を語るのも悪くはありませんが、自分の担当ウマ娘が第一です。そろそろ、タップの日課としているストレッチを進めたいので、お喋りはこの辺で。」
「ですね。タキオンも、出来るだけ筋力低下を抑えるために、療養中に可能な運動を続けさせなければ。いくぞ、タキオン。」
骨折や腱を痛めた状態では無理な運動は控えるべきだが、しかし全く身体を動かさない状態を続けていては、みるみる筋肉量は減っていき、復帰後からパフォーマンスを戻すのにかなりの時間を費やしてしまう。
また、血流の循環がトレーニングを続けていた頃から格段に減れば、治癒自体が遅れてしまうことにも繋がってしまう。そんな状態を避けるため故障部位に負担を掛けないよう運動を行わせるのも、ウマ娘の身体構造を理解しているトレーナーだからこそ出来る役目である。
「じゃーな、タキオン!次は天皇賞で会おう!」
「来年の春まで会えないとは寂しいねぇ。」
「Don't be silly、今年の秋に決まってんだろ!」
「随分と待ち合わせ場所の敷居を引き上げるじゃないか。」
片桐がタップに肩を貸しつつ、運んできた折り畳み式のチェアに腰掛けさせている様に背を向けて、鷹木もタキオンを連れ、負荷の軽いトレーニングを行うために練習場の方へと向かった。
しかし、やはりタキオンはトレーナーの意図通りに動くウマ娘ではない。
むしろ以前ほどトレーニング漬けにならずに済むことを理解しているだけに、彼女の興味の先はますます周囲へ、本来の想定の外へと向かうようになっていた。
「ごらんよ、集団指導のトレーナー達が忙しそうだ。4月に入学してきたウマ娘たちの面倒をいっぺんに見なければならないのだからねぇ。」
「ホントにな。去年の春、お前が早々に集団指導から外され、俺の担当ウマ娘として決定された理由もハッキリ分かるよ。」
あまりにも協調性が無さすぎる、そして騒ぎを起こすウマ娘が居ては、入学間もないウマ娘たちを一斉に集めて行う指導にも支障をきたすことになる。
自らの扱いを定めるためにタキオンが、敢えて問題児らしい行動を示したのだという可能性は十分にあったが。
鷹木はタキオンがまた余計なことをしでかさぬうちにこの場を立ち去りたかったが、タキオンは早くも目聡く関心の向かう先を見出していた。
「おや?見たまえ、若手のトレーナーがひとり、あちらこちらを歩き回って何者かを探している様子じゃないか。もしかすると、私のような性格のウマ娘がトレーニングをサボって抜け出しでもしたのかもしれないねぇ。」
「トレセン学園の入学早々にそんなことをするほど肝の据わったウマ娘はタキオンぐらいだろ……」
確かにタキオンが指さす先、ベテラントレーナーに命じられたのか、集団指導の手伝いをしている若手トレーナーが途方に暮れた様子で走り回り、校舎の中や物置の裏を覗き込んでいる。
早くも鷹木の脳裏には心当たりが浮かんでいた……4月に入ってすぐの頃、タキオンが三女神像の前で立ち尽くしてトレーニングに無断遅刻した日のこと。とある個性的すぎる新入ウマ娘が、タキオンの元へ鷹木を導いたことがあった。
そのウマ娘は、眼帯をつけ、独特な物言いを連発し、そして入学式に出席することなく学園の敷地内を自由に歩き回っていた。
「……いや、いたな。確か入学式から抜け出して、タキオンの実験室に入り込んでいた奴が……。」
「私の実験室に、だって!?私の了承も無く、実験台以外のウマ娘を入れたのかい、トレーナーくん!」
「いや、そのウマ娘が勝手に入りこんでただけだ。そもそも、あの部屋はタキオンが勝手に占拠してるだけで、本来は理科準備室だろ……おいタキオン、走るなよ!脚を痛めるのが今は一番マズい!」
鷹木の反論も聞かず、とはいえ忠告だけは聞き入れて、タキオンは早歩きでトレセン学園の校舎内へと入っていった。
ウマ娘の早歩きは、人間がそれなりに必死で走って追わねばならないスピードになる。
廊下を抜け、階段を駆け上がった鷹木がゼェゼェと息を切らしているのを背に、タキオンは自分の実験室として勝手に使っている理科準備室の扉を勢いよく引き開けた。
果たして、そこには例の眼帯のウマ娘……タニノギムレットが居た。むろん、三女神像の前で会った日、タキオンも彼女のことを覚えていた。
それはそれとして、自分の聖域に踏み込まれた件を糾弾することへの躊躇などタキオンにはない。とはいえ、敢えて施錠していなかった部屋に勝手に上がりこむ、物好きなウマ娘に興味はあるらしく、タキオンの口調は少々芝居がかったものとなっていた。
「そこのキミ!ここは私の実験室だ、勝手に上がりこむのは止してくれたまえよ!」
「クク……やはり現れたか!真理(アレーテイア)の探求者よ!では語らい(レゾナンス)と行こうか……漆黒にして不動の戦士(エインヘイリヤル)は、魂(プシュケー)の枷を外し、暫しの安息が必要だ。俺は彼女を、破壊の先の理想郷(アルカディア)へと連れてきたのだ―――この楽園(ロクス・アモエネス)からの追放は待たれよ。」
「確かに慣れないトレーニングで休憩が必要な子もいるかもしれないがねぇ、しかしよりによってこの部屋を休憩場所に選ばなくたっていいじゃないか!」
「タキオン、お前、相手が喋っている内容を理解できるのか……?」
ネオユニヴァースを相手に会話した時も同様の現象が起きていたが、やはり凡人トレーナーたる鷹木には聞き慣れない語の羅列としか思えない難解な言い回しも、アグネスタキオンは瞬時に解し、すかさず返答できるらしかった。
要するに、タニノギムレットは休憩が必要そうなウマ娘を見つけ、このタキオンの実験室こと理科準備室に連れてきたということらしい。
そうなれば、鷹木もトレーナーの端くれとして、休憩の必要なウマ娘が誰であるかを確認しないワケにはいかなかったが……タキオンがカーテンを引き開け、部屋の薄暗がりが取り払われた時、その正体に鷹木は驚くこととなった。
「えっ、シンボリクリスエス……?」
「I apologies……for the inconvenience.少し、体温が、上がり過ぎていた……。」
勝手に椅子を出してきて座っているタニノギムレットに、向かい合うようにして腰掛けているのはシンボリクリスエスだった。
体操着姿になった彼女は、ますますもって他の新入ウマ娘より一回り大きな体格が際立つ外見となっていたが、たしかに結城トレーナーの見立て通り、まだ体力面では不完全な部分があるらしい。
クリスエスの頬に流れた汗の跡を見るに、他のウマ娘と同じトレーニングをしながらも、相当に体力を消耗しきった状態になっていたのだろう。
じっと黙っていては威圧感のあるクリスエスの体格ではあったが、やはりタキオンは遠慮がなかった。
「確かに無茶をするのは良くないが、ならば指導を担当しているトレーナーに申し出れば良いじゃあないか。私ならば、トレーナーの指示を無視してでもその場に寝転がって休憩を始めるけれどねぇ。」
「いや、タキオン、皆が皆、お前と同じような性格ってわけにもいかないだろ。」
鷹木はすぐさまタキオンを諫め、ますます申し訳なさそうな表情になったクリスエスを気遣うも、タニノギムレットの方がクリスエスへの理解度は高いようだった。
「未だレルネへとも至らず、ネメアの谷へと赴かんと送り出されたばかりの英雄(ヘミテオス)が、苦難の旅路(クロニクル)を前に膝を付けるか?―――否、到来を告げる角笛(ギャラルホルン)は響き出した、もはや深淵の安寧(ゆりかご)はとうに過ぎ去った!漆黒にして不動の戦士(シンボリクリスエス)は、己が在り方(イデア)に忠を尽くしているのだ……!」
「ふぅン、なるほど、確かに鳴り物入りでアメリカからトレセン学園へと編入されたとあれば、他のウマ娘も見ている前で、鍛錬に音を上げるわけにはいかないとも感じてしまうものかもねぇ。」
タキオンによる通訳で、ようやく鷹木にも理解が及んだ。
もともとは、レジェンド的人物、結城トレーナーによって担当される想定で、シンボリクリスエスはトレセン学園へと迎え入れられたのだ。
しかし、結城トレーナー自身は担当せず、身体能力の本格化までに様々な体験を積ませるべきだとの意思を表明したため、シンボリクリスエスは他のウマ娘たちと合同で集団指導を受ける流れとなった。
とはいえ生真面目なシンボリクリスエスは、自分の担っている役目、国内のウマ娘レース全体のレベルアップという目標を胸に、頑張り過ぎてしまうところもあるのだろう。かの皇帝と同じ冠名「シンボリ」を背負っているという自負もあるだろう。
そんな様子を見ていたタニノギムレットが、ちょうどよく他のウマ娘にも知られていない……というよりも面倒くさいウマ娘筆頭アグネスタキオンの縄張りゆえ近寄られない……この実験室に、クリスエスを連れこんで休憩させていたのだ。
済まなさそうな顔つきを続けているクリスエスであったが、同時に自分の練習時間を減らすわけにはいかないとの焦りもまた目に浮かんでいた。鷹木はクリスエスの座っている椅子の前にしゃがみ込む。
「シンボリクリスエス、ちょっと手を出してくれ。脈拍をみさせてもらう。練習に戻っても問題がないかどうか、判断する。」
「Understood.」
シンボリクリスエスの褐色肌の手首に指を当て、同時に鷹木は彼女の口元、そして眼へと視線を向けた。
心拍数と同時に、呼吸数、瞳孔の開き具合をじっと確認する。この薄暗い実験室にタニノギムレットによって連れ込まれてから暫く休めたおかげか、身体の状態はかなり落ち着いていた。体格の大きなウマ娘らしい、強くゆっくりめの心拍が指先に伝わってくる。
新入ウマ娘は、トレーナーから手を取られたり顔を覗き込まれたりすれば、多少なりと緊張で脈拍が早まるものであるが、クリスエスの場合はまったく早まりはしなかった。落ち着いた碧眼が、じっと鷹木の眼を見返してくる。
今は身体能力が成長途中だが、身体が本格化すれば確実に強いウマ娘になるだろう。
「練習に戻っても大丈夫そうだな、次にまた呼吸が荒くなったり、鼓動が強まり過ぎるようなことがあったら、すぐに指導担当のトレーナーに伝えるんだ。俺からも、話はしておくから。」
「I appreciate it……ありがとう、Trainer。それにGimletも、私のことを分かってくれて。」
「フッ……お前には特異(ユニーク)かつ冷厳な魂の波(オーラ)を感じる。俺の存在意義(レゾンデートル)であり、俺を為す価値(アクシオロジー)だ……!そう、感じるのだ、我が筋書(シナリオ)を確たるものとする、車輪(ホイール)の音を……!これはまだ甘美なる始まり(アペリティフ)に過ぎない―――いつか来るその日(ラグナロク)まで、牙を研ぐといい!ハーーッハッハッハ!!」
シンボリクリスエスが一礼して、練習場へと戻る廊下をしっかりした足取りで去っていくのを見送り、タニノギムレットも高笑いとともに何処へやら別方向へと去っていく。
彼女らが去ったあと、鷹木は、普段から個性的だと思っていたタキオンと喋っている時以上に疲れた自分に気が付いた。タキオンも、半ば同じ思いを抱いたらしい。
「やれやれ、実にやかましい後輩たちだねぇ。素質には期待できるが、あまり好き勝手に私の実験室に入られるのも困りものだねぇ。」
「一番好き勝手してるお前が言うな……いやちょっと待て、シンボリクリスエスが練習に戻れたのはいいが、タニノギムレットの方も練習サボりの真っ最中だったんじゃないのか……?」
今さらに気づいた鷹木が廊下へと小走りに駆け出たが、既に廊下には何者の姿も残っていなかった。
トレセン学園に嵐を呼びこんだかと思われたタキオンの、さらに次の世代もまた大人しくしている様子はないらしかった。