5月27日、東京レース場。日本ダービー発走の当日である。
普段ならば担当ウマ娘のトレーニングスケジュール優先のため、大きなレースを直接観戦しに行くことがなかなか出来ない鷹木であったが、その日は東京レース場現地へと赴いていた。
むろん、アグネスタキオンを連れて。皐月賞にて本気を出させず勝たせたため、長期療養に入って1ヵ月以上が経った今はタキオンも歩き回る程度なら何の問題も無いところまで回復していた。
ずっとトレセン学園の中に閉じ込められているままでは気晴らしも無いだろうし、遠出ついでにタキオンの脚の調子を見る意図もあった。
とはいえ、タキオンの引退について世間のほとぼりが冷めたわけではない。
「トレセン学園からの厚意で、今回は東京レース場内にURA関係者用の観戦ブースを用意してもらえたが、それでもあまり目立つような真似をするんじゃないぞ。帽子もかぶったままだ、療養中であるはずのタキオンが平気で外出している様に観客の殆どは納得しないだろうからな。」
「いつになく早口だねぇ、トレーナーくん。私とて弁えているとも、そんなに常識のないウマ娘だと見えているのかい?」
「常識がないとは思わないが、その理性を踏み越えて行動するのがタキオンだから言ってるんだ。」
1年以上の期間を共に過ごしたトレーナーが自分のことを理解してくれている実感に、タキオンの表情は満足げであった……が、鷹木の心労とは無縁の反応でもあった。
今回は、タキオンにさえ気を配っていればいい状況ではない。ほかならぬアグネスタキオン自身が、せっかくの日本ダービーを東京レース場現地で観戦する機会があるのならば、と後輩ウマ娘を誘っていたためだ。
それもまた、おとなしくしていてくれそうにないウマ娘である。
「クク……マティーニにはレモンピール、ジン・トニックにはライムスライス―――ガーニッシュはただ一滴で、運命(フェイト)の筋書き(シナリオ)すら変える。禁忌(タブー)を冒す罪、それは輪廻の隠し味!トゥインクルシリーズを駆け抜ける戦士(エインヘリヤル)たちの衝動(パトス)は、双眸に刻まれるだろう、牢獄(タルタロス)より深く!ハーッハッハッハ!!」
「だから、目立つような真似をするな、って……!」
「まぁまぁ、大目に見てやってくれたまえよトレーナーくん。トレセン学園に入り、この私という皐月賞ウマ娘に連れられて日本ダービーを見に行くだなんて、どんなウマ娘でも興奮を抑えきれない体験には違いないからねぇ。」
アグネスタキオンの隣で高笑いしているのは、タニノギムレットである。
幾度かの邂逅を重ねるうちに、タキオンはギムレットのことをすっかり気に入ってしまったらしい。合同で観戦する仲間をただ一名だけにするよう鷹木が告げた時、タキオンは同期の面々を差し置いて迷うことなくタニノギムレットを連れてきた。
……実際のところ、アグネスタキオンもタニノギムレットも、普段の言動が災いして同期のウマ娘たちと親交を深める機会を逸していることについては共通していたろう。
冗長な、あるいは迂遠な言い回しを好み、互いにそれらを理解し合える点も、双方の距離を縮めていたかもしれない。
「世界(ガイア)を酔わせる刹那の輝き……その化身(インカーネーション)は、ワタシの姿(イデア)だ―――世の理の探求者(クウェシトール)は、隠れ頭巾(ターンヘイム)の中にある。」
「その通りだねぇ。あくまでギムレットくんが目立っているだけで、私が目立っているわけではないからねぇ。」
「今のところはそうだが、でもトレセン学園在籍のウマ娘であることはバレつつあるぞ。」
鷹木は席に腰を下ろしたまま、周囲を落ち着かず見回す。両隣はURA関係者で固められているため、タニノギムレットの珍妙な言動に苦笑している様子ばかりが伝わってきていた。
SNS上に、「アグネスタキオンが日本ダービーを観戦しに来ている」との情報が早くも出回っていないか、鷹木の心境は安らいでいられなかったが、既に場内の雰囲気はいよいよ始まる日本ダービー、そのレース展開へと集中していた。
〈今年もいよいよ発走時刻が近づいてまいりました、東京優駿、日本ダービー。天候は曇り、バ場状態は重となりましたが、この東京レース場に詰めかけた何万人もの大歓声は、新たな時代の幕開けを待ち望む声でもありましょうか。解説にはお馴染みスペシャルウィークさんをお招きしております。〉
〈はい!スペシャルウィークです!今年も本当に楽しみな子たちが集まりました!皐月賞で活躍したジャングルポケットちゃんにダンツフレームちゃん、クロフネちゃんに加えて、先月の青葉賞で一着になったルゼルちゃんからも目を離せません!〉
今回の実況席も、アナウンサーとスペシャルウィークの2名だけが並んでいた。特別ゲストを呼ぼうにも、スペシャルウィーク以降のダービーウマ娘は全員が未だに現役続行中である。
むろんアグネスタキオンは、地下バ道から出てゲートへ向かうウマ娘集団の中でも、ジャングルポケットへと向ける視線を特に強めていた。
「難なく勝ってしまいそうじゃないか、ジャングルポケットくん……あぁ、なるほどねぇ。今さらながらに納得させられるよ。」
「何の納得なんだ。」
「いやなに、トレーナーくんには告げていなかったが、去年のホープフルステークスの時、地下バ道でジャングルポケットくんと並んで歩く時間があってだね。知っての通り我々は既にトレセン学園では幾度か顔を合わせていたのだが、改めて言われたんだよ。走る前から、私には強敵の匂いがある、といった旨のことをねぇ。」
それは比喩的な表現ではあったが、鷹木にも十分に実感の得られるところであった。
ウマ娘レースには、当然ながらそのレースに参加するだけの資格がある、と認められた者たちが集う。GⅠレースに足の速いウマ娘ばかりが集結するのは当たり前ではあるが、その中でも抜きん出る存在は、走り出す前から既にゴール時の光景が見えているような空気を纏っているものだ。
小心者の鷹木は、そのような感覚を受け取っても様々な懸念で上塗りしてしまうことの方が多かったが、それでも時にはタキオンのように、慢心や油断の余地も無く勝利の確信とともに送り出せるウマ娘は存在した。
「私は、私自身の限界にどこまで近づけるのか、そればかりを考えていたから、レースの勝敗を思考の基準とする気はさらさら無かったのだがねぇ……こうしてレースの場から離れて初めて、勝ちそうなウマ娘だけが持ち得る特有の雰囲気が存在することに気づかされたよ。」
「冠を連ねた輝かしき路の先駆者、その蹄鉄の鮮烈な輝き―――偽りようもなく、魂(プシュケー)へと語りかけるのだ。彼女らの在り方(イデア)は、我らの内なる鼓動(エラン・ビタール)を酩酊させるのだろう。」
「その通りだねぇ、あるいは、これが可能性世界にて確定した勝利であることの証明かもしれないが。何にせよ、この現実世界においては我々が観測しないかぎり、確定し得ない勝利だ。」
ギムレットが割って入ったことで、タキオンとの会話はより難度の高いものになってしまったが、ここまで彼女らと関わってきた鷹木にも言わんとするところは伝わってきた。
レースが始まる前から、勝ちそうな空気を纏ったウマ娘。
そのウマ娘が勝利する運命が既に定まっていることを、観る側も感じ取っているのかもしれない。
むろん、トレーナーとしての立場としては、レースの結果は定まってなどおらず、常に未知であるべきだったが。
〈全ウマ娘、まもなくゲートイン完了しようといったところです。さぁ今年のクラシック級、最強のウマ娘は誰だ、一生に一度きり、頂点を決める戦い、勝負と誇りの世界、日本ダービー!いよいよ……スタートが切られました!ジャングルポケット、好スタート!ダンツフレームも揃って良いスタートを切っています!先行争いはウチからキタサンチャンネル、しかし外からテイエムサウスポー!ハナを叩いてテイエムサウスポーが先頭に立ち、最初のコーナーへと入っていきます!〉
〈大胆な逃げですね!ここからコーナーに入ると下り坂です、かなりスピードに乗っていますよ!〉
18名、フルゲートの出走となった今回の日本ダービー。
テイエムサウスポーが一気に加速して大逃げの態勢となった様に観客席は湧いていたが、一方でジャングルポケットはダンツフレームとともに後方へと位置を落ち着けていた。
「まずは不足なし、余計な浪費も無く良い位置についたようだねぇ、ポッケくん。」
「18枠、一番の外側からのスタートとなったが、集団に囲まれることなく中団の後ろにつけられたようだな。」
コーナーの攻略を昨年からずっと続く課題として練習し続けていたジャングルポケットだが、むろん直線での走りの安定感にもさらに磨きが掛かっている。
マークが集中しがちな1番人気に推されながらも、巧みにコース取りを判断し、包囲されず大外を回らされることもない、ウチ側にダービーレグノの1名だけを入れてコーナーを回っていく。
〈キタサンチャンネル2番手、ルゼルは3番手で上がっていきます。プレシャスソング、外からはスキャンボーイが続いて、1番人気ジャングルポケットはちょうど中団、その背を見るようにクロフネが進んでいます。ダンツフレームはさらにその前といった形、さぁ先頭ではテイエムサウスポーが軽快に飛ばしていく、現在5バ身のリード、続くキタサンチャンネルも後方を引き離して3番手までは5バ身離れています。〉
〈これはまだまだリードを広げそうですよ!何といっても1番人気ジャングルポケットちゃんの追い込みに備えなければなりませんからね!〉
あるいは、今年の春の天皇賞での光景も、この逃げの作戦を採ったウマ娘たちにとっての勝算の根拠となっていただろう。
イングランディーレは序盤から大逃げを打ち、後方のウマ娘たちは仕掛けどころを牽制し合ってなかなか距離を詰められなかった。ネオユニヴァースが、早まったかと思われるほどのタイミングで加速を開始していなければ、きっとイングランディーレが天皇賞を制していただろう。
「今月の頭のことだからねぇ、イングランディーレが大逃げを披露したのは。その策に縋りたくなる気持ちも分からないでもないねぇ。」
「フッ……だが黒薔薇の模倣が行き着く先は、アスポデロスの野に過ぎん―――実に戯画的(カリカチュア)だ、薔薇を手折ろうとした小童が美しい棘に刺される様は。」
タキオンが言外に示そうとした内容を、早くも読み取ったタニノギムレットが頷きながら独特な相槌を打っている。
確かに、先頭でますますリードを広げていく逃げウマ娘たちは速度を緩める様子を見せなかったが、それが後方のウマ娘たちを焦らせることはもう無いだろう。
〈ルゼルが3番手、そして4番手にはスキャンボーイが追走、ウチに控えてプレシャスソング、向こう正面に入りました。先行する面々を見据えてシルヴァコクピットが中団の前を進みます、さらにはダンシングカラー、マイネルライツ、さぁダンツフレームとジャングルポケットが並んで、その争いを見るように後方にクロフネがぴたりとついています!さぁ先頭のテイエムサウスポーは1000mを通過、58秒!少々早いかもしれません!〉
〈リードは充分ですけれど、このペースは飛ばし過ぎかもです!人気度上位の子たちがじっくりと脚を温存できているので、レース終盤に一気に動いてきそうですよ!〉
東京レース場は、向こう正面の直線に上り坂がある。
ここまで懸命に飛ばしてきた先行集団のウマ娘たちは、その坂を駆けあがったあたりから明確に速度を緩め始めていた。
「さすがにバテてくるねぇ、もう10バ身以上は差が開いていたが、残り1000mでキープできるリードではないだろうねぇ。」
「ゴール前の直線にも上り坂がある……後方からの追い込みが決まる展開だな。」
最終コーナーを抜けた後、ゴールまでの525mの直線は、最終直線での追い込みを得意とするジャングルポケットのために誂えられたかのごとき舞台だ。
ジャングルポケットの得意分野で競い合うことを避ける試みは、早くも潰えたも同然であった。残すは、先行寄りの位置から末脚を発揮するか……ジャングルポケットとの真っ向勝負、追い込みの加速で競り合う他にない。
そんなことが可能なウマ娘は、ごく限られていた。
〈依然として縦長の隊形で3コーナーへと入っていきます!テイエムサウスポーぐんぐんと逃げて、今なお10バ身ちかいリードがありますが、じわじわと後方集団が迫ってきているか!ウチからダンシングカラーが前を目指し始めた、外目をついてウマレナガラノが上がっていく、さらにはクロフネだ、クロフネが仕掛けた!ジャングルポケットとダンツフレームの外に出て、クロフネが上がっていく!〉
〈あえて早めに仕掛けましたね!ジャングルポケットちゃんは、やっぱり最終直線まで脚を溜める作戦でしょうか、まだまだ焦っている様子はありません!〉
この日本ダービーで2番人気にまで上がっていたクロフネは、ジャングルポケットとは仕掛けるタイミングをずらす作戦を実行したらしい。
最後の直線に入るまで脚を溜めるよりは、スタミナ消費こそ早まってしまうもののリードを得ておく作戦である。18名が同時に走る状況、仕掛けどころを遅らせればそれだけ前方を塞がれるリスクも高まる。
しかし、タキオンに並んで、コース上を食い入るように見つめているギムレットには、早くも先の展開が見えつつあったようだ。
「車輪(ホイール)の音を、感じるぞ―――!刮目するがいい、観測者たちよ!獣性は吼える刻を愛し、だからこそ堪えている!見えるぞ、灼熱を通り越し、もはや熾烈な輝きと化したヘスティアの炉が!」
「全くだねぇ、全てのウマ娘たちは勝利のために前へと上がっていくが、観たまえよ、まるでジャングルポケットくんの覇気に怯えて逃げているかのごときじゃないか。」
今なおジャングルポケットは集団の後方、早めのタイミングで加速していくウマ娘たちの背を見送るような位置であったが、彼女の末脚が十分すぎる準備時間を終えていることは明白であった。
そして、そんな彼女と並んで駆ける唯一の存在……ダンツフレームもまた、ジャングルポケットと共に力を解き放つ瞬間を待ち焦がれていた。
〈さぁ大外からクロフネ、あるいはボーンキングが上がってくる!4コーナーを回っていく!ジャングルポケットはまだコース内側だ、残り600を切りました!クロフネがどんどん先頭に迫ってくる!ジャングルポケットは、ジャングルポケットは依然としてその後ろであります!4コーナーを抜けて直線コース!さぁ、ルゼルが抜け出した!クロフネがバ場の真ん中……外からジャングルポケット!ジャングルポケットだ!クロフネは伸びない!〉
〈上り坂、全く速度を落としてません!このまま一気に来ますよ、ジャングルポケットと……ダンツフレーム!!〉
まだ、ジャングルポケットは最高速に達していなかったが、解説のスペシャルウィークは更に速度を上げてくるだろうことを見越していた。
クロフネは直線の上りで失速し、先行していた面々も末脚の加速に欠いている。だが、ここにきてジャングルポケットが加速を緩めるわけにはいかない理由が、すぐ背後に迫っていた。
「ダンツフレームくんだねぇ!あのジャングルポケットくんの得意分野で、真正面から勝負をしかけるとはねぇ!」
「鑑賞者(ビホルダー)たちよ、刮目せよ!煌めきを背負って競う者たちの輝きは、まさにその一瞬にしか存在しないッ!!これぞ刹那の輝きだ、存分に彩り合う、互いの定めだ!」
幾万人もの大歓声の中、タキオンとギムレットがそれぞれ叫んでいる内容はほとんど聞き取れなかったが、言葉として受け取る必要性は薄かったろう。
鷹木も、きっと感じていることは同じだった。
ダンツフレームだけが、ジャングルポケットの恐るべき加速に追随し、他を抜き去って光のごとくターフ上を翔っていく。
こんな光景は、今ここでしか見られ得ない。既に定まっているはずがない、今後同じことが起きるはずはない。
〈ウマレナガラノ、あるいはダンシングカラーは3着争い!先頭はジャングルポケットか、しかしダンツフレームが追いすがる!ジャングルポケットか、ダンツフレームか!ジャングルポケット!ダンツフレーム!ジャングルポケット先頭!リードが開いた!ジャングルだ!ジャングルだ!ジャングルポケット先頭だ!勝ったのは、ジャングルポケット!!ダンツフレームは二着!今年のダービーウマ娘、新時代の扉をこじ開けたのは、ジャングルポケット!!〉
〈ダンツフレームちゃんもかなりの加速だったのに、ゴール前でまた突き放して……凄すぎます!おめでとう、ジャングルポケットちゃん!!〉
空間が割れんばかりの大喝采の中、ゴール板の前を駆け抜けていったジャングルポケット。
タキオンは拍手しながら、ギムレットは身を乗り出しながら、口々に何やら喋っている様子であったが、もはや聞き取れる状況に無かった。
耳を聾する大歓声に包まれながら、辛うじて聞こえてくる実況アナウンサーとスペシャルウィークの声を浴びつつ、十分な減速を済ませたジャングルポケットは競争相手たちが走り去った後のスタンド前へと戻ってくる。
「……ウオオォォォオオッ!!!」
本来はそのまま、地下バ道へと帰るのが手順であったが、自らの中に突き上げてくる情動をこらえきれなくなったのだろう、ジャングルポケットは拳を突き上げて雄叫びをあげ始めた。
〈おっと、ジャングルポケット、ここで雄叫びです!勝ったのは自分だ、と誇示しているかのようでもあります!いやぁ圧巻の走りでしたからね、ウマ娘レースの歴史にも間違いなく刻まれる、名勝負でした!〉
〈はい!ホントに、ダービーは特別ですから!〉
拍手と笑顔に溢れた観客席の意を総括するように実況アナウンサーは述べていたが、スペシャルウィークはそれに応じつつも、内心では同じウマ娘らしく、ジャングルポケットの真意が別にあることを感じ取っていた。
それは、鷹木と居並んでいるアグネスタキオンも、そしてポッケとはさほど交流のないタニノギムレットも同様であった。
「……随分と恨みがましいことじゃないか、ジャングルポケットくん。」
「え?」
「多くの観客たちにとって、これは大団円(フィナーレ)かもしれない……だが、内なる獣性は存分な好敵手(アデルフィア)を得られなかったようだ。あの感傷(サウダージ)は、いかなる熱狂にも溺れない。」
まだピンときていない様子の鷹木であったが、しばらくタキオンの横顔を見つめているうちに、間接的に彼女らが感じ取ったものに触れたような心持ちがあった。
この日本ダービーで、ジャングルポケットと共に並んで駆けることが出来たのは、ダンツフレームだけだった。
同じ年にトレセン学園に入学し、好敵手として肩を並べるべきアグネスタキオンも、マンハッタンカフェも……ジャングルポケットの隣に居なかった。
(皆、なんでここに居ねぇんだよ……!)
この大舞台は、一生でたった一度きりだというのに。
ジャングルポケットの堪えきれぬ叫びは、詰めかけた幾万人もの観客たちには、ただただ勝利を喜ぶ雄叫びとしてのみ受け取られていった。