探求者たちのタイムクライム   作:Okubo Masau

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 新年度のウマ娘たちを迎え入れる前準備として、トレセン学園では制服やジャージ、そして練習用シューズの試着のために、入学を既に決めたウマ娘たちへ敷地を開放する日が用意されている。当然ながら、トレーナー達にとってもその日は新たなウマ娘たちとの出会いを見定める日でもあった。が、大人しく枠の中に収まっているウマ娘たちばかりではなく、この年度にも騒ぎの種は潜んでいるのであった。


初々しさも無く、新たなる風は騒ぎ

 三月に入り、新年度の始まりを目前にしたトレセン学園には賑わう日が増え始める。その最たるものが、入学予定の新入生を対象にした、共同練習場での試走期間であった。

 

 数日間、新入生向けにトレセン学園の一般グラウンドが開放されており、彼女らは購入したシューズと蹄鉄、練習用ジャージの使用感を確認しつつ、4月から本格的に練習に用いるグラウンド上のコースの感触を実感することが出来る。

 

 新年度からの授業や基礎的なトレーニングを前に、その準備で躓くことが無いようにと用意された日程であった。

 

「正直なところ、例年この期間中にトレセン学園を訪れる新入生の皆さんを拝見していると、少々申し訳ない思いが蘇ってきます。」

 

「キングヘイローは……そうか、既に十分な練習環境もあっただろうからな。」

 

 鷹木に話しかけるキングは、申し訳なさと懐かしさの入りまじった、複雑な色を目に浮かべている。実家が名門ともなれば、トレセン学園のグラウンドにも並ぶ練習環境にも、すでに入学前から恵まれていただろう。

 

 しかし彼女の視線の先では、トレセン学園の広大なグラウンドに歓声を上げ、軽やかに走っていける芝の軽さに感嘆している、初々しいウマ娘たちの姿があった。

 

「目を丸くしてしまっているウマ娘達も少なくないな。普通は入学前に、ウマ娘専用の練習場を使う機会なんてそうそう無い。」

 

「それだけの広さを用意できる場所自体が、限られてきますものね。あの子たち、遠慮なさらずにもっとのびやかに走ればよろしいのに。」

 

 一周400mの人間用の陸上競技場と異なり、時には一周2000mにもなるウマ娘レース場。そんな本番の舞台を想定しての練習が行える場所など、そこら中にあるものではない。

 

 幼いころから練習チームに属していたウマ娘ならば、それでも人間用の競技場を借りての練習試合に参加することも出来ただろうが、それも叶わなければ狭苦しい空き地や河原などで、ターフとはとても呼べない雑草の生い茂る中で走りの練習をするほかにない。

 

「だからこそ、トレセン学園への入学を決めた全員に、十分な練習環境を提供することをトレーナーとして肝に銘じなければなりません。」

 

「あぁ。……ウマ娘自身が、練習に応じるかどうかも問題だが。」

 

「鷹木トレーナーは、ちょっと特殊な子を見せられる場合もありますものね……。」

 

 当初、歌っているか踊っているか鏡の自分に見とれているばかりで、ロクに練習に出てこなかったテイエムオペラオーのことを思い出しつつ、鷹木は新入生たちの入ってくるグラウンドへ視線を向けていた。

 

 あの白衣姿の奇妙なウマ娘、アグネスタキオンの姿は無かった。

 

 おそらく今年彼女が入学してくることは確実なのだが、この試走期間中、律儀に学園へやってくるようなウマ娘ではなさそうだという想定の通りではあった。タキオンもまた、練習へ真面目に取り組むタイプではなさそうだ……という予感も、当たってしまいそうな気がしていた。

 

 その代わり、グラウンド上にはしばらくぶりに見る姿があった。去年の有馬記念で引退したメイショウドトウの担当、片桐トレーナーである。

 

「やぁ、鷹木さん。それにキングヘイロートレーナー。新入ウマ娘たちの品定めですか?」

 

「言い方をもう少し選べませんでしたの……?」

 

 しばらく姿を見なかった間に、片桐の顔には無精髭が増えたようにも見えた。首元からトレセン学園所属のトレーナーとしての名札を下げていなければ、不審者として通報されかねない出で立ちも相変わらずである。

 

 新年度での入学直前のウマ娘たちの目に触れる機会であるにもかかわらず、いちいち身なりを整えてこない片桐のスタンスには、もはや安定感まであった。鷹木とキングは、顔を見合わせて小さく首を横に振りながら答える。

 

「いや、俺は理事長から言われているんです。学園の方から、担当すべきウマ娘を頼むことになるから待て、と。」

 

「言うまでもありませんけれど、私も同様です。自ら担当ウマ娘を選べる立場になるには、まだまだ道のりは遠いですね。」

 

「ですよね。かく言う自分も、同じくですが。」

 

 単に練習を管理するのみならず、その後大舞台のレースに出走させ、全国からの注目を浴びる立場にまで押し上げる……ともなれば、ウマ娘の生き様そのものを左右しかねないトレーナー。

 

 当然ながら過酷な道程であり、途中で挫折した際にウマ娘自身が抱く衝撃はあまりに大きい。中途半端な人間にウマ娘の担当を任せるわけにはいかない以上、自ら担当ウマ娘を決められるトレーナーは相当の信頼を寄せられる人物に限られた。

 

 ……ということが分かり切ったうえで、「品定めですか」などと聞いてきた片桐の真意は、ますます深入りすべきものではないようにも思われた。鷹木は話題を転じるために、前々より気になり続けていたことについて尋ねた。

 

「そう言えば、片桐トレーナー。メイショウドトウは今、どうしてるんです?」

 

「あぁ、彼女なら自分もキングヘイローさんのように後進を育てる道に進みたい、と勉強をしていますよ。まぁ、どうしても生来の性質があるというか、ありていにいえばドジな部分が脚を引っぱっているんですが。」

 

「私と同じ道を志す思いは応援したいところではありますけれど、確かに、ドトウさんの場合は心配が拭えませんね……。」

 

「えぇ、今日も買って来たばかりの参考書を無くしたうえに、暗記用のメモ帳を服のポケットに入れたまま洗濯してしまったショックから切り替えるため、オペラオーさんのお見舞いに行くと言ってました。」

 

 キングヘイローからの言葉に頷きつつ片桐が口にした内容を聞いた瞬間、鷹木はサッと顔色を変えてこの場に踵を返しかけた。

 

 言わずもがな、入院中のオペラオーの身が案じられたためである。現在、引退の原因となった骨折からのリハビリ中のオペラオーだったが、かのメイショウドトウのドジがどんな形で炸裂するとも知れない。

 

 ……が、今から病院に向かったところで、着いた時には既に見舞いも完了しているだろう。大げさすぎるとも言いきれない反応を示した鷹木に対し、片桐は微笑みながら告げる。

 

「まぁまぁ、そう心配なさらずとも、ドトウだって成長していますから。お見舞いを終えたら、こちらのトレセン学園にも顔を出すと言っていますから、鷹木さんやキングさんともお話出来ると思いますよ。」

 

「こ、こっちにも来るんですのね。久々にお喋りできるのは、楽しみ、ね……。」

 

 片桐トレーナーがすぐ傍らについている時ならまだしも、完全に単独で行動しているメイショウドトウの周囲は不確定要素の渦巻く危険海域めいた状況となっているのではないかと予想された。キングヘイローの言葉の端が僅かに震えていたのも気のせいではあるまい。

 

 とはいえ、そんなドトウにつきっきりにならず、彼女単独での振る舞いを行わせているのは、元担当としての信頼の為せる技であるようにも思われた。

 

「ひとつ不安があるとすれば、ドトウ本来の性格を知った一般からの反応ですかね。我々は彼女の近くに居てよく分かっていますが、世間一般からはかの世紀末覇王の宿敵たる猛将、って評判ですから。」

 

「あんなにオドオドした子だとは、思いもしない観衆は多いでしょうね。とはいえ、ドトウ自身が隠し通すつもりもないのなら、早めに露見するのも悪いことでは無いでしょう……。」

 

 片桐からの言葉に返しながら、鷹木の視線は今しがたトレセン学園の正門から入ってきたウマ娘に吸い寄せられた。

 

 この場に居るのは学園のトレーナーや新入ウマ娘たちの付き添いばかりであり、スーツ姿でなければ暗赤色と白が組み合わされた、あのトレセン学園特有のジャージを着こんでいる者がほとんどである。

 

 だが、たった今入ってきたウマ娘たちが着込んでいたのは、ほぼ真っ黒なジャージである。ジッパー部分や袖に、剥げかけた金色が小さく覗いていた。

 

「あの子たちも……トレセン学園への入学予定なのかしら?」

 

「いや、だとしたら、学園指定のジャージで試走するはずなんだが。」

 

 キングヘイローもまた鷹木と同じ方向を見て、疑念を口にする。

 

 妙に派手な水色やピンク色で毛並みを染めていつつも、彼女らのピンと立った耳は間違いなくウマ娘のものではあった。その目つきだけは確かにレース本番に赴くウマ娘もかくやと思わせるほどに鋭かったが、どちらかというと周囲を威圧するような質のものであった。

 

 ジャージを着替えるでもなく、これといって目的も無さげにウロウロしている彼女らに怯えるような視線を向けながら、先ほどまで楽し気に走っていた入学予定のウマ娘たちが離れていく。

 

「ちょっと、私、あの子達に話を聞いてきます。振る舞いも妙ですし、無関係の子でしたら本来の試走に来たウマ娘たちの邪魔になってしまいますもの。」

 

「え、あ、行くの……。」

 

 鷹木は常の性格通りに静観を決め込むつもりではあったのだが、キングヘイローは迷うことなくツカツカとそのウマ娘たちのもとへ近寄っていった。

 

 もはや明らかに剣呑な雰囲気を放っているウマ娘を相手にしても、怯まずに声を掛けに行くのもキングヘイローらしさではあった。

 

 鷹木は彼女と無関係の人間であると振舞いきることは出来ず、とはいえ見るからに不良のウマ娘たちへ積極的に絡む意気地も無く、どっちつかずの立ち位置に棒立ちとなっていた。

 

「あなた方、トレセン学園へ入学予定のウマ娘さんたちかしら?試走に来たのなら、ジャージを着替えて、練習用のシューズを履いてください。更衣室の場所が分からないなら、案内いたしますけれど。」

 

「わっ、キングヘイローじゃん。」

 

「マジか、ウチらキングヘイローに話しかけられちった。ヤバ。」

 

 返ってきたのはある意味、予想通りの反応であった。キングヘイローから告げられた内容に、黒ジャージのウマ娘たちは直接的に答えることなく、自分たちの口をついて出た言葉だけを発したのみである。

 

 もしも彼女らに話しかけたのが鷹木であれば、そもそも彼は見向きすらされなかったろう。自分が無視された現実を誤魔化すように曖昧な苦笑だけを浮かべて、それ以上のコミュニケーションをとることを諦めただろう。

 

 もちろんながら、キングヘイローはそれで引き下がる性質ではなかった。

 

「入学予定でもないのなら、試走に来た方々の走る場所を取るわけにもいかないわ。トレセン学園と関係のない方は、出ていってもらわければいけなくなるのだけれど。」

 

「あ、大丈夫でーす。関係者でーす。」

 

「ポッケの知り合いでーす。」

 

「ぽっけ……?」

 

 確かに、入学予定ではないウマ娘であっても、トレセン学園への入学を決めたウマ娘との知り合いであれば、付き添いとしてこの試走期間中のトレセン学園敷地内へ入ることは出来る。

 

 しかし、そう喋る不良ウマ娘たちの付近に、トレセン学園のジャージを着こんだウマ娘の姿はなかった。そもそも彼女らに威圧されるように近くには誰も居ないのだから、知り合いだと認識できる存在自体が見いだせるはずもない。

 

 辺りを見渡し、小さく溜息を吐いたキングヘイローは少し声色を低めて言った。

 

「あなた方の知り合い、いなさそうね?」

 

「いや、居ますって、探してくださいよ。」

 

「放送とかかけたら、出てきますって、迷子の迷子のポッケさん、至急来てください、ってさ。」

 

 明らかに不真面目な返答ばかりに終始している派手な毛並みのウマ娘たちを前に、キングヘイローは確実に憤っていただろうが、同時に持て余してもいた。

 

 こういう時、キングの性質、柄の良さというものは効果的には働かなかった。声を荒らげたところでこの不良ウマ娘たちを動かすには足りないだろうし、辛抱強く語り掛けても真っ当な受け取られ方などされないだろう。

 

 とはいえ、かの黄金世代ウマ娘、キングヘイローがこの場に居ることは周囲にも伝わっている。あらゆる視線が固唾をのんで、この場の動向を見守っていることは傍から見ている鷹木も痛いほど感じ取っていた。

 

 キングが次に伝えるべき言葉を探って沈黙している隙を突くように、ずかずかとこの場に踏み込んできたのはギザギザのヘアピンでラフに前髪を留めた、鹿毛のウマ娘であった。

 

「あー、つまみ出しちまっていいッスよ、そいつら。んなことより、キングヘイロー先輩!マジで会えると思わなかったッスよ、入学前に来る必要あんのかって思ってたけど、来て正解だったぜ!」

 

「え、えぇ、こちらも会えて光栄よ。あなたは……?」

 

「俺はジャングルポケット!今年トレセン学園に入らせてもらうんで、よろしく!!」

 

 耳にビリビリと響く声の大きさに鷹木はのけぞりつつも、この場に割って入ってきた彼女がトレセン学園のジャージを着ていることに心底ホッとしていた。更にガラの悪いウマ娘に絡まれてしまったのでは、とビビッていたのだ。

 

 ジャングルポケットと名乗ったウマ娘がキングヘイローとの間に割り込んできたことで、黒ジャージのウマ娘たちは不満の声をあげ……同時に、振る舞いが生き生きし始めたようでもあった。

 

「おい、コラ、ポッケ!ウチらを無視してんじゃねェ!」

 

「可哀想なポッケちゃんが先輩たちにいびられて泣いてんじゃねーかって、心配して来てやったってのによ!」

 

 ジャングルポケットと張り合うように、二人組のウマ娘も声を張り上げ始め、いかにも荒事に慣れたその声色はますます周辺で見ているウマ娘たちを遠ざけていた。キングヘイローも怯んではいないものの、流石に耳を後ろに絞って顔を背けている。

 

 しかし、当のジャングルポケットはそちらに視線を向けず、静かに言い返すのみである。声量はむしろ抑え目であったが、迫力は段違いであった。

 

「わざわざ泣きを見に来たのは、おめーらだろ。ここにいるウマ娘全員でレースしたら、確実にビリになる程度の脚なんだからよ。」

 

「ア゛ん?何て言ったんだ、よく聞こえなかったなぁ?」

 

「トレセン学園に入れなかったザコが、自分らの無能をわざわざ晒しに来たのか、っつったんだよ。」

 

「テメェ、コラァ!ひいきで入れた温室育ちのお嬢様が、イキッてんじゃねえ!」

 

 たった数言の会話を聞いただけではあるものの、鷹木からの印象はジャングルポケットも十分にガラの悪いウマ娘に入るのでは、といったものであった。

 

 とはいえ、不良ウマ娘が発した言葉を、あながち否定することも出来なかった。キングヘイローと先ほど話していた通り、ウマ娘として走りの練習環境が整えられるのは、それだけ広大な練習場を使うことのできる家の出身者ばかりである。

 

 黒ジャージのウマ娘たちがトレセン学園に入れなかったことはもはや明らかなことだったが、彼女らとつるんでいたのであろうジャングルポケットだけが入学できている現実に、抱く不満は少なからずあったろう。

 

「金持ちは良いよなァ、こんだけ軽ーい芝で走り回れて、上等なシューズもお金持ちのパパに買ってもらってよォ!」

 

「普段から、脚に引っ掛かってきやがる雑草を踏み抜いて走ってるウチらがここで走ったなら、とんでもねータイム出せちまうかもな!」

 

「じゃあ、今から俺とやるか?レース。」

 

 ようやく、ジャングルポケットは不良ウマ娘たちの方を振り返った。その目はぎらつく闘志で輝いていた……最初は悪友たちを軽くあしらって追い返す程度の腹積もりだったのだろうが、やり取りの中でジャングルポケットの心にも火が付いたのだろう。

 

 その点では確かに、彼女も黒ジャージの面々と同類ではあったのだ。不良ウマ娘を背にしたジャングルポケットから視線を向けられ続けていたキングヘイローは、どっと疲れたような表情とともにようやくその場から後ずさった。

 

 周囲にとっては少々迷惑なことではあったが、おあつらえ向きに周辺でどよめいていた野次ウマ娘たちは引き下がって、練習用コースは空いている。しかし、彼女らはすぐに競い始めるわけでもなかった。

 

「けどよ、ウチらとポッケじゃ2対1だ。これでウチらが勝っちまって、ポッケさんから不公平だなんて言われちまうのは避けたいよなぁ?」

 

「俺がんなことでゴネるかよ。普通に3名で並んで走りゃあいいだろ。」

 

「いやいや、せっかくだし2対2のリレー形式でやろうぜ。おーい、誰かいねーのかー?ウチらと勝負する奴は?それとも、トレセン学園に入学できたお偉いウマ娘さんたちは、負けを晒すのが嫌な腰抜けばっかりかよ?」

 

 これまでの荒っぽいやり取りを聞いて、わざわざ手を挙げて出てくるウマ娘は居ない。そもそも、トレセン学園の入学直前の時期、不用意な騒ぎに参加して、学園からの心証をわざわざ悪くする選択などまず取らない。

 

 ジャングルポケットも面倒臭そうな表情で頭を掻いている。この不良ウマ娘たちは、周囲を困惑させることに関しては次々に新たなアイデアをアドリブで思いつく才能に溢れていた。

 

 ……が、トレセン学園への入学を決めるウマ娘たちが、凡庸な存在ばかりでないこともまた事実だった。

 

「Phew!It sounds FUN!!面白そうじゃないか、わたしも混ぜてくれよ!」

 

 流暢な英語と共に、文字通り躍り出るような足取りで現れたのは、これまた大柄なウマ娘であった。入学前とは思えない堂々たる体格、鹿毛の毛並みが奔放に遊んで跳ねている。

 

 そのガタイが張りのある声とともに急接近してくる様は、流石に迫力があったのだろう。ジャングルポケットとならんでいた黒ジャージのウマ娘たちは、ついのけぞっている。

 

「お、おぉ、来やがったか、どこの誰だか知らねーが……。」

 

「わたしはタップダンスシチー!いずれ嫌にでも覚えることになるぜ、世界最強のウマ娘になるのは、このわたしなんだからな!」

 

 先ほどの英語のナチュラルさやその大柄な体格、そして流れるような自己紹介の中でも自らの存在感を印象付けるかのごときオーバーなジェスチャーからするに、彼女は海外からやってきたウマ娘なのだろう。

 

 アグネスデジタルは別路線での執念を燃やしていたが、やはり祖国を去ってトレセン学園に来るウマ娘たちは、いずれも相当な野心家揃いであることに違いなかった。ジャングルポケットは先ほどまでの表情から一転、好戦的な笑みを浮かべて挨拶を返した。

 

「へぇ、面白ぇ奴だな!聞こえてたかもしれないが、俺はジャングルポケットだ。さっそく、アンタとレースしてみたいところだが……。」

 

「ポッケ!まずはウチらと勝負だっつってんだろ!これで人数は揃ったんだ、さっさとスタート位置に行け!」

 

 黒ジャージ姿のウマ娘が、この尋常ならざるウマ娘たちの存在感に埋もれまいと声を張り上げ、非公認の臨時レースは幕を開ける。

 

 どんどん勝手に進行していく状況を目の前にしながら、鷹木とキングヘイローは並んでただ蒼ざめていた。

 

「もしかして……今年入ってくるウマ娘、問題児ばかりか……?」

 

「かも……しれないわね……。」

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