探求者たちのタイムクライム   作:Okubo Masau

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 昨年、もはや現役レースに進まぬ道を半ば決心しかけていたヒシミラクルを、今年になって再び本番出走へと送り出す手立てを考え続けていた鷹木トレーナー。彼女が長距離向きの性質であることは重々承知していたが、ここで敢えて復帰レースに選んだのはマイル寄りの距離であった。ヒシミラクルの性格もそれなりに掴め始めた今、あまりに長すぎる距離を走らせようとすると走りに余裕を持たせすぎる傾向があることも把握していたのである。早速、今世代で最もマイルに強いであろう相手との併走を申し込むこととなった。


導き立つべき標は遠すぎず

 アグネスタキオンとはまた別の性格ゆえ、表情を変えるところを滅多に見せないヒシミラクルであったが、鷹木からその決定を告げた時には流石に驚きを示していた。

 

「えぇー!?私が次に出走するレース、マイルですか!?」

 

「ああ。まぁ2か月先の話、それも未勝利バ戦のスケジュールだから、まだ予定は固まってはいない。マイル寄りの中距離レースになるかもしれないが……。」

 

「じゃ、じゃあ、今のうちに変更してくださいよ!私が長距離向きだって、トレーナーさんも分かってますよね……!?」

 

 当初はむろん、鷹木もヒシミラクルが昨年振りに復帰する本番レースは可能な限り長距離の条件で行こうと考えていた。

 

 そもそも未勝利バ戦には長距離レースがほぼ存在しない……年間通して皆無ではないが。身体がまだ完成していないウマ娘をいきなり長距離で走らせても、ちぐはぐなペース配分のため途中でバテてしまい、最悪の場合故障にも繋がる。

 

 しかし、鷹木の思惑は、そういった事情とは関係なく決定したものであった。

 

「ヒシミラクルの強みは、どれだけ走り抜こうとも切らすことのないスタミナだ。ついでにエンジンのかかりの遅さも相俟って、長距離向きであることは疑いようもない。」

 

「ですよね、今の内になるたけ長いレースへの登録を考慮しといてくださいよ……」

 

「だが、ヒシミラクル。きみ自身がそれを自覚してしまっているのが、現在のトレーニングを遅らせている一番の元凶だ。」

 

 サボり癖はあるし、普段からぼけーっとしている印象も強いミラ子であるが、彼女は決して思考回路まで鈍いわけではない。

 

 むしろ、担当トレーナーが決まるまでは自分の進学に有利な条件を集めることに専念するなど、計算高さは並みのウマ娘以上に有している。

 

 少しでも楽して現状を乗り切る手段を見出す方向であれば、その計算高さはいよいよもってフルに発揮される……その実例を、鷹木は入学当初からアグネスタキオンを担当し続けてきた経験によって得ていた。

 

「こちらの呼びかけに答えて、練習でも本気に近い走りを見せるようになってくれた変化は素直に褒めたい。しかし、長距離のコース設定で走る時、序盤は多少なりと手を抜いてるのも分かる。」

 

「いやいや本気で走ってますって……。」

 

「ヒシミラクル、きみがウソをついていると言ってるわけじゃない。どちらにしても3000m先のゴールに向けて全力疾走する意識を保つのが難しいことには違いない、よな?」

 

「まぁ、それは……そう、っすねー……。」

 

 実際のところは、ヒシミラクルが練習でもさほどスピードを出さずとも不自然ではない長距離コースを、あえてゆったり流していることに鷹木も気づいていたのだが……ミラ子自身が否定している点について口頭で指摘することには大した意味もない。

 

 ウマ娘の走りは、嘘を吐かない。実際にマイルに近い距離のレース出走を目標に掲げ、マイルに近い距離で練習を続けなければ、スタート直後から本気を出す走りは身につかないだろう。

 

「にしてもですよ、だからってマイル最強の……いや、下手したら今年度のクラシック級最強の相手と、突然併走しに行くのはやり過ぎじゃないですかね!?」

 

「俺の立場からだって、突然会いに行ける相手じゃない。事前に連絡を入れて承諾を得て、スケジュール調整して時間を取ってもらったうえで行くんだ。もう予定キャンセルはできないぞ。」

 

 これが気心知れた同期、片桐トレーナー相手であれば予告なく押しかけるぐらいのことは出来ただろうが、流石にURA界のレジェンド、結城トレーナー相手ともなれば、併走を申し込む上で然るべき段取りを省くことは出来なかった。

 

 そんな結城トレーナーの指導下にある、マイル路線のみならず今年度クラシック級での活躍も期待されるウマ娘はと言えば、一名を除いて他に居ない。

 

「ククッ……来たか、酩酊をも醒ます奇跡(ヒシミラクル)!我が闇の底(タルタロス)をも恐れぬならば、この刹那の眩い輝き(ギムレット)に酔わせてやろう!神々の倦んだ安穏に、至上の破壊(デストロイ)を!ハァーッハッハッハ!!」

 

「あ……どうも……お邪魔します……。」

 

 タニノギムレットに鷹木が会うのは久々であったが、彼女は相変わらずの絶好調をキープしていた。独特過ぎる口上も相変わらずであり、ミラ子は半笑いで無難な挨拶だけを返している。

 

 ついでに、独りで放っておくわけにもいかないアグネスタキオンをも鷹木はつれてきていた。ギムレットに会えるのを、誰よりも喜んでいたのがタキオンであることは言うまでもない。

 

「やぁやぁギムレットくん!アーリントンカップは実に見事なレースだったねぇ!まさに先行策の理想だ、元より抜きん出ていたキミの能力が、さらに磨かれ完成度が高まっていたじゃないか!しかし先行策にのみ囚われるキミの脚ではあるまい、差しや追い込みでも十分に勝てるんじゃないかねぇ!」

 

「フッ……未来に刻印すべき神話(ミュートス)を語るには早すぎる。しかし真の戦士(エインヘリヤル)は己の走り方(イデア)を自ら編み出す……探求者よ、オマエを酩酊させることは約束しよう!―――もう一匙のジンを待て。」

 

「そう言ってくれると思っていたねぇ!やはりキミは特異点に違いない!私も興味深いデータを得られることを楽しみにしているよ!」

 

「傍から聞いてても何に納得したんだか、全然わからない……。」

 

 タニノギムレットとアグネスタキオンの会話を前に、殆ど聞き取るのも諦めたヒシミラクルが頭をかいている。

 

 ウマ娘たちのやり取りとはまた別に、鷹木はトレーナー同士のやり取りを冷や汗と共にこなす必要があった。何度面会しても、結城トレーナーの積み重ねた年季、そのオーラを前にしては萎縮せずにいられない。

 

「併走練習の申し出、承諾いただきまして誠にありがとうございます。ヒシミラクルにも全力で走らせますので、きっとタニノギムレットも互いに良いトレーニングを期待できるかと……」

 

「うん、距離は1800でいいのかな?こちらに合わせてくれるのは良いけれど、ヒシミラクルは長距離向きだと思うんだが。」

 

「は、はい、マイル寄りの距離で練習して、速度を序盤から上げる感覚を身につけさせるのが目的ですので……。」

 

 緊張気味に挨拶しようとする鷹木に対し、結城トレーナーはサクサクと練習内容だけを確認し、そして鷹木の意図をあっさりと理解して頷くのみであった。

 

 ヒシミラクルは今なお未勝利ウマ娘のままであったのだが、そんな無名な相手の性質も結城トレーナーは既に把握していたのだ。そして、鷹木の考えていることについても、少しの説明で十分だった。

 

 せっかく得られた練習時間を無駄にすまい、とヒシミラクルを急かして練習コースへ向かわせた後、鷹木は計測の準備を始める。

 

 こうしている間もタキオンはヒマではなかった。彼女が話しかけたい相手は、結城トレーナーのもとに集合しているも同然であった。

 

「ダンツくんもしばらくだねぇ!最近は私の研究室になかなか顔を出してくれないねぇ!まぁ、私もそれなりに練習に時間を費やしているわけだが、偶には実験台もとい助手となってくれても良いんだがねぇ!」

 

「あはは……タキオンちゃんの実験も気になるけれど、私も次の出走に向けて練習しないと、だから。」

 

 言いながら、ダンツフレームはジャージの上着を脱ぎすてている。

 

 同じ世代の面々が細身なウマ娘揃いなばかりに、大柄に見えてしまうダンツの胴体は、昨年と比べれば目に見えて絞られ、鍛錬の跡が分かりやすかった。

 

 そのまま、練習コースへと向かっていくダンツフレーム。更に彼女へ話しかけようとするタキオンの背後から、声をかけたのはエアシャカールである。

 

「時間を取らせないでやってくれねェか、アイツも今から走ンだよ。」

 

「おや、タニノギムレットくんと併走するのは、ヒシミラクルくんだけではないということかい?昨年のマイルチャンピオンシップといい、ダンツくんは、すっかりマイル路線へと本格的に向かうのかい?」

 

「そうと決まったわけではないわ。けれど、長距離レースでは目に見えて息切れによる失速が目立っていたから。」

 

 アグネスタキオンの隣に座を占めたエアシャカールとは反対側、アドマイヤベガも先ほどまでの練習を終えて休憩に入るのか、汗を拭きながら休憩エリアのベンチへ腰掛ける。

 

 昨年の11月、芝のマイルチャンピオンシップに出走したダンツフレームは五着という結果に終わった。

 

 10月に菊花賞を走った後、いきなりマイル路線のGⅠレースに参戦した上で、五着に入ったというのは十分すぎる戦績である。が、結城トレーナーは未だダンツの身体能力は本格化に至っていないと判断したのだろう。

 

 それ以降、しばらくダンツフレームは本番レースの舞台から遠ざかっていた。今年に入って3月となった今も、次の出走予定は発表されていない。

 

 ……が、十分に休養と鍛錬の期間を経たおかげか、ギムレットとミラ子に並んでスタートラインに立つダンツフレームには以前と比べても明確な進化が見て取れた。

 

「さすがにギムレットくんと比べては何だが、ダンツくんも身体を絞っているねぇ……にしても、ヒシミラクルくんが、これではますます丸っこく見えてしまうねぇ!」

 

「仕方ねェだろ、ギムレットの奴、ただでさえ身長高ェんだし。俺の方が背はあるが、今ンところギムレットとは3㎝しか差がねェ。」

 

 大柄なダンツフレームより、更にすらりと伸びた背。事あるごとに観衆を酔わせると豪語するだけはあって、タニノギムレットの佇まいはただ立っているだけでも見る者を魅了した。

 

 それよりも10㎝は身長の低いミラ子が、言い方を憚らなければふくよかなスタイルに見えてしまうのも無理はなかった。

 

 結城トレーナーもデータ収集の準備を整えたのを確認してから、鷹木はストップウォッチとタブレット画面を手に、率先してスタート地点へと向かった。

 

「じゃあ、併走開始するぞ。芝1800、中山レース場想定で一周するコースだ。準備は良いか?」

 

「我が蹄跡の響きは間近、神話(ミュートス)は掌編とて酩酊を喚ぶだろう―――躍動する鼓動(エラン・ビタール)に身を委ねるといい。」

 

「えぇと、準備オッケーってことです、もちろん、私も。」

 

「あーい。」

 

 ギムレットの難解な表現をダンツフレームが翻訳し、ミラ子も気の抜けた返答だけを口にする。

 

 スタートの合図と同時に行う、ストップウォッチのボタンを押すこと以外の振る舞いを、鷹木は既に心に決めていた。無論、ミラ子に向けての言動である。

 

「では、位置について、用意……スタート!ヒシミラクル!!全力だ全力!1800mなんてあっという間だぞ!最初っからラストスパート!行け、行け!!」

 

「またですかぁ、もうー、分かってますって……。」

 

 スタート直後だというのに、鷹木に対して返答できている時点で、ヒシミラクルは本気のスタートではない。その後もヒシミラクルの背が遠ざかる中で鷹木は声を張り上げ続け、唾液が枯れた喉から咳音が漏れて言葉を止めた。

 

 実際のところ、鷹木はミラ子の足取りだけを視線で追っていた。タニノギムレットとダンツフレームが先んじて駆けていくのは分かり切っていたし、彼女らのスタートを直視していてはすっかり見惚れさせられてしまうのも明白であったためだ。

 

 ちょうど一周してくるところで1800mとなるよう設定された個別練習場のコースは、起伏も本番の中山レース場同様に施工されている。鷹木は咳払いを繰り返しながら、タキオンらのもとへと戻ってドリンクのボトルで喉を潤した。

 

「そうか、中山の直線と同じ条件だから、上り坂か……ミラ子の奴、それをいいことに加速を緩めていたな……ゲホッ。」

 

「懸命なのはいいがねぇ、自愛してくれたまえよトレーナーくん。君が大声を出せなくなっては、いよいよもってヒシミラクルくんはこれ幸いとばかりにサボるだろうからねぇ。私がキミの代わりをする気もないからねぇ。」

 

「腰ヒモでもつけて引っ張り回してやりゃいいんじゃねェのか。」

 

 冗談ともつかぬ声色で言いながら、シャカールはじっとギムレットの走りを見つめている。

 

 頓狂な言い回しを多用するタニノギムレットとの会話は、おそらくシャカールも好まないだろうが、その走りについてはまさにロジカルそのものであり、先輩の立場としても一目置くところがあるのだろう。

 

 すでに2コーナーを回り切ろうとするギムレットは先行のペース、前を塞ぐ者がいないだけあって文句のつけようのないタイムで進んでいく。

 

「向こう正面に入って……800m通過、残り1000mの時点で48秒02、か。これでもギムレットとしては余力を残すペースに見えるな。」

 

「成長の余地もあるわ。この勢いで行けば、皐月賞を獲るのもほぼ確実でしょうね。」

 

 タキオンの隣で静かに後輩たちの併走練習へと視線を向け続けているアドマイヤベガも答える。

 

 理想的なペースで脚を運んでいくギムレットの背後、ダンツフレームも彼女を逃すまいと、常に差し切れる圏内に収まり続けている。以前よりも、探りながら足を運ぶ感じはなくなり、しっかりと自分のスタミナを残せる速度を把握して迷いなく走っている。

 

 ……そして、それよりも更に遅れて駆けていくのがヒシミラクルであった。

 

「焦りと無縁なのは良いが、もうあと二つコーナーを過ぎたら、すぐゴールだぞミラ子……!」

 

「長距離を主軸に据える腹積もりでいたのが見え見えだねぇ、彼女なりにあれでも急いでいるつもりなのかもしれないがねぇ……おや、トレーナーくん?」

 

 ゴールの瞬間を待つのならば、もう少し後でもよかったのだが、鷹木は早くも立ち上がり、練習コースの方へ駆け出していった。

 

 事前にコースを確認したため、ゴールの位置が分かっていないはずはない。だが、視覚的に分かりやすくなっていなければ、ヒシミラクルはペースを意識しないのではないか。

 

 ゴールラインの位置に立った鷹木は、ただ突っ立っているだけでは足りぬと考えたのか、ストップウォッチを握った手を高く掲げて叫び始めた。

 

 向こう正面を駆けていたヒシミラクルには、鷹木との距離も、走る蹄音もあって何を叫んでいるのか聞こえなかったが、鷹木がやっていることはしっかり見えていた……それもまたレース中に余所見している証であったが。

 

(トレーナーさん、またなんか叫んでる……トレーナーさんがどんだけ大声出したって、私の足が速くなるわけじゃないんだけどなぁ……。)

 

 胸中を占める思いは相変わらずであったが、鷹木の思惑は部分的に伝わることとなった。

 

 ヒシミラクルは自分の位置と鷹木の立っているゴールラインを見比べ、コースの残りが大した距離ではないことを直感的に掴んでいた。

 

(じゃあ、そこまでですよ、頑張って走るのは……!)

 

 自分よりもはるか先に掛けていく競争相手に焦らされたり、目の前にあるゴールを抜けたところで次のレースへ備えて気を引き締めなければならなかったり、そんなレースウマ娘としての生き様がミラ子には少々重かった。

 

 だが今、じわじわと脚がスピードに乗ってきていたこともあってか、ヒシミラクルは走り終えた後の事を考えている余裕も薄れていた。

 

 とりあえず、“そこ”まで。

 

 今走っているコースの、ゴールまで。それのみに神経を集中させたとき、ヒシミラクルは視界の焦点があったような心持ちを始めて抱いた。

 

「おや、ヒシミラクルくん、本腰を入れたかねぇ?加速がこれまでになく強まったじゃないか、今さら追いつけるペースではないがねぇ。」

 

「長距離レースなら、追いつけるかもしれないわね。けれど、長距離レースだと最初から教えていては、同じことにはならなかったのでしょう?」

 

「だろうねぇ、トレーナーくんの思い付きも捨てたものじゃないねぇ。」

 

 アドマイヤベガと言葉を交わし合いながら練習コースを見つめているタキオンの目の前で、最終直線に入ったタニノギムレットとダンツフレームがラストスパートに掛かっている。

 

 タニノギムレットは今年クラシック級の世代の中では無比の能力の持ち主とはいえ、さすがに1年先輩、それもこれから本格化を迎えようとしているダンツフレームを相手にしては余裕の勝利というわけにもいかない。

 

 大外から並びかけてくるダンツフレームに差し切られかけつつも、歯を食いしばってゴールライン直前であと一伸びしたギムレットは、ハナ差で先着していた。

 

「ヒシミラクル!ミラ子!!まだ併走は終わってない!まだ余裕あるだろ!そこから全速力だ!!」

 

 鷹木からの激励の叫びを受けながら、ヒシミラクルが駆けてきたのは数秒後のことである。

 

 実際のレースではもはや、バ身差を計測されない大差であるが……ゴールを通過する瞬間、ヒシミラクルの表情がこれまでになく真剣だったことを鷹木は見逃さなかった。

 

 ゴール直後から、減速しつつUターンした彼女は一瞬で元に戻っていたが。

 

「いやぁー、併走もなにも、横に並ぶどころの話じゃなかったですねー……けど、トレーナーさん、今日は私、かなり真面目だったでしょ?」

 

「途中から、な……ケホッ……本番でも、俺がゴール板前に立ってた方がいいか?」

 

「いやいやいや、恥ずかしすぎでしょ。でも、なんか分かった気がします。私、マイル路線なら本気の走りを出せるかも。」

 

「いやいやいやいや、お前が長距離向きなことには変わりないからな?あくまで、限られた距離を全速力で走る感覚を身につけるための段階であってだな……。」

 

 やはり意図した通りには伝わらない状況に改めて困り顔を浮かべつつも、鷹木はようやく一歩進めたような手ごたえを感じていた。

 

 ヒシミラクルがスピードに乗るまでの時間を、出来得る限り縮める手段。適性としては相応しい選択ではなかったが、まずはミラ子自身が疲労とは無縁の状態で走り抜けられる距離での鍛錬を繰り返すのだ。

 

 ここでの収穫は小さくなかったものの、せっかく併走の場を設けてもらったというのにマトモな併走にならなかった件については、結城トレーナーに謝罪せぬわけにもいかなかった。当の結城トレーナーは、とっくに鷹木の意図を察していたためか、笑って受け入れてくれたが。

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