探求者たちのタイムクライム   作:Okubo Masau

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 京都記念、阪神大賞典、とアドマイヤベガは自分が本来得意ではない走りを敢えて選択していた。その結果は決して不首尾なものではなかったが、本来肩を並べているはずのナリタトップロードには追いつけず三着、二着という戦績に終わっている。彼女が何故これまで安定した結果を導き出していた追い込みの作戦を採らず、先行寄りの走りをしているのか。気にするしかなかった鷹木トレーナーとキングヘイロートレーナーは、ナリタトップロードが設けた場に姿を現したアドマイヤベガの口から、遂に事情を聴くこととなる。


解れた夢の一端は、既に追ってくる

 阪神レース場からトレセン学園へと帰ってきたアドマイヤベガから、直接的に話を聞き出せる機会はそうそう訪れなかった。

 

 本番の舞台を一つ乗り切ったばかりとはいえ、現役を続行しているウマ娘は多少の休息を挟みつつも次なる本番へ向けて調整を始めなければならない。先日の阪神大賞典のように、周囲の予想を裏切ることもまた作戦である以上、易々と練習場に部外者や他のウマ娘は立ち入れない。

 

 それに何よりも、トレーニング期間中のウマ娘の調子を崩すような働きかけは、最も忌避されるべき行為のひとつだった。アドバイスのつもりでかけた言葉が、ウマ娘の走りを乱すような結果を生んではならない。

 

 アドマイヤベガにとっては、自らにとって有益ではない言葉に耳を貸さないことも難しくはなかったろうが、それでも今の時期になって若干方針を見定めかねている現状、専属トレーナーではない人間が下手な声かけをすることは躊躇われた。

 

「だが、アドマイヤベガを担当している結城トレーナーは、基本的にウマ娘自身が方針を見出すことを優先する主義だからなぁ……。」

 

「結城トレーナー自身の言葉に、説得力がありすぎることを懸念していらっしゃるのでしょう。レジェンド級のトレーナーが語る言葉を、ウマ娘が自身の中で否定することは、かなり難しいですわ。」

 

 ナリタトップロードの練習場にて、休憩時間を前にして軽くコース上を流しているトップロードを見つめつつ、鷹木とキングヘイローは話し合っている。

 

 桂崎トレーナーがアグネスデジタルと共にドバイへ向かっている今、トップロードの練習を見るのはこの2名の役目であった。

 

「確かに、URA発足からずっとウマ娘のトレーニングを見続け、数多の輝かしい勝利へと導いてきた人の言葉の重みは、そう易々と否定できるものじゃない。だが、アドマイヤベガの側からトレーナーへと相談を持ち掛けることも、していないとは……。」

 

「気持ちは分からなくもないですわ、ウマ娘の立場としては、自分の担当トレーナーさんとの関係は下手に崩したくないですもの。トレーニングの際に、妙な気遣いや気兼ねが生じる可能性を挟むことは大いに躊躇われますわ。」

 

 キングヘイローの言葉に、鷹木は少々遅れて頷いた。

 

 そもそも鷹木トレーナーが担当していた世紀末覇王、テイエムオペラオーは表向き気遣いや気兼ねと無縁の存在であり、キングが言うような微妙な関係性を意識する暇など今まで無かった。

 

 阪神大賞典から帰ってきたトップロードは、確かに移動のバスの車内、アドマイヤベガとふたりきりの状況下で彼女から話を聞き出す事が出来ていた。何故、本来得意とする走り方を、アドマイヤベガ自ら拒絶し続けているのか……。

 

 しかし、トップロード自身も、すぐには鷹木やキングヘイローに対し、アドマイヤベガが喋った内容を伝えることはなかった。

 

「トレセン学園への入学当初からずっと一緒のナリタトップロードさん、つまりはアドマイヤベガさんにとって最も気を許せる相手にだけ白状した内容ですもの。私どもに易々と告げ口するような真似は、当然ながら憚られますでしょう。」

 

「だが、トップロードの中でも抱え続けるわけにはいかないだろう。彼女に相談したアドマイヤベガだって、誰にも話せない悩みを共有させたせいで共倒れになるようなことは望んでいないはずだ。」

 

 キングヘイローも、鷹木のその言葉には頷く。

 

 トレーニング中の空気感の変化を懸念するのであれば、ナリタトップロードにとってもアドマイヤベガにとっても専属トレーナーではない存在、すなわち自分たちこそ相談相手に相応しいのではないか。そうは思っても、無理にトップロードの口を割らせるわけにもいかない。

 

 若輩者の域を脱しつつあるはずなのに相変わらず自己評価の低い鷹木トレーナー、十分に自己評価は有しているがまだ経験の十分ではないキングヘイロートレーナーには、待つことしか出来なかった。

 

 とはいえ、その"待つ"という選択は間違いではなかったらしい。クールダウンも兼ねてゆったりとコースを一周してきたトップロードは、キングヘイローからスポーツタオルを受け取って汗を拭きながら、言った。

 

「ちょっと早めだけれど、休憩にしていいかな。アヤベも呼んでいるんだ、今日、シャカールくんが出走する日経賞の中継を一緒にここで見ようって。」

 

「あぁ、分かった。……アドマイヤベガが、ここに来るんだな。」

 

「ということは、トップロードさん。あのお話、聞かせていただけるのかしら。」

 

 このタイミングを逃せば踏み込めないと見たキングヘイローが、鷹木では踏み切れない決断をもってトップロードへ尋ねる。むろん、アドマイヤベガがトップロードに語った内容について、そろそろ聞かせてほしいとの催促であった。

 

 ナリタトップロードはさほど迷いなく頷いた……とはいえ阪神大賞典の帰路からずっと考え続けていたのだろうから、彼女なりに判断する時間は充分に取ってはいたことになる。

 

「うん、アヤベにも了承はもらってる。結城トレーナーでも、桂崎トレーナーでもなく、それなりに信頼できる相談相手としては、鷹木さんとキングさんがピッタリだからね。」

 

「えぇ、最良の判断ですわ。私はお悩み相談を引き受ける時も一流ですし、鷹木トレーナーは乙女の秘密を口外なさるほどの度量もありませんものね!」

 

「俺の方は随分と後ろ向きな信頼なんだな。」

 

 トップロードから芳しい返答が来たこと、そしてアドマイヤベガが抱え続けている胸中をようやく知れる運びになったこと、それらがついキングヘイローの口を軽はずみにしてしまっていた。

 

 軽口が鷹木への想定以上の悪口になってしまったことを自覚したキングヘイローが、演技めいた嘲笑の直後、即座に申し訳なさそうな表情を浮かべた様を、鷹木は胸の内に湧き出る温かさとともに見つめ、彼女からの視線を笑みとともに受け止めた。

 

 ともあれ、言外をかくも思いやりで満たせるキングヘイローが、相談相手として確かに一流であることは間違いなかった。

 

 アドマイヤベガも、ほどなくしてトップロードの練習場を訪れた。かつてオペラオーが言葉を極めて美しさを褒め称えた一等星、彼女は外見上まるで変わりなく見えた。

 

 むしろ、以前にもましてその繊細な輝きは磨かれたようにも思われた……彼女の目元に、どこか思いつめたような憂いが漂っていたためでもあったろう。

 

「待ってたよ、アヤベ。思ったよりのんびり来たんだね。」

 

「言いづらいことを話すのに、喜び勇んで来るわけにもいかないでしょう……そんなに多く話すつもりもないから。」

 

 トップロードにそう返しながら、アドマイヤベガはサッサと歩き、鷹木とキングヘイローが待つ場所へと向かう。

 

 ちょうど練習場の大型スクリーンを見やすい位置取りにて、パイプ椅子の並べ方をあぁでもないこうでもない、と鷹木とキングヘイローが試行錯誤している最中であった。

 

「いや、さすがに2対2で向かい合う形は堅苦しいよな、面接会場じゃあるまいし。」

 

「車座を作る、というのはいかがですの?……なんか違いますわね、4名では四角形を描くばかりですわ。」

 

 ガタガタと椅子を抱えては並び変えている両名へ、ナリタトップロードはさほど悩むことなく提案を伝えた。

 

「話し合った格好のままレース中継を観戦できるように、皆で同じ方を向いているのが良いんじゃないかな?」

 

「それですわね。」

 

 こうして結果的にはいつもと変わらぬ臨時の観戦席が並べられ、トップロードはアドマイヤベガをキングヘイローと挟む位置取りで座った。重要な話ではあれど、さして改まった場を作らぬ方が、確かに話しやすさは増すようであった。

 

 とはいえ、トップロードとふたりきりの状況になって、ようやく喋れた内容である。すぐに切り出せるわけではないアドマイヤベガへ、キングヘイローは彼女なりの気遣いで当たり障りのない話題を切り出した。

 

「アドマイヤベガさん、先日の阪神大賞典、それに先月の京都記念と、見事な好走を披露していらっしゃるわね。今までとは違った作戦を投入して勝ちを得に行く姿勢、かなりの研鑽を重ねられたことと思いますわ。」

 

「どっちも、トップロードには負けているけれど。やっぱり、付け焼き刃では通用しないわね。」

 

「それでも、本番の舞台で三着以内に入り続けているのは相応の実力をお持ちだからですわ。」

 

 直接的には本題に踏み込まないつもりだったキングヘイローも、ウマ娘同士の会話となればどうしても直近のレースを話題に出さざるを得ない。

 

 アドマイヤベガが本来得意とする戦法を採らないこと自体に触れまいとしても、結局のところ行き着くのはその点であった。それでもキングヘイローはめげず、将来的な部分へと話題を広げる。

 

「じゃあ、やはり、来月の春の天皇賞には出走なさるのかしら?」

 

「えぇ、出るつもり。」

 

「GⅠの大舞台、これから1か月ちょっとともなれば、のんびりしても居られませんわね。アドマイヤベガさんは天体観測がご趣味とのことですが、十分な睡眠のためにはなかなか余裕がとれませんわね。」

 

「……あまり眠れていないの、最近は。」

 

 少し間を置いたアドマイヤベガからの返答とともに、トップロードがこちらへと向けていた視線を外して自身の足元へと落とす。

 

 会話の取っ掛かりを作ろうとデリケートな話題を避けるようにしたはずが、そのまま本丸への突入となっていたキングヘイローは気まずそうな表情を浮かべている。とはいえ、本題へと入れる流れとなったこと自体はさして悪いものではなかった。

 

 アドマイヤベガの言葉を引き継ぐように、トップロードが口を開く。

 

「夜、見ている夢の話、鷹木さんとキングさんにも伝えられるかな、アヤベ?」

 

「……私は、夢の中でレースを走ってる。それだけなら、別に珍しくないのだけれど。」

 

 前置きも無く、アドマイヤベガは語り始める。自分だけで悩みを抱え続ける状況から脱する機会を失わないように、自らの躊躇いを振り切るように。

 

 キングヘイローは頷きながら彼女の言葉を聞いている。ウマ娘が、夜寝ている間もレースのことを夢に見るのは実際珍しいことではないのだろう。鷹木はと言えば、オペラオーが夢の話をすることがまず無かったこともあり、そういうものかと考える他になかったが。

 

 既に自分がいかにして内容を伝えるべきか、頭の中では言葉をまとめていたのだろう、一度喋り始めたアドマイヤベガの口調は淀みなかった。

 

「どこのレース場を走っているかは、毎回違ってる。けれど、展開はいつも一緒。私は向こう正面から大外のコースに入って、最終コーナーを回りながら加速し始める。」

 

 アドマイヤベガが最も得意とする作戦、何者にも阻害されない大外を一気に駆け上がりながら加速し、最終直線に向いた頃には誰も近くに寄せつけぬトップスピードとなり、一気にゴールへと貫いていく走りである。

 

 それを実際に披露した最後のレースは、昨年の有馬記念の時であり、あの時は執念の末脚を見せたメイショウドトウが勝ったものの、アドマイヤベガの脅威的な追い込みは見る者を一様に慄然とさせたものだ。

 

 アドマイヤベガがまるで別のウマ娘のように見えたのもそのレースが最後であり、以降、彼女は自分の得意とする作戦をあえて避けるようなペース配分を選び続けていた。

 

「そしてスタンド前を一気に駆け抜けて、先を行くウマ娘たちを次々と差し切り、私は勝利する……けれど、既にその時、私は私じゃなくなってる。」

 

 努めて淡々と話し続けていたアドマイヤベガの声音、その語尾に僅かな震えが走る。

 

 彼女の表情へチラと視線をやった鷹木は、無表情を貫いているつもりのアドマイヤベガの顔立ちが、目に見えてこわばっていることに気づいた。

 

「ゴール板は、先着判定のために鏡になってるレース場が多いけれど……駆け抜けた時、明らかに私じゃない姿が映りこんでる。一瞬だからハッキリとは見えないけれど、また覗き込みに行く勇気はない。でも、観客席からの歓声に応えるように差し上げた手が、はっきりと私の手じゃない見知らぬウマ娘の腕で……。」

 

「アヤベ。いったん、深呼吸しようか。」

 

 トップロードが口を挟み、アドマイヤベガは喋りながらも自分自身の動悸と呼吸が荒くなりつつあったことに初めて気づいたように、口を閉じた。

 

 鷹木もキングヘイローも黙り込み、暫しの静寂がこの練習場に満たされる。アドマイヤベガの話は彼女の精神状態を案じたトップロードに遮られる形で中断されてしまったが、内容自体はおおよそのみこめた。

 

 まるで別のウマ娘のようになってしまう経験を、アドマイヤベガ自身は夢の中でハッキリと味わっているのだ。ここまで重なれば、偶然であると断じることも難しい。

 

 アドマイヤベガが落ち着きを取り戻したのを見計らい、改めてその話題について尋ねることが出来たのは、やはり鷹木ではなくキングヘイローの方だった。

 

「アドマイヤベガさん、だからあなたは、ご自身が最も走りやすい作戦を、2レース続けて避けておられるんですのね。」

 

「……分かってる、こんな夢の内容ばかりを気にして、本番のレースにまで影響させるだなんて、バカげているって……。」

 

「アドマイヤベガさんがどれだけ本気でレースと向き合っているか、私どももよく存じております。そんなあなたが、本来の得意分野でない走りで勝利を獲るため、どれだけ作戦を考え抜いたことか、前回の阪神大賞典でも拝見いたしましたもの。」

 

 キングヘイローの言葉を聞きながら、鷹木も無言のままに頷く。アドマイヤベガが本来取り得ないと思われていた先行策を本番で実行し、しっかり惑わされたウマ娘たちを置き去ったことでアドマイヤベガは二着となったのだ。

 

 一着のナリタトップロードには4バ身もの差を付けられ、三着となった一年後輩のエリモブライアンにはほとんど並ばれていたのだが。

 

 黙ったままのアドマイヤベガに、ナリタトップロードが改めて声を掛ける。

 

「さすがにアヤベの夢の中の内容までは、私たちには干渉できないけれど……喋ったことで、少しは楽になった?」

 

「……ごめんなさい、変な心配事を皆にも押し付けるようなことになって。」

 

 アドマイヤベガの返答は直接的な内容ではなかったが、ナリタトップロードは気にするなとばかりに笑みながら首を横に振った。

 

 この話題が静かに閉じられようとしたところで、間の悪い鷹木はふと思い出した内容を口にして、改めてアドマイヤベガの記憶を掘り返すこととなってしまった。

 

「なぁ、アドマイヤベガが夢の中で見た、自分とは全然違う姿っていうのは、かなり体つきが華奢なウマ娘だったりしないか?」

 

「……どうして、分かるの。」

 

 鷹木に向けて、アドマイヤベガは目を丸く見開きながら返していた。言外に、鷹木の口にした内容が図星であることを示す態度であった。

 

 キングヘイローは怪訝そうに、そしてナリタトップロードは真剣そのものの眼差しを鷹木へと向ける。現状のトレセン学園にてトップクラスのウマ娘3名から同時に向けられた視線の圧に押されながらも、鷹木は自分の記憶から掘り起こした内容を伝える。

 

「いや、以前の有馬記念で、アドマイヤベガが大外から加速する本来の作戦で走った時、足元に伸びている影が異様なまでにほっそりしていたのもあるんだが……。」

 

「そんな気がした、というだけの話ではございませんの?」

 

「確かに、実際のレース場では遠くから見ているだけだから、単なる錯覚かもしれない。けど、それだけじゃないんだ。有馬記念が始まる前、俺は桂崎トレーナーのサブとして出走ウマ娘用の入り口に居たんだが、その時、ちょっと変わったウマ娘に会ったんだ。」

 

 思い返すほどに、あの小柄なウマ娘の振る舞いは奇妙であった。

 

 誰か特定のウマ娘を応援するわけでもなく、出走ウマ娘がレース場へ向かう入り口をじっと見つめていただけ。鷹木と一緒にいたアグネスデジタルからの招待も受けず、真っ黒な長髪をなびかせ、同じく真っ黒なスカートと外套を冬風にただ翻していた。

 

 結局、中山レース場にわざわざ来たにもかかわらず、観客席に向かうでもなく中継で観戦するとのみ言い残し、そのウマ娘はレース発走時間前にスタスタと去っていったのである。

 

 背丈も低く、ほっそりした体つきでありながら、意外なほど低く響く落ち着いた彼女の声も、耳の奥に染み込んでくるようでどこか異様であった。

 

「思い返すほどに、アドマイヤベガの足元からターフの上に伸びていた影と、あの小柄で黒髪をなびかせた姿は、似ているような気がするんだが……。」

 

「気がする、気がする……ばかりで、確証が無いのはもどかしいですわね。」

 

 キングヘイローからのツッコミに、鷹木は申し訳なさそうにうなだれるしかなかった。

 

 最初は身を乗り出して鷹木の話に耳を立てていたアドマイヤベガも、あまりにも雲をつかむような話に少々呆れてしまったのか、既に視線を自身の正面へと向け直している。

 

 ただ、ナリタトップロードだけは、ごく真剣な眼差しを変えず、鷹木への質問を続けた。

 

「そのウマ娘は、実際に有馬記念の日に中山レース場を訪れていたんだね。名前は聞いた?」

 

「いや、スマン、名前は聞きそびれたんだが……もしかしたら新年度にトレセン学園へ入ってくる子かもしれない。歩いている所しか見ていないが、多少鍛えた雰囲気があった。」

 

 それはトレーナーとしてウマ娘を多く見てきたからこそ、判断のつく部分であった。アドマイヤベガが今避けている最後方からの加速、それに最も向いた体型であるとの漠然とした確信も、鷹木の中での判断材料であった。

 

 既に鷹木の言に確証を見いだすのを諦めたキングヘイローも、新年度から入学するウマ娘となれば、現実的に気にはなるのか口を挟んだ。

 

「では、もしかすると、入学式の日にそのウマ娘を見つけられるかもしれないのですね?」

 

「あぁ、体つきは小さく、真っ黒な毛並みに、黄色い目、かなり特徴的だからすぐに分かるはずだ。」

 

「なるほど、もしかすると中距離から長距離で活躍できる子かもしれませんわね。実際にそのような子がいるのを見たら、私もぜひ声を掛けてみようかしら。」

 

 この会話の中で交わされたのは、いずれも憶測にすぎない内容であったが、その鷹木が見かけただけのウマ娘がトレセン学園へと入ってくることに関してだけは、不思議と確定事項として現実味のある内容に聞こえたのであった。

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