探求者たちのタイムクライム   作:Okubo Masau

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 まだトレセン学園1年目、入学から3か月程度の時期に、早々とデビューするウマ娘の存在が気に掛かった鷹木トレーナーは、居てもたってもおられずその日の未勝利バ戦が行われるレース場へと向かう。本来は1年目のウマ娘が授業を受けているべき時間帯、レーススケジュールのために特別な許可を得た者以外は教室に居るはずだったが、当然の権利のごとくアグネスタキオンは既に観客席の一角を占めていた。いつものサボり癖を発動して教室から抜け出して来た彼女とともに鷹木が視線を注ぐコース上、現れたのはタップダンスシチーとダンツフレームであった。


いかに脚光は遠くとも

 7月に入ったばかりというこの時期にデビュー戦を行うのは、入学2年目のウマ娘、すなわち昨年中のデビューを逃したウマ娘たちだろうと鷹木は考えていた。

 

 現に、1年遅れで入学したタップダンスシチーがデビューを目指して競う相手は、歳は同じでも学籍上は自分の先輩たちである。

 

 しかし、鷹木は自らの認識を即座に改めることとなった。先ほどの桂崎トレーナーの口ぶりに引っ掛かった鷹木は聞き返す。

 

「……タップダンスシチーとも別の子が、デビューするんですか?まもなく?」

 

「えぇ、今年入学したウマ娘です。タップと違って入学も遅れてはいませんので、名実ともに先輩たちの中に囲まれて走ることとなりますね。」

 

「入学から、ようやく3か月経ったばかりという、この時期に……?」

 

「驚きですよね、最もデビューに近しい能力を有しているのはマンハッタンカフェか、あるいはアグネスタキオンかと自分も考えていたんですが。」

 

 この世代の話題をかっさらっている、あるいは自身が騒動の種となって目立っているウマ娘ではない、今までその他大勢の中に埋もれていたウマ娘が、同年代の中で最速のデビューへ挑む。

 

 むろん、そのレースが始まるのはこれからであり、能力のほどは未知数である。が、デビューに踏み切るだけの仕上がりを認められたことには違いない。

 

 タキオンやタップと比べれば、他は大人しそうなウマ娘ばかりだという印象を抱いていた鷹木は、全く虚を突かれる思いであった。

 

 暫し呆気に取られている鷹木の前で、練習の後片付けを済ませた桂崎は立ち上がる。クールダウンを終えたナリタトップロードも、更衣室へと去った後である。

 

「さて、自分はこれからそのウマ娘のデビュー戦を見学しに行くつもりですが、ご一緒にいかがです?」

 

「……ですね、こんな早い時期にデビューするのが一体誰なのか気になりますし、それに……」

 

「それに、きっとアグネスタキオンも現地に居るだろうから、ですか?」

 

 桂崎が先んじて補った発言を前に、鷹木は頷く。

 

 自分以外のウマ娘の活躍にばかり熱い関心を傾けるアグネスタキオンは、前回のタップダンスシチーの初戦においても熱心に声援を送っていた。

 

 未勝利バのレースが行われるのは大抵昼過ぎ、まだ授業が行われている時間帯であるが、タキオンがそれをサボッている可能性に関してはもはや推量の余地など無い。

 

 昼飯を済ませ、トレセン学園の敷地を出て徒歩で数分程度のところにあるレース場に向かった鷹木と片桐。

 

 無名のウマ娘たちばかりが走るレースの常として、観客席はガランとしていたため、アグネスタキオンの白衣の背中はひときわ目立って見えた。

 

「……いますね。」

 

「やっぱりですね。」

 

 鷹木と桂崎は苦笑交じりにボソボソと話し合っただけだったのだが、周囲に喧噪が無いぶんウマ娘の聴力は彼らの声を十分に拾い得た。

 

 白衣の背の上、栗毛の耳がクルリと後ろに向き、一拍置いてアグネスタキオンが振り返る。昼食代わりなのか、エナジーバーを齧りながらレースが始まるのを待っていたらしい。

 

「ん?おおぉ、トレーナーくん!それに、桂崎トレーナーまで!こんなところで会えるなんて奇遇だねぇ!」

 

「奇遇じゃないんだよ、お前が授業をサボッてここに来ているんじゃないかってことは充分に予測できてたんだ。出来れば裏切ってほしい予測だったんだが。」

 

「ほうほう!トレーナーくん、君も未確定の事象を予め観測する試みに手を出そうと言うのか!いい心がけだが、私がこの場に居ることはほぼ必然、観測など不要だったろう。」

 

 鷹木の小言に対して悪びれもせず語るタキオンであったが、その発言内容は、彼女自身もこれから行われるデビュー戦の内容を知っていることの表れであった。

 

 むろん、タップダンスシチーの2度目の挑戦であることも気に掛かっていただろう。

 

「……タキオンも、知っていたのか?今日のデビュー戦、今年入学した同年代のウマ娘も出走するってことを……。」

 

「私が知らないわけがないだろう、片桐トレーナーの草刈り観察を終えた後、トレーナーくんに言われた通り渋々ながら教室に向かったんだが、私以外にも授業に出席していない同級生がいると気づいたのだから。」

 

「出来ればそのまま授業に出席してもらいたかったな……。」

 

「いやしかし一大事ではあるじゃないか!入学して3か月、たったそれだけの練習期間でデビューするとは!それもタップ君よりも1歳下で、昨年のデビューを逃した先輩たちに挑むとは、相当な素質の持ち主に違いないねぇ!」

 

 トレーナー達が有している情報は、至極当然のごとくアグネスタキオンも掴んでいた。

 

 勉学に専念しているべき時間を熱心な情報収集に当てているのだろう彼女の振る舞いに呆れつつも、鷹木はほとんど空き席で占められた観客席を見回した。

 

 このデビュー戦は、タップダンスシチーにとって2度目の挑戦にもなる。かの黒ジャージのウマ娘たち、タップにとっての練習相手であり、つるむ仲間でもある彼女らも応援に来ているのではと思われた。

 

 が、それらしい姿は無かった。前回は仕事の休憩時間中に駆けつけたのだろう作業服に身を包んでいたが、流石に今回もまた仕事中に抜け出してくるわけにはいかなかったのだろう。

 

 この未勝利バ戦の観客席において、タップダンスシチーに声援を送り、その走りを現地で讃えらえれる数少ない存在に、毎度のことながら自分以外のウマ娘の活躍ばかりに期待を掛けるアグネスタキオンが含まれていたのだった。

 

 そのタキオンは、たった今コース上に姿を現した、ピンク色の耳当てが特徴的なウマ娘を視界内に見出した時、より強く興奮を示していたが。

 

「おぉ、彼女だ!間違いない、今日の講義に欠席していた私以外のウマ娘は彼女だよ!」

 

「そうなのか……普段から出席をサボッているわりに、教室内の顔ぶれはしっかり覚えているんだな。」

 

「わざわざ記憶する必要などないじゃないか、座席の位置と学籍番号を照合すれば、容姿と名前程度なら割り出せる。彼女の名前は、ダンツフレームだったねぇ。」

 

「その情報を手にするだけの労力を、真面目な方向で活かしてもらいたいもんだ……。」

 

 鷹木と桂崎もトレーナー用の生徒データベースで既にその名前と成績は確認していた。

 

 彼女の姿を実際に見るのは初めてのことだった……パッチリとした目元の、ごく真面目そうな顔立ちが印象に残る顔であると同時に、思いのほか身長が高く1年先輩のウマ娘たちに囲まれても存在感が埋もれていない。

 

 さすがに、ひときわ体格に恵まれたタップダンスシチーがコース上に姿を現した時は、疎らな観客たちからの視線をタップの上背が吸い寄せることとなったが。

 

「これだけ離れていても、気迫のようなものが伝わってくるねぇ、タップくんが出てくると!彼女も特異点たり得る才能の持ち主だと期待できる、ほぼ間違いなく!」

 

「あぁ、前回は9着だったとはいえ、タップとしてはかなり手ごたえのあるレースだったはずだ。」

 

 担当トレーナーがついて1か月足らずで挑んだ実戦のレースにて、13名中9位になるという成績を残したタップダンスシチー。

 

 初の実戦でありながら、まるで焦りを示すことなく、ビギナーとは思えぬ落ち着いたペース配分を披露した彼女は、まず間違いなく次戦においては目覚ましい成長を示すものと目されていた。

 

 ……が、この草地の上に並べられた椅子、疎らな観客席から声援が送られる先はほとんど別のウマ娘であろう。

 

 タップダンスシチーとダンツフレームを除けば、今の時期の未勝利バ戦に出走するのは、昨年のデビューを逃したウマ娘たちばかりである。

 

 この夏の期間中にもデビューできなければ……秋からは、いよいよ今年入学したウマ娘たちがデビュー戦へと本格的に参戦しはじめる。そうなれば、ますます逃したデビューは現実から遠ざかる。

 

 昨年の入学からずっと応援し続けてきた数少ないファンは、ほぼ彼女らの身内であろうが、だからこそひときわ熱く激励の声も上がるのだ。

 

 入学した年の初夏にデビューへ踏み切ろうとするタップダンスシチーも、ダンツフレームも異端な存在であることには違いなかった。タキオンはそんな彼女らの走りにこそ、大きな期待を掛けているのだろうが。

 

「いよいよだねぇ、始まるねぇ、トレーナーくん!どうやら今回も実況アナウンサーが来てくれることはないようだし、トレーナーくんが実況解説をしてくれないかい?」

 

「いや無理だろ、出走ウマ娘全員の名前を知っているわけじゃないし……。」

 

 タキオンへの返答を、鷹木は少々周囲を気にしながら声を低めて行った。

 

 いかにトレセン学園所属のトレーナーとて、全てのウマ娘の名を知っているわけではない。

 

 それはデビュー前のウマ娘が無名であるという必然によるものではあったが、狭き門である中央トレセンに入学できるほどの優れた能力の大部分が、世間にて日の目を見ることなく埋もれていくという酷な現実の表れでもあった。

 

 そんなやり取りを続けている内に、出走ウマ娘たちのゲートインは済み、ついに発走の時となる。

 

 ゲートが開く音は、それを聞く者がどれほど離れていても、トレーナー、ウマ娘ともに魂を引き絞るような感覚を呼び起こすものらしい。

 

 ガシャン!と響きが届くと同時に、タキオンと鷹木、そして傍らで静かに腕を組んでいた桂崎までも、ビクッと背筋に電流が走ったようになって居ずまいを正した。

 

「始まったねぇ!タップくんは……埋もれてしまったか、前から6番手といったところかな?」

 

「ダンツフレームも、似たような位置みたいだな。タップダンスシチーよりも僅かに前に出ているか。」

 

 理想通りの走りが出来るのならば、率先して先頭に立ちたいタップダンスシチーであったが、やはり1年以上デビューを遅らせている先輩ウマ娘たちの気迫には勝れなかったのか、スタート直後から集団の中に沈む。

 

 が、鷹木も桂崎も、彼女の脚運びにまったく焦りが無いことについては以前のデビュー戦と変わりないと見えていた。

 

「スタート直後に必要な加速の後、自分のスタミナ残量をしっかり計算して速度を抑えましたね、タップは。」

 

「ですね、逃げの位置につけずバ群に囲まれてしまったものの……あれが本来のペースです、というよりも周囲が焦っています。」

 

 鷹木も仄かに浮かべたものの言及を避けた推測を、桂崎はさほどの躊躇もなく口にした。

 

 それは、勝負の世界の厳しさを突きつける推測でもあった。タップダンスシチーとダンツフレーム、入学から3か月弱でデビュー戦の舞台に上がってきたウマ娘2名の存在に、無名の先輩ウマ娘たちは焦っている。

 

 たとえこのレース内における走りの能力で勝ったとて、自分を追い越そうとする後輩の存在を前に平常心を保てないようでは、より熾烈な競走となる大舞台には通用しない。

 

 疎らな観客席の隅、おそらくこの日のために上京してきたのだろう、今走っているウマ娘たちの家族らが懸命に手を振っている背中を見つめながら、鷹木は暗い思いを胸の内に押し込めた。

 

 ウマ娘集団は最初のコーナーに差し掛かる。先頭争いは落ち着くことなく、頻繁に先頭を走るウマ娘は入れ替わっている。

 

「ふゥむ、コーナーを回っていく間もタップダンスシチーとダンツフレームは順位を無理に上げようとしていない。直線に向いてからも、十分に先頭を捉えられると自信があるのかねぇ。」

 

「確証がなくとも、自分のペースを守れることは重要だ。スタミナ切れという大きな敗因が出来てしまうと、自分の本来の走りに何が不足していたのか、負けた際の分析が困難になる。」

 

 タキオンと共にレース運びへ視線を光らせつつ、鷹木はいつになく歯切れ良い口調で述べる。トレセン学園いちの小心者も、本気で走るレースを前にすれば、トレーナーたる本分に譲れぬものは感じていた。

 

 おそらく、タップダンスシチーに対して片桐も同じく指導しているだろう。

 

 他にもまして負けず嫌い、競うことが好きなウマ娘に対し、加速を控えるよう指示することは、勝ちに近づく手段を明白に示さぬ限り不可能に近い。

 

 コーナーを回り切って、ウマ娘集団は直線に向く。既にその際の体勢で、レースの勝敗はほぼ見えたも同然であった。桂崎が、先んじて口を開く。

 

「タップとダンツフレーム、前に出られますね。」

 

「えぇ、競争相手の位置取りから、前方を塞がれないコースを見出しています。」

 

 鷹木も頷いて答える。タップダンスシチーは、コースの最ウチに居た。

 

 それは本来通りの逃げでレースを運ぶ際に想定した位置取りだったろうが、むやみと加速しながらコーナーを回ってきた集団が外側に振られた際、何者にも塞がれぬ位置でもあった。

 

 ダンツフレームはといえば、こちらは当初から追い込みの想定で走っていたのだろうが、我先にと上がっていく競争相手達が続々と大外に出ている様を、落ち着いたペース配分の中で十分に観察できていた。

 

 結果として、タップダンスシチーとダンツフレームは並ぶような形で、コーナーを回る間ずっと囲まれ続けていた集団を抜け出したのであった。

 

「……それに、スタミナも十分です。想定通りの走りをしているわけですから。」

 

「抜け出したねぇ!タップくん、そしてダンツフレーム!素晴らしい、全く無理の様子もない末脚だ、こんなにも余裕を残せているのか!」

 

 アグネスタキオンが興奮したように叫ぶ目の前で、タップダンスシチーはダンツフレームを引き連れるように、みるみる後続を引き離していく。

 

 もはや、レースはこの両名の独壇場であった。

 

 見守る観客たちも、そしてウマ娘のトレーナーたちも、ほとんどが唖然としていただろう。あるいは、タップを担当していた片桐自身も、流石にこれほどの状況は予想していなかったかもしれない。

 

 丸1年以上、トレセン学園内でトレーニングを続けてきたウマ娘たちを差し置いて、今年の春、入学したばかりのウマ娘2名がぐんぐんとスピードを上げ、並んでゴールへ向かっていく。

 

 それも、片方はマンハッタンカフェのように事前に評判を得ていた者ではなく、このレースで初めて名を知られるようなウマ娘が……。

 

「うぁあああああ!!」

 

 ゴールの直前、叫んだのはダンツフレームであった。デビューを遅らせた先輩たちに劣らぬ無念の叫びであった。

 

 たっぷりと余裕を残したスタミナでどんどん加速していくタップダンスシチーに、ダンツフレームはしぶとく距離を詰めることができていた。

 

 彼女はごく僅差にまで迫ったのだが……一着はタップダンスシチーであった。2度目の挑戦、1年遅れでトレセン学園に入学した彼女は、ついに初戦を飾ったのである。

 

「いや、しかし、ダンツフレームも、二着に食い込むとは。彼女以外はタップも含め、ひとつ年上のウマ娘ばかりに囲まれた状況で……。」

 

「あの走りが出来るのなら、次の未勝利バ戦で確実に勝てるでしょう。秋には彼女以上に期待されているウマ娘たちもデビューし始めるでしょうし、来年のクラシック級は恐るべき世代となるかもしれませんね。」

 

「全くだねぇ、実にレース模様の観測が楽しみだ、特異点の出現は約束されたようなものじゃないか!」

 

 自分自身も来年以降の世代に含まれていることが分かっているのかどうか、タキオンは相変わらず独自すぎる視点での興奮を示している。

 

 コース上では、走り終えたウマ娘たちの集団が多少項垂れながらもゆっくりと流している。

 

 一足先にもう一周して戻ってきたタップダンスシチーは、その傍らにダンツフレームを伴って観客席に寄ってきた。

 

「Wow,amazing!わたしのダチは応援に来れないって聞いてたが、代わりにアンタたちが来てくれたのか!わたしのデビュー、見届けてくれてありがとな!」

 

「当然じゃないか、ウマ娘レースの歴史に刻まれ得る名が、その初勝利を掲げる瞬間を私が見逃すはずがないだろう。ダンツフレーム、キミの走りも素晴らしかったねぇ、こんな才能が私の身近に眠っていただなんて、観測を怠っていたことが悔やまれるよ!」

 

 タキオンが差し出した手を、ダンツフレームは戸惑いつつも掴み、そのまま興奮したタキオンにブンブンと手を握られて振られている。

 

 先ほどは惜しい所でタップダンスシチーに奪われた勝利への未練が叫びとなって漏れ出た彼女であったが、落ち着きを取り戻した今となってはその外見のイメージ通り、真面目そうなウマ娘のひとりであった。

 

「あ、ありがとう……ところで、タキオンさん、今って午後の授業が始まってるころじゃないかな……?」

 

「分かっているさ、本来は今ごろ私は教室にて出席していなければならない。しかし私の担当トレーナーくんが、どうしても今日の未勝利バ戦は見るべきだと言ってきかなくてねぇ。」

 

「トレーナーさんが?そうなんです、か?」

 

「たっ、タキオンは勝手にここに来て観戦していたからな?間違っても、俺がタキオンを授業から連れ出しただなんて、そんな話は流さないでくれよ……!」

 

 タキオンの冗談までもを真に受けそうな、純真な目でダンツフレームから聞き返された鷹木は、慌てて否定する。根も葉もない噂が流れることは、鷹木の精神を何よりも強く削る懸念であった。

 

 あまりに見事な慌てぶりを披露したためであろう、タップダンスシチーはいつにもまして愉快そうに笑った。

 

「Ey,be steady!片桐トレーナーが、一番からかいがいのある奴だっていつも言ってんのも当然だな、鷹木トレーナー!」

 

「えっ、いつも、そんなこと言ってるのか、アイツ……。」

 

 また今回も勝てなかったウマ娘たちを応援していた者たちにとっては多少重苦しい空気も漂った観客席であったが、今まさにからかわれながら暗い雰囲気を押し流すうえで鷹木は一役買っていた。

 

 昼下がりの夏空の下、朗らかな笑い声と共にレース後の汗や涙は引いていく。

 

 やがて草地の上、骨組みが剥き出しの舞台で始まるウイニングライブの華やかさを、トレーナー達と共にタキオンはしっかり堪能し、その日の午後の授業をきっちりサボッたのであった。

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