景虎と行く、聖杯探索 作:ぐだぐだイベの復刻ください
楽しんでいただけたら幸いです。
カルデアに数ある一面白色の部屋、その中の一つであり『カウンセリングルーム』と呼ばれるその部屋で謙道はカルデアの医療担当トップであるロマニ・アーキマンと向かい合って座っていた。
ロマニが口を開く。
「さて、時間通りに来てくれてありがとう。今日はカルデアの定期カウンセリングで君を呼ばせてもらった。……君には回りくどい言い方をしても無駄だと思うから単刀直入に聞くけど、悩みはない?」
「……無いな。」
「いや、何かしらあると思うんだけど、話してくれないかい?」
反論しようとした謙道の言葉を遮るようにロマニは自身の眉間をトントンと人差し指で指差す。
「最近の君は、いつにも増して眉間に皺が寄っているよ。その顔で悩みがないなんて言われても信じられない。」
そして
「君はこのカルデアの対外への防衛の要だ。そんな君の不調を見逃すわけにはいかない。」
そこまで言われて初めて謙道は大きくため息を吐く。そして数秒戸惑う様子を見せ、そして真剣な様子で言う。
「サーヴァントと死合いがしたい……と言って、それを叶えて良いと言うのか?お前は。」
「なんだって?」
ロマニは驚愕にポカンと口を開けた。
そしてその言葉を数秒間かけて脳で理解すると
「君はそれをしたいのかい?」
と、改めて問いかける。
謙道は相も変わらず真剣な表情のまま頷く。
「何故?僕から見て君とランサー、長尾景虎の仲は良好であるように見える。シュミレーターでの戦闘訓練の成績的にコンビネーションにも問題はない。何か不満が?」
「不満はない、むしろこれ以上は無いだろうと思うほどだ。」
ならば何故?とロマニが問おうとしたその時、謙道の瞳にこれまでにない感情が宿る。その瞳は遠くを見るように細められていた。
「俺は誰よりも強く在りたい。これは謙道の魔術を継ぐものとしてではなく、龍正という人間の願いだ。そして、それはこのカルデアの守りを任され、力が必要となり尚更強くなった。だからこそ、毘沙門天の化身とも言われるあの女に、俺の力がどこまで通用するものか試してみたいんだ。」
その言葉を聞いて、ロマニは言葉を失った。
それは受け継がれてきた魔術師としての悲願でなく、彼という人間がその人生で獲得した欲望だったのだから。
それは、魔術師として生きる上で難しいことだ。だからこそロマニは……
「三日だ。」
「……?」
「三日間待ってくれ。君がどんな傷を負っても治療できるように用意をする。」
ロマニは謙道に半ば懇願するように言う。実際、この類の人物はしっかりと釘を刺しておかなければ勝手に殺し合って死ぬ可能性すらある。
「流石に殺し合いは認可できないが、模擬戦ができる用意をする。そしてその様子をカルデア全体で観戦可能にすることで、君がBチームリーダーを任された理由を他の魔術師にも明らかにする。そうすればカルデアにとっても意味があるはずだ。」
「……感謝する」
謙道は深く頭を下げる。
そしてその次の日のこと、謙道はその話を長尾景虎に話した。
「模擬戦?私と?マスター、正気です?」
景虎はいつもより少し控えめな笑みで首を傾げる。
本気で彼を案ずる様子の彼女に謙道は
「お前ならば、シュミレーターの際に俺がお前を観察しているのは気がついていただろう。そして確信に至った、俺はお前と互角とは行かずとも、届く。」
その瞳から彼の正気と覚悟を読み取った景虎は、試合を了承した。
…………
ロマニと約束した三日後になった。
謙道と景虎は共にシュミレーターへとやってきていた。
ロマニはシュミレーターに俺達が入る寸前に呼び止めると
「流石に蘇生は無理だ。致命傷までならどうにかなるようにしたから、そこで留めてくれ。」
と念を押した。それに軽く頷くと、景虎と謙道はシュミレーターに入る。
シュミレーター内の環境は平原となっており、どこまでも青空と草原が広がっている。
謙道と景虎はちょうど彼女の持つ槍が一本と半分ほどの距離で向かい合う。
「手加減はしませんよ?大丈夫なんですね?」
最後通告と言わんばかりに聞く景虎。
彼は無言で首を縦に振る。それを見てようやく景虎は槍と刀を構える。
『用意はいいね?それじゃあ……』
ロマニの少し気が抜ける声で勝負の合図が告げられる。
『はじめ!』
瞬間、景虎は凄まじい勢いで謙道へと踏み込む。
その宝槍の一撃は確かに謙道に届くように思われた。
しかし、激しい金属音ともにその宝槍の突きは逸らされた。
勢いのままに前進する景虎の首に迫った刀を景虎は首を傾けることでなんとか回避する。
謙道の手には、それまで一度も抜かれたことのなかった彼の腰に下がっていた刀の一振りが握られ、その肌には魔力が通い起動した魔術回路が浮かび上がっている。
「これをお前に言わずにいるのは不義理か、明かそう。この刀こそはかつてお前がその手に握り、その死後どこかの戦で折れた八華の備えの一つを俺の先祖が鍛え直した無銘の刀だ。」
鍛え直そうとも、鞘や鍔はそのままなのだろう。
この言葉通り、彼がその手に持つ刀に景虎は見覚えがあった。
「へぇ、マスターの家系はかなり長く続いている家なんですね。それがマスターの奥の手であり私を手繰り寄せた縁であるわけですか。」
「そうだな。だが、お前に対抗するための手はこれだけじゃないさ」
言うが早いか、謙道は先ほどの景虎に迫る速度で肉薄する。
景虎はなんとか後ろへ飛び退いたものの胴に浅い傷が残る。
「マスターってホントに人間です?」
「当たり前だ。」
彼の家で相伝され続けた強化の魔術は、今のように意表を突けば人がサーヴァントに対抗できる状態にまで引き上げるほどの強度を誇っていた。
だからこそ景虎は一切の油断なくその槍を構える。
景虎と謙道、互いに目付きが変わる。
これより言葉は不要、ただ互いの武器を交えるのみとでも言うような雰囲気と気迫を持って互いの距離を測る。
無言の二人、そして謙道が踏み込むより先に景虎が槍で素早い突きを放つ。謙道はそれを当然のように弾くが、景虎はそれもわかっていたかのように二撃目を放ち、避けた謙道の左腕に切り傷が残った。
互いに目にも止まらぬほどの速さで打ち合い、鉄が激しく打ち合う音だけが草原に響く。観戦していたカルデア内の人物でも、その戦いの内容を目で追うことができたのはほんの一握りだった。
そうして激しい戦闘が続くこと一時間半、鉄が打ち合う音が止まり全身から血を流す謙道と、彼より傷は少ないものの一つ一つが深いらしく肩で息をする景虎が互いに睨み合う。
互いに刺突の為の構えを取り、まるで指し示したように同時に踏み込む。
二人の刃は、互いの首元で止まっていた。
「──これ以上は試合ですみませんから、ここで終わりです。」
「あぁ、理解している。」
こうして二人の模擬戦は終了した。
模擬戦終了後、気合いで立っていたらしい謙道はシュミレーターから出てきてすぐにガクリと膝をつき、青い顔をしたロマニに運ばれて行った。その後、彼の戦闘の様子はカルデア全体の知るものとなり、後から来た彼がBチームのリーダーであることを僻むような者はいなくなった。
八華の備えの一刀を持ち、ただ単純に強さを求め、サーヴァントとすら戦って見せる男。
景虎の彼への興味は増すばかりだった。
読了ありがとうございます!
景虎と謙道の距離や互いへの感情を書きつつ
じわじわとFGO本編に近づこうと思うのでよろしくお願いします!
原作の大幅コピー(規約違反)に引っかかるのが怖いので本作主人公が活躍しない部分は……
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省略してええで(^^)
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関係ない、書け(DIO風味)