蟲使いの間桐君   作:寝仔猫

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戦闘描写が出来なーい!って後回しにしてたら結構時間経ってた……。流石に書き進めねばと書いたんで、期待はあまりしないでください……これくらいが限界なのだぁ…


分岐点

 

 結界が発動している異常事態の中、ごく普通に開けられた扉の先に居たのはやはり葛木先生だった。

 

「……間桐、ここで一体何をしている」

 

「葛木先生?それはこちらの話なんですが……どうして動けているんです?」

 

 まぁ、十中八九キャスターの仕業なのだろうが、それはあくまでも推測の域を出ない。もしかしたらYAMA育ちはそこいらの常識からは逸脱した者が多いので彼はその典型例なのかもしれないな。

 

「質問に質問し返さないでもらいたいのだが」

 

「あぁ、それはすみません。ですが、ここまで来た先生なら分かるでしょう?普通、先生のように平気な顔で立ってるのはおかしい状況なんですよ。どういう仕組みです?是非とも教えて下さいよ、葛木先生?」

 

 ニコニコとあからさまな作り笑顔を浮かべながら、俺は現状の軽い説明と疑問を投げ掛ける。ほんの少しではあるが、重心もずらしてすぐに動けるように警戒態勢も怠らない。

 

「詳しく説明しろと言われても正直私にも分からん。ただまぁ、関係があるとすればキャスターの仕業だろう」

 

 そんな俺の態度と質問に葛木先生は表情を変えることなく淡々と答えてきた。言葉から察するにやはりキャスターの仕業で間違いないようだ。

 

「へぇー?キャスターって単語を知ってるってことは、先生は聖杯戦争の参加者なんですね。でしたら尚更、僕が何をしているかなんてのは分かりますよね?」

 

「悪いが、聖杯戦争というものが何なのかは私には分からん。だが、この現状がお前の仕業ならば今すぐ止めろ」

 

「ハハッ!馬鹿な事を言わないでくださいよ、先生。聖杯戦争が何なのかは分からなくとも戦争、という言葉からコレがどういった物なのかは想像付きますよね?コレは争いなんですよ。僕は勝つ為にコレ(魂喰い)をさせてるんですから」

 

 俺は結界の解除を拒絶する。だってこれはあくまでもシナリオ通りにしているからだ。間桐慎二がここで葛木先生と一体どんな会話をしたのかは分からないが、ライダーが消えて漸く結界が解ける描写があったので恐らく彼は拒絶したのだろうと推測して、拒絶を口にする。

 

「…………そうか」

 

 俺が全く引く気はないと悟ったのか、葛木先生はこちらに攻撃を構える姿勢を取った。瞬間、前に居たライダーが彼の元へ攻撃を繰り出そうと持ち前の俊敏さで近付いていってしまった。

 

「っ!待て!!ライダー!ソイツは───!」

 

「っ!!ガハッ……!?!」

 

 俺の制止が遅れた為、ライダー自ら葛木先生の得意とする間合いに飛び込むという形になってしまう。そしてそんな隙を先生が見逃す訳も無く、ライダーの腹部に強烈な一撃を繰り出してきた。その攻撃によって、ライダーの身体が教室の壁に強く叩きつけられる。大きく罅割れの入った壁とパラパラ落ちる破片が、攻撃の強さを物語っていた。

 

「クソッ……!」

 

「・・・・。」

 

 体術面においてYAMA育ちの葛木先生と俺とでは俺に勝ち目なんて到底無いので、せめてもの足掻きとして撹乱用の蟲を葛木先生の視界を覆うように出すことで素早く距離を取る。撹乱用の蟲を葛木先生は持ち前の暗殺拳で振り払おうとするが、そこで俺は警告する。

 

「ソレ、潰したりなんかして下手に刺激しない方が良いですよ。バラバラになったり、刺激された途端に人体に猛毒の体液を撒き散らすようにしてある特別な蟲達なんで」

 

 俺の忠告を聞いて、先生は蟲を振り払おうとした手をピタリと静止させた。

 

「……それは、信用できる情報か?」

 

「さぁ?信じるかどうかは先生次第ですのでお好きにどうぞ?まぁ、どうなっても僕は知りませんが」

 

「・・・・。」

 

 真意を測りかねている先生がこちらに尋ねてくるが、俺は笑みを浮かべながらあえて明言はしなかった。こうしている間に、体勢を立て直したライダーが側に戻ってきた。

 

「すみません、マスター……」

 

 戻ってきたライダーが自身の失態について謝罪を述べるが、あれは俺の注意が遅くなった事による事故のようなものなのでそれ程気にしてはいない。それよりも下手に相手の優位である近距離戦を挑んであっさりと負ける方が今後の予定としては困る。なのでこちらの得意とする間合いで戦闘するように呼び掛けることにした。

 

「気にするな。伝え忘れた俺の落ち度だからな。その代わり、二度と同じヘマはするな」

 

「はい」

 

 ライダーの理解を得た所で葛木先生の視界を遮るように指示した蟲達を呼び戻そうとした時、彼のまさかの行動に俺はギョッとすることとなった。

 

「っ!!おいおい……嘘だろう!?」

 

 なんと葛木先生は俺の真偽を疑っていたのにも関わらず、蟲達を持ち前の暗殺拳で全て潰したのだった。因みに猛毒の件だが、全部が全部猛毒を持つ蟲ではないが、確かに猛毒を持つ蟲も忍ばせていた。しかし、体液が自身に飛び散る前にその場から離れるという人間離れした技で回避されていたのだ。

 

 いや、少し違うか。よく見ればキャスターの魔術でうっすらと強化されている。だから多少触れても熱さを感じる程度で、後は反射で何とかしているのだ。ありえないだろとは思うが、事実なので受け入れるしかない。

 

「ライダー!」

 

 俺の呼び掛けと共にライダーが自身の武器を放つ。鎖に繋がれていることを活かした、中遠距離からの普通の動体視力では捉えられない攻撃であったが、余程視力が良いのかそれとも勘の良さからか当たったのは初撃の二発程。それも薄皮がほんの少し抉れた位で、致命傷とまでは至らない。

 

 その後も死角を含め、あらゆる方向、自由自在の髪を用いての攻撃も試みるがやはり剣は当たる前に弾かれ、髪は絡む前に避けられる。更に悪い事に、葛木先生との距離はこちらが攻撃すればするほどに彼の得意とする間合いにまであと少しという所まで近付いてしまっていた。

 

「バイザーを外せ!!」

 

 ここは止むなしと俺はライダーに石化の魔眼の使用を指示する。いくらYAMA育ちとは言えども流石にコレは初見では避けられないだろうと考えてだ。ライダーから距離を取ろうと動いた足元に蟲を放つ事で一時的に身動きを封じる。

 

「っ!!」

 

 そうしてライダーの魔眼は避けられる事なく発動した。先生の足元や指先からゆっくりと石化が始まる。そこまでして俺はハッとすることとなった。

 

 何やってるんだよ、俺。原作の流れを汲むなら、ここは何もせずにやられる所だっただろ。それで無様に怯えて教会に逃げ込む所。なのに何で俺は勝とうとしてるんだ。

 

 計画の邪魔をされたから?ライダーと共に衛宮達と戦闘しようとでもしていたからか?原作に無いのにか?

 

 

───まさか、ライダーに情が移ったとでも?

 

 

 いいや、それこそ無い話だ。捨て駒とまではいかなくとも、ライダーが最後まで残る可能性は考慮してなかった筈だ。現に今後の方針を考える時に、ライダーの事は考えてはなかったのだから。だというのに何だ。どうして俺は、ここまで抵抗している?

 

 本格的に物語が進んだ事によって現れ始めた自己矛盾に、俺は襲撃者の前に立っているにも関わらず動揺してしまう。今はそれどころではないというのに。

 

「マスター!危ない……!!」

 

「っ!?」

 

 動揺が仇となり、俺は葛木先生ではない他の者の奇襲に気付く事が出来なかった。幸い、俺自身は奇襲に気が付いたライダーが咄嗟に俺の身体ごと奇襲外へ跳ね飛ばした事によって無事だったが、代わりにライダーが攻撃を受けてしまった。

 

「ふふ……」

 

「なっ……!キャスター?!それに、ソイツは───!」

 

 奇襲してきた相手はなんと、柳洞寺に潜んで居る筈のキャスターだった。そして、彼女の手には彼女の宝具である『破戒すべき全ての符(ルールブレイカー)』が握られていたのだ。それが俺を庇ったライダーの背中に刺さっている。

 

「ァ゙ッ……!あぁぁぁァァァァァ゙!!??」

 

「ライダー!!っ……!」

 

 嫌な予感を察知しライダーの元へ駆け付けようとするが、一足先にキャスターの宝具が発動し、偽臣の書が燃え立つ。俺は書を手放すが、火傷を負ったのか少しヒリヒリとした痛みが右手に走る。しかし、気にしている暇は無いとキャスターの気を引く為に葛木先生を人質として利用しようとするが、目線を向けた先にライダーによって石化させられている筈の彼の姿は何処にも見当たらなかった。

 

「チッ……しくじった……。おい、ライダー!しっかりしろ!!」

 

 話の展開的にこのような事は起こり得るだろうと分かっていたとは言え、ライダーに庇われる形になった自身の情けなさに舌打ちをする。そのまま自己反省会に陥りそうになるが、今はそれどころではないと意識を無理矢理切り替え、半ば八つ当たりのようにライダーに叫び散らす。

 

「何故俺を庇った!お前が庇うべきはマスターの桜だと散々言っただろうが!!」

 

「す、みませ……マス、ター……」

 

 ただでさえ葛木先生の攻撃をまともに受け、更にはキャスターの襲撃から俺を庇い満身創痍である筈のライダーは、申し訳ないという雰囲気を全面に出しながら謝罪の言葉を口にする。

 

 どう考えても俺にしか落ち度はないというのに。それなのに辛そうに謝る彼女の姿に、俺は胸が締め付けられる感覚に陥った。そんな自分を認めたくなくて、再び俺は叫び散らす。

 

「無駄口叩くな馬鹿!そんな力残してんなら、さっさと回復に魔力を回せよ!」

 

「・・・・。」

 

 叫び散らす俺に嫌な顔をすることなくただ黙っているライダー。何故なのかと疑問に思いライダーを観察していると、彼女が受けた傷が全く癒えていない事に気が付く。

 

「まさかお前……!下手に俺を庇ったせいで霊核を負傷しやがったな?!」

 

 俺の問いにライダーは無言で頷いた。その反応に言い様のない怒りが込み上げてくる。

 

「巫山戯るな!何でだよ!確かに『役に立てよ』とは言った。だが!!お前に!俺を庇えとは一言も言ってねぇだろうが!!」

 

「えぇ……そう、ですね」

 

 主人を庇ったライダーに非は無い。これは、何度も言う八つ当たりでしかないのだ。なのに、だというのに、彼女は仕方ない子だとでも言ってくるかのように笑う。

 

「何でだ!何でそんな愚かな行為に走った!!」

 

 理解出来ない。義妹を冷たく扱い、何か不備があれば喚き散らす、主人にも成り得ない俺の事なんて見捨てれば良いものを。人の機微に聡いライダーならば俺が今後の計画に彼女を汲んでいない事なんて理解していただろうに。

 

「サーヴァントとして、貴方に仕えたいと……そう思ったのです。……()()()()()()()貴方に」

 

「────っ!」

 

 息も絶え絶えな彼女から放たれた言葉に、俺は息ができない感覚に陥る。

 

 何故だ……?何で俺に優しいと言える?こんな、こんな自分がこの聖杯戦争を生き残る事しか考えてない奴が、優しい?優しいってのは、もっと他人に気を配れる奴の事だ。断じて自分本意に動く人間の事じゃない。

 

 グルグルと巡る自己否定的な答えに目眩がしてしたのか、視界が歪み始めた。そんな時、ライダーが俺の左頬に手を添えてきた。

 

()()()()()()()()()…………シンジ」

 

「は────?」

 

 俺が、泣く……?そんな訳無いだろ、と自分の右頬に手を当てると微かに水の感触を感じた。俺はその事実にギョッとした。何で、何で俺は泣いているんだ。分かっていただろう?ライダーがここで居なくなる事は。だから計画に入れてなかっただろう?

 

 自分で自分がわからなくて混乱している俺を余所に、ライダーは言葉を紡ぐ。

 

「あぁ……やはり貴方は、優しい方です。貴方のお役に立てなかった私に、こんなに、泣いてくださる」

 

「ちがう……違う!泣いてなんか……俺は、俺はお前を───」

 

 

───捨て駒にしようとした。

 

 

 その言葉が俺の口から出ることは無かった。何度も口にしようとしても空気が漏れるだけで、言葉にはならなかったのだ。まるで俺は本心からそんな事は考えてないとでも言うかのように。

 

「素直じゃ、ない……ですね。だからいつも、行動と言動が……チグハグなんですよ」

 

 そんな俺にライダーは、母親が子どもに甘やかすかのように頭や頬をゆっくりと撫でながら笑い掛ける。その動作に触発され、更に視界が歪み始めた。

 

 やめろよ。そんな風に俺に笑い掛けないでくれ。俺はお前が思うような出来た人間なんかじゃない。この先の流れを知っておきながらその通りにしか行動しない卑怯な臆病者なんだ。

 

「貴方は……もっと自分の気持ちに、正直になるべきです。無理に決まった道筋に従う必要は、無いんですよ」

 

「っ!知って、たのか……?」

 

「えぇ。言ったでしょう?行動と言動がチグハグだと」

 

「そんな事は……」

 

「気付いてますか?貴方はサクラを突き放すような言い方をしておきながら、その行動には明らかな気遣いが見られました」

 

「ちが…………っ」

 

 違う、とは言い切れなかった。確かに桜に将来的に殺されない為に行動していたが、前世の倫理観から流石にコレは駄目だろとやらなかった事も沢山あったからだ。

 

 『違う』の先が何も言えず言い淀んでいると外からドタドタとこちらに向かって走ってくる音が聞こえてきた。どうやら衛宮達がこちらに向かっているようだ。

 

 そろそろタイムリミットが近い。今すぐに決めなければならない。俺はこのまま“間桐慎二という役を演じる”のか、それとも原作なんて関係ないと“衛宮達と対立する”のかどうかを。

 

「…………シンジ」

 

「っ、何だ?」

 

 ライダーに呼び掛けられ、逸れていた思考が戻された。

 

「もっと自分に素直になってください」

 

 嫌な予感がする。

 

「貴方にはそれを実行するだけの力があるのですから」

 

「……やめろよ。最後の言葉みたいに言うな。霊核が欠けていてもまだ残れるだけの魔力はあるだろ?なぁ、ライダー?」

 

 らしくもなく声が震える。

 

「貴方に仕える事が出来て……幸せ、でし……た」

 

「っ、ライダー!!!」

 

 そう言ってライダーは笑顔で消えていく。俺は必死に消えていく彼女の身体を抱きしめようとするが、抵抗虚しく掴む前に彼女の身体は光の粒となって俺の腕から溢れていった。

 

「─────っ!!」

 

 泣き叫んだりはしない。その代わりに彼女の言葉を心の中で強く噛み締める。

 

「慎二!!」

 

 息を切らしながら衛宮が教室内に入ってきた。もうライダーの死を嘆いている暇は無い。今すぐに決めろ。

 

 

─────俺は、

 

 

 

 役を演じる

  衛宮達と対立する

 





ライダーをあっさり退場させるのもなー……って考えながら書いてたら何故か感動的な別れ方になっちゃった。本当に何でだ??あと慎二君も泣かす予定は無かったのに何でなん?(多分性癖)

さてさてようやっと分岐点ですよ、皆さん。慎二君が選んだ選択は次回の前書きにて公開しますね。次回は投稿が遅れそうなので、それまでどちらの選択がどのルートに分岐するのか是非とも考えてみてください。感想してもらえたら作者が馬鹿みたいに喜びます。

あ、因みに八人目マスタールートのパートナーサーヴァントは一応決定しました。
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