蟲使いの間桐君   作:寝仔猫

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詰めに詰め込んだ結果、今回はいつもより長めになっております。


《間桐慎二の選択》
 役を演じる
▶衛宮達と対立する


本編(八人目のマスタールート)
矛盾行動と縁召喚


 

 

───俺は、“衛宮達と対立する”。

 

 

 原作なんてもう関係ない。俺は、俺が聖杯戦争を生き残る為の選択肢を取る。ライダーの期待に答えてやろうじゃねぇか。

 

 そんな決意を胸に、伏していた顔を上げて衛宮を睨み付ける。

 

「…………何だよ、衛宮」

 

「何だよ、じゃないだろ。今すぐにこの結界を解除しろよ」

 

「嫌だね」

 

「何だと?!」

 

 俺の返答に怒った衛宮が、俺の胸倉を掴んできた。

 

「とでも言ったら、お前どうするつもりだ?」

 

 しかし、そんな様子に怯える事もなく淡々と話す俺の返答に衛宮が一瞬ギョッとした表情を浮かべた。だがしかしそれも本当に一瞬のことですぐに同じくこちらを睨み付けてきた。

 

「それならお前に『はい』と言わせるだけだ」

 

「ふーん……?お前が俺に『はい』と言わせる?ハハハハハッ!…………寝言は寝て言えよ

 

「っ……!?」

 

 俺の気迫に押されたのか、掴んでいた胸倉をバッと離し、衛宮は一歩後ずさった。

 

「衛宮君!」

 

 そんな時、少し遅れて遠坂もやって来た。

 

 さて、二対一という早速不利な状況に陥ったワケだが、どうするかね。とりあえずはにこやかに遠坂に挨拶するとしますか。

 

「やぁ、遠坂。今朝ぶりだね?」

 

「えぇ。そうですね、間桐君」

 

 猫被り同士の会話を聞いて、両方の素を知る衛宮は顔が分かりやすく引き攣っていた。その顔を見て俺は、かなり失礼な奴だなと思った。

 

「それで?お二人仲良く僕に何の用かな?」

 

「惚けるなよ慎二。この騒ぎはお前の仕業だろう?今すぐにこの結界を解除しろ」

 

「そんな急かさなくったって直に解除されるさ。結界を発動していたライダーは殺されたんだからな」

 

「「何だと!?/何ですって!?」」

 

 俺の返答が意外だったのか、二人はほぼ同時に驚きの声をあげた。

 

「一体誰に?」

 

「・・・・。」

 

 ここで素直にキャスターと葛木先生だと答えるのも一興かと考えたが、それはそれとして衛宮達の興味が俺から逸れるのは癪に障るので回りくどい言い方を取ろうと思う。

 

「そんなの校内に潜む四人目のマスターの仕業に決まってるだろ?」

 

「相手の顔は見たの?」

 

「悪いが見てないね。奇襲されたものだから。いやぁ、四人目のマスターには一本取られたよ。まさか、遠坂達みたいにこの結界の中、動けるなんてね」

 

「…………そう」

 

 俺の言葉がいまいち信用ならないのか、遠坂は考える素振りをし、衛宮は俺の動向を伺い続けている。そんな緊迫感の走る中、どうやらライダーの結界が役目を果たして崩壊していったようだ。赤黒く染まっていた空間が何事も無かったかのように元に戻ってきた。

 

「さて、これで僕の仕掛けた結界は解けたワケだけれども……。どうする?僕を殺すか?」

 

「いや、それは……」

 

「ええ、そうね」

 

「遠坂!?流石にそれは……」

 

 躊躇う衛宮に対して肯定の言葉を紡いだ遠坂に衛宮は驚きの声をあげる。未だに正義の味方となるという夢物語を語る衛宮には、魔術師の考えはまだ理解出来ていないようだ。とんだ甘ちゃんだな。

 

「衛宮君、初日に説明を受けたでしょ?これは魔術師同士の殺し合いなの。サーヴァントが居なくなったマスターなんて他の参加者からすれば格好の獲物なのよ」

 

「それは……そうなんだが……」

 

「それに何らかのキッカケで逸れのサーヴァントと契約することもあり得るの。そうなったらまた厄介な事を仕出かすかもしれない。それを未然に防ぐ為に殺す事も厭わないのが魔術師同士の殺し合い。分かった?衛宮君」

 

「あ、あぁ……。だけどやっぱり()()()()()()()人間を殺すだなんてのは───」

 

「随分と舐めたことを言ってくれるじゃないか……衛宮。ええ?」

 

 俺が武器を持たない人間だ?そんな訳無いだろ。確かに原作の間桐慎二であれば魔術を行使できないからそうだとも言えるだろう。

 

 だがな、衛宮。お前の目の前に居るのは魔術回路を持ったれっきとした魔術師なんだよ。知らなかったとしても警戒しないのはとんだ悪手だぞ。

 

「───!?ぁが……ッ??!」

 

「衛宮君!!」

 

 そんな舐め切った態度を取る衛宮の腹部に、俺は蹴りをぶち込んだ。こっそりと身体強化の魔術も施していたので、その一撃は腹の中の内臓が全て出てくるかのような強烈なものだろう。現に、まともに受けた衛宮は胃液をゲェゲェと吐いている。

 

 そんな衛宮の元に近付き彼の胸倉を掴む。先程衛宮にやられた事のやり返しだ。

 

「ぅぐっ……」

 

「次に舐め切った態度を取れば本気で殺す。知り合いだからってのは関係無ぇ。勝つ為には何でもするのがこの俺だ」

 

 最初は猫を被ったが、原作には固執しなくなったし俺の好きなようにする以上、少なくとも聖杯戦争中は演じる必要は無いだろうと考えて遠坂の前でも素を出していく。

 

「間桐君!衛宮君を離しなさいっ!」

 

 そんな俺を見て遠坂がこちらにガンドを放つ姿勢を取る。真正面からガンドを喰らえば碌な事にはならないだろうが、俺はすぐには撃ってくる事は無いだろうと推測している。

 

「離れろ、だなんて言われて素直に離れる馬鹿は居ないと思うけどな?」

 

「良いから手を離しなさい!撃つわよ……!」

 

「へぇ?なら撃ってみなよ。撃てるものならな」

 

 すぐには撃たないだろうとは推測するが、下手にそのままだと面倒臭そうなのでここは一旦素直に衛宮を手放し、態と手ぶらをアピールすることにした。勿論本当に手ぶらなワケじゃない。防衛の手段は持ち合わせているさ。

 

「・・・・。衛宮君を手放したのは良いけど……本当に撃つわよ」

 

「だから撃てるものなら撃てっての」

 

 そう言った瞬間、遠坂の指先からガンドが放たれた。だが、目視出来ない速さでは無かった為、俺は冷静に簡易的な詠唱をする。

 

Щит()

 

「なっ?!」

 

 俺の詠唱を合図に目の前には半透明の壁が展開され、遠坂が放ったガンドは見事に防がれた。これによって、彼女の顔が驚愕の色に染まった。衛宮も声には出ていないが、驚いているようであった。

 

「何だ?俺がお前のガンドを防いだのがそんなに意外か?」

 

「えぇ……そうね」

 

「何だ、学校一の優等生様にも知らない事があったんだなぁ?あぁ、だから随分見通しが甘いのか」

 

「……何ですって?」

 

 遠坂の顔が歪んだ。

 

「遠坂。お前最初から俺の事を羽虫程度にしか考えてなかっただろ。先代から聞いた“俺の代で魔術回路を持った血を継ぐ人間は途絶えた”という情報を素直に信じてな?」

 

「どうしてそれを……」

 

「俺はそこの半人前以下ともあのグズでのろまな妹とも違う。間桐家長男として、そして魔術師としての教育を受けているんだよ」

 

「だとしてもあり得ないわ。魔術回路を持たない人間が魔術を行使するなんて……。それこそ殆ど不可能とされる魔術回路を増やすことよりもあり得なさ過ぎる」

 

「だが、それを可能とするのが間桐の魔術だ。それにその可能性を端から切り捨てたのはお前だろう?遠坂。見通しが甘いってのはそういう事だ」

 

「・・・・。」

 

 俺の言い分に遠坂は言い返すことをしなかった。代わりにお綺麗な顔は悔しさによって相当歪んでいたがな。

 

「さて、これで俺は抵抗する手段を持っていると証明したワケだが……。どうする?まだ殺すと言うか?」

 

 俺の問いに遠坂は口を開かなかった。肯定を示しているのか、それとも他の階に居るセイバーの合流を待っての時間稼ぎか。どちらかは判断しかねるが、極力ここで手札を全て切って戦うということはしたくないので相手の冷静さを欠く為の煽る戦法が通じれば良いのだが……。

 

「なぁ慎二。一つ、聞いても良いか?」

 

「……何だ?」

 

 遠坂と腹の探り合いで睨み合っていると、横から衛宮が質問を投げ掛けてきた。正直碌な予感はしないのだが、嫌だと言ってもアイツの性格上引き下がることはないだろうなと思い、答えてやることにした。

 

「学校に結界を張ったのはお前の意思なのか?」

 

「は?そんなの当たり前に決まってるだろ。馬鹿なのか?」

 

 衛宮の質問の意図が全く読めなかった。シナリオ通りだといえども、そうしようとしたのは俺の自己判断の元なんだからそうに決まってるだろうが。

 

「お前、こんな事をする奴じゃないだろ」

 

「ハァ??!何それ気持ち悪ッ。お前に俺の何が分かるってんだよ」

 

 言われたことが理解出来ず、一瞬固まってしまった。俺がこんな事をする奴じゃない?本当に意味が分からない。思わず本気で『気持ち悪ッ』と言ってしまった。心做しか鳥肌も立っている気がする。だが、そんな俺の気持ちを余所に衛宮は話し続ける。

 

「分かるぞ。慎二はさ、冷たそうに見えてかなり面倒見が良いし、何よりお前は妹の桜を大事に思っているじゃないか。そんな奴が桜を巻き込んだこんな外道な事をするとは思えないと思うんだが……どうなんだ?」

 

 衛宮の当たり前だろと言わんばかりの態度に、俺は怒りを覚えた。

 

「いや、どうなんだ?じゃねぇよ!俺が面倒見が良い?あのグズを大事に思っている?世迷い言も大概にしろよ馬鹿衛宮!!どこをどう見たらそんな考えが出てくるんだよ!目ぇ腐ってんのか?ァ゙ァ゙?」

 

 どう考えても目が腐ってるとしか言えない考えの数々に俺は声を荒げて抗議するしかなかった。衛宮が半ば馬鹿正直なのが裏目に出たのか遠坂が衛宮の言い分を信じそうになっているのも余計に癪に障る。

 

「でも、桜からも聞いて……」

 

「五月蝿え!!そんなもの───っ?!!」

 

 『アイツの勘違いだ』と、衛宮の言い分を否定しようとした時、教室内が突然夜になったかのように影が差す。この瞬間俺の身体にとてつもない悪寒が走った。嫌な予感がし、そちらに目線を向けるとそこには、何とSNやUBWルートでは現れる筈の無いサーヴァントも人も無差別に取り込むあの()が居たのだ。

 

「な、何だアイツ……!?」

 

「嘘、だろ……?」

 

「え?な、何?どうしたのよ、二人共」

 

 ソイツは遠坂のほぼ真隣といえる辺りに出現しており、遠坂からは分からない為か彼女は困惑を口にしていた。

 

「遠坂っ!!今すぐにこっちに来い!」

 

「オイ馬鹿!急に大声出すんじゃねぇ!」

 

「え……?」

 

 焦った衛宮が声を荒げてしまうものだがら、今はただ立っているだけだった筈の影がこちらに反応する様子を見せた。反応した影が遠坂の方へと伸びて行く。

 

「あぁー!クソっ!!!армирование(強化)Прыгать(ジャンプ)!」

 

「きゃっ……!?」

 

 それを見て完全に衛宮のせいだよ馬鹿野郎!と叫びたくなったが、俺の口から出たのは罵倒ではなく強化とジャンプの詠唱で、人の事言えないだろという捨て身のタックルを遠坂にかましていた。そうすることで無理矢理、遠坂と影との距離を取らせたのだ。

 

 遠坂と影との距離を取らせることには成功したが、今度は俺が影に呑まれそうになっていた。

 

「慎二……!!」

 

「来るな!!!」

 

「っ!」

 

 そんな様子を見てお人好しの衛宮が俺を助けようとこちらに来ようとしていたが、俺は大声で拒絶の言葉を口にした。その声に驚き、衛宮の動きが一瞬止まる。次の瞬間、俺の影にソイツの影が触れた。

 

「ァ゙ッ……が───?!あぁぁあぁ゙ァ゙ァァァぁ゙!!??!!?」

 

 俺の身体に筆舌し難い激痛が走る。魔術回路を無理矢理増やすあの時とほぼ変わらない位の痛みだ。ならば、我慢出来ない程じゃない。喉が張り裂けそうな位に声を出してはいるが、それは生理的な反応ってだけだ。少しでも影から離れれば良い。そうすればこの痛みも無くなる筈だ。

 

「は、ッ………?───────ッ!?!!」

 

「「慎二!!/間桐君!!」」

 

 だが、そう考えたのが命取りだった。動かした身体の真後ろにもう一体の影が現れたのだ。新たに現れた影は帯のような触手をこちらに伸ばし、身体を拘束してきた。影に触れられた時や魔術回路を増やす時なんて比じゃない痛みと触れられた患部の異常な発熱が襲い、今度は声すら出なかった。

 

 それでも尚、影から逃れる為に身を焦がすような熱と痛みの中、無詠唱での強化を試みる。しかし、そんな事は無駄だと言うかのように帯による拘束は強まるばかりであった。

 

 巫山戯るなよ。俺は囚われのお姫様か。はぁ?冗談じゃない!俺はヒロインになるつもりもこのまま呆気なく終わるモブにだって成り下がるつもりは毛頭無ぇんだよ!俺は誰にも消費されねぇ!!

 

 

────俺は何が何でも生き抜いてやる!!

 

 

 俺の決意に呼応するかのように左手の甲に熱が集まるのを感じた。既に全身が影に触られている為、その熱を勘違いしたのかもしれない。だがこの時、確かに俺は予感したのだ。これは()()だ。この事態を解決する為には、俺自身の縁のみを用いてサーヴァントを召喚するしかないのだ、と。

 

 熱と痛みで頭でも狂ったのかと思われるだろう。改めて考えてみてもアホな事を言ってるなとは自分でも思う。だが、この予感を信じろ、と()()()言われた気がしたのだ。

 

 そう思うと不思議な事に、あれだけ苦痛に感じていた筈の痛みがスッと消えた気がした。喉は既に限界に近かったが、それでもまだサーヴァントの召喚の詠唱を口にする力は残っている。これ幸いと俺は言葉を紡ぐ。

 

「───閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)

 

「こんな時に英霊召喚の詠唱?!貴方のサーヴァントは居なくなった筈でしょ?!間桐君、貴方一体何をするつもり?!」

 

 距離の近い遠坂が俺の言葉を聞き取り、驚きの言葉を口にしていたようだが、詠唱に必死になっていた俺には聞こえなかった。

 

「繰り返すつどに五度。ただ満たされる刻を破却する」

 

 手の甲の熱が更に増した気がした。

 

「──告げる。汝の身は我が下に我が命運は汝の剣に。聖杯の寄るべに従い、この意、この理に従うならば応えよ。っ゙……!」

 

 サーヴァントの来る予感を察してか、それとも魔力の高まりを検知してか、影が先の比ではない位に俺の身体を呑み込み始めた。引いた筈の激痛を再び感じるが、詠唱を止めることはしなかった。

 

「誓いを、此処に。我は……っ常世総ての善と成る者、我は、常世総ての悪を……敷く者。ぅぐ……!」

 

「逃げろ!慎二……!!」

 

「近付いたら駄目よ衛宮君!」

 

 視界の端に詠唱召喚の為の魔法陣が足元に展開されていくのと、衛宮がこちらに駆け寄ろうとして遠坂に呼び止められているのが見えた。

 

 詠唱については途切れ途切れとなってしまったが、魔法陣が展開され始めたのを見るに何とか起動しているようだ。ならばと、このまま最後の詠唱に取り掛かる。

 

「汝三大の、言霊を纏う七天、抑止の、っ゙……輪より来たれ、天秤の守り手よ────!!」

 

 詠唱が終わると同時に、魔力がガクッと減る感触がした。それと同時に英霊召喚により巻き上がった魔力の嵐と眩し程に強い光によって俺の周りに纏わり付いていた影が全て散っていった。

 

 何とか俺の身体が影に呑まれる前に詠唱をすることが出来たようだ。安堵から全身から力が抜けた。力が抜けた事で床に激突しそうになったが、その前に何者かによって身体を支えられた事で事なきを得た。

 

 距離的に召喚に成功したサーヴァントだろう。そう思い目線を向けると、そこには驚きの人物が居た。そこに居たのは少年というには少々大人びていて、しかし大人と言うにはどこか幼さを感じさせる青年のような容貌をした、白蛾を連想させる外套を身に纏う男性だった。

 

「っ!?お、前……は────」

 

 あまりに覚えのある出で立ちに、思わず驚きのあまり召喚したサーヴァントの真名を口にしかけた時、口に手を当てられた。彼は人当たりの良さそうな笑顔を浮かべながら、俺にここでは真名を明かすなと口止めしてきたのだ。

 

「慎二、ソイツは一体誰なんだ?ライダー……じゃ、ないよな?」

 

「・・・・。」

 

 そう衛宮に問いかけられるが、黙っている事にした。何より、力の抜けた俺の身体を支える彼の、余計な事は喋るなよと言わんばかりの圧をなんとなく感じたからだ。

 

 こうして、イレギュラーな召喚であるが故にサーヴァントの姿を二人に見られてしまった。ならば、今はこれ以上の情報は与えるべきではないと考えて俺は撹乱用の蟲を放つ。そうして衛宮達の視界から外れた所を見計らって、逃亡を図ったのだった。

 

 

ーーーーーーー

 

 

 衛宮達から逃亡後サーヴァントや使い魔の蟲達に協力してもらい、逃げ込んだのは大橋近くの公園。自宅でも良かったが、あのクソジジィにオベロンの姿を見られる可能性がある為、あえて少し離れた場所を選んだ。そうして安堵の息を漏らしていると、

 

「随分と危ない所だったね、マスター。僕が召喚に応じなかったらどうするつもりだったんだい?」

 

 ニコニコと王子スマイルを浮べた()()()()がこちらをからかうように話してきた。よくよく自分の体勢を見ると、いつの間にか彼にお姫様抱っこされる形になっていた。

 

「ハッ!そん時はそん時だ。……それよりも下ろせ。いくら王子様と言えども男を抱える趣味は流石に無ぇだろ。抱えるならお前のお姫様にでもしておけ」

 

「流石マスター!召喚されたばかりだというのに、もう僕が誰なのか分かるんだ?」

 

「そりゃあ……」

 

 俺はお前の事はゲームでよく知っていたからな。という言葉は飲み込んだ。この世界はゲームなんかじゃないから言っても無駄だと思ったからだ。

 

「ん?」

 

「いや、そんな事はどうでもいいんだよ!とにかく下ろせっての!」

 

 この年になって男に姫抱きされるなんて恥ずかしくてたまらない。そもそも俺はヒロインじゃねぇっての!!そういった思いの元、彼に怒鳴り散らす。

 

「えー?マスターはあの影に呑み込まれかけて、そんな最中僕の召喚をして魔力を消費。更には撹乱用の使い魔の召喚に加えて学校からここまで転移するのにまた魔力を消費した。短期間でこれだけ大量消費しておいて、疲れてないとでも?今、下ろしたとしても立つことなんて出来ないと思うんだけどなー?精々そこの椅子に寄りかかるのが限界なんじゃない?」

 

「ゔ…………」

 

 しかし、持ち前の妖精眼で俺の羞恥心でも読み取ったのだろうか。オベロンはからかうように笑い、怒涛の正論と現状分析で下ろす事を拒否してきた。流石に言い返すことなんて出来なかった。なので不本意ではあるが、大人しくこのままで居る事にした。

 

「……なら、なるべく人目に付かないルートで家に戻るぞ」

 

 しかし、いつまでも姫抱き状態で抱えられるのは先も言ったが本当に不本意なので自宅に戻る事を提案する。

 

「いや、止めといた方が良いね」

 

 だが、その提案はすぐに却下された。

 

「は?何でだ」

 

「僕の勘だけど、恐らくいくら人目を避けても今すぐに戻るのは彼らと遭遇する可能性が高いと思うよ?」

 

「んなワケあるか。アイツらの家とは方向も違うし、何よりここからならルートが違う。遭遇なんてするワ、ケが……ぁれ……?」

 

 オベロンの言い分を否定しようとした時、異常な程の眠気が急に襲ってきた。

 

「あー、ほらやっぱり。随分イレギュラーな事をしたからね。一度休息を取るべきなんだよ、マスターは」

 

「だが……そんなことしてるひまは……」

 

 寝るべきではないと考えているのに、眠気からか上手いこと口が回らずに舌足らずの発音になってしまう。

 

「ほらほら、無理に起きてるのは辛いだろう?大丈夫さ!僕がマスターの安全は保証するからさ!……ね?」

 

「そ、ぃぅ……じゃ、な……」

 

「勿論、マスターの気持ちは十分に理解できるさ。でも今は……ゆっくり寝ていなよ(ライ・ライム・グッドフェロー)

 

「っ!?お前────」

 

 宝具を勝手に使いやがったな。という言葉を発することは出来ず、俺の意識は夢の中に沈んでいったのだった。

 

 意識を失う直前、こちらを見るオベロンの姿が黒くなり、青い瞳が一瞬、鈍く光っていたように見えたのはきっと気の所為なのだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やっと逢えたな。──────」

 





はい、ということで八人目ルートのパートナーサーヴァントは『オベロン』でした!皆さんの予想通りでしたかね?因みに他の候補としては、ギルガメッシュ(消去法)・メドゥーサ(再召喚)・邪ンヌ(作者の忖度)の三人が居ました。
オベロンになった決め手はコメントと作者の趣味ですかねー((
オベロンムーブ無理そ〜だなんて考えてましたが、最終的に二次創作だし良いでしょ!と勝手に開き直って決定しました。ですので、コレは言わんだろとか思っても彼は某きのこにしか扱えないからなといった感じで寛容な心で流してください……

あと、お気に入り七千人超えありがとうございます!!

ところで、このオベロン……一体絆レベルはいくつくらいだと思います?

1/24追記:感想欄の指摘より一部を変更しました。具体的には“転移表現”を無くし、“使い魔とオベロンの協力によって場所を変えた”といった形に変更しました。
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