ようやっと書けた〜って思ったら九千字超え?!書きすぎじゃん?!分けるか?って思ったけど、何処で分けたら良いのか分からなかったのでまとめちゃいました。
※作品の演出上、序盤に少し『弊デア』などのメタ発言がありますので苦手な方は読み飛ばしてください。
暗く、足を踏み外せば落ちてしまいそうなくらいに足元しかぼんやりと光がない空間を何の宛もなくただ歩く。いや、正確には歩いてもなかった気がするが、真意は定かではない。そんな意識が曖昧な中、人なのかどうか認識出来ない程に真っ黒な何かが俺の側に近寄ってきて囁いた。
『──────────』
「っ!!」
「あ、起きたんだね?マスター」
強烈な寒気を感じて俺は飛び起きた。急いで辺りを確認する。そんな俺の様子を見てオベロンは暢気に『起きたんだね?』などと言って来て、少々イラッとしたが心の内に留めておいた。それよりも寝させられていた筈なのに感じた寒気の原因を探るのが先だと思ったからだ。
「気の所為……か?」
辺りを見渡すが、眠らされる前に見た空の色がすっかり夜になっている事といつの間にかベンチに寝させられていた事以外の異常は特に見つけられなかった。
「ん?何が?」
「いや……何でもない。それよりもお前に眠らされたせいでこんな遅い時間になっちまった。さっさと帰るぞ。お前は霊体化してろ」
「何でもないとか霊体化してろって、冷たいなぁマスターは。そんなんだから周りからツンデレだって思われるんだよ?」
「ァ゙?お前に言われたくないんだが?」
ツンデレはお前の代名詞だろうが。
「へぇ……?」
そんな俺の思考を視たのか、オベロンの眼が一瞬細まった。あ、これはマズいと思ったので無理矢理話題を切り替えた。
「ツンデレ云々より、お前に聞いておきたいことがある」
「……何だい?」
露骨な話題反らしだったが、オベロンは乗ってくれるようだ。何か妙に素直だなと思いながら、俺は疑問を口にする。
「お前は本当にあのオベロンなのか?」
「どういう事かな?」
明らかにこちらが何を思っているかは分かっているクセに知らぬふりをされるのは気に食わなかったが、何度もそれをした俺の言えた事じゃないなと考え直し、俺の意見を述べる。
「お前は『夏の夜の夢』の妖精王オベロンか?それとも、
「・・・・。」
オベロンの顔から笑みが消える。が、次の瞬間──
「……フ、ハハハハハッ!良いねぇ、最高だ。それでこそ俺のマスター!」
白からは真反対の黒を基調とした衣装に霊基再臨し、高らかに笑い始めた。そしてそれは、自らがゲームにて登場していたあのオベロン・ヴォーティガーンであるという証明でもあった。
だが、疑問に思う事もあった。何故彼は俺の召喚に応じたのだ?彼はあくまでも異聞帯の終末装置であったのでこの世界に存在している筈が無いし、何より俺とオベロンとでは縁は無い筈だ。縁があるとすれば物語の主人公、藤丸立香の方だろう。
「何?何で俺が召喚されたか分からない?」
「当たり前だろ。お前と俺との間には縁は無い筈だろ。蟲を扱うという点ではありえるかもしれないが、それでも触媒が無い以上、縁の強さは藤丸立香の方が圧倒的にある」
「ハハハ、面白い事言うじゃないかマスター?藤丸立香は
「は……?」
オベロンの発言に俺は自分の耳を疑った。俺が藤丸立香?そんなワケ無いだろ。あの世界には第四の壁がある。いくらオベロンと言えども次元を超えた認知は出来ない筈だ。出来ても俺のユーザーネームを把握するだけで……
「あぁ、それともこう言った方が分かりやすいかな?……ねぇ?■■■■?」
「それは?!」
そんな俺の心情を読み取ってか、オベロンが俺のユーザーネームを口にした。俺は驚きで今まで考えていた筈の推測が全てすっ飛んでしまった。
「お前……まさか、本当に俺のカルデアに居たオベロンなのか?」
「そうだともマスター。
「いやいやいや、ちょっと待て。そんな誤解されるような言い方止めろ。そもそも何で記憶持っているんだ。第四の壁はどうした。壁を超えてくるなよ」
「はぁ~?それはマスターには言われたくないなぁ。ブーメランってヤツじゃない?」
「ぐ……」
確かにブーメランだった。そもそも俺の存在がおかしさに溢れた存在だ。この世界の数多の行く末を知り、自分がキャラクターであると自覚している。人の事言えないとはまさにこの事。まさにそれは……
───何て酷く頭の痛い話だろうか。
そんな想いが浮かび上がり、俺はオベロンから視線を逸らす。そんな俺を見てオベロンはクスクスと面白いモノを見たと言うかのように笑ってきた。
「この話は終わりだ!頭痛が酷くなる。今後については家で話すぞ。霊体化してろとまでは言わねぇが、目立たない格好にはなっとけよ」
「仰せのままに、マスター」
そういうとオベロンは二部六章にてお忍び衣装と言っていた第二臨の姿となり、こちらに手を差し出してきた。明らかに記憶と異なる彼の行動に困惑する。
「……何のつもりだ」
「マスターは起きたばっかりだろう?だから立つのも辛いんじゃないかなーって」
「はぁ?余計なお世話だっつうの。そういうのはお前のティターニアにでもしてろよ」
「・・・・。」
オベロンの顔が真顔になった。その表情を見てハッとする。コイツは厳密には物語の妖精王オベロンじゃない。オベロン・ヴォーティガーンだ。居るのは妖精王の方で奈落の虫じゃないということ。自分から確認しておいてこの体たらくとはとんだお笑い草だ。
「…………悪い。考え無しな発言だった」
素直に謝るとオベロンは何事も無かったかのようにニコニコと笑顔を浮べると、
「良いよ!すぐに謝ってくれたから気にしてないし。それに、マスターに拒絶されたとしても、僕は僕の好きなようにやるだけだし?」
そう言ってこちらの手を掴んで優しく立たせてくれたのだった。
「っ!…………そうかよ、好きにしやがれ」
「ありがとう、マスター」
終末装置が故に全てのモノが彼の嫌悪の対象の筈だと認識している俺にとって、こんな積極的で態度が柔らかいのは少々違和感を感じた。だが、彼は俺の弊デアから来たと明かしていた。つまりあの発言から読み取れる事は、最低でも絆マ(10)かそれに近い値はあるオベロンが喚ばれたということなのだろう。それに違和感を感じたとて俺に不利が働くわけではないし、あまり過剰に気にする必要は無いだろう。
そんな事を考えながらいつものようにぶっきらぼうに吐き捨てると、突然
「っ!!マスター!危ない!!」
オベロンの側に抱き寄せられ、ベンチの近くから大幅に距離を取らされた。何が起きたのか分からず、ベンチの方を見るとそこには
「フン……。随分と勘の良い羽虫が居たものだな」
その様子を見て背筋がゾッと寒くなる感触がした。もし、オベロンが気付かずあのまま今後について考えていれば、俺はあの剣達の餌食になっていたのだ。
こんな芸当が出来る聖杯戦争の参加者で思い当たるのは二人しか居ない。更にベンチの方に目を向けた時に背後から聞こえた声や口調でもはや一人しか思い当たらなかった。嫌な予感を感じながら、俺は声の主の方を向いた。
「なっ……!!?」
そこに居たのはやはり、ギルガメッシュだった。まさかの強敵との急な遭遇に、冷や汗が流れる。
どうする……?ここは知らぬふりをして警戒すべきか?それとも真名看破して興味を引くべきなのか?分からない。だが、ここで選択をミスれば死が見えているのは明らかだ。
「それはこちらのセリフだよ。随分とまぁ、乱暴な王様が居たものだね。挨拶ついでにこちらを殺そうとするなんて暴君以外の何者でもないよ」
そんな事を考えていると、俺を庇うようにオベロンが前に出てギルガメッシュの興味を引いてくれた。
「ほう?我が名乗らずとも王と分かるのか」
「勿論さ!何故なら僕だって王様だからね。同じ王と語られる者同士、分かるものなのさ」
「この我を前にして、不遜にも王を名乗るか。羽虫風情が」
「勿論さって言っただろう?それとも、羽虫の言葉は聞くに値しないと思って耳でも遠くなったのかな?」
「貴様……」
バチバチとレスバしながら視線を交わし合うように誘導するオベロンに、俺は気が気じゃなかった。確かに煽る戦法は英雄王には有効だろうが、それは俺の居ない所でやってくれないか?英雄王が感情のまま暴れてその流れ弾でも飛んできたら俺、死ぬんだが??
「それに、この場に王は君を含め
「は?」
「ほう?では、そこの雑種が王とでも言うのか?」
「流石英雄王!察しが良いねぇ。そうさ、僕のマスターは現代にただ一人の蟲達の王。僕が妖精王、君が英雄王を名乗るのならば、さながら僕のマスターは蟲王って訳さ!」
「はぁァァァァ???!!」
ちょっと待てよ!!何で?!!何で俺を巻き込んだ?!しかも何だよ蟲王って、安直過ぎんだろ。いや、確かにアイツらには王さまだとか言われてるけど、それでもお前らみたいな正真正銘の王の前で王を名乗るつもりは無いんだが?!そもそも俺はサーヴァントにも主人公にも到底及ばない一般マスターなんですが??
「オイテメェ!何馬鹿な事言ってやがんだ!!よりにもよって、アイツの前で!」
そんな困惑を胸に俺はオベロンに掴みかかる。
「アハハッ!良いじゃないか〜マスター。マスターもそろそろ自覚するべきだと思ったからさー。丁度良い機会だと思いなよ?」
しかしオベロンはちっとも反省する様子は見せず、それどころか訳のわからない言い訳を述べて、のらりくらりと躱そうとしてきた。
「自覚って何だよ!!良い機会だなんて思えるワケ無ぇだろうが!!!」
あまりの理不尽さにオベロンに叫び散らした瞬間、視界の端から剣がこちらに向かって飛んでくるのが見えた。俺は咄嗟に後ろに避け、オベロンは霊体化することで直撃から逃れることが出来た。が、あまりにも心臓に悪い。
「この我の前で王を名乗り、あまつさえ我を無視して喧嘩とは……随分とまぁ雑種や羽虫風情が調子に乗ってくれるな」
「いや、俺は名乗ってな───」
「雑種如きが我に意見するか」
「っ……!」
ギルガメッシュが行ったのはただこちらを睨むという行為だけ。だというのにそれだけで俺はまるで石化の魔眼で全ての動きを封じられたかのように全身が硬直する感覚に陥った。しかし、本能的に感じる恐怖からか身体の震えが激しくなってくる。
彼が
「ちょっとちょっと?あまり僕のマスターを睨みつけないでくれる?気絶しちゃったらどうするつもりさ?」
恐怖か緊張からか息が荒くなり始めた時、オベロンがギルガメッシュから庇うように前に出て来てくれた。全てを見抜く紅い瞳から影になるような位置になった為か、心做しか呼吸が楽になった気がした。
「フン……この程度で気絶する雑種なんぞ、この聖杯戦争の参加者に相応しくあるまい。疾く失せるのが英断よ」
「そう言ってもさぁ……こちらが逃げる素振りを見せたら君、殺す気でしょ?」
「当然だ。つまらぬ存在ならば消すのが道理だ」
そう言ってギルガメッシュは再びこちらに目線を向ける。先程とは違い、オベロンが庇ってくれているので身体の硬直や過呼吸は起きていないが、冷や汗は止まらなかった。
「…………ほう?」
少しでも動けば戦闘が始まるかのような緊迫した雰囲気が漂う中、ギルガメッシュがこちらを見て僅かに目を見開いて驚く様子を見せた。
「ハハハハハハッ!そうか。貴様らは
そしてその後、豪快に笑い出すと妙に引っ掛かる言葉を口にした。
「特異点……?」
特異点と聞いて真っ先に思い当たるのは、俺が間桐慎二に成る前にゲーム内で用いられていた用語だ。しかしアレは本来は存在しない過去に対して用いられていたものであって、人に対しては言われてなかった筈だ。
「どうやらこの言葉がどういった意味を持つのか理解しているようだな?雑種」
「っ!!」
悪手だった。ここで反応を示すなんて肯定しているも同然だ。分かっていたつもりだったのに俺は、ギルガメッシュの言葉に小さく、それでいて見過ごせない反応をしてしまった。
「ならば問うが貴様は凡そ、この聖杯戦争の行く末を知っておろう。何故そうも矛盾している」
「そ、れは……」
反応した所を付け込まれ、俺はギルガメッシュに問われた質問に答えられないでいた。
何で俺がこの先を知っていると分かるんだ?それに、コレに俺はどう答えるのが正解だ?どうすれば俺は生き残れる?正直に変に足掻かない方が俺が生き残れるからというか?けどそれなら、何故サーヴァントを召喚したかの説明にならない。だったら、あのクソジジィを欺く為だと言うか?それならば別にルートを知っている説明はしなくても良いよな?でも何故だって問われたら理由を話さないといけなくなるし……
「マス───」
沢山の疑問が頭の中を過ぎり中々答えられずに居た俺を、ありがたい事にオベロンが助ける為に声を掛けてくれようとしたが、俺はそれを遮る。そして俺は、俺の抱く思いをそのまま正直に話すことにした。下手に間桐慎二を取り繕うのは彼相手には悪手だと判断したからだ。
「生きる為だ」
故にこの場で俺は間桐慎二としてではなく、先を知る者、
「ほう?」
俺の雰囲気が変わったのを悟ってか、彼の俺を見る目が有象無象を見る目ではなく、こちらを裁定する目へと変わった。
「確かに
「ならば貴様も我と同じ千里眼持ちか」
「いいや、違う。お前のような千里眼を持っているワケじゃない」
「何だと?」
自身の読みが外れた事に苛立ったのか彼の放つ雰囲気がピリついたものとなった。やはり一度や二度で慣れるものではなく、一歩退きそうになるが、何とか踏み留まり言葉を続ける。
「俺が知っているのは三つの結末だけ。知っていたのは俺の出生が特殊だったからだ。ここについては語るつもりは無い」
「……我を前にして黙秘を選ぶか。まぁ、よい。それはそうと千里眼を持たずしてそこまで知っているのは相当だ。だというのに何故貴様はそうも矛盾しているのだ」
「それは……俺が
本当に生き残る事が目的ならば間桐慎二そのままを演じれば良かった。魔術に関わらざるを得なかったとしても磨かなければ、あのクソジジィに啖呵を切らなければ凡そは変わらなかった筈だ。
「そして俺は中途半端な人間だ。現実を嘗めていた。少し変化を与えただけなら問題ないと考えた」
そう。俺は何もかもが中途半端だったのだ。多少の変化を及ぼしても、大元の出来事さえ辿れば知っている道筋に進んでしまうのだと勘違いして、中途半端に足掻くのを止めた。
「けれど結局は俺の見た未来なんて関係ないと切り捨て、俺が知り得ない展開となったあの場で何が何でも生きてやると足掻いた。その結果が今の俺だ」
つまりは問題を先送りにしてしまう無意識の悪癖が俺の今までの行動の矛盾を生み出してしまっていたのだ。
「貴様の言い分は把握した。では貴様はこれからどうするつもりだ。お前の見たという結末の為、つまらぬ道化にでも堕ちる気か?」
「いいや違う。そもそも俺は前提を間違えていた」
「前提だと?」
「あぁそうだ。そもそも俺が知っている結末の俺は魔術回路を持っていないし、そこの妖精王も召喚していない。他にも細かな差異があるのにも関わらず、
元々俺は計画なんて立ててもその通りに実行出来る奴じゃない。ざっくりとした方針を決めるだけで、ずっと行き当たりばったりだった。この発言だって正直には言っているが、つまりは考えなしの発言だ。
「長くなったが、つまり俺は今後
そんな考えなしの俺がかの王を前にしてありのまま、偽り無く宣言する俺の今後の生き方。あの教室で衛宮達と対立する時に決めた原作を気にしないというのがここにて確定した。
「──────フハッ、ハハハハハハハハハッ!」
「っ?!」
暫くの沈黙の後、こちらを裁定する目で見つめていた筈のギルガメッシュが急に腹を抱えて笑い出した。まさかの反応に少し身体がビクリと反応してしまった。
「雑種の分際で此度の聖杯戦争を好き勝手にやるとは。ハハハッ!随分と大きく出たものよ。だがその心意気や良し。貴様のその宣言においてこの場では見逃してやろう。勿論、
「え……?」
まさかの反応に俺はポカンとしてしまった。チラリとオベロンの方を見ると、ほんの少しではあるが彼も俺と同じく驚いているようだった。
「……君、もしかしてキャスターだったりしない?」
それは俺も思った。凄い上機嫌なんだもん。SN時空では環境や受肉した影響で結構不機嫌になってませんでしたっけ?
「何を言っておるか羽虫め。
「あ、あぁ……そうなんだ」
いや、キャスターの貴方居ましたよね?というかクラス適正は確かほぼ全部にありましたよね?という疑問は湧いてきたが、言えばまた面倒臭い事になりそうだったので心の内に留めておいた。オベロンも同じ考えだったのか、深く言及することは避ける反応をしていた。
「雑種。名は何と言う」
「え?」
いきなりの質問に再びポカンとしてしまう。何故今聞くんだ?ギルガメッシュにとって俺は有象無象の雑種だろう?
「疾く答えよ!この我が名を聞いているのだ。光栄に思え」
そんな疑問が頭に過るが唯我独尊を地で行き、気の短い彼の機嫌をここで損ねる訳にはいかないなと思い素直に答える事にした。なんか……サーヴァントにこうやって名前を聞かれるのはデジャヴを感じるな。
「……慎二。間桐慎二だ」
「マトウ……。そうか。貴様、あの
「っ!桜に何かしたのか!」
俺があくまでも知っているのは彼が桜に対して『今の内に死んでおけ』という善意からの警告をしていたという情報だけなので、あの口振りはそれ以外もした可能性があり、つい聞いてしまった。
「早とちりが過ぎるわ愚か者。だが、警告はしてやったぞ」
「警告?何を?」
俺はその言葉を聞いてアレの事かと理解したが事情を知らぬオベロンが疑問を口にした。
「なに、そんな深く構えるものではない。ただ、『今のうちに死んでおけよ娘。馴染んでしまえば死ぬ事も出来なくなるぞ?』と言ったまでよ」
「めちゃくちゃ物騒な事じゃないか!」
「だが、シンジは知って居ったようだが?」
差も当たり前かのように俺の反応を把握したギルガメッシュがそう言うと、オベロンが落ち着き無くこちらに振り向いてきた。
「え?……ちょっとマスター?後で話聞かせてくれない?」
やっば……。なんかちょっと怒ってやがるし。いや、別に知っていてもおかしくはないだろ。というのを言葉に出さずにあえて妖精眼で見させる形にして返答はしなかった。だが、オベロンはそれでは満足行かないらしく、
「マ・ス・ター?」
ニッコリと、しかし影掛かった顔で俺を呼ぶ。
「…………分かったっての。後でいくらでも話してやるよ」
流石に観念して後で話という約束を取り付けた。すると今度はギルガメッシュの方から声を掛けられた。
「シンジよ。貴様、あの小娘をどうするつもりだ」
「はぁ?どうするも何も……アイツの心臓部には俺が殺したくてたまらないクソジジィが寄生してやがんだ。まずはクソジジィをぶっ殺してからだ。それまでは俺は
「ほう?ならば今度は貴様に警告してやろう。今後のあの小娘に対する言葉には
「は?それはどういう……」
「これ以上は言わぬ。後は貴様自身で考えろ。ではな」
「あ!オイ、ちょっと!!」
ギルガメッシュの言う警告の意味が分からずに聞き返そうとするが、彼は自分の言いたいことだけ言うとこちらに背を向け、何処かへ歩きだしてしまったのだった。
「・・・・・。な、何とか生き残れた……」
彼の姿が見えなくなった頃、張り詰めていた緊張が一気に解けたのか身体に上手いこと力が入らなくなってしまい倒れ込みそうになった。しかし、そこはオベロンが気を利かせてくれたことで彼の肩を借りて踏ん張る事が出来た。
「おっと……無茶し過ぎだよ、マスター。下手すれば殺される所だったんだよ?」
「分かってる。だけどあの場では下手に道化を演じると死ぬと思ったんだよ」
「だとしてもあの宣言は君にとって、
「死ぬよりはよっぽどマシだ。そもそも俺は魔術回路を持ち、一人の魔術師として聖杯戦争に参加している以上はもう引き返せない所まで来ている。俺の悪癖を今潰しただけだ」
「それでも!!言わないという選択肢は取れた筈だ!」
オベロンがらしくもなく声を荒げた。何故彼がここまでするのかが分からなくて俺はただただ混乱するだけだった。
「オ、オベロン……?お前が気にする必要は欠片も無───」
「きみって奴は本当に……!!っ、本当に……」
何故いつも自分で自分の首を絞めたがるんだ
言葉にも声にもならないそれは空気となって消えていくだけったが、それがオベロンなりの精一杯の配慮だったのだろう。口にしてしまえば歪んでしまう、という難儀な性質を抱える彼。本当に、俺等は似た者同士なんだな、と誠に勝手ながら彼の言葉にするのを必死に堪える様子を見てそう感じるとても濃い一日だった。
分岐点超えてから漸く主人公の行動指針(?)が決まりました……。流石に遅すぎましたかね?あまり決まってないが故のアドリブの弱さや急な事態にアタフタするという感じで書いてたんですけれども、これからはまぁ慎二君の想定外の事態が発生しても矛盾はそれ程発生しないと思います。多分……。
ギルガメッシュの発言や行動云々はこれで大丈夫そうですかね?あと、オベロン。正直、作者の脳内で断片的に思い浮かんだのをツギハギでまとめただけなんで、かなりキャラ崩壊とか起きてるんだろうな……と不安になりながら書いてます。頭の良い人の発言って考えるの難しいですね…。作者の賢さ以上のキャラは書けないってのは本当なんだなと心の底から実感しました。
でも一番の問題は言峰綺礼なんだよなぁ……。キャラとしては好きなんですけれども、一度も作者の脳内に出て来ないんでどう登場させてどう慎二君と接触させるか未だに困ってます。自分で協会に駆け込むルートを潰しちゃいましたし(自業自得)。けどまぁ、必要に駆られたらいつかは思い付くでしょう。きっと。
5/5:拙い色塗りもろくに出来てないイラストですが、本編挿絵を描いてみました↓
【挿絵表示】