蟲使いの間桐君   作:寝仔猫

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サブタイトルが思いつかないぜ……
あんまり長いタイトルは付けたくないから何回も変更してこれとはセンスが無いなぁ……。


令呪一画

 

「なっ!?お前は……!」

 

「アサシン?!」

 

 俺は目の前のサーヴァントの存在に絶句させられた。受肉したバーサーカーの召喚は元より読んでいたが、まさか真アサシンまでもがこの場で召喚されるとは思っていなかったからだ。だが、アサシンはこちらの事情などはお構いなく黒塗りのナイフを投げつけて攻撃の意思を見せてくる。

 

「っ!щит()!!」

 

 寸の所で盾を展開し、直撃を避ける。その後すぐにイリヤが自身の髪の毛を使って網の目のような罠を展開してくれた事で、闇夜に紛れるように森を駆け回っていたアサシンはいとも簡単に引っ掛かった。しかしイリヤの行動はこれでは終わらず、先程張り巡らせた罠と同じ要領で今度はその形状を追尾する鳥や剣に変え、アサシンを狙い撃ちしていく。

 

「っ……」

 

「士郎。イリヤスフィールを連れてバーサーカーから逃げろ。アサシンは俺が引き付ける」

 

 しかし、それでも完全に距離を引き離せる訳ではないので、仕方無くここは原作と同じく俺がアサシンを引き付け、士郎にはイリヤを連れて逃げてもらう事にする。その為にイリヤを降ろし、士郎の元へと行かせる。

 

「そんな!慎二一人でアサシンの相手をするなんて無茶だ!俺が相手する。だからイリヤを連れて───」

 

「馬鹿野郎。俺にゃ、テメェと違ってサーヴァントが居る。俺一人じゃねぇんだよ」

 

 受肉しているとは言え、原作と同じくアサシンが追ってきたという事は恐らく、士郎がバーサーカーと対峙するのは避けられないシナリオなのだろう。ならば、ここは原作通りに逃げてもらう方が全員の生存率が上がる筈だ。

 

「だから早く行け!!」

 

「っ!絶対に無理すんなよ……!」

 

「ハッ!テメェに言われる筋合いは無ぇよ」

 

 そう言って士郎達が再び森の中に逃げ込んだのを確認した後に、俺はアサシンと対峙する姿勢を取る。

 

「イリヤスフィールの元には行かせねぇからな。行きたけりゃ、この俺を突破してからにしやがれ」

 

 好戦的な笑みを浮かべながら、俺は今出せる全力の魔力で使い魔を複数召喚する。

 

「勘違いしているようだが、私の目的は白き聖杯ではない」

 

「なに?」

 

 どういう事だ?イリヤじゃないなら一体、何が目的なんだ?俺達を二手に分散させる事か?

 

「私の目的は貴様だ、マトウシンジ」

 

 黒塗りのナイフに付いた土を拭いながら、アサシンは予想外の目的を述べた。

 

「っ!?」

 

 まさかの回答に俺は唖然とさせられた。だが、よくよく考えてみるとそうか、とも思う。何故ならばあの時、桜が呼んだのは士郎ではなく俺だったからだ。たまたま聞こえたのが俺だけだったからでは?と言われればそれまでだが、それにしては桜は俺に依存している様子が多々見られた。その辺りを考慮すると士郎がバーサーカーと対峙する事が変えられないのと同じで、こうなるのは必然だったのかもしれない。

 

「ハハッ……、桜も躍起になってきやがったか」

 

 わざわざバーサーカーだけでなく暗躍に向いているアサシンも受肉させるとは。黒聖杯として覚醒したからか元からそういった感情が強かったのかは知らないが、これだけでも俺や士郎に対する執着がどれほどなのか分かるってもんだ。

 

「良いぜ。相手してやんよ。俺は大人しく従う質じゃないんでね」

 

「主殿には生け捕りであれば怪我の有無は問わぬと言われている」

 

「益々本気(マジ)じゃねぇかよ。高々一人の兄程度にアンタもご苦労なこって」

 

「そう思うのならば今すぐにでも降伏してもらいたいものだがな」

 

 アサシンが投擲用のナイフを構える。

 

「相手してやるっつったろ?降伏なんざ、お断りだね。──来い!ノース、ベル!!」

 

『はーい!』『お呼びか?主』

 

 それに対抗するように俺も錬金術にて生成した投擲薬や近距離用ナイフ等の武器、使い魔を側に侍らせ、同じく構える。一触触発の雰囲気が流れ始めたその時、

 

「『フェアリーダスト』!!それ以上マスターに近付かないでくれるかなぁ?」

 

「ルーラー!」

 

 オベロンがアサシンに不意打ちで攻撃を放ったのだった。だが、流石に気配に敏感なアサシンなだけあって、オベロンの不意打ちの攻撃は服の裾辺りを僅かに掠っただけであり、直接的なダメージには至っていなかった。

 

「貴様……、八人目のサーヴァントか」

 

 先程よりも大きく距離を離したアサシンがそう言い放つ。

 

「あぁ、そうさ。すぐにお別れになるだろうけれど、一応言っておくよ。サーヴァント、ルーラー。以後よろしくね?」

 

「エクストラクラスを名乗るとは……随分と舐めた真似を取るではないか……。そちらがその気ならばこちらもそれ相応の態度を取らせてもらおう」

 

 半分正解で半分不正解といった所か。確かにエクストラクラスでありアサシンを舐めていて、オベロンの方は今後ともよろしくするつもりが無いで居るのは間違いではない。ただ、彼は決してルーラーなどではない。彼の本当のクラスはプリテンダー、役を羽織る者なのだ。

 

 そんな例外中の例外である事なんて知る由もなく、アサシンは闇夜の森の中に溶け込み、こちらを攻撃する機会を伺っていた。

 

「さて、マスター。再臨の許可を貰えるかな?」

 

 舞うようにクルリと回転し、オベロンは再臨の許可を求めて来た。

 

「別にお前は許可が無くても出来……あぁ、()()か」

 

「そういう事。この手の暗殺者は下手に泳がす方が面倒になる。ならばちゃちゃっと殺っちゃおうって訳さ。令呪のブーストが掛かればより有利を取れるだろう?」

 

「あぁ、そうだな。俺も大人しく従うつもりは無ぇし、神父の元にも向かわないと行けねぇしな」

 

 俺は左手の甲にある令呪に魔力を流す。俺の魔力に呼応して、令呪が赤く、光を放ち始める。

 

「令呪を以って命じる。()()()()。真の姿を現し、敵を殲滅せよ」

 

「お望みとあらば」

 

 眩しいと思うくらいの光を放ち、令呪が一画消費された。そして令呪による命令を受けたオベロンはその身を一度、ドロリと泥のように融解させる。そうして次に現れたのは終末装置でもあり、奈落の虫、ヴォーティガーンとしての姿。

 

「マスター、何でも良い。使い魔を貸してくれ」

 

「んなもん、気にせずいくらでも持っていけ」

 

 何とも律儀な事だなと思いながら、俺はオベロンの元に使い魔達を向かわす。

 

「ありがとう、マスター。さぁ、蟲ども。その身を以って敵を蹴散らせ!!『夢のおわり』」

 

 向かわせた使い魔達にオベロンはスキルでバフを掛け、森の中に溶け込んだアサシンに向け一斉に放つ。

 

『いくヨ!』『キラキラ〜』『ソレ〜!』『にげンなー!』

 

 指示を受けた蟲達は弾丸のように一直線に標的に向かった。対するアサシンは持ち前の素早さでこれを華麗に避けながらも、こちらにナイフを投擲するなどして反撃を試みていた。だが、オベロンも竜の爪や木製の槍などで弾き返すなどして、状況は拮抗しているようであった。

 

「害虫のようにブンブンと飛び回りやがって……」

 

 闇夜に紛れ、木々を飛び移りながら攻撃するアサシンに対し、オベロンはそう言うと蟷螂の前脚を模した黒い大鎌を持ち出すと、横一閃に鎌を宙で奮った。その鎌の軌道を追うように広範囲の木々が真っ二つに切断され、更には暴風の如き風が吹き荒れ、切断された木々やその他破片、砂などが吹き飛んでいくという惨状が出来上がる。

 

「は??????」

 

 ちょっと待て。何だその威力。お前、ゲームではバリバリ近距離用でその鎌使ってたじゃねぇか。何で横一閃に奮っただけで剣からビームを放つセイバーみたく木々が真っ二つになって暴風が吹き荒れるんだ?令呪のブーストにしても程があるだろうが。

 

 そんな俺の困惑を余所に、アサシンは吹き荒れる暴風の中、風避けの加護によって自分の庭と言わんばかりに身軽に動き回っていた。だが、遮蔽物が無くなった空中ではそれは悪手だった。

 

「……そこか」

 

 その様子を見てオベロンはポツリと呟くと、瞬間移動したかのようなスピードでアサシンの元へと跳ぶ。

 

「漸く捕まえたぞ」

 

「っ!?」

 

 そして空中でアサシンの顔を掴むと、勢いよく地面へ叩きつける。そこから更に二本の槍を出現させると、それらをアサシンの両脚に向けて放ち、地面に貼り付けにした。

 

「グぅ゙ッ……!!っ、宝具────」

 

 貼り付けにされたアサシンは最後の抵抗と言わんばかりに宝具を発動しようとするが、

 

「させるかよ」

 

「ガハッ……!!?!?」

 

 それよりも早くにオベロンが手をクイッと動かす。すると、地面から突き出した五本の黒い槍にアサシンは全身を貫かれる。これにより、血を吐き宝具の発動を中断させられていた。更に追い打ちを掛けるようにオベロンは落下の勢いを利用して、蜂の毒針を模したレイピアを頭部に突き刺した。バキンッと、罅割れた仮面がバラバラに砕け散った。

 

 随分と殺意が高いなとは思ったが、アサシンの宝具『妄想心音(ザバーニーヤ)』は呪術的要素を含んだ、右腕で触れるだけで触れられた対象の心臓を潰す事の出来る宝具だ。触れるという条件はあるが、触れられると防ぐのは困難である為にこういった対応になるのは仕方のない事だったのだろう。

 

 オーバーキルにも近い攻撃を受けたアサシンは、段々と身体が光の粒となり、今度こそ本当に闇夜の森の中に溶け込んで行ったのだった。

 

「さて、マスター。邪魔者はこれで消えた訳だけれども、今後はどうするんだい?」

 

 オベロンはそれを見届けた後、再臨の段階を一つ戻して今後の予定を聞いてきた。

 

「そうだな……、ひとまずは士郎と合流した後で、神父の元へ向かう。記憶を参考にするならば、桜がアイツの元へと向かっている筈だ」

 

「……ん?マスター、いつから君は彼の事を士郎、だなんて親しく呼ぶようになったんだい?」

 

「お前と別れた後だな。アイツ、ようやっと覚悟したみたいだったからな、俺も誠意を示す意味合いで呼んでやってんだよ。それがどうした?」

 

「ふーん……?いや?何でも無いさ」

 

 それにしては妙に含みのある笑顔を浮かべ、オベロンは俺を抱え上げた。

 

「ちょ、またこの格好(姫抱き)かよ!!行きと同じ格好で十分だっつうの!」

 

「ハハハッ!()だよ。また追っ手が来ないとは限らないだろう?」

 

 俺はこの格好が心底嫌でバタバタと暴れるのだが、オベロンはそんな俺の事なんて気にしないとばかりに笑いながら断ると、士郎が居るであろう方向へと跳んで行ったのだった。

 

 

ーーーーーーーー

 

 

「─────────お前が守れ」

 

「っ!!」

 

 俺達が現場に到着した時には、どうやら士郎がバーサーカーを倒したタイミングだったようで、バーサーカーは消える刹那で理性を取り戻して士郎に最後の言葉を残していた。

 

「シロウ……!」

 

「────大丈夫。俺は平気だ、イリヤ」

 

「……アーチャーの腕を使ったんだな、士郎」

 

「っ慎二!!無事だったのか!」

 

 出来ればアーチャーの腕を使用する所を見てみたかったのだが、仕方ない。ぶっつけ本番で治療薬を開発するしかないか。そんな思いの元、俺は抱き合っている士郎達に声を掛けた。

 

 士郎はこちらを振り向くと、イリヤに向けている笑顔と同じくらいか、それを上回る明るい顔をこちらに向けて来た。宛ら、犬が全力で尻尾を振っている様子と言えば分かりやすいだろうか。

 

「当たり前だ。俺にはサーヴァントが居るって言ったし、アサシン何かに遅れを取るような未熟者でもないんでね」

 

「それでも怪我をするだなんて事になってなくて良かった」

 

 そう言う士郎に、本当にこのお人好しは何処までも他人を優先的に心配しやがって……。と、僅かに嫌悪感を抱いた。だが、これはもう一度死なねぇと変えられない奴の性分なのだと諦める事で気持ちを無理矢理切り替えた。

 

「ここに居たか、マトウシンジ。大人しくサクラの元へと来てもらおうか」

 

「セイバー……!」

 

 バーサーカーを倒し、合流もした事でホッと一息をつく間もなく森の中からセイバーが姿を現し、俺に桜の元へと同行するように命令してきた。

 

「ハッ!テメェもアサシンと同じ口か。ならお断りだっつうの。そもそもあの時に拒絶してんだから、大人しく従うワケねぇだろ」

 

 だがしかし、俺は素直に従うつもりは無く、真正面からアサシンと同じく従わないと意思表示をした。傍に控えているオベロンも、セイバーと対峙する気満々なのか警戒態勢を取る。

 

「ならば力ずくにでも貴様を連れて行こう」

 

「やめろセイバー!!」

 

 やはり桜が死んでいても直すという方針を持っている為か、暴力的な方向で俺を連れて行くのはアサシンと変わらないらしい。黒化する前の騎士道は欠片も無くなっているようだ。剣の切っ先を向け宣言するセイバーに士郎は無謀にも止めに入ろうとしていた。

 

「・・・・。」

 

 そんな時、何かを感じ取ったのかセイバーがピクリと反応を示した。

 

「貴様は運が良い。命拾いしたな。サクラが私を呼んでいる」

 

「待っ……!」

 

「駄目よシロウ!」

 

 そして、桜が自分を呼んでいるのだと言ってこちらに背を向けて姿を現した時と同じように森の中に消えて行ったのだった。彼女の後を追って士郎が走り出そうとしていたが、イリヤが彼の腕を掴んだ事によってそれは阻止されていた。

 

「…………なぁ、慎二」

 

「何だ」

 

 暫く沈黙状態が続いたが、そんな空気をいの一番に断ち切ったのは士郎だった。

 

「アサシンにも同じ理由で狙われたのか?」

 

「まぁ、そうだな。バーサーカーはどうだったのかは知らねぇが、桜はどうしても俺を連れて行きたいらしい」

 

 それを聞いた士郎の顔に皺が寄り始めた。どうせこのお人好しの事だ。桜の事だけじゃなく俺も助けようかと考えているのだろう。そう思い当たる自分も、分かるくらいには長くなってしまった付き合いにも辟易して、コイツの顔に思いっ切り八つ当たりのデコピンを食らわした。

 

「ぁでっ?!何すんだよ慎二!」

 

「テメェ、どうせ碌でもねぇ事を考えてただろ。俺も守らなきゃとかそういう碌でもねぇヤツ」

 

「ぅ゙……」

 

 図星かよ。どれだけお人好しなんだコイツは。俺は別に一人でも戦える程度には魔術に精通してるし、なんならサーヴァントが傍に居るんだぞ?何故そういう考えになるんだ。理解に苦しむわ。

 

「はぁ……。まぁその事はもう良い。思うのは好きにしやがれ。俺も好きにしてやるからな」

 

「慎二……」

 

「それよりも、だ。当初の目的だったソイツの救出は達成したんだ。お前はソイツと一緒にとっとと家に帰れ」

 

「慎二は?」

 

「俺はまだやる事がある。それが終わればもしかしたらテメェの所にお邪魔するかもな」

 

 じゃあな、と言って目的の場所に向かおうとした時、袖を引かれた。袖を引いた犯人はイリヤだった。

 

「何の真似だ、イリヤスフィール」

 

「イリヤで良いわ」

 

「イリヤスフィ───」

 

「イリヤ」

 

 何としてでもイリヤと呼ばせたい彼女の頑固さに、俺は溜め息をつきそうになった。仕方ない。不本意ではあるが、ここではイリヤと呼ぼう。

 

「…………もう一度言うぞ。何の真似だ、イリヤ」

 

「貴方は、一体()()()()知っているの」

 

 随分と曖昧な質問だな。何処までって、主語を語ってくれねぇと何をどう答えるべきか何も分からないんだが?取り敢えずは惚けるか。

 

「さて、一体何の事やら。主語を明確にしろよ」

 

「サクラが一度だけ漏らしたわ。貴方はこの聖杯戦争の詳細を知っているかのような行動を取る事があったって。本当なの?」

 

「んなまさかっ!そんな未来視が出来ればそもそも桜を聖杯化させる事も無い筈だろう?これ以上に面倒な事は無いんだからな。それに、俺は情報掌握に長けてるんだ。戦況をいち早く把握して先回りする事なんざ簡単に出来るっつうの」

 

 真実も嘘も混ぜ込ぜに俺は語る。明言しないのはこれ以上の深入りをさせない為だ。まぁ、()()()()()()()()()()があったのならば語る、だなんて道もあったかもな。

 

「話はこれで終いだ。俺は用事を済ませる。気ぃつけて帰れよ」

 

「待って!まだ話は終わってない……!」

 

「俺にゃ、無いね」

 

 追ってくるイリヤを士郎の元へ突き返し、俺はオベロンと共にある場所へと向かった。向かった場所は冬木教会。そして目的は、

 

「よう、神父。まだ生きてるか?」

 

 言峰綺礼に一度断られたランサーのマスター権譲渡の話をする為だ。





やっぱり戦闘描写難しいッスわ!!ってヤケクソ気味に書いてる……。拮抗している様子で書きたいけど、どうにも難しくって何かこう、片方が圧倒的な力で捻じ伏せる、というか殺意高め的な感じになっちゃうのさ。戦闘はまだもう一回か二回あるのだからもっと精進せねば…。脳内イメージは出来るのになぁ、もどかしい…。
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