蟲使いの間桐君   作:寝仔猫

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別の所で書いてた下書きが丸々消えた……
なので泣く泣くストックを削りますん…。(今は記憶を辿って六割は復元して、残りは新しく書いてます)


分からぬは本人のみ

 

「よう、神父。まだ生きてるか?」

 

 教会の戸を開き、俺は中に居るであろう人物へ呼び掛ける。呼び掛けられた言峰はと言うと、聞こえなかったのかそれとも気絶しているのか、こちらに反応を返して来なかった。

 

「おーい、エセ神父?聞こえてんのか?」

 

 流石に死んだか?と思い血溜まりの中で顔を伏せて倒れている神父の元へ近付く。呼吸の有無を確認しようとして手を伸ばした時、

 

「っ!?」

 

 ガシッと腕が折れそうになるくらいに強く掴まれた。

 

「ぃ゙……っ!!」

 

 ちょ、マジで腕が折れそう。痛すぎる。何でこんな元気なんだ。気絶してたんじゃねぇのか?意味が分からない。振りほどけやしねぇし。オベロン、ちょっと助けてくれ。

 

「マスター!!」

 

 そんな俺の思いを読み取ってか、教会敷地内では霊体化するように命じていた筈のオベロンが姿を現して言峰を蹴り飛ばした。

 

「カハッ……!?!」

 

 蹴り飛ばされた言峰は相当な勢いで蹴られたのか、祭壇に激突してその祭壇は元の形が分からなくなるくらいにバラバラに砕け散った。

 

 てか、流石に乱暴過ぎないか?お前、一応妖精王の役を被ってるよな?あまりにも乱暴な行動に俺はそんな疑問を抱かざるを得なかった。

 

「っ゙…………、随分と、乱暴な扱いを、っしてくれるな」

 

 そんな最中、砕け散った祭壇の瓦礫の中から、言峰は心臓部を押さえてフラつきながら上半身を起き上がらせ、オベロンの行動の事を言ってきた。

 

「あ、悪───」

 

「マスターは謝らなくて良いよ。コイツ、気付いてたクセに、マスターの腕を強く掴む為にワザと気絶したフリをしていたんだからね」

 

 これは流石にオベロンの行動を制止きれなかった自分に非があると考えて謝罪を述べようとした時、オベロンが俺の言葉を遮って、実は言峰は気絶したフリをしていたのだと教えてくれた。

 

 はぁ?フリだと?道理で折れそうなくらいに握って来たのかよ。んで、人が苦痛に歪む顔を愉しむつもりだったっつう訳か。本当に性格が歪んでやがるな。自分が命の危機に晒されていても他人の不幸を見たいのかよ。

 

「……なんて質が悪ぃ奴だ」

 

「フ……」

 

 思わずポツリと漏れた独り言を聞き取ったのか、言峰は小さく嗤った。口から血吐いてるクセに随分と元気だな?だがまぁ、このまま交渉に移るのならば、これは好都合か。

 

「あの様子じゃ、だいぶ血を吐いてたようだが……元気そうじゃねぇか」

 

「そう思うのならば、勝手に思い給え。少なくとも心臓を潰され、残り少ない命だ」

 

「何だよ、随分と大人しいじゃねぇか。まぁ、下手に抵抗されるよりか良いか」

 

 動けない言峰に代わって、俺は彼の元へと近付く。

 

「何を、するつもりだ」

 

「アンタの持つ令呪を全て貰う」

 

「それは……無理な話だな。令呪の譲渡は出来ん」

 

「おいおい、馬鹿な事を言うなよ。あの時言っただろ?俺は前回の聖杯戦争の事も、参加者の生い立ちも全て知っていると。だから、こういう事も出来る」

 

 俺は言峰の令呪が宿る腕を掴んで()()()()を口にする。

 

“ 神は御霊なり。故に神を崇める者は、魂と真理をもって拝むべし──”

 

「っ!?貴様、何故それを────」

 

 ギルガメッシュから聞いていたとは言えども、秘密裏に伝えられていた移譲の為の方法までもが知られているとは思わなかったのだろう。言峰の目が驚きに見開かれた。

 

 だが、そんな驚く言峰を無視して、言峰と俺を中心として青白い光を放つ魔法陣が展開される。そして、言峰の腕に刻まれていた筈の管理者の令呪が俺の左腕に刻まれたのだった。その事を確認し、すぐさま俺は辺りに叫び散らす。

 

「ランサー!!そこに居るんだろ!契約だ!」

 

「応よ!」

 

 俺の声に答えてランサーが返事をしながら霊体化を解き、姿を現した。姿を確認した俺は詠唱を口にする。

 

「────告げる。汝の身は我が下に。我が命運は汝の剣に。聖杯の寄るべに従い、この意、この理に従うのならば我に従え!ならばこの命運、汝が剣に預けよう……!!」

 

 腕に宿る令呪が反応し、オベロンを召喚した時と同じ様に熱を帯び始めた。

 

「ランサーの名に懸け誓いを受ける。今からお前が俺のマスターだ。マトウシンジ!!」

 

 ここに契約は成された。監督役を担う神父から管理者の令呪を継承し、その令呪を以って二人のサーヴァントを従える異端のマスターに間桐慎二()は成ったのだ。

 

「…………よし、これで契約成立だな。……言峰」

 

「何だ」

 

「お前、まだ生きたいか?」

 

「なに……?」

 

 言峰がこちらの正気を伺うかのように見てきた。

 

「お前の目的は全て知っている。故に問う。このまま大人しく死ぬ気か?羽化しかけているアレがこれからどうなるのか。見届けたくは無いか?」

 

「おいおい正気か?!」

 

 俺の行動の真意を察してか、言峰のみならずランサーやオベロンまでもが正気か?!とこちらに顔を向けた。ランサーに至っては声に出している。

 

「勿論正気さ。それに、あくまでも見届けさせるだけで、直接妨害するような真似はさせねぇよ」

 

「だからってこんな危険思想を持つ人物をマスターはみすみす見逃すって訳?令呪を手に入れたから?」

 

「まさか。見逃しはしねぇよ。ちゃんと監視も付ける」

 

 そう言って俺は言峰の元に近付き、とある使い魔を召喚する。

 

「何をするつもりだ」

 

「ちょっと特殊な延命治療を……な!」

 

 俺は召喚した使い魔を手に取り、言峰の心臓部に腕ごと突き入れた。

 

「な゙っ……!??」

 

 言峰の困惑を余所に突き入れた腕を引き抜くと、普通であれば穴が空いているであろうそこには、何も無かったかのように無傷の肌が表れている。

 

「オイ坊主、一体何をしたんだ?」

 

「クソジジィが桜に行っていたヤツの劣化版だ。俺の蟲で言峰の心臓を補ったんだよ。ただし、完璧じゃねぇから保っても五日が限界だ」

 

「五日もだぁ?坊主、お前相当にヤバい事してる自覚あるのか?」

 

「は?ちゃんとあるが?」

 

 あくまでもこれは言峰が泥でこれまで生き延びていたから出来た訳で、生身の人間じゃ出来ない。と説明するのだが、何故か盛大な溜め息をつかれてしまった。何なら言峰でさえ、ヤバい奴を見る瞳である。誠に遺憾である。自覚してるんだから良いだろうが。

 

「……まぁ、良いよ。マスターはそういう奴だったもんね。それで?これは延命治療をしただけ?」

 

「いや?それだけじゃなくて、コレは枷でもあるぞ」

 

「枷だと?見たままでは私を自由にさせたように見えるが?」

 

「アンタは身を以って理解するだろうさ。こういう事だ」

 

 俺はアサシンの宝具の様に空中で心臓を潰すかのような仕草をして、言峰の心臓を担う蟲に指示を出す。

 

「っ!??ガハッ……!!」

 

 すると言峰は心臓部を押さえながら口から血を吐き出した。それを見て誰もが驚きに目を見開いた。

 

「……と、言うワケで言峰綺礼。今を以ってお前の生殺与奪権は俺が握った。少しでも俺の邪魔になるような事をしたと判断すれば桜と同じく殺しに掛かるからな」

 

「っ、兄妹揃って、悪趣味な……こと、だ」

 

「ハハッ!テメェにゃ、言われたくねぇよ。どうせテメェは、Мとまでは行かなくとも自身の不幸でさえ愉しめるタイプだろう?」

 

「────!」

 

 俺がそう言うと言峰は肯定も否定もしなかったが、伏せられた顔から見えた口は僅かに弧を描いていた。

 

「因みに、俺がこんな指示を出さなくとも無理な運動をするだけでも中の蟲が死んだりするから気を付けろよ。具体的に言うと、テメェお得意の八極拳を二……いや、三発ブチ込もうとするだけで死ぬぞ」

 

「……ご忠告、痛み入る」

 

 言峰はフラつきながら立ち上がる。

 

「さて、これで今日の用事は全て済ませた。帰るぞ、ルーラー。急いで作らなきゃならん物があるんでね」

 

「え、ちょっとマスター?こんな危険因子、放置しとく訳?!」

 

「悪い事は言わねぇ。坊主、ソイツを放置するのは止めときな」

 

 共に居た期間は少ない筈なのに、オベロンとランサーは揃って俺に言峰を生かして放置するのは止めとけ、考え直せ、と言ってきた。

 

「コイツの目的はあくまでも桜を通して大聖杯に宿るこの世全ての悪とされるアンリマユの誕生を見届ける事。そうして長年抱いた自分の問いに対する答えを得る為にな。ならばその時が来るまで動くつもりは無いだろう?」

 

 でなけりゃ、HFルートのラスボス的ポジションに居る訳が無いからな。それに、士郎と対峙する事は言峰にとってもプラスになる。加えて、生殺与奪の権利は俺にあるのだから俺の邪魔をしないであろうという判断だ。

 

「───フ。ハハッ……ハハハハハハッ!」

 

 俺の言葉を聞いて言峰が急に狂ったかのように笑い出した。あまりにも唐突な出来事に、俺はビクッと少々大袈裟な反応をしてしまう。

 

「これはこれは、想像以上だ。まさか、君がそんな人間だったとはな。流石、あの間桐桜が執着し、衛宮士郎が気に掛ける事はある。なるほど、理解した」

 

「はぁ?」

 

 一体何を言ってやがるんだ?と疑問に思うが、どうやら理解出来ていないのは俺だけだったらしく、サーヴァント二人は揃って首を縦に振っている。ちょっと待て、お前ら。まだそんなに会ってないクセにどうして同じ反応をしてるんだ。おかしいだろ。

 

 しかしそんな俺の疑問に答えてくれる親切な奴はこの場には居らず、俺一人だけが疎外感を感じさせられる羽目になった。あの心の中が分かる筈のオベロンでさえ何も言わないで目と目で会話し始める始末である。誠に遺憾。

 

 お前、分かってるのにワザとやってやがるだろ。あ、作り笑いしやがった。完全に分かっててやってやがる。後で覚えてやがれ……。オイ、視線逸らすな馬鹿!そんな感じでオベロンが心を読める性質を利用して無言でやり取りをするのだが、

 

「ねぇ、マスター?今日はもう遅いし、神父さんの監視はランサーに任せて一度帰らないかい?」

 

 と言って、無理矢理切り替えされられた。何かオベロンの手の上で踊らされている気がしてならないが、どちらにせよそのつもりだったので、ここは潔く諦める事にした。

 

「・・・・。まぁ、そうだな。ランサー、悪いが監視を任せても良いか?取り敢えずは一日だけで良い」

 

「げ……、マジかよ。まぁ、契約主は坊主だし、ここは素直に従うさ」

 

「ありがとう、助かる。後々の行動はまた念話か使い魔なんかで伝える」

 

「了解」

 

 そうしたやり取りの末、一度家に帰ってアレを作っておかないとな、と考え一旦帰ろうとした。

 

「一つ良いかね?」

 

 そんな時、言峰に引き止められた。

 

「何だ?」

 

「君は何故この聖杯戦争に参加した?何か聖杯に望む事でもあったのかね?」

 

 引き止められた理由は、俺が聖杯戦争に参加した理由を問う為だった。

 

「あんな人を殺す為の聖杯になんか興味は無い」

 

「ほう?」

 

 俺が聖杯戦争に参加した理由なんて、遠坂の『勝つ為』と似たようなものだ。ただ、状況が違っていただけ。

 

「本来、間桐の純血の魔術師の血筋で魔術回路を持つ者は俺で途絶える筈だった」

 

 だけど俺が間桐慎二であると自覚した時から、世界は一変した。

 

「だが、何の因果か俺は後天的に魔術回路を発露させ、魔術師の世界に足を突っ込まざるを得なくなった。勿論、それだけが理由じゃない」

 

 俺は寧ろそれを利用した。心の底から嫌悪するジジィに魔術を習い、機を待った。

 

「俺は、この聖杯戦争であの化け物(マキリ・ゾォルケン)を殺す為に魔術を学び、未来視紛いの知識を用いて機を待った。前回の聖杯戦争が小聖杯の破壊で幕を閉じた事によって十年程度で第五回聖杯戦争が起きる事もこの時に知ったからな」

 

 機を待って、物語が始まって、現実を思い知った。決して変えられない運命(筋書き)、役を演じきれない己の未熟さ。

 

「そうして知り得た未来で、己の生存の確率は限りなく無いと気付いたその日から、ジジィが消えた今でも、俺の目標は変わらない。()()()()()()()()()。それが俺のこの聖杯戦争に参加した理由だ」

 

「生き残るのが理由ならば大前提として聖杯戦争に参加しない方が賢明ではなかったのかね?」

 

 言峰の発言は尤もだった。だが、それをしない理由が俺にはあった。

 

「言っただろ?俺はこの聖杯戦争であのクソジジィを殺す為に魔術を学んだ、と。俺を桜の代わりだと、格下だと侮る聖杯戦争中が一番狙い所だったんだよ。それに俺の未来視紛いは聖杯戦争を通してのモノしか無かったっていうのも大きい」

 

 まぁ、ジジィが居なくなった今は大聖杯の破壊が目標だ。人類全てを殺す為の兵器が生まれちゃ、生き残るという目的が達成出来なくなるからな、と言うと言峰は、

 

「なるほど。ならばその誠意に敬意を示し、私は君の言う通り大人しくしていよう。ついでに、何か教会側からして欲しければすぐにでも手配しよう。その代わり、君が目指すその未来を私に間近で()せてくれ」

 

「ん……???」

 

 と、俺の話を聞いて何を思ったのか、敬意で大人しくしていると言い出したのだ。それと、俺の未来を間近で見せろとも。うん、何かこのパターン俺知ってる。そこに居るランサーでも同じような事になってた気がするぞ。そういった意味合いも込めてオベロンの方を見ると、彼は心底呆れたと言いたげな視線と態度でこちらに顔を向けた。

 

「また人をたらし込んだね。マスター?きみは一体、いつ学ぶのかな?口は災いの元ってことわざ知ってる?」

 

 と言うかモロに声を出して来た。表情を見るに、だいぶお怒りである。いやいや、学ぶって何だよ。俺はただ普通に参加した理由を話しただけだが?あ、いや、蘇生もしたな。だからか?だが、コイツはそれで義理を感じる様なそんな奴じゃ無かった筈なんだが……。

 

「当たり前だろうが。馬鹿にすんな」

 

「なら当然意味分かるよね?何でそこのランサーをたらし込んで、神父さんまでたらし込んだのかな?理由ちゃんと分かる?ねぇ、マスター?」

 

「えー……、と……」

 

 白い服装である筈なのに黒い本体が見えてきそうな圧力で、こちらに問い掛けてくるオベロンに、俺は何も言う事が出来なかった。

 

「まぁまぁそのくらいにしてやれよ。坊主のこれは、生来のもんだ。言い聞かしたって直りゃしねぇよ」

 

 ランサーはそんなオベロンの傍に近寄って俺のフォローをしてくれたのかと思ったが、よくよく聞いてみると全くフォローになっていない。何でだよ。令呪で一回、某麻婆を食わせてやろうか?とも思ったが、流石に八つ当たり過ぎるかと思い留まった。

 

「…………そうだね。これはもう、どうしようも無いね」

 

 君が藤丸立香であった時から変わらない。と、言われた気がした。お前、本当に後で覚えてろよ?

 

「・・・・。ランサー、言峰の監視を頼む」

 

「あいよ」

 

 本当に納得はいかないが、ここで問い詰めてもオベロン達は何も言わないだろうと思った俺は、ランサーに再び言峰の事を任せて、今度こそ教会を立ち去ろうとした。

 

『なぁ、オレとも話さねぇか?特異点(マスター)さんよぉ?』

 

「っ!?」

 

 耳元でこの場に居る誰でも、桜でも無い、それでいて何処かで聞き覚えのある声がした。これは───そうだ。この場に居ない、大聖杯で誕生の時を待っている筈のアンリマユの声だ。

 

「ぁ、ヤバ────」

 

「マスター!!/坊主!!」

 

 声の主がアンリマユであると自覚した途端、何かパズルのピースのようなものがカチリと嵌まる音が聞こえた気がした。しかし、それが何であるのか自覚する暇もなく、俺の意識は闇へと引きずり込まれたのだった。





ま〜たたらし込みましたよ、うちの慎二君……。何でなんでしょうねぇ…。書き始めはそんなつもりは無かったんですけれどもね?何もさせずに退場ってのは何か気に食わないから、もうちょい出番増やしたいなぁってなった結果ですなぁ…きっと。(自己完結)

前書きに書いてた下書きの件は、コイツ何か一人で勝手にやらかしてんなぁ、程度に読み流してくださいな。何となく愚痴りたい気持ちがあったんです……。次はこんな事にならないように保存出来てるかをしっかり確認したり、別枠で下書きを作っておきますんで…

《追記》
誤字やっば……。調べたつもりだったのに全然違ってたわ…、恥ずかしい……。誤字報告ありがとうございます…m(_ _)m
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