蟲使いの間桐君   作:寝仔猫

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1-1となっているのを見て『あれ?』と思った読者様、その予感は大正解です。ダイジェストにした筈なのにコレ、続き物なんです。箇条書きと書きたい所だけ書いた筈なのになぁ…?
かなり長くなったので二つに分けてます。それでも一万二千字超えてます。暇な時にお読みください。

※時系列は一応意識してますが、結構飛び飛びです。
※本編ルートで登場したオベロンは一切出ません。


IFルート 1-1

 

《ルート分岐①》

間桐慎二()を演じる→黒聖杯ルート&敵対ルート

 

 ライダーの期待を裏切る形になってしまうが、俺は役を演じる事を継続する事にした。ライダーの早期の退場は想定外だったが、それでも大元の流れは変わらなかったんだ。やはりここは筋書き通りにした方が安牌だろう。

 

「ひっ……!」

 

 発見者は衛宮という違いはあるが、アニメでの描写を参考にして、頭を抱えて何かに怯える仕草を取った。表情はすぐには作りきれないので、頭を抱える事でその点をカバーする。また、教室内にライダーはもう居ないのでそこはアドリブを加えたりする事も忘れない。

 

「慎二……?」

 

「見つけた!言い訳は聞かないわよ。アンタがやった事の代償はどんな事をやっても払わせてやる」

 

 『見つけた』という言葉と同時に俺は遠坂に蹴りを入れられ、そのままの勢いで机と激突する。

 

「ぁ゙……!?ぐ……、ち、違う。僕じゃない!僕じゃない!!」

 

「……()?」

 

「僕じゃない?」

 

 怯えている筈の俺の一人称が“僕”である事に衛宮は違和感を覚えたようだが、それを知らぬ遠坂は脅しを続けた。

 

「良いから今すぐ結界を解きなさい!解かないって言うんなら、その顔を吹っ飛ばしてでも───」

 

「だから僕じゃないんだ!殺したのは……結界は……っ、うわぁぁぁぁ?!!」

 

「慎二!!」

 

「待て、遠坂!様子がおかしい」

 

 核心的な事を言わず何かに怯える素振りしか見せない俺に苛立ちが勝ったのか、遠坂が胸倉を掴んで、ガンドをゼロ距離で撃とうとした。その時、先の違和感を捨て切れなかったのか、衛宮がストップを掛けた。

 

「なぁ、慎二。ライダーは何処に行ったんだ?」

 

「え、嘘っ!?」

 

 あぁ、コイツはこんな時にだけ冷静になりやがる。遠坂は倒れた生徒達や先生の様子を見てこんなにも焦っていると言うのに。だからライダーが居ない事に気付きもしなかったのに。衛宮の指摘で漸く気が付くくらいだっていうのにさ。

 

 死体は見慣れているから、というそんな()()()()()()()で平気で居られるお前が俺は心底()()()()だ。そんな負の感情を胸に秘めながら、俺は後回しな言い方をする。

 

「ラ、ライダーは……っ、殺されたさ。だからもうすぐ結界だって解ける……!だ、だから僕を離せよ!!」

 

「殺された?じゃあ一体、誰が殺ったっていうのよ。答えなさい!」

 

 激昂した遠坂が俺の顔スレスレにガンドを放つ。ガンドが当たった床は黒く変色し、少し抉れていた。

 

「アンタのサーヴァントを殺ったのはどんなサーヴァントだったの?全部包み隠さず話しなさい、慎二!!」

 

「〜〜〜〜っ!!お前なんかに教えねぇよボケ!!」

 

 しかし、結局俺は負の感情を完璧に抑えきることは出来ず、遠坂の腕を振り払った後に暴言を吐き捨てて俺は逃亡した。

 

 

・慎二逃亡後、結界消失。

・何を血迷ったのか、ここで自宅に戻ると黒聖杯ルート

・そのまま教会に逃げ込めば敵対ルート

 

《黒聖杯ルート》

・帰宅後、臓硯に嘲笑われ蟲蔵in

 

「クソッ……!何で俺は自宅に戻って来てるんだよ……!」

 

 自分の不甲斐なさに苛立ちが募る。何を血迷ったのか俺は教会に逃げ込むのではなく、こうして自宅にまで逃げてしまったのだ。ライダーを裏切ってまで役を演じると思ったのにも関わらずにも、だ。

 

「……いや、まだ間に合う。今からでもあそこに行けば───」

 

「何処へ行こうと言うのじゃ?慎二よ(負け犬)

 

「っ!?ジジィ……」

 

 思考を切り替えてシナリオ通りに教会へ向かおうとした時、扉の前にクソジジィが現れ、進路を塞いできた。名前は呼んでいるが、明らかにこちらを嘲笑って、ルビでは負け犬と言われているのが丸わかりであった。

 

「何処って、教会だ」

 

「教会に行って何をするつもりじゃ?サーヴァントを失ったお主に今更出来る事なぞ無いだろうに」

 

「いいやあるね。あそこの神父は中立的立場を取っておきながら一番の違反をしているのを俺は知っている。そこを突けば俺はまだ返り咲ける」

 

 厳密にはUBWと同じ流れに持っていくことでギルガメッシュというサーヴァントを味方に付けるのが目的だが、そこまで律儀にこの野郎に話す義理は無いから黙っておく。

 

「諦めの悪い小僧じゃ」

 

「ハッ!云百年生き汚く生きてる妖怪にゃ、言われたくねぇよ」

 

 そう言うとジジィのこめかみに青筋が浮かんだ。高々十数年程度しか生きていない小僧に煽られるのは癇に障るらしい。高齢者は高齢者らしく、そろそろ怒りで血管が破裂したりしねぇかなと思っていると、いきなり薄気味悪い笑みを浮かべやがった。

 

 その瞬間、背筋に酷い寒気が走る。このジジィ、何か良くねぇ事を企んでやがるな?

 

「のう、慎二。お主にチャンスを与えてやろう」

 

 ほらな。やっぱり碌なヤツじゃなかった。

 

「ぁ゙?」

 

 不機嫌になる俺を他所にジジィはとんでもない事を口にした。

 

「二日じゃ。二日間で魔術回路を増やしてみよ。勿論数は問わん。一つでも十本でも増やせ。失ったサーヴァントについては儂が補ってやる。お主はソイツと契約し、この聖杯戦争を勝て」

 

「ハァ?!テメェ、馬鹿な事を吐かしてんじゃねえぞ。たかが二日程度でそんなに増やせるワケ無ぇだろうが!」

 

 一本増やすだけでも全てを擲って漸く最速で一月も掛かるんだぞ?!

 

「何じゃ、では諦めるのか?ならば儂は今すぐにでも桜にアレを施すがのう?」

 

「やってやろうじゃねぇかこの野郎!!」

 

「カカカッ!そうかそうか。ならば頑張るがよい。結果は見えておるがな」

 

 こちらを嘲笑うジジィの売り言葉に乗せられ、俺は後先考えずにその提案に乗ってしまった。それを見たジジィが心底愉快と言わんばかりにニヤケ面を浮かべる様子には腹が立ったが、実行して見返してやれば良い、と考える事で一旦抑えた。

 

・蟲蔵にて蟲達が“聖杯の欠片”を持ってきて無理矢理慎二に呑ませる。→黒聖杯化の第一条件達成

 

 そうしてやって来た蟲蔵。ヤケクソ気味に宣言したのは良いが、どうやって一月も掛かる作業を二日に縮めるのかのアイデアは全く浮かばなかった。

 

「チッ……!一体どうすりゃあ……」

 

『王サマ?』『コマってル?』『ミテミテ!』『コレあげる!』

 

 頭を抱えて悩んでいると、何やら蟲達が騒がしくしている事に気が付いた。何かを見て、受け取って欲しいようだ。正直、そんな暇は無いのだが、意外にも役立つ情報やモノを持ってきてくれる事もあるのでここは素直に応じてやる事にした。

 

「んん……?何だソレ」

 

 蟲達が騒がしくしながら指し示しているのは何やら魔力を帯びた何かの欠片だった。黒のインクで塗り潰したかのように真っ黒なソレが一体何なのか、俺には一切分からなかった。

 

『ゾウケンから貰って来た!』『聖杯ノかけら!』『あげるよ!』『役ニ立つ?』『呑んでノンデ!』『えらい?』

 

「は……??」

 

 突然の情報に思考が一瞬、停止した。コイツら、今、何て言った?聖杯の欠片?ジジィから貰った?俺に魔力を帯びたコレを呑めと?駄目だ。文字に起こしても全く分からん。と言うか、理解してはいけない気がする。

 

 だが、そんな俺に構うこと無く蟲達はジリジリと距離を詰めてくる。久方ぶりにコイツらに恐怖を抱いた。

 

「や、めろ……お前ら。それを、どうするつもりだ」

 

『王さまにアゲル!』『ホメてホメて!』

 

「馬鹿野郎!ソレは────ムグッ……!??」

 

 駄目だ。コイツらはあくまでも善意でこの行動に出ているから制御が効かない。俺は為されるがままに蟲達が持って来た聖杯の欠片を呑ませられてしまった。吐こうとするが、時既に遅し。

 

「グ……!!?ゔ……??ぁ……?」

 

 異変はすぐに起きた。

 

────熱い、暑い、あつい、アツイ……?

 

 身体が心からまるでマグマになったかと錯覚するくらいに異常に発熱している感覚に陥る。はくはくと何度も冷たい空気を求めて呼吸をする。けれどもちっとも良くはならない。身体は熱を持ち続ける。なのに、ずっと、心だけが、()()()()()()()()()()

 

 いいや、これは錯覚だ。だって身体や、心は、こんなにも異常を訴えて来ているのに、思考は出来る。今、自分に何が起きているかを判断出来るのだから。動かぬ身体の代わりに思考を回す。

 

────この感覚は何だ。

 

 魔術回路を無理矢理増やそうとした時に陥った感覚に似ている。

 

────ではコレはそれに当て嵌まるのか。

 

 それは否。コレはそんな生ぬるい事象じゃない。身体が熱くなるのは拒絶反応だ。心はそれに耐えきれなくて冷たく冷えて行くんだ。では、何に拒絶反応を起こしているのか。コレは──

 

────狂気と呪いを孕んだ泥による汚染

 

 そう気付いた途端、頭の片隅で何かが嗤う声が聴こえた気がした。

 

 

・慎二、黒聖杯と奇跡的に適合。→原作桜の役割が慎二に移行する

・蟲爺、二日間の間に真アサシン召喚

・真アサシン召喚による佐々木小次郎&キャスター取り込みで慎二の汚染が急速に速まる

・影と遠坂、衛宮が初接触→爺は慎二の適合を悟り笑みを浮かべる

・二日間に及ぶ黒聖杯との適合を終えた次の日、保健室登校をする慎二。→帰りにギルガメッシュと接触

・ただし、精神は不安定。→常に負の感情(渇きや空腹など)が無自覚に脳裏に浮かび上がる。

 

 

 あの二日間の体調不良が嘘みたいにすっかりと体調は良くなっていたが、一応大事を取って今日は保健室登校をした。そうして、明日から普通に登校しようかと考えて、衛宮達と敵対関係である事などを思い出してやっぱりもう少し続けようと思った。

 

 また別理由として、精神の方が少々危うい、と言うか不安定であるという事が挙げられる。何の因果か泥と俺の相性はとても良かった。まるで元から自分が最初からそうであったとでも言うように、あんな拒絶反応が無かったかのように今は身体()()()()()()。つまりそれは、いつ自我を失うか分からないという危険な位置に立っているという事を示しているのだ。

 

────足りない

 

 まだ聖杯戦争は終わってないし、これ以上サーヴァントを取り込むのは避けたい。ここまで変わってしまった以上、筋書きはもう頼りにならないだろう。なら、今一度どうするのか考えなければ。

 

 そんな事を考えながら帰路についていた時、誰も居ない道で後ろから声を掛けられた。

 

「人の身に過ぎた力を持てば自らの力で身を滅ぼすぞ。その力を持て余すと言うのならば、今、ここで死ぬか?雑種」

 

────腹が空いた

 

「っ!!ギルガメッシュ……」

 

 振り向いた先に居たのは、前回の聖杯戦争の生き残りであるギルガメッシュだった。流石、かの英雄王。俺が既に人の身には過ぎた代物である聖杯の欠片を所持しているのが分かっているようだ。

 

「ハッ、そんなモノ……あのクズを欺けられるモンなら安い代償だ。俺はまだ生きるんだ。テメェなんかに殺されやしねぇよ」

 

 それならば役を演じて偽るのは無理だろうと考え、恐れること無く野心丸出しに宣言する。

 

「ほう……?───フ、ハハハハッ!そうか、ならばその痩せ我慢がいつ崩れるのか見ものだな。精々我を愉しませて見せよ」

 

「え、お、おう……?」

 

 すると何が英雄王の興味に触れたのか分からないが、急に笑い声をあげて上機嫌に去っていったのだった。

 

────あーぁ、喰い損ねたな

 

「何がしたかったんだ……?あの金ピカ……」

 

 言うだけ言って、嵐のように去って行った英雄王の行動に疑問を抱きながら、俺は再び帰路についた。

 

 

・ギルガメッシュと接触した晩、軽度の暴走&ランサー脱落→負の感情が表層化し始める

・衛宮邸より戻って来た桜に苦しげにしている所を目撃される

・看病を拒否するが部屋に辿り着く前に気を失ってしまう

 

 

「ハッ……っは、ぁぐ、ぅ゙……」

 

────喰い損ねた、足りない

 

 正直嘗めてた。原作の桜と違って黒聖杯の器と成ってしまった自覚はあるから、平気だと思っていた。だけど、そんな甘いもんじゃ無かった。

 

「ふ、ぅ゙……!ま゙、だ……俺、は……」

 

────腹が減った

 

 自分の身体が自分のモノではない感覚。適合する時に感じた乖離感とも違う心と身体の乖離に、頭がおかしくなりそうだ。だがしかし、今から精神を壊す事なんて出来ない。と、奥歯を噛み締める事で無理矢理意識を保って、自分の部屋に向かう。異常な体温上昇によって汗だくになりつつあったが、そんな事は構ってられなかった。早く、早く、誰も居ない部屋に向かわねば───

 

「兄さん……?」

 

「っ゙!!?」

 

 もう少しで部屋に着くであろう所で、一番見つかりたく無かった桜に目撃されてしまった。

 

「顔が真っ赤で汗だくじゃないですか!今すぐに看病を───」

 

「いぃ゙……!ぃ゙ら、ねぇ……。寝てりゃ、っ、治……る」

 

 心配して駆け寄る桜の手を振り払って、拒絶の言葉を何とか口にする。

 

「で、でも……!」

 

「良いって、言ってんだろ!!お前には関係無い!分かったらとっとと部屋に戻れ!」

 

「っ……はい。兄さん」

 

 なりふり構わず桜に叫び散らかす。もはや八つ当たりにも等しい行為だった。だが、これくらいしなければ桜は引かないだろう。現に、俺の怒りを悟ってか桜は『はい』と返事をしていた。

 

 あぁ……駄目だ、とことん悪手ばかり取ってしまう。興奮してしまったことで、寸の所で踏ん張っていた意識が今にも飛びそうになっている。

 

「は、ぁ……はぁ……っ、ぁ゙」

 

「兄さん?!!」

 

みっともなく壁にしがみつきながら、あと少しで部屋の扉を開けれるという所で俺の意識はプツンと途切れた。バタリと床に倒れ込む寸前で見えたのは、声をあげて駆け寄る桜の姿だった。

 

 

・暴走を起こした一日目は影が一般人を二、三人取り込んだ所で慎二が目を覚まして終了

・目を覚ました慎二は、ほのかに感じる満足感に一般人を取り込んだと知り、軽度の精神ダメージを負う

・看病に来ていた桜に、戻って来いと言う命令は取り消すから明日からは衛宮邸に行けと告げる

・桜、再び心配するが慎二は無理矢理命令する事で衛宮邸に向かわす

・桜退去後、蟲爺登場→影の制御などについて問い、桜を人質に協力を煽ぐ。慎二、渋々了承

 

〜Side:衛宮士郎〜

・衛宮邸に向かった桜、衛宮に事情を説明する

・次の日の晩、衛宮は柳洞寺へセイバーと共に向かう→殆ど原作通りに進行

・衛宮をハサンが攻撃しようとした所で遠坂登場→二度目の影との接触

・衛宮、遠坂と共に衛宮邸へ帰宅→桜お迎え→治療と同時に今後についての作戦会議を開く

 

 

「さて……。作戦会議をしましょ?衛宮君」

 

 俺の治療を行ってくれた遠坂は居間の座布団に座りながらそう言った。

 

「作戦会議?もしかして遠坂、まだ協力してくれるのか?」

 

「えぇ、そうなるわね。魔術師視点で言うのならセイバーも居ないし、貴方はここで退場してもらうのが正しいのでしょうけれども、どうせ貴方はこの状況になっても諦める気は無いのでしょう?」

 

「当たり前だ」

 

「そう言うと思ったわ」

 

 分かってた、と言わんばかりの声色で遠坂はフ、と笑みを浮かべた。

 

「止めておけ、凛。その男とこれ以上組んでも碌な事は無い」

 

 そんな時、遠坂の背後にアーチャーが現れた。柳洞寺で一度こちらを背後から斬り付けて以降、遠坂から注意を受けていた筈だが、何故今更ここに現れたのだろうか。俺はそんな疑問を抱きながら、アーチャーを睨み付ける。

 

「……アーチャー。私は貴方に別の事を命じていた筈だけれど?どうしてここに居るのかしら」

 

「そう目くじらを立てるな、凛。君が柳洞寺に行くと行ったっきり戻って来ないものだから迎えに来ただけだ。まぁ、まさかそこの使えぬ小僧とまだ組むつもりがあるとは……ほとほと君のお人好しには呆れる」

 

「はぁ?!」

 

「アーチャー!今の発言は取り消しなさい!」

 

 やれやれと肩をすくめてこちらを見下してくるアーチャーに遠坂が発言を取り消せと怒鳴りつける。だがしかし、アーチャーは何処吹く風で気にする様子は見られなかった。

 

「お前……!使えないって何だよ、使えないって!」

 

「私はあくまでも事実を言ったまでだ。セイバーは消え、マスターの証である令呪までもを失った貴様に、一体何が出来ると言うのだ。魔術師として半人前にも満たぬ貴様に出来る事なぞ無い」

 

「そんなの、やってみないと分からないだろ!!」

 

「フン、無駄な意地を張るのは止めておけ」

 

「はぁ?!無駄なんかじゃ────」

 

「やめなさい二人共。今は喧嘩してる場合じゃないの、士郎。私達は現状整理の為に作戦会議を開いたのよ?それと、このまま邪魔する気なのなら帰ってくれるかしら。アーチャー」

 

 アーチャーの煽りに乗せられて言い合いがヒートアップしそうになった時、遠坂から制止の声が掛かった。

 

「…………悪い、遠坂」

 

「やれやれ。邪魔するつもりは無かったのだがね。マスターがそう言うのならば一足先に戻っておこう」

 

 そう言うとアーチャーは最後までこちらを睨み付けながら、霊体化していった。

 

「……さて。まずは情報を整理しましょ」

 

 流石遠坂。切り替えが早いな。と思いながら俺は遠坂の正面に座る形で向かい合った。

 

「衛宮君、貴方が令呪を失った経緯は分かるかしら」

 

「・・・・・。」

 

 遠坂にそう聞かれ、俺はあの時の事を思い出す。手掛かりを求めてセイバーと共に柳洞寺を訪れたあの時、柳洞寺は驚く程にもぬけの殻と化していたのだ。厳密には警察の調査の為にそうなっていたとも言えるのだが、そうではなく、山門から動けないで居る筈のアサシンも柳洞寺を根城としていた筈のキャスターも居なかったのだ。

 

 その事を不審に思ったセイバーが一時撤退を提案するが、それを押し切って俺は柳洞寺の中の捜索に出た。思えばこれが間違いだったのかもしれない。中には臓硯が待ち伏せており、セイバーと離れ離れにさせられた。そうして臓硯と対峙し、セイバーをあの場に呼び出そうと令呪を使用しようとした時、何も起きなかったのだ。

 

 そして感じたセイバーとの繋がりが切れた感覚。何も起きなかった事でセイバーの消滅を悟った臓硯の煽りに乗せられて、俺は感情の赴くままに武器を奮った。けれども叶わなくて、アサシンに成す術無く殺られかけていた時、遠坂に助けられたのだ。

 

「…………いや、詳しくは分からない。俺が令呪を使用しようとした時にはもう、セイバーとの繋がりは切れてたみたいだ。だから、セイバーに何があったのかまでは……」

 

 回想をした後に、語れたのは結局分からないのだという、到底力にはなれそうにない情報でしかなった。

 

「そう……。まぁ、分からないのなら仕方ないわね。すぐには難しいでしょうけれど、切り替えていきましょう?」

 

「あぁ……」

 

 だが、遠坂はそれについて責める事はしてこなかった。その気遣いが有り難く、それでいて辛いと思った。

 

 

・遠坂と衛宮、残っているサーヴァントの確認をする。(現時点で、アーチャー・バーサーカー・真アサシン・ギルガメッシュが生き残り)

・作戦会議で衛宮がイリヤに協力を求めようと提案する

・遠坂、これに難色を一度見せるが結果的に提案を受け入れる

・また次の日、アインツベルンの城へ二人で行く事に

・バーサーカーVSセイバーは原作と相違点は殆ど無し→バーサーカー脱落&慎二、黒聖杯化への第二条件達成

・原作との変更点として影が遠坂を襲う事は無かったので、アーチャーは生存

〜Side:衛宮士郎 終了〜

 

・蟲蔵にて蟲爺、セイバーと会話

 

 頻繁に訪れたいとは思わない薄暗く、見るもおぞましい蟲だらけの蔵の中心で、俺は痛みと苦しさに悶えていた。心臓が五月蝿い程バクバクと脈打つのを感じながら、自らの爪で身体を引っ掻く事で生じる痛みで何とか正気を保っている状態だ。

 

 この痛みはセイバー、そしてバーサーカーと連日、英霊を取り込んだ事によって、俺の中にある聖杯が機能を果たそうとしている為に生じている。それに加えて、まともな状態で英霊を取り込む泥や影を操ろうとしたペナルティーのような副作用も上乗せされている。

 

「ハ……っ、はぁ゙……!ぅ゙ぅ……」

 

 荒い息を吐く俺の息遣いしか聴こえない空間に、コツリコツリと杖をつく音が響き渡る。

 

「セイバーに引き続き、バーサーカーまでもを取り込んだか。カカッ、重畳重畳。その調子で英霊を取り込んで行けよ?慎二」

 

「ジジィ……」

 

 アインツベルンの城へ行っていた筈のジジィが、苦しむ俺を嘲笑い、惨めに床を這う俺を見下す為に階段を降りているのだ。身体の自由が効かない俺に今出来る事はそんなジジィを力無く睨み付ける事だけだった。

 

「ホレ、この間までの威勢はどうした。いつものように噛み付いて来ても良いのじゃぞ?」

 

「ぅ゙る、せぇよ。そんなに、老い先短いからっ……て、急かすん、じゃねぇ。テメェなんぞ、すぐにでも……」

 

「ハッハッハッ!無理せずとも良い。どうせお主は、儂に逆らう事は出来ぬのじゃからな」

 

「く、そが……!!」

 

「そこまでにしてもらおうか、マトウゾウケン。それ以上、マスターを侮辱するのならば────貴様の首を切り落とす

 

 俺が悔しさに奥歯を噛み締めていると、先程回収した筈のセイバーが俺の前に立ち、ジジィに剣を突き付けた。

 

「……フン。昨日の今日でここまで英霊を従えるとは。転んでもただでは起き上がらぬようじゃのう……。その屈強な精神、壊れる時が愉しみだ」

 

 だがしかし、ジジィは顔色を変えること無く薄気味悪い笑みを浮かべると、クツクツと嗤いながら身体を霧散させた。認めるのは癪だが、ジジィが居なくなった事でホッとする自分が居た。

 

「・・・・。」

 

「───シンジ」

 

 そんな事は決して認めたくなくて、抱え込んだ腕に更に強く爪を突き立てていると、セイバーに呼び掛けられた。

 

「……何だ」

 

「何故そうまでして足掻く。貴方の精神はもうとっくに限界が来ていると言うのに」

 

「限界?テメェにゃ、俺がそう見えるのか」

 

 勘違いも甚だしいぞ、セイバー。そう言って俺はユラリと立ち上がる。疲労困憊の様子を見せていた俺がまさか立ち上がるとは思ってなかったのか、人形の様な生気を感じさせぬ表情を浮かべていた筈のセイバーの顔が驚愕の表情に染まる。

 

「良いか、セイバー。俺はまだ折れちゃ居ねぇ。俺にはな、何が何でもやり遂げたい目標がある。それを成し遂げるまでは決して何者にも屈さねぇと決めたんだ。それを傍から見た程度で俺の限界を決め付けてんじゃねぇぞ」

 

「だが、その身体は……」

 

「そんなモノ、自分が一番分かっているさ。だがな?もう今更引くだなんて選択は取れねぇんだよ。俺はこの力を用いて、目的を達成させる。例え、()()()()()。文句あるか、セイバー」

 

「いいや、ありはしない。私はマスターの駒に過ぎない。マスターの意思の下、命令に従うまでだ」

 

「そうか……」

 

 俺の素っ気無い返事を聞いてセイバーは、俺の影の中に溶け込むのだった。

 

 誰も居ない蟲蔵。浅く響き渡る自らの呼吸音を聞きながら俺はポツリと、

 

「──────だれか、たすけてくれよ」

 

 らしくもない弱音を吐いた。こんな俺を救ってくれる奴なんて、何処にも居ないのにな。

 

〜Side:衛宮士郎〜

・桜から事情を聞いていた衛宮が間桐家を訪ねる

・衛宮、蟲爺と接触する→影を操っている正体が慎二だと知る

・衛宮、蟲蔵へ向かう→部屋の真ん中で気絶する慎二を発見

 

〜慎二Side〜

 

「────慎二!」

 

 何か、衛宮の声が聞こえる……。ついに俺も焼きが回ったか?

 

「大丈夫か?!慎二!」

 

 あぁ、違う。マジもんで衛宮が居るわ。薄っすら目を開けた先に衛宮の姿が見えるわ。そうか、俺を心配して───

 

「……じゃ、ねぇ!!?」

 

 いやいや、何で衛宮が蟲蔵に居やがるんだ。おかしいだろ?!という、疑問で勢いよく起き上がると、顔を覗き込んでいた衛宮に頭を打ち付けてしまった。あまりの衝撃に、患部を抑えて痛みに唸った。

 

「ぁ゙でっ!?げ、元気そうでなによりだけど……流石に起き抜けに頭突きは無いんじゃないか……?」

 

「ぃ゙っっ……、悪い……。いや、まさかお前がこんな所にまで来るとは思わなかったし……」

 

 一応、間桐家の秘術に関係する場所だぞ?そんなホイホイ外部のモンを連れて来て良いもんじゃねぇだろ……。

 

「てか、お前何でここに居やがるんだ。なに、負けた俺を嘲笑いにでも来たか?」

 

「そんな訳無いだろ?!俺はただ桜から慎二の体調不良の話を聞いてたから心配で見に来たんだ」

 

 あぁ、やっぱり桜に見つかるのは良くなかったな。こうして俺の知らぬ間に衛宮にまで情報が伝わってやがるし。まぁ、良い。過ぎた事はもう無視だ。つまりはこれ以上コイツに悟られない様に動けば良い訳だ。

 

 という事でそんな必要は無かったのだと勘違いさせる為、俺はいつものように素っ気無く返事をしながら、適当な会話をして衛宮を追い出す事に決めた。

 

「……ふーん?なら要らねぇ世話だな。桜が言う程俺は体調も悪くねぇし。てか、お前。どうやってここを知ったんだよ」

 

「あぁ、それは……ここに来た時に臓硯に鉢合わせてな。その時に教えてもらったんだ」

 

「チッ……。あのクソジジィめ。わざわざ面倒臭い事しやがって……」

 

 本当にアイツは碌な事をしねぇな。わざわざこの場所を教えてどうするつもりだか。

 

 そんな疑問が浮かんできたが、今はとにかくどうやって体調不良の事を隠して衛宮を帰らすかについてを考える事にした。

 

 

・その後も当たり障りない会話を交わして衛宮を帰らす事に成功する慎二

・だがしかし人間卒業のタイムリミットは迫って来ているので、精神より先に身体にガタが来始める(満たされない空腹感、血反吐など)

・その身体で新都にてギルガメッシュを誘い込む為、一般人の捕食をする慎二

・ギルガメッシュ、高みの見物に来るが慎二を殺すと言う地雷を踏む→黒聖杯化第三条件達成&人間卒業

 

 

「過ぎた力は貴様の身を滅ぼすと警告した筈だが……。見境無く人を喰らうとは。所詮貴様の精神性はその程度だったという事か、雑種」

 

「ハハッ、まさか。テメェを誘き出す為に決まってんだろ。まぁ、こんなにも簡単に誘き出せるとは思ってなかったがな?」

 

 不敵な笑みを浮かべ、捕食していた人間の残りを足元の影に投げ捨てる。

 

「貴様……」

 

「大聖杯を現界させるには七人のサーヴァントの生贄が必要だ。だが、ライダーの魂はイリヤスフィールの下にある。それ抜きで現時点で残っている全てのサーヴァントを取り込んでも一人足りねぇんだよ」

 

「故に我を捕食すると?フハハハハ!随分と大層な事を言うではないか、雑種風情が」

 

 どうやらギルガメッシュは俺を格下と見ているようだ。『王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)』を展開はすれども、俺の言葉に怯む事をせず、ポケットに手を入れたまま会話している。

 

「いつまでも王者を気取ってんじゃねぇぞ。俺はテメェを殺せるんだからな」

 

「ハッ!戯けが。殺されるのは貴様の方だ」

 

 その言葉を合図に、『王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)』から無数の武器が射出された。それらは真っ直ぐこちらに向かって来る。そうして、俺は向かって来るそれらに()()()()()()()()。身体が人形のパーツのようにバラバラに斬り裂かれた。

 

「……フン。所詮は口だけか。疾く死ね。貴様には相応しい最期よ」

 

 そう吐き捨ててギルガメッシュは路地裏を後にしようとこちらに背を向けた。その瞬間、()は彼の右脚を喰らった。右脚を失った彼は地面に手をつき掛けていたが、寸の所で踏み留まる。

 

「…………我を跪かせようとしたな」

 

 そうして、グチャリと音を立てながら影に呑まれていく己の脚を確認した後に振り向き、物凄い剣幕でこちらを睨み付けた。

 

「……………………あははっ♪

 

 肯定の意として、俺はギルガメッシュを嗤う。バラバラに裂かれていた筈の身体は、ノイズの様なモノが走りながらも既に形を取り戻していた。

 

「今度はその身、再生出来ぬまで斬り裂いてやろう」

 

 ギルガメッシュの背後に、最初に俺の身体を切り裂いた時以上の光の波紋が展開される。様子を見るに、激昂しながらも余裕はあるのだろう。未だ手は使わず『王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)』のみで対応している。

 

 射出された武器は再び俺を斬り裂こうと一直線に向かって来るが、俺が影と泥でガードした事によって四方に弾け飛ぶ。そして、弾け飛んだ武器の一つが街灯に直撃し、街灯が根本からポッキリと折れて倒れ込んだ。チカチカと断線しかけている街灯が俺を照らした。その俺の影を見たギルガメッシュの顔色が驚愕の色に染まる。

 

「っ?!貴様、よもやそこまでソイツを────」

 

「アッハハ!どうやら俺とコイツはイイ意味で(最悪な事に)相性が良かったみたいでよぉ……ここまで育っちまったっつうワケ。それじゃ────イタダキマス

 

 それを好機とばかりに俺はニヤリと笑みを浮かべ、ギルガメッシュを捕食した。取り込まれても尚、ギルガメッシュは抵抗の意志を見せてきたが、それよりも俺の聖杯としての役割の方が勝ったようで、最終的には捕食に成功した。

 

「────ふふ、アハッ!アハハハハハハハハハ!!」

 

 これまで感じた事の無い幸福感に、俺は真夜中である事や周囲に聞こえる事も構わず嗤い声をあげる。そして、無差別に影を広げて更に一般人を捕食した後に乱高下する気分のままに呟く。

 

「嗚呼……ホントに、なんて」

 

 

────最高(最悪)の茶番だろうか

 

 

 だって、こんなにも幸福感(絶望感)に胸が満たされるのだから。

 





書いててびっくりした。オベロン居ないと慎二君の精神、すんごい不安定だ…。良かったわ…こっちルートで本編書いてなくて。この設定じゃ、多分ここまで伸びないと思う。もしかして、オベロン様々?いや、慎二君の精神の安定さが鍵だったのかも?よくわからないなぁ…

まぁそれはそれとしまして、後編はもう書けているので、明日投稿しますねー。
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