実は前編より後編の方がちょっと長いっていうね。((
前編書いてて一万字超えた辺りから開き直って色々書いてたらこんな大作になっちゃった☆
前編と同じかそれを超えるくらいの文字数なので、暇な時に読んでくださいね。
・慎二、サーヴァントの魂があと一つと言う所で黒聖杯の器として完全覚醒&暴走
・新都にて一般人の大量行方不明者のニュースを知る衛宮&遠坂
・次の日の昼、慎二は大聖杯を開く為の鍵を持つイリヤを攫いに衛宮邸を訪れる
・一足先に慎二と接触した遠坂→交戦するが敗れる
・外出中だった衛宮が異変を察知して中庭に走って来る
「しん、じ……?」
俺の姿を見た衛宮の顔が驚愕の色に染まっている。それを見て俺はニヤリと笑みを浮かべた。
「よぉ、衛宮。元気そうだな」
「元気そうだなって……慎二、どうしたんだよその姿」
今の俺の姿は、縦に歪な赤黒い模様の様な線の入った黒い着流しに、間桐を象徴する紫のオーバーサイズの羽織りを羽織っている。髪は色素が抜け落ちたように真っ白で、瞳の色は鏡を見ていないから分からないが、きっと元の色なんて影も形も無いくらいに赤黒くなっているのだろう。信じられないモノを見たとでも言うかのように、その顔は驚愕の色に染まっていた。
「別にお前には関係無いだろ?だがまぁ、有り体に言うならば俺は手に入れたんだよ。もうテメェにも、遠坂にも決して負けねぇ力をな!」
そんな衛宮を他所に、声高々に、それでいてなんて事の無いように、俺は口にする。力を手に入れたのだ、もう衛宮らに負ける事なんて無いのだ、と。勿論、衛宮達を散々苦しめてきた影を見せびらかすようにしながら。
「慎二が……あの影を操っていたのか」
「あぁ、そうだよ」
「一般人を襲ったのは、臓硯の指示か?」
「ぁ゙?何で俺があのジジィの指示に従わねぇといけないんだ。あんな奴の指示に従うなんて、死んでも御免だね」
まぁ、普通ならばそう考えるのが妥当か。だが、ジジィの名を出されるのは気に食わなかったので、意図せず険しい顔をしてしまう。
「自分の意志で、襲ったのか……?」
「そうに決まってんだろ」
「そんな……!嘘、なんだろ?慎二は、そんな事をするような奴じゃ無いだろ?」
「テメェに俺の何が分かるってんだ。魔術師の半人前にも成れない未熟者の分際で、お綺麗な理想の正義しか語らねぇ偽善者の分際で!!」
「っ……!」
俺の感情に呼応する様に魔力が吹き荒れ、影が激しく揺れ動く。それを見た衛宮は、怯えるように一歩退いた。
「……チッ。こんな事を言うつもりは無かったんだが……やっぱり感情の制御が効きにくいな」
どうも衛宮を前にするとイライラしてならねぇ。そんな思いが思わずポツリと漏れた。
「え……?何か言ったか?」
しかし幸い、衛宮には聞こえていなかったようだ。ならばこれ以上踏み込まれない様、本題に入るとしよう。
「ぁ゙?テメェの気の所為だろ。それよりも、だ。俺はそこにいるイリヤスフィールに用があってわざわざここに来たんだ」
「イリヤに?」
「そ。俺の目的の為にゃ、大聖杯を開く必要がある。だが、俺はその為の鍵を持って無くてな。聖杯の生みの親であるアインツベルンに協力を仰ぎに来たってワケ」
そう言うと、衛宮は漸くこちらを警戒する姿勢を取った。
「慎二も、聖杯を狙ってるのか?」
「当たり前だろ?聖杯戦争に参加する魔術師は、大抵聖杯を用いて叶えたい願いがあるから参加してるんだぜ?」
まぁ、本当はそんなモノ欲しくは無いけどな。ジジィを欺く為、俺の目的を達成する為には聖杯戦争に参加するのが確実だっただけだ。
「だからって、何も関係無い一般人まで巻き込む必要は無かっただろ?!」
そんな事を知りもしない衛宮は、未だに綺麗事をほざく。魔術師というモノを本当の意味で分かっていないからだ。
「テメェの常識で俺ら魔術師をはかるなよ。魔術師っつうモンは、根源に至る為ならば自分以外の全てを用いるようなヤツだ。それこそ、家族だってな」
「そんな……!?家族だぞ?!」
「家族っつうのは一番身近な他人だ。それはテメェが一番分かってるだろう?」
「っ……。で、でも!それは俺が養子だからであって、普通は血の繋がりが───」
「いくら血が繋がっていると言えども、思考や趣味までもは一緒ではないだろ?だから他人だとして、身内でさえ魔術師は扱う。自分以外は全て利用する道具。魔術師と言う奴らは総じて人でなしの、道徳心に欠いた奴らなのさ」
衛宮は目を見開いて、信じられないとでも言うかのような顔をしていた。
「さて、本題に戻ろうか。……イリヤスフィール。テメェが大人しく俺に着いてくるのならば、俺は何もしないでやる」
「抵抗すればどうするつもり?」
「さぁ?どうするだろうな。バーサーカーを嗾けて、ここいら一帯を焼け野原にでも変えるかもしれないな?」
まぁ、実際はそうするまでも無い事は知っているのだが、多少は脅しも必要だろう。衛宮への警告も兼ねて……な?
「…………分かった。大人しく貴方に着いて行くわ」
「イリヤ!?駄目だ!行く必要なんて無い!」
「シロウは黙って。これはアインツベルンの、聖杯の器である私達の領域なの。シロウが手を出して良いモノじゃないわ」
引き止めようとしていた衛宮に対して、イリヤは冷たく言い放ち、引き止めた手を振り払った。そしてゆっくりとこちらに近付いて来た。
「テメェが賢い奴で助かったよ。テメェに本気を出されると勝てるか分からねぇしな」
「思ってもない事をよく言うわ。この場で一番強いのは貴方でしょうに」
俺がからかう様に言うと、イリヤにウソつきとでも言うように睨みつけられた。
「ハハッ。そうだな」
俺はそれを気にする事無く受け流し、イリヤが側にまで近付いて来た所で、倉の入り口に影を展開する事で簡易的なワープゲートを作成した。
「待ってくれ!慎二……!!」
作成したゲートへ向かおうとした時、諦めの悪い衛宮がこちらを追い掛けて来た。その時、
「────!セイ、バー……」
セイバーが俺と衛宮の間に現れ、黒く染まった聖剣を横一線に薙ぎ払って、越えられぬ境界線を作った。現れたセイバーによる妨害に、衛宮は絶望したように声を詰まらせていた。そして、何も干渉しないで居たアーチャーはと言うと、倒れている遠坂の側に控えてセイバーや俺の動向を警戒していた。
「っ、退いてくれ。セイバー」
妨害されても尚、衛宮は諦めるという選択は取らなかった。そんな衛宮に対してセイバーはただ淡々と語る。
「今の貴様に何が出来る。どのような形であれ、彼は必ず聖杯を手に入れる。その先に待つのが死であろうとも、それは
「死が、救い……?」
「……セイバー。余計な事を言うな」
それに、そんなモノはもう救いなんかじゃない。そう吐き捨てて俺は、今度こそ衛宮に背を向けた。
「じゃあね、お兄ちゃん。今まで楽しかったよ」
イリヤの別れの言葉を最後に、俺は衛宮邸を後にした。
・慎二達退出後、泥によるダメージを受けた遠坂を教会へ運ぶ衛宮&アーチャー
・その日の晩、イリヤ救出の為に衛宮&言峰がアインツベルンの城へ向かう
・多少の変化はあるものの、イリヤ救出に成功する
・アインツベルンの城へ衛宮達が来た事を察知する慎二
「───やっぱり来たんだな、衛宮」
何の力も持ってないクセに。ホント……馬鹿な奴。
・慎二はアサシンにイリヤの奪還を命令する
・バーサーカーの受肉はアーチャーの腕を衛宮が所持していないので打倒は無理だろうと考えて実行しなかった。(衛宮を殺すのは本意ではない為)
・蟲爺を言峰が洗礼詠唱で殺した後、言峰の心臓潰しを行い、大聖杯の元へと訪れさせないように策士する
「────ッ゙!!」
「よう、エセ神父。心臓を鷲掴みにされた感想はどうだ?」
「間桐、慎二か……」
背後から声を掛けると言峰は、少々冷や汗をかき、口から血を流しながらもこちらを振り向いた。
「……随分と、変わったな」
そして上から下まで見た後に、ポツリと呟いた。
「それは、見た目の話か?それとも性格的な話か?」
「性格だ」
「残念ながら性格はこれが素なんだわ。外では猫被って無駄にプライド高くて小物な奴を演じてただけ」
「随分と、大きい猫を被って居たようだな」
「だろー?我ながらデッケぇ猫被りだなとは思うわ」
ケラケラと笑うと、言峰は眉をひそめる様子を見せた。
「君は一体何を知っているのかね」
「んー?主語がいまいち分からねぇが……とりあえず言える事は、俺は何もかも
「何処でそんなモノを……」
「お前、俺が別世界から来たって言ったら信じるか?」
「なに……?」
俺の唐突な別世界宣言に、言峰は更に眉をひそめた。その瞳は完全にこちらを異常者と見ている瞳だった。そりゃ当たり前だわな。魔術という存在はあれども別世界、もとい次元が全く異なる世界から来た、だなんて誰だって信じない。それこそ魔法の域だしな。
「なーんてな。ンなアホな話、
だから俺はヘラリと笑って、冗談だと仄めかす。我ながら演技が下手くそになったなとは思うが、どうせコイツはここで殺す。死人に口無しで俺の出生やここでの語りを知る奴は居なくなるのだから
「……さて。無駄なお喋りはこれまでにしようぜ」
「何をするつもりだ」
「こういう事だ」
俺は言峰の方へ右手を突き出して、そのまま“何かを”握り潰す動作をする。
「ッ゙?!ガハッ……!!?」
すると、言峰が口から血を吐き出して胸を抑えた。先程潰したのは、元より鷲掴みにしていた彼の心臓だ。厳密には、心臓の役割を担っていた泥を潰したのだが、今となっては些細な違いだろう。
「お前には個人的な恨みは無いんだが……。かと言ってお前を放置すると後々面倒臭い事になるからここで殺すわ」
「……っバケ、モノめ……!」
機械のように淡々と殺しを実行した俺を見て、最期の足掻きと言わんばかりに言峰は『バケモノ』と、吐き捨てた。
「ハッ、テメェが産ませたがってるモノはこういうモノだ」
ニヤリと歪な笑みを浮かべながら、俺は言峰を影で呑み込んだ。
・言峰、強制退場→ラスボスは慎二が全て担う事確定
〜Side:衛宮士郎〜
・その間に衛宮はイリヤの救出に成功する
・イリヤから聖杯戦争についての真実を語られる遠坂と衛宮
・慎二の身に何が起きているかについてや大聖杯の中に居る存在、アンリマユについても語られる
・その日の晩、変わった夢を見る衛宮
「ここは……?」
見渡す限り何も無い真っ白な空間。あまりにも非現実的な空間に、『あ、コレ夢だ』と漠然とそう感じた。では一体、何故こんな夢を見ているのだろうか?俺がよく見る夢は養父である切嗣と月夜に正義の味方について話して約束する夢だ。だってそれは俺の正義の味方に対する考えの原点であり、始まりでもあるからだ。
『───────』
そんな事を考えていると、どこからか泣き声が聞こえてきた。
「一体、何処から?」
不思議に思って周りを見渡すが、見える範囲では何処にもその声の主らしき姿は見えない。分かるのは声の主が悲しい気持ちで泣いているという事。声だけなのにそう思えたのは疑問だが、何故かそうなのだろうと、直感的に感じたのだ。声の主を探して声によく耳を澄ませながら注意深く周囲を見る。
「なぁ!どうして泣いているんだ?教えてくれよ」
けれども相も変わらず、人影らしきものは見えない。このままでは埒が明かないと考え、俺は一か八かで何故泣いているのかを尋ねる事にした。
「…………あれ?」
すると驚く事に、ピタリと泣き声が止んだのだ。ではさっきまでの声は幻聴だったのだろうか?いや、でもあの声は確かに聞こえていたのだ。聞いているだけでこちらも泣きたくなるような苦しげな声。側にいてあげたくなるような声は一体何だったのだろうか?頭の中に次々と浮かんだ疑問を一つでも解消すべくウンウンと唸っていると、
『もう、いやだ……っ』
「っ!?」
背後から、どこか舌足らずな子どもの様な声がした。驚いて振り向くとそこには、真っ黒な人影?らしきモノが居た。
「もう嫌だ?なぁ、何が嫌なんだ?」
恐らくは、この子が声の主なのだろう。顔色も姿形も分からないが、他にそれらしき人は居ないのでこの子だと思う事にしよう。俺は詳細を尋ねる為、影の顔辺りに目線を合わせる為にしゃがみ込んで優しく聞いた。
『ほんとうは、やりたくないんだ。でも、やらなくちゃ……』
すると影は今にもまた泣き出しそうな震え声で、ポツリと呟いた。
「どうして君がやらないといけないんだ?」
『・・・・。』
続きが聞きたくてどうしてなのかと尋ねるが、今度は下を向いて黙りこくってしまった。もしかして聞いてはいけない事だったのだろうかと不安になっていると、下を向きながらではあるが、再びポツリと話してくれた。
『まもりたいこがいるから……』
「守りたい子?」
『うん……。たいせつなんだ。だから、まもりたくて。わらっていてほしくて』
「……そうか」
話を聞いて、この子はとても優しい子なのだと思った。顔は未だ分からない。けれど、大切だと守りたいのだと語る声色には確かな優しさが込められていたから。
「君は、優しい子なんだな」
だから、とても微笑ましく思えて、思った事を素直に口にした。この子に自身を持ってもらいたくて。そう思えるのは凄い事なのだと知ってもらいたかったから。けれど、
『ちがう。ちっともやさしくなんてない』
「どうし───」
その言葉は、首を左右に緩く振って否定された。何故なのかと疑問の言葉を口にしようとした時、目の前の子の姿が変わった。それは見間違える筈も無い、今新都を騒がせている行方不明者の犯人。慎二が操っているとされる影だった。そしてソイツは、俺の耳元まで近付くと、こう囁いた。
『だってもう、■はひとごろしのバケモノだから』
「─────?!!」
全身で冷や汗をかきながら布団から飛び起きた。完全に油断しきっていた。小さな子どもだと思ったのだ。けれども優しいと評価した瞬間にソレは姿を変えて耳元でゾッとするような声色で囁いたのだ。『人殺しのバケモノだ』と。一人称らしき所は上手く聞き取れなかったが、そこがあの子の事を指しているのは分かった。
「何をしている、衛宮士郎」
「っ!アーチャー……」
あの影の事を考えていた時、霊体化を解いたアーチャーに声を掛けられた。
・アーチャーに慎二についてどうするつもりなのかを問われる→衛宮は助けると答える
・アーチャーは殺した方が良いと言うが、衛宮はそれを否定する→アーチャーと衛宮の言い合いの最中、慎二が飛ばした影と接触する
・衛宮、こんな事は止めようと説得を試みるが、慎二は拒絶する
・影慎二、来るなと拒絶の意志を見せ、最期には死ぬのだと宣言する
・それは駄目だと衛宮は絶対に助けるのだと宣言し、これに心動かされた影慎二は去り際に『たすけて』と本音を言う
「死ぬなんて絶対に駄目だ。慎二の本音を聞かせてくれ」
『はぁ?テメェに指図される言われは無ぇんだが?』
「慎二!もう嫌な事はしなくても良いんだ!お前は、人殺しのバケモノなんかじゃない!!絶対に───俺が助ける!!」
『っ……!はは……そうか……。なら───俺を助けてくれよ。正義の味方』
「当たり前だ!待ってろ、慎二!!」
〜衛宮士郎Side 終了〜
・大聖杯に通じる道の手前の洞窟で影を回収し、痛みに苦しむ慎二→外に出ていたアサシンが戻って来る
・蟲爺、アサシンと契約する事を慎二に指示する→しかし、慎二は反応を示さない
・蟲爺&アサシン、慎二の精神がついに壊れたと考え、蟲爺は慎二の身体を乗っ取ろうとする→不敵な笑みを浮かべた慎二がアサシンを取り込み、蟲爺の本体を体内から摘出し、握り潰す→蟲爺死亡&アサシン退場
「さらばだ、慎二。実験作でない身にも関わらず、よくぞここまで耐え抜き、よくぞ儂を愉しませた。これより先はこの間桐臓硯がその身を有効活用してやろう」
あぁ、待ち望んだ瞬間がやっと来た。俺の体内で一匹の蟲がこの身を乗っ取ろうと蠢く気配を感じて、そんな事を思いながら俺は弧を描きながら
「その必要は無ぇよ、クソジジィ」
「何っ!?」
「ギ─────!???ガ、ッぁ゙ァァあぁぁ゙ぁ!??」
そして、驚きの声をあげるジジィを他所に、俺は最後の生贄として汚い悲鳴をあげるアサシンを喰らった。
「な、何を血迷って居るか!慎二!」
「血迷う?ハハハハハハッ!そんなワケ無ぇじゃん。俺はずっと、この時を待っていたんだよ」
ケラケラと嗤いながら、俺は体内に腕を突っ込んで一匹の蟲を引き摺り出した。それは、間桐臓硯の本体。本来ならば桜の心臓部に居る筈の蟲だ。ソイツは掴んだ俺から逃れるべく、ビチビチと蠢いていた。
「何をするか!慎二よ!その様なマネを────」
「テメェが寄生先を桜から俺に替えてくれるかどうかは賭けだったんだが……。しっかり替えてくれて助かったぜ。こうしてテメェを俺の手で殺す事が出来るんだからな」
「ま、待て待て待て───!儂はお前達の事を思って行動してきたのだぞ?!それをこんな恩を仇で返す様な事をして許される筈が無い!」
「恩だぁ?ハッ、何を巫山戯た事を言ってやがんだよ。テメェに感じる恩なんざ、万に一つも無ぇよ」
そう言ってありもしない恩を主張してくるジジィに、俺は本体を掴む指の力を強くしていく。普段コイツが使役している蟲の見た目をしている割には硬いので、本気で握り潰す必要がありそうだ。
「止めろ慎二!今、儂を殺せば根源へと至る門を開けれなくなる。それでも良いのか?!」
「あのさぁ……確かに魔術師なら根源に至る為にソレは必要だろうけど、俺は別にそういうの興味無いんだよな。そもそも魔術を学んだのもテメェを殺すのが目的なんだから、こんな絶好の機会、逃すワケが無ぇだろ」
「な────?!」
「さようなら、オジイサマ。云百年と続いたアンタの悲願も、これで終幕だ」
「待て!慎────」
グチャリと情けない音を立てて、憎き相手は俺の手の中で命を散らした。動かなくなった亡骸は、地面に投げ捨ててまかり間違っても動く事が無いように踏み潰した。
「───は、はは。アハハハハハハッ!漸くだ!漸く憎きあのクソジジィを、桜を苦しめ続けた悪をこの手で葬った!これで、自由になった!」
胸いっぱいの達成感に、俺は狂ったように嗤った。人一人居ない空洞に、その声は虚しく鳴り響いた。その時、俺の心に疑問と言う名の隙が生じた。
「…………あれ?俺、今まで
間桐臓硯を欺く為?────ソレは通過点だった筈だ。
原作を変えたかった?────違う。
力が欲しかった?───否。
桜を助けたかった?───そうだっけ?
違う。俺がこれまで必死に行動してきたのはもっと簡単な、分かりやすい理由だった筈だ。それらは、後々から湧き出た願望。俺が最初から目的にしていたのは、それこそ、そう、当たり前の……
「ぁ゙───、ガハッ……?!な、にが……起き、て?」
迷いが生じた途端、己の心臓の鼓動ともジジィの鼓動とも違う命の鼓動を感じた。そして、居る筈の無い存在が囁く。
『目的が分からないのならさ、その身体、オレにくれよ』
「ぁ、ぐ……!駄目、だ。出て、くる゙……な……」
声の主は分かりきっていた。ここには居らず、大聖杯の中で誕生を今かと待ち望んでいる存在───アンリマユだ。ヤツは俺の心に隙が出来た今、俺を乗っ取ろうと行動を起こしてきたのだ。
「───シンジ。しっかりしてください。彼らが来ます。どうするつもりなのか、指示を」
その最中、衛宮達の来襲を悟ったセイバーが指示を仰ぐ。
あぁ、そうだ。憎き相手は居なくなっても、まだアイツらが居る。俺はまだ、折れる訳にはいかない。でないと俺は、生き残れないから。
『ちぇ……持ち直しやがった』
セイバーの言葉で再びやるべき事を思い出した俺は、外に出ようとするアンリマユを無理矢理抑え込み、セイバーに指示する。
「アーチャーは決して通すな。そうすれば必然と遠坂も残るだろう」
「エミヤシロウは?」
「…………通せ。アイツは俺がやる」
そう言うとセイバーは何も言うこと無く、こちらに背を向けて衛宮らを迎え撃ちに行ったのだった。
「は、───ぁ」
セイバーが去り、ジクジクと痛みを訴える胸を抑えて、小さく息を吐く。どう結果が転がろうとも、物語の幕引きはもうすぐそこまで迫って来ていた。
〜Side:衛宮士郎〜
・衛宮邸前にてイリヤに『
・その後、遠坂の案内の元、大聖杯へと繋がる道を進む→開けた場所にて待ち伏せていたセイバーと接触
「セイバー……」
「シロウ。この先で
セイバーはそう言って、首だけを動かして先を指し示す。
「慎二が……」
「行きなさい、士郎。セイバーは、私とアーチャーが倒すわ」
行くべきか悩んでいると、遠坂が俺の背を押して先へ行く事を促した。アーチャーはその後方で踏ん反り返っていたが、その視線はセイバーから一度も離される事は無かった。それだけ本気だという事なのだろう。
「……分かった。遠坂をよろしく頼む、アーチャー」
「当たり前だ、戯け。さっさと先へ行くんだな」
その意志を汲み取って、俺はアーチャーに遠坂の事を任せて先を目指した。
〜Side:遠坂凛〜
・アーチャーと共にセイバーと対峙する
・ダメ元で話し合いを提案するが、セイバーはこれを拒否
・アーチャーVSセイバーの戦闘開始
・アーチャー、セイバーとの戦闘中に宝具発動(最後の令呪使用)
「────『
『
「固有結界だと……?!」
「嘘……」
セイバーのような武器による攻撃宝具ではない。術者の心象風景を現実に具現化する結界が彼の持つ宝具であった。発動された結界が写し出すのは、果て無き無限の荒野に数多の剣が突き刺さり、空には回り続ける巨大な歯車が映る世界。それが、アーチャーの心象風景。
「これが……アーチャーの心象風景……なの?」
俄には信じ難かった。だってこんな、自分を擦り減らしてまで人々の幸せを願い続けた彼に、こんな結末しか無いだなんて。それに、宝具発動前のあの詠唱……。いつぞやに夢に見た光景を表すかのようだった。けれど、それじゃあ、そんな酷い仕打ちがあって良いの?
・アーチャー、辛勝の末に遠坂に別れの言葉を告げる
「……どうやら、私はここまでのようだな」
「アーチャー────!」
セイバーとの戦いで大怪我を負ったアーチャーは、全ての魔力を使い尽くしたのか、身体は光の粒子となって霧散し始め、退去をし始めていた。そんな彼を見て私は一目散に彼の元に駆け寄った。
「アーチャー、私……」
「君が自責の念に駆られる事は何も無い。私は、君がマスターで良かったと心から思っているのだから」
「んな?!そんな事言ったって、何も出ないんだからね!」
彼の口車に乗せられて、自責の念に駆られた事なんてすっかり忘れて、つい、いつものように怒鳴ってしまった。
「───あぁ、やはり君には泣き顔なんて似合わない」
「っ!!」
だけどそんな私を見てアーチャーが嬉しそうに笑うから、私はもう、何も言えなくなった。
「アーチャー」
「何だね、凛」
いや、一つだけあった。それは───
「私、この聖杯戦争で喚べたサーヴァントが貴方で良かった!」
────最高の相棒だった彼に送る、感謝の言葉。
「だから……!諦めないで貴方も走り続けなさい!!」
「───!本当に……君には敵わないな」
そう言ってアーチャーは、
〜遠坂凛Side 終了〜
・アーチャー達が交戦中、衛宮は先に進み、大聖杯の手前で佇む慎二と対峙する
・英霊七騎相当の魂を受け入れる器と成り果てた慎二は情緒不安定気味で衛宮に救われる事を拒絶する
「何でノコノコと一人でここに来た。セイバーに先に行けと言われたとしても遠坂を待つことは出来ただろ」
「それじゃ、慎二はもう保たないだろ」
手ぶらに見える格好でノコノコとやって来た衛宮に、心の底から苛立ちが込み上げた。それに加えてこの俺の事は分かってる発言。とても我慢ならなかった。
「はぁ?テメェに俺の何が分かるってんだ!!この世界に生まれておきながら、人間でも英霊でもサーヴァントですらも無いこの俺の事が!」
だから喚き散らした。お前に分かる訳が無い。俺はこの世界で何処にも所属出来ない、あらゆるモノの“なり損ない”なのだと。
「慎二が何者であったとしても俺は───!!お前を助けると決めたんだ!」
「俺はそんな事望んでない!!」
「そんな訳無いだろ!!」
・影と泥の猛攻の中、衛宮は傷付きながらも慎二の元へ目指す
・非道になりきれない慎二、衛宮に致命傷を与える事が出来ずに近づく事を許してしまう
・殴られ、正気に戻る慎二
「……来るな」
影を、泥を、そして使い魔までもを用いて衛宮の行く手を阻む。
「来るなって……なぁ───!」
けれども衛宮は、どれ程自分の身が傷付こうともその歩みを決して止める事は無かった。
「来るなって、言ってんだろうが衛宮ぁ゙!!」
「それでも俺は!お前が助けを求めたからここに来たんだ!!」
「────!」
────ぁ、これは無理だ。負けた。勝てやしない。
そんな衛宮の姿を見て俺は、そう思って攻撃の手を緩めてしまった。そんな隙を衛宮が見逃す訳が無く、
「慎二────!!」
好機とばかりに距離を詰めて来た。そうして零距離で繰り出された衛宮の拳を、俺は甘んじて受け入れた。
────バキリ、と俺の中で何かが砕けた音が聴こえた。
「……っ、はは。馬鹿だろ、お前」
それは、俺の心を蝕んでいた狂気のようなモノ。俺が抱いていた負の感情だ。あれだけ忌み嫌って居た筈の衛宮の正義に、俺は救われたのだ。
「む……一人で勝手に暴走した慎二言われたくないんだが?」
「そういう話じゃねぇよ。……本気で殴りやがったし」
「それは、ごめん。無我夢中でつい……」
「別に。その辺は気にしてねぇよ。ただ、まぁ……その、助かった。ありがとな」
「慎二……!」
素直にお礼を言うのは何だか小っ恥ずかしくって、顔を背けて小声で言うと衛宮は生意気にもその声を聞き取って心底嬉しそうな顔をしやがった。その様は宛ら無邪気に喜ぶ犬のようだった。その様子を見て、やっぱりコイツに素直に感謝するのはもう止めとこうと思った。
・一段落ついた所で慎二が狂気を以って抑え込んでいたアンリマユが暴れ始める
・遠坂、イリヤ(天の衣着用)ここで合流
・暴走する影や泥が全員を襲う→適性を持つ慎二が残る発言
・イリヤ、衛宮が引き止めるがそれを振り払ってアンリマユの元へと向かう慎二
「シンジ、貴方本気なのね?」
イリヤが俺の意思をはかる為に聞いてきた。
「あぁ、本気だ。元々、コレは俺が蒔いた種だ。ならば俺が片付けるのが道理ってもんだろ?」
そもそも、コイツは一度は適合してしまった俺が抑え込むのが丁度いい。英霊の魂を半分も取り込んでもいないイリヤが閉じるよりもずっとな。そういった意味合いを込めて俺が残る発言をするのだが、犠牲を認めたくない衛宮が、必死に引き止めてくるのだ。
「駄目だ!!そんな事言わないでくれ!何か、きっと、何か別の方法が───」
「別の方法なんざ、端から無ぇよ」
「っ……」
だからこそ、物分りの悪い子どもに言い聞かす様に、俺は発言を無理矢理遮ってまで方法は無いと断言する。そうした所で、躊躇う俺らを急かす様に不自然なくらいに地面が揺れ動き、俺と衛宮らを分断するように揺れ動く地面から泥が湧き出した。
「慎二!!」
衛宮がこちらに手を伸ばして掴んできたが、俺はそれを振り解いて拒絶する。
「な────!?」
差し伸べた手を拒絶された衛宮の顔が絶望に染まる。それを見て、少しだけ罪悪感を抱いた。けれどもやっぱりコレは俺自身で方を付けたくて、今更死は怖いだなんて思いながらもカッコつけて衛宮に向けて言う。
「────
「何でそんな最期の言葉みたいな馬鹿な事言うんだよ!慎二も一緒に帰るんだ!!お前も居なくちゃ意味が無いんだよ!今ならまだ間に合う!だから戻って来いよ!───慎二!!!」
「駄目よ士郎!それ以上はアレに呑まれるわ!!」
必死に俺をこちら側へ連れて行こうと泥に触れるのも躊躇わずに暴れ回る士郎を遠坂とイリヤがこちらも必死に引き止める。暴走する士郎を引き止めてくれる二人の存在に感謝しながら、俺は一歩後ろに身を乗り出す。
「じゃあな
そして満面の笑みで俺は大聖杯の元へと身を投げ出した。
〜慎二Side 終了〜
〜生き残り組(衛宮、遠坂、イリヤ)Side〜
・慎二の身投げ(犠牲)により大聖杯は消滅
・束の間の平穏が冬木市に訪れる
・聖杯戦争の事後処理などで忙しないながらも大きなお咎めは奇跡的に無し
・桜が高校を卒業する年、
〜慎二Side〜
・世界の狭間(大聖杯内)にてギルガメッシュに会う慎二
「あーあ。生き延びるっつう目標立てたクセに、結局最後の最後にカッコつけて死んじまったよ……。情けねぇな、俺」
正規ではないとは言え、一度聖杯となってしまった俺は、現実ともあの世とも区別がつかない真っ暗な空間で清々しさや後悔の色をごちゃ混ぜにした独り言を漏らす。
「雑種。貴様の覚悟はその程度だったのか?」
「っ?!」
こんな誰も居ないであろう空間に聞き覚えのある声がした事に俺は驚き、声のした方向に勢い良く振り向く。
「な!?ギ、ギルガメッシュ?!!どうしてここに?!アンタ、呑まれた筈じゃ……」
振り向いた先に居たのは何と、あの日呑み込んだ筈のギルガメッシュが五体満足の姿で居たのだった。俺は驚きと警戒心で、一歩後ろに退いた。
「フハハハハハハハ!!我が貴様らに呑まれた程度で負ける筈がなかろう。魔力はくれてやったが、我の魂までもを染めるには些か泥が足りぬ。故にこうして貴様をここで
警戒する俺を他所にギルガメッシュは規格外の事を言いながら高らかに笑う。その姿に、なんて奴だと思うが、それよりも気になる言葉があった。
「待ってやった?俺を?」
何故彼が俺を待つ必要があるのだろうか?そんな疑問を胸に、オウム返しの如く聞き返すと、
「そうだ!全身全霊を以って感謝しろよ、雑種」
そう言って某女帝のような見下げる格好をするギルガメッシュ。何か妙に機嫌が良くないか?と思ったが、口に出すのは野暮な気がしたので止めておいた。
「あ、ハイ。ソウデスネ。アリガトウゴザイマス、ギルガメッシュサマ」
それはそれとして勝手に待ってただけのヤツに全身全霊で感謝するのは嫌だったので、取って付けたような様付けと棒読みで返事だけはしておいた。
「フハハハ!良いぞ良いぞ」
それでも上機嫌であった彼には気にする事では無かったらしく、笑って流された。
「あはは……そうかよ。んで、何で俺を待ってたワケ?」
俺が本題を切り出すと先程までの上機嫌さは何処へやら、思わず頭を垂れたくなるようなオーラを放ち、俺にある質問を投げ掛けた。
「雑種よ。貴様には生きる意思はあるか」
「は?」
「疾く嘘偽り無く答えよ」
突然の質問に困惑したが、彼は散々この空間で待っていたからか、返事を考える程は待ってはくれないようだ。裁定者と言うのが相応しい瞳で、ギルガメッシュは俺の事を見てくる。そんな彼を前に俺は一呼吸を置き、口を開いた。
「…………あぁ、あるとも。こんな所で、こんな道半ばで、くたばってたまるかよ。俺は生きたいんだよ!誰に消費される事の無い、間桐慎二の、
「よく言った!ならばその覚悟に応え、貴様に“コレ”を使う権利をやろう!」
「なっ……?!そ、それは────」
そう言ってギルガメッシュが『
・ギルガメッシュが持っていた聖杯(ウルクの大杯)で願いを叶える慎二
〜Side無し〜
来客を知らせるチャイムが衛宮邸に鳴り響く。
「はーい、今行きます」
その音を聞いた家主である衛宮士郎が声を張り上げて玄関へと歩いて行く。そして開けた扉の先に居たのは────
「初めまして、衛宮士郎さん。僕の名前は■■■■です」
■■■■という衛宮士郎とは何ら関わりのない名前を名乗る黒髪の少年だった。
「えっと、初めまして……?君、迷子……なのかな?お父さんやお母さんは?」
突然の見知らぬ子どもの訪問に戸惑う衛宮。それを見てクスクスと笑う少年。『失礼な奴だな』と衛宮士郎が眉をひそめ始めた時、少年の姿が変化する。
「───っ?!嘘、だろ?」
「よう、衛宮。元気にしてたか?」
それは、あの日、大聖杯の元に身を投げ出した衛宮士郎の学友である間桐慎二の姿だった。
補足という名の蛇足:■■■■は慎二君の生前の名前。間桐慎二自身は聖杯戦争にて死亡した事になっているので、普段は生前の姿で居ます。因みに■■■■の双子の兄弟としてアンリマユ君も居ます。つまり、大聖杯は無くなったけど繋がりは無くなってません((
あと、アーチャーのスペックでセイバーには勝てなくない?は無しでお願いします。ここは二次創作&ダイジェストなのです。勝てたのは勝てたのです。
凄いよ、ダイジェストの筈なのに、前後編合わせて二万五千字近く書いてあるよ!本編三、四話分くらい書いてる。おかしいねぇ……ダイジェストとは?となりますねぇ…
という事で、流石に疲れたんで、次回のIFルートの更新は遅れます。と言うか暫くは別作品を更新すると思います。(多分)
でも頻繁に気分変えるので、もし評判が良ければまた早めに更新するかもです。なので、感想や高評価お願いしますm(_ _)m
2024/4/22:感想欄のご指摘により最後の内容を一部変更していました。変更点→士郎君が慎二君を殴った後の地の文、慎二身投げ後の内容追加など