突然思い付いて衝動的に「書かねば!」となって一日で仕上げた産物。作者は間桐鶴野の事は殆ど知らない筈なのに四千字近くも書いてるよ。(何でだよ)
でもこの慎二君が居る世界線では、身内で桜ちゃん以外にもこういう脳を焼かれた人が居ても良いと思うの……
Side:間桐鶴野
慎二が生まれてすぐに、
腹立たしい、悔しいとは思った。だが、人並み以下の魔術の才能しか持たない私に、逆らう権利なぞ初めから無かったのだ。でも、生まれた子を見てアイツが興味を失ったのを見て、私は思ってしまった。あぁ、この子は魔術の世界に関わらなくて済む。これで一種の意趣返しが出来た、と。
そこまで考えて、自分の醜い感情に気がついてゾッとした。なんて最低な父親だ。あの父を嫌悪しておきながら、結局は自分は腐っても魔術師だったのだ。ほんの一瞬だとしても、実の子を道具として捉えたのだから。魔術回路を持たぬ子が魔術の世界に関わることは無いというのに。なのに私は、慎二に最低な事を考えてしまった。父親であるならば息子の未来を案じるべきであると言うのに。
だからそのツケが今になって来たのだろうか。
「い、ま……なんと?」
「聞こえなかったのか?鶴野よ。慎二には今後、間桐の魔術を教えると言ったのだ」
高熱を出して寝込んだ慎二に、魔術回路の反応があったと言って、親父はあの悍ましい蟲蔵に慎二を放り込み、魔術を教えると言ってきたのだ。
「だ、だけど!親父は言ったじゃないか!慎二に今後間桐の秘術を教えるつもりはないと。だから遠坂家からあの次女を養子にして、今まであの蟲蔵で育てていた。なのにどうして今になって慎二を……!」
「確かに一度、儂はお主にそう言った。だがのぅ……鶴野。少々事情が変わったのだ」
「事情が、変わった……?」
親父の言葉の意味をすぐに理解する事が出来ず、オウム返しの要領で疑問を復唱する。それに対して親父は歪んだ笑みを浮かべると、次のように述べたのだ。
「慎二が自ら言ったのだ。自分を間桐の次期当主に据えろ、とな」
「なっ……?!慎二が?」
「あぁ、そうじゃ。それに、あやつは蟲蔵に放り込まれても尚、蟲共に凌辱はされなかった。鍛えれば期待以上の成果も見込めるだろう。じゃから条件付きで間桐の秘術を教えてやる事にしたのじゃよ」
親父から告げられた言葉に私は唖然とした。あの場に行って蟲共に凌辱されなかった?自ら次期当主になる事を望んだ?ただそれだけでこの親父が方針を変えるなんてあり得るのか?
「で、でも親父……!あの子に干渉しないと初めに言ったのは親父だろ?」
「カカカッ!今日は随分と生意気な口をではないか、鶴野。酒なんぞに逃げたお主が、今更息子の為に儂に逆らうと?」
「っ……!!」
親父の魔力が揺らぎ、それを感じ取った身体が恐怖で震える。胸が締め付けられるような緊張感に、呼吸が浅くなった。所詮駒の一つでしかない私に、逆らう術なんて持ち得ていない。
「い、いや。親父に、逆らうだなんて……そんな……」
だから、私は目の前の存在にただ力無く、否定の言葉を口にするしかなかった。力関係ではあちらの方が圧倒的に勝るからだ。
「フン……。所詮はその程度か。まだ息子の方が躾のし甲斐があるわい」
そんな私を見て親父は、こちらに対する関心は失せたと言わんばかりに鼻で笑った後に背を向け、部屋から出て行った。
「っ……は、ぁ……」
緊張が解け、ハっ……と一息つく。そうして何度か息を吐いた所で思考にふける。
何故、この世界はこんなに残酷なのだろうか。あの子は、慎二は、魔術の世界に関わる事無く生きられる筈だった。魔術師として最低限必要な物を、あの子は持ち得ていなかったから。完全には無理だとしてもあくまでも知識だけの世界で終わる筈だった。
だと言うのに何の因果か、あの子の魔術回路は発現してしまった。本来ならばあり得ない事だ。生まれた時に完全に無いと判別された筈の魔術回路が後天的に発現するなど。そして、自ら修羅の道を歩む選択をしなければならないだなんて、残酷と言わずして何と言えるだろうか。
あぁ、駄目だ。こんな事考えたって、世界の理不尽を嘆いたって何も変わりやしないのに。自分では行動出来ない臆病者だから、こうして自問自答して、勝手に悪い事ばかり考える。右手を失ったあの日から悪化したこの行為に耐えきれなくなって、酒に逃げるのだ。酒を飲めば嫌な事も、辛い事も全部忘れられるから。だから、今日の事は忘れてしまおう。そうしてまた、明日を迎えれば良い。
そう考えていつものように酒に手を伸ばそうとした時、
────『
「────っ!」
「・・・・。」
酒に手を伸ばしかけた腕を降ろす。そうして一度深呼吸した後に、今度は扉に手を掛けた。そうしたのは、親父に逆らう訳ではない。ただ、自分であの言葉の真偽を確かめる為に、私は慎二の部屋に向かったのだった。
ーーーーーーーーーー
「本気なのか、慎二」
部屋に入って開口一番に、慎二の本気度を問う。
「…………はい、本気です。父さん」
「っ……!」
いきなり部屋に訪れた私に、キョトンとした表情を見せた慎二だったが、すぐに質問の意図を理解して私の問いに答えた。その言葉に、私は言葉を失い掛けた。しかし、すぐにハッとして慎二の説得を試みた。
「か……、考え直せ!慎二!魔術なんてものは、学んでも碌な事にはならない!っ、お前はまだ……引き返せる筈だ」
我ながら、本当にらしくない事をしていると思う。今まで無干渉だったクセに今になってこんな説得をしているのだ。現に慎二は不思議そうに目を見開いて、私の事を見ている。
「お前まであの忌々しい蟲蔵になんて行かなくて良い!間桐の魔術は、悍ましい、忌むべきモノだ。親父はお前に間桐の秘術を教えるだなんて言っていたが、そんなのは口からデマカセだ!きっと親父は、お前を─────」
「──父さん」
錯乱し始めた私を、慎二が呼んだ。
「僕は……間桐の秘術を学びます。この意志を曲げるワケにはいきません。それが、間桐の血を引く者の義務です。あの
「慎二……お前……」
やはりあの場所は忌々しい。親父は蟲共に凌辱されていなかったというが、そんなのは真っ赤な嘘だ。身体が無事なだけ。あの少女と同じ。精神が殺されている。
「でもね、父さん。一つ、間違ってる事がある」
─────そう、思っていた。
「
告げられた言葉と変化した一人称に驚き、俯向いてしまった顔をあげる。そうして見た慎二の瞳に、私は既視感を覚えた。
「俺はただ道具になる為に魔術を学ぶんじゃない。俺は、アイツを
────『俺は必ず桜ちゃんを助ける』
「っ!?かり、や……?」
その瞳は、自己嫌悪しかしない私なんかと似ても似つかない、覚悟を宿した瞳。それはあの日、桜を助けるのだと宣った愚かな弟の、雁夜の瞳と似ていた。
「父さんが何を言ったって、俺はこの意志を曲げる事は断じてしねぇ。何年、何十年と掛かってでも、俺はアイツを必ず殺す」
いや、違う。この瞳が宿す熱は雁夜と同じじゃない。この瞳が宿す熱は────
────
「俺は父さんに何と言われようが、止まるつもりはない。だから邪魔をしないでくれ、父さん」
なぁ、見てるか。まるでアンタの生き写しみたいだ。姿は私そっくりの間桐の子だと言うのに、アンタの姿が被って見えて、息子と話している筈なのに、あの日と同じく話しているみたいだ。こんな事、今までなかった筈なのにな。
「……分かった。慎二の邪魔はしない」
気付けばそんな言葉を口にしていた。その返事を聞いて慎二の表情が明るくなったのが読み取れた。口調や宣言からは年齢に対して一回りも大きな大人びた印象を感じたが、その明るくなった表情からは、慎二はまだ小さな子どもなのだと思わされた。
「でもな、慎二」
「何?父さん」
私はもう、親父の駒の一つでしかない。だけどこの子は、小さな身体で、自らの意志でそれを否定し、抗おうとしている。私が忘れかけていた人の心を思い出させてくれたアンタのように。
「私にも慎二のサポートをさせてくれないか?」
「え……?ど、どうして?」
だったら私は、喜んでそれに協力しよう。
「…………親父へのちょっとした意趣返しだ」
それが、あの日アンタが残した約束を守る事に繋がるだろうから。
「────!ありがとうございます、父さん!」
どうせ長年の不摂生と大量のアルコール摂取で、私の命はそれ程長くは無いだろう。ならばそれまでは妻との約束を守る為にもう一度だけ、ひっそりと親父に逆らってみるのも良いかもしれない。慎二が蟲蔵に連れて行かれそうになっていたあの時に、私は自己保身の為に慎二から目を逸らしてしまったから。これは、せめてもの罪滅ぼしだ。
そんな風に、ここに来るまで暗い思考にふけっていた事なんて忘れて、『この子の将来に幸あらんことを』と願いながら、私は慎二の頭を撫でた。
なんか異常に投稿早いなと思ったでしょ?作者もです(おい)
前書きにも書きましたが、急にネタが降ってきて衝動的にほぼ一日中書き続けた結果こうなりました。調子が良くて暇さえあればこうなんですけどもねぇ……
話は変わりますけども、原作では間桐鶴野は酒浸りの人間でしたけれど、本作の最初で普通に話して桜ちゃんを紹介しちゃってるんですよね。そこから更に、うちの慎二君、錬金術出来る事をアピールしてるけど流石に多少の支援が無いとキツくない?じゃあ、その支援はどこから?臓硯が支援してくれる可能性はあるけど、それあり得るか?という疑問から、じゃあ本編で登場が少ない、故人の鶴野に支援させたら良くない?たらしの慎二君なら大丈夫でしょ。と、こじつけて捏造増々の今話が完成致しました。
だいぶ無理繰りですけども、番外編ですしもっと言うなら二次創作だしまぁ、何とかなるでしょ。書きたいものを書くのが作者のスタイルですし?って事で投稿です。
因みにこの時の慎二君の心境は「この人にも息子に対する情があるんだな…。まぁ、それはそれとして邪魔してくるのなら切り捨てるけど」なんていう酷い他人事です。(あ、ちゃんと後々でこの考えは撤回しますけどね?)