蟲使いの間桐君   作:寝仔猫

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ようやっと本編開始ですー。と言っても書きたい所しか書かない短編集の予定ですので、ちょくちょく場面が飛ぶと思いますがご容赦くださいませ……m(_ _)m


本編(ルート分岐前)
物語の始まりの日


 

 ジジィに衝撃の情報を与えられ、ヤケクソ気味に眠りについた次の日、俺はいつも通りに学校へ登校していた。久々にプッツンして疲れて寝る前に今後について考えるだとか思っていたが、今のところはやはり当初の予定通りにUBWを目指して行こうと思う。

 

 そんな事を考えながら俺は朝から生徒会長の柳洞とガラクタ修理に回っている衛宮が教室に来るのを待っていた。今日から漸く、俺の生き残りを掛けた聖杯戦争が始まるのだ。

 

 クラスメイトと当たり障りない会話をしていると、柳洞と衛宮が教室内に入ってきたのが見えた。俺は二人の会話に割り込むようにして衛宮に話しかける。

 

「相も変わらず朝から生徒会長の太鼓持ちかい?」

 

 俺が話しかけると柳洞の顔があからさまに歪んだ。俺自身が彼に何かをしたという訳では無いのだが、どうやら彼にとっては俺のこの優等生ムーブは少々不評らしい。いや、どちらかといえば結果的には俺が衛宮を弓道部から追い出す形になってしまったことを根に持っているという感じか。

 

「慎二も何かあったら言って良いぞ?手伝えるなら手伝うぜ。弦張りとか弓の直しとか、慎二は苦手だったろ?」

 

 何でそれをお前が知ってるんだよ。俺の(比較的)苦手分野を把握している衛宮に少々引いてしまい、少し言葉に詰まった。

 

「っ……。余計なお世話だ。お前はもう部外者になったんだから手伝う必要なんて無いっての」

 

 人の多い教室内で俺はそう吐き捨て、自身の席へ向かって行く。席へ向かう途中で衛宮と柳洞の会話が断片的に聞こえたが、何が『あれが慎二の味なんだ。付き合いが長いと慣れてくる』だよ。お前に俺の何が分かるんだよ。分かるわけないだろ。自分が何で正義の味方になりたいのかも分かってない癖に。

 

 衛宮の無神経な発言にはイライラさせられた。しかし、そのタイミングでチャイムが鳴っていつもの如く藤村先生がダッシュしながら教室内に入ってきたので、その感情は頭の隅に追いやることにした。この日は物語が始まる一日目ということもあり、放課後までは何ら変わり無い学校生活を過ごした。

 

 放課後、遠坂の欠席を確認した俺は呪刻の準備に取り掛かった。場所は空き教室のロッカーに始まり、図書室の本棚の中、階段裏、植木の側、校舎裏など陽動や本命含め様々な所に仕掛けた。本当はそんなに数を用意する必要は無いのだが、発動までの期間の猶予と衛宮達に潰されていく事を考えての量だ。

 

 いよいよ明日、衛宮がセイバーを召喚する。振り返ってみるとあっという間で、それでいて長く濃い生活だった。何の因果か十にも満たない歳で成り代わりを自覚させられた。そして原作では持たない筈の魔術回路を発露した俺は魔術師の世界にどっぷり浸かることとなったのだ。

 

 出来れば蟲じゃない遠坂みたいな宝石を使った魔術といったものを扱いたかったが、生き残れるのなら何でもしてやると覚悟した小心者の俺には直接戦うのを避けるこのスタイルはお似合いなんだろう。まぁ、蟲の王だなんていう設定は要らなかったが。

 

 だが、過去をいつまでも振り返る訳にはいかない。明日からは先を見据え、一瞬一瞬で適切な判断を取らねば死ぬ戦いに俺は参加するのだから。それに加え第五次聖杯戦争はマスターもサーヴァントも揃いも揃って強敵ばかりだ。

 

 唯一主人公である衛宮は俺と同等と言えるかもしれないが、それは序盤までの話であって聖杯戦争を通して経験を積まれたら分からない。魔術師としての才能は間桐慎二と同じく俺にはなかった。あくまでも湧いて出た蟲の王という設定と発露した魔術回路を無理矢理増やして一応は戦えるという程度になっただけだ。

 

 俺自身に物語を大きく変えるような光るモノは無い。強いて言えばこの先の行方を知るアドバンテージはあるが、それはあくまでも原作と同じ様に辿った場合だ。少しでも逸れれば役に立たないし、ルートの選択権は俺には無い。この世界の主人公は衛宮士郎なのだ。俺じゃない。

 

 そういえばイリヤやギルガメッシュ達教会陣営にはどう対応しようか。全員が全員、強敵揃いで正面から戦うだなんて言語道断なマスターとサーヴァントである。蟲を扱うしか能が無い俺が敵う相手では無い。まぁ、道化を演じて彼の興味を逸らせばギルガメッシュは何とかなるかも知れないが。

 

 問題はイリヤなんだよなぁ……。今の彼女は序盤は全力で他マスターやそのサーヴァント達を排除することに積極的なのだ。特にSNでは間桐慎二をライダーが敗北後、すぐに殺していた筈だ。教会に駆け込むのが間に合わなかった結果なのか、それとも早々に負けると見込まれて監視されていたからなのかは分からないが、とにかく負けたらすぐに行こう。じゃないと遭遇してしまいそうだ。

 

 こんな感じで大まかな方針は適当だが……まぁ、これでいいだろう。俺はあんまり細かく計画を練るタイプじゃないし、何より行き当たりばったりでもここまで来れたんだ。気にし過ぎないくらいが性に合う。今は俺の素と実力を知る奴以外にバレないようにだけしていれば良いんだ。付き合いの長くなった衛宮と魔術師としての俺を知る桜はまぁ、例外って奴だ。……ウン。

 

 そして次の日、いつものように授業を受け、放課後になった。

 

「ねぇ、間桐君」

 

 ホームルームが終わり、帰り支度をしていると弓道部の知り合いの女生徒達に声を掛けられた。

 

「ん?何だい?」

 

「この間言ってたお店の件なんだけど……」

 

「あぁ、それね。大丈夫だよ。何なら今から行こうか」

 

「え?でも、藤村先生に弓道場の片付け頼まれてませんでした?」

 

「あぁ、大丈夫さ。それは今日じゃなくても良いからね」

 

 本当は衛宮に頼むから。という前提が付くが、知らぬが仏ってやつだ。そうして嘘八百を並べて俺は彼女達と校門へ向かう。その途中で、階段を上がってきた衛宮と遭遇した。

 

「……慎二」

 

 俺は衛宮に気が付かなった体で女の子達と話を続けていたが、衛宮が名指ししてきたので中断せざるを得なくなった。まぁ、ここで雑用を押し付けなければ物語が始まらないので無視し続けることは出来なかったのだが。

 

「ん?衛宮?まだ学校に居たんだ。また生徒会長にガラクタ修理でも頼まれたのか?ご苦労な事だね」

 

「・・・・。」

 

 俺のいつも通りの嫌味に衛宮は反応を示さない。が、何かを言いたげにしている雰囲気は感じ取れた。ほんの一瞬の沈黙の後に衛宮は口を開いて

 

「慎二、お前に話がある。少し付き合え」

 

 と言ってきた。原作の流れから十中八九、桜の事だろうな。

 

「少し?見ての通り僕は忙しいんだけど?」

 

「それでもだ」

 

「・・・・。」

 

 俺はここで優等生ムーブで対応するか、それとも素で対応するか少し悩んだ。原作の話の内容を完璧になぞるならこのまま話すのが良いだろうが、些細な所で俺が変化を出しても弓道部自主退部の件のように大元の出来事は変えられなかったという経験がある。ならばここで一対一で衛宮と素で会話したとしても、最終的に雑用の押しつけが出来れば良いのではないか?

 

「分かった。少し付き合ってやるよ。……すまないね。そういう事だから、先に校門前で待っててくれるかい?」

 

 そう考えて俺は彼女達を先に校門前まで行かせて二人っきりになることを選んだ。

 

「え……あ、はい。分かりました」

 

「……じゃ、先に行ってるね?」

 

「あぁ。僕も後からすぐに行くよ」

 

 不安そうに校門へ向かう二人を笑顔で見送り、スイッチを切り替えて衛宮と対峙する。

 

「それで?話って何だよ。出来れば手短に済ませて欲しいんだけど?」

 

「お前……相変わらず切り替えが凄いな……」

 

「五月蝿え。俺の質問に答えろよ。手短に終わるんだろうな?」

 

「あぁ。お前が素直に話してくれたのならすぐに終わるさ。俺が話したいのは桜の手の痣についてだ」

 

 やはり桜についてだったな。分かりきってた話題に溜め息が出そうになったが、俺はそれを知らない体でいるので表には出さないようにする。

 

「はぁ?桜の手の痣がどうしたって?」

 

「はぐらかすのか?」

 

「はぐらかすも何も俺は知らないが?」

 

「兄妹の事なのにか?」

 

 衛宮の、兄である俺が妹の桜の事は何でも知ってるだろという決め付けに似た発言に少しだけイラッと来た。なので、俺は間桐慎二と似た様に反論してしまう。

 

「……あのさ、衛宮。いくら兄妹だからって俺が桜の事を何でも知ってるだろ、だなんて決め付けを勝手にしないでくれない?それに、兄妹の事なら尚更お前には関係無いってのが分からないのか?」

 

「わ、悪い……」

 

 流石の鈍感衛宮も俺が不機嫌になったのを察したのか、すぐに謝罪の言葉を述べた。普通ならばここで引き下がったりするだろうが、衛宮は引き下がらなかった。

 

「……だけど、本当に覚えが無いのか?」

 

「しつこい。まさか俺を疑うってのか?桜に俺がやったとでも言われたのか?」

 

「それは……」

 

「違うだろ?いくら俺がこんなんだからって無闇矢鱈に疑うのは、人としてどうかと思うが?」

 

「そう、だな……。疑って悪かった……」

 

 衛宮がしおらしくなった所で、俺は物語始まりのキーとなる雑用の押しつけを切り出す。

 

「ふーん?悪いと思うならさ、一つ頼まれてくれよ。うちの弓道場さ、今ワリと散らかってるんだよ。だから、お前が代わりに掃除やっといてくんない?疑った件はそれでチャラにしてやるよ」

 

「分かった……。だが、大丈夫なのか?」

 

「何がだよ」

 

「弓道部を辞めたから、俺は部外者なんだろう?それは平気なのか?」

 

 「まぁ本当は駄目なんだが、さっきも言ったけど俺は今日忙しくてな。藤村先生に頼まれはしたけど、掃除は後日やる予定だったんだ。それを今日、お前が代わりにやってくれるなら丁度いい」

 

 女生徒に言った時のように嘘八百並べて衛宮に雑用を押しつける様は、知ってる奴が見ればとんだお笑い草だろう。まぁ、そんなのが分かる奴なんて俺しか居ないのだが。

 

「なるほど。分かった、引き受けるよ」

 

「助かるぜ、衛宮。それじゃ、またな」

 

 これで今日の俺の役目は終わったとばかりに、この場を立ち去ろうとして、一つ試してみたい事が出来た。

 

「………………あ、衛宮」

 

「何だ?慎二」

 

 今ここで違和感を与える発言をすればもしかしたら展開が変わる、だなんていう事があり得たりするのではないか?と俺は思い当たったので、それをやってみようと思う。……どうせ変わらないとは思うが、俺の僅かばかりに残った罪悪感からの行動だ。

 

「俺が言うのもなんだが、()()()早く帰れよ」

 

「え?あ、おう。分かった」

 

 分かったとは口にはしているが、いまいち何でそう言われたのか分からないとでも言うかのような顔を衛宮はしていた。それを見て俺は

 

 

────あぁ、やっぱりこれは変えられないんだな。

 

 

 という落胆にも近い感情を胸に抱きながら、優等生の面を被り直してこの場を後にしたのだった。

 

 そしてその後、自室にて視覚共有出来る使い魔を通して衛宮がセイバーを召喚したことを確認した。

 

 さて、これで全てのマスターとサーヴァントが出揃った。そして、ここから数日はSNやUBWに行くならば俺の出番は無い筈だ。

 

 だが、HFとなると新都にて衛宮らと会わねばならなくなるので、一応その線も考慮してしばらくは新都で魔力を集めて行くとしようか。理想としては衛宮らに見つかること無く、ライダーの鮮血神殿(ブラッドフォート)を発動する為の不足するであろう魔力分と使い魔の蟲達の分まで魔力を集められる事だな。

 

 ここまで考えて、すっかり自分も魔術師側の思考回路に染まったなと自嘲する。衛宮が知ればどう思うだろうか。未だに正義の味方になることに固執する奴のことだ。案外、友人云々だとかはキッパリ切り捨て殺そうと行動してくるのかもしれないな。

 

「……ま、そうは考えてもここまで大きな事は何も無かったんだ。俺が気にすることは()()()()だろうさ」

 

 もし、過去に戻れるのならこの頃の自分に言ってやりたい。“()()()()()()()()()()”と。何かを()()()()のは主人公の衛宮でもヒロインの遠坂でもない、“()()()()”なのだ、と。





盛大なフラグを立てていくスタイル〜。何をやらかすかは皆様のご想像を膨らませてくださいませ。(他人任せ)

アンケートの投票、ありがとうございました!ルートとしては、本日投稿時点で一番多い『八人目のマスタールート』で進めて行きたいと思います。他ルートにつきましても余裕があれば八人目ルートが終わればマイペースに書いていきたいと思います。
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