「却下だ」
プラント現議長のギルバード・デュランダルは提案された事項を却下していた。内心、もっと言いたいと思っているが、都合上で内部の不和は最小限に、問題を浮き彫りにしたいなら効率的にと考える彼の心労は計り知れない。
『インパルス』
ユニウス条約下におけるザフトの新型MSの一つだが、上半身に下半身、コックピットになる戦闘機とフライヤーを搭載した武装ユニットに別れ、各部位の換装を利用してどのような戦況でも戦える機体に仕上げる案には一理はあるが、過剰な域に入る事に釘を刺しつつ『足りないもの』についての話題に移す。
「そもそも『パイロット』はどうする気だね?」
「それは・・・・我がザフトの優秀な兵士ならば」
「では、候補を何人でも良いから連れて来てくれたまえ、シミュレーションを見てみたい」
『そして、一手先を考える日が始まった』
映像で見るインパルス、完成予定なミネルバから発進し・・・・空中で合体して、連合のダガー数機を撃破するのを始めとして、それなりの事態を想定した戦闘のシミュレーション映像が集まったパイロットの人数と同じ回数繰り返される。基本的な性能は良いとデュランダルは思うが?
「如何がですかな?」
そして、案の定で軍の高官がどや顔と言うべきか、地位だけはある若造に対してのもののような表情で感想を求めて来た。正直に言えば途中までは訓練自体は悪くないからこそデュランダルは気付いた。
(ひどいものだ)
そう思ったから余計に冷静になれた点から質問した。
「私が思うに、発進直後に合体出来ないように敵に纏わりつかれた時の訓練もしていたが、発進直後にそんな事をやれるような敵がいるなら。その敵の立場で考えたらミネルバのブリッジを潰してしまえば良い気がするのだ。ああいう場合は、戦闘中に損傷して予備のパーツと換装する際のものにするべきではないのかね?」
「そ、それは・・・・」
「(考えてないと言う顔だな、敵の立場でものを考える事を知らんのか・・・・いや、ミネルバの艦長候補が『タリア』だからそう考えられているだろう私には言えた義理ではないか・・・・そして、肝心なところを問うか?)」
地位が上の者から想定外の事を問われたらこうなるのは有りがちなことだとしながら、デュランダルは自分なりに問いたい事を選んだ。
「それから、相手がダガーばかりではな。同じくらいのから、せめて前大戦のエース級やその発展型が相手の場合はどうなのだね?例えば・・・・『ストライク』」
性能的に勝てて当たり前の相手を数機倒した程度ではとする意見に高官は顔色を変えた。前大戦の中盤では最強とされるストライクだが、実は『プラントの一部』にとっても禁句に近い理由がある。注文に応え、性能事態は割り増しをしたストライクをデータで再現したものとの模擬戦に移ったが、案の定とする結果が出続けた。
「性能差で押せはしても、結局は腕の差で負けるの見本市だな、相手が『砂漠の虎に勝利したバーサーカー』であってもな、『オーブ戦から出て来た新型三機』のようなのの方がまだマシだ」
悔しげに俯いていく者達を内心でまあ良いと吐き捨てるようにして切り上げた。デュランダルは立場上で立ち会った燦々たる結果ばかりだとせざるを得ないとして切り上げたが、その日の夜に自分ならパイロットをどうするかと考えを及ぼしていた。
イザーク・ジュールやディアッカ・エルスマンはワケありだから除害。
ヤキンを戦い抜いた経験があるパイロットはザラ派だった事を理由に処罰されるか閑職に回され、あるいは行方を眩ました者が多数。
秘蔵っ子と言えるレイは悪く無いだろうが、劣悪なバランスを逆に活かせる類いではない。
ハイネ・ヴェステンフルスは頼みの綱で良心な為に使い所を誤れない。
内部の問題はさておき、立場上で行動するのを含めると、ザフトが求めるべきなのはインパルスでフリーダムやジャスティスを倒せるようなパイロット。それを考える場合は、パイロットがいてもインパルスの武装は無難か相性が悪いものばかりだ・・・・同じ動力でないにしても、とてもパワーが上の機体と戦うのを想定しているものではない。
デュランダルの要求を満たすものは、一例として連合の新型量産機『ウィンダム』の投擲用ナイフ武装、現存のMS同士で拮抗した戦いになった際の命綱になるアンチ・ビーム処置を施したシールド破壊用にうってつけだ。その類いを開発する気すら無いザフト技術部には辟易した。これで戦いを始めるのは論外だ。
(プラントのコーディネーターはナチュラルを下に見たがっている。だから、何かにつけて甘い考えになり、乱暴に言えばナチュラルのバカ共と見下したがる流れを望むから細部が疎かになる・・・・無闇にテロ行為をやりたがるブルーコスモスのような者達よりはマシとしても向こうは我々より圧倒的に『数』で勝っている。だが、現実を見れていた側は今は・・・・いや、そもそもコーディネーターとはその為に生まれたワケではないのだがな?)
デュランダルが最も恐れる事は具体的に言うのが嫌になる程な思考の延長による不用意な開戦、コーディネーターが何故生まれたかの思考以前の問題での戦いがまた起きる事。その途中で地球側が思わぬ事をやった場合の対応力に期待は出来ない。それとラクス・クラインと言うより、その下や背後に付いている者達がどう動くかだが?
肝心なラクス本人が極端に言うと今のプラントに関わりたくはないと思えば良い、彼女が本当にナチュラル殲滅を実現したパトリック・ザラから、中立ではなく参戦して勝利するようなオーブを実現した思考になりかねない道を選ぶなら都合は良いとしているが、やはり立場上でそうさせてはいけない理由があるのだ。
(では、しのぎ合いと行くか?)
デュランダルな対席に『亡き友』が座っているつもりでチェスの駒を取る。ラクスを『白の女王』に例えたが、チェスは女王を取る必要は無い。王を取るべきなのだが・・・・女王が王を兼ねているのならば話は別だ。そうとしても次の問題がある・・・・戦争はチェスのような最低限のルール等は存在しないとすべきだとしていた。
そして、離れた場の面談用の一室。
「私に『歌姫』になれと・・・・?」
『ルナマリア・ホーク』
ザフト・アカデミーで評判な美少女・・・・なのだが、首席確定のレイ・ザ・バレル以外は史上最も不作な年と言われた代でもある。
「『歌姫』・・・・か、正直これはレクリエーションの延長の時にやっていた君の歌は素晴らしいものだったからな案だ。本来、君は最初から其方の方に行くべきだったな・・・・君は入った年の中ではマシな方だから、より残念だった」
ルナマリアは、誘いに来た者がそう言いたがる理由はわかっていた。入ったばかりの頃に新入生がメイリンの誕生日に盛り上がっていたりしたのだが、その時点で気付くべきだった・・・・幸いその後に早目に気付けて、おかしいと思えるようになれたが、改めて思う。
(遅かったわ・・・・)
ヤキン戦役後の軍アカデミーにしては全くと言える程にそれらしいのが存在しない環境、戦争で家族を亡くしたり、その志を継ぎたいとかの尤もな理由で入ったような者が皆無とすべき異様さ、レイは得体が知れないところがあるにせよ良心はある。しかし、どうも冷め過ぎているとしていた。
それ等を含めてルナマリアは自分なりに理解していた。
噂で聞いた事から自分なりにまとめると、あのアスラン・ザラがいた年は、アスラン自身も優秀であるが、対抗意識を燃やして突っ掛かるような者、後の事を含めて良く言えば競い合うような相手がいたから他を含めた成果やレベルは上がったが、レイや自分にはそういう存在がいなかった・・・・だからこそ、レイですら期待されたような『伸び』が無かったとまで落胆されたのだとしたからこその結論を出した。
その日の翌日、休日を機にルナマリアは同室のメイリンに詳細を話していた。
「じゃあ、お姉ちゃん・・・・受けたの!?」
「えぇ、従軍しながら歌ったりする立場なプロパガンダ的な歌姫ってなるのかしら?・・・・パイロットとしてはどうなるか微妙だけど、今のままじゃ『赤』をもらっても先は暗いし」
正直、あのラクス・クラインから政治的な背景や後押しを引いたような存在にすらなれるかすら微妙な気がすると理解してはいたが、今のままパイロットになるよりは良いとしていた結論だった。
「・・・・それなら、私はどうすれば?」
「私の進路があんたの進路問題にどう関係あるのよ・・・・それは自分で決めなさいよ、私が言えた義理じゃないけど。そもそも、あんた何でザフトのアカデミーなんかに入ろうとしたのよ、例えば姉が入るからとか、入ってからはレイみたいなのから、良いとこ生まれの気を引いて玉の輿狙おうとしたワケじゃないでしょ?」
敢えて明け透けで乱暴で俗な言い方にした質問に妹メイリンが顔を青ざめさせた事でやはりと思った。ここで怒りだすようなら、多分まだマシとしたが、ルナマリア自身もそうだったのだ。
【ミーハー思考の一般学生みたいな小娘で、エリートと呼ばれる類いに悪く言えば色目を使って自分で成り上がるより、言ったような事を狙う者の在り方をしていた】
それも最近気付いた事。仮に良い相手と巡り合えても、それは胸を張れる事ではない、自分はメイリンよりはマシだった程度としていた。アカデミーにはそれなりの家の子供だから姉妹揃って入れたが、改めて何故入ったのかすら動機が薄いとされるようなものばかりでわからなくなって来たのだ。
『潮時』
当初、パイロットとして赤服になろうとした路線からは既に外れてた自分なりに現実と向き合って出した結論だ。この際は示された道で、誉められた理由でなくても唯一つ確かな事。
『決めたのは自分』
それだけは真実だとして、再チャレンジする事をルナマリアは選び、メイリンには自分で今後を選択をするよう求めたが、肝心な事を見落としていたのも現実であった。
別side。
「やめときます」
シグナムは顔をしかめていた。自分の誘いに乗ってくれるのを期待したのだが、と。
リハビリ中のシンに、何気無くを装って試しに一通りの形に剣を振るわせたが、尋常ではない素質・・・・特にバランスの悪い長物を使いながらの弊害すら自分の型に組み込みつつ変則を混ぜる流れを難なくこなすのは天性のものだ・・・・サイズに見合った威力かレヴァンティンのような別物になる機能を付けたデバイスを持たせ、通常サイズのものと併用させる戦術を組み込めば空恐ろしいものになると最大級な評価をしていた。
「そうか・・・・まあ、誘いがあったのだと考えてお、ぃ痛ただっ!何をするんだ『シャマル』」
耳を摘ままれて退散させられていくシグナムにシンは目を丸くする。引きずって行くのは白衣を来た大人びた金髪の女性。
シンが覚えているのは、確か軍医みたいな立ち位置であるシャマル先生であるくらいだが、リハビリに丁度良いかもと勧められた剣術指南中、何か異様な気配があったからだろうか?
とにかく、オフにしても記憶無しなりの勉強をやらないととして退散した。
そして、別室でシグナムはシャマルに絞られていた。
「シグナム!何を考えてるの!アスカ君はまだ半ばリハビリ中よ!?」
「・・・・」
様子がやはりおかしい、重症を負っているところを保護した民間人相手にやるような行為ではない、これではまるで。
「戦力になる・・・・」
そう、要は話に聞いた初めて魔法に関わった時の『なのは』のように最適なデバイスを与えればそれだけで頼れる存在になるとシグナムは見ていたのだ。
シャマルは、あのシグナムにそう見込まれる一般人がいたのは正直驚かされた。6課の目的は戦力を一人でも育てるのも含まれていたからで一理あるのだが、それでは?
「だから、アスカ君を『なのはちゃん』みたいにする気なの?・・・・その前に、しっかり身体を治してからにしないと、エースとしてのなのはちゃんじゃなくて無理して重症になった時のみたいになるわ・・・・」
「お前も調べたんだろ?」
データ映像を出した。
実は徹底的に調べさせたが、普通の人間であるが、風邪を引かない程度の遺伝子操作が行われている疑惑があるか、例えば、両親がそれだったと判明したが、この世界ではその程度は珍しくない、『フェイト・テスタロッサ』のような出生やそれに似た存在、果ては自分達がいるからだが医師を始めとした者達を驚愕させた事がある。怪我の治癒の早さがそんな程度では説明出来ないし、リハビリをした際の筋力の上がり方が異常だった。それで筋肉自体が殆ど太くはならない、見た目を誤魔化したいスパイにも向くだろう。
まとめると、シンは改造された類いにしてもイレギュラーに分類されるようなものではないか?とせべき言う結論、即ち精々が最低限な改造のハズが本来最上級の改造でなければ有り得ない仕上がりになった異端児。
「確かに、これは異常ね・・・・あまりにもタフで吸収効果が早すぎよ『教導隊流』の訓練とかで短期間で『無駄な事をやらずに効率良く鍛えたら』とんでもない事になりそうだわ、悪さをしたがるのからしてもアスカ君を人材として手に入れたら、あれもやりたいこれもやりたいになるわ・・・・けどね『精神』の方はそうはいかないわよ?」
「それは・・・・言い聞かせて・・・・」
「なのはちゃんで例えたでしょ!あの娘も、いきなり本物の戦場に送られて殺人行為をやっていたら黒くもなってたわ、アスカ君で言えば記憶喪失に関してもいきなり戻るまでの弊害とか考えに入れてみなさい!」
シグナムは反論出来ない、そもそもシンが例えば、なのはのように普通の家庭に育った平凡な子供だとして考えた。但し、そう考える時点で間違いだと言うのを二人は気付いていないのも問題だった。
「それから、簡単に言えば才能あると判明すれば本人の意識関係無く理不尽な場に送り込みたがるなんて事は否定するべきよ、遺伝子情報とかだけで才能ありと判明すれば戦場行き決定なんて事が実現した世界なんて、私達が否定したようなのとどう違うの?そんな風にされた子達なんて『母親』に体よく使われて、なのはちゃんに会えなかった場合なテスタロッサちゃんみたいなものでしょ、貴女はそんな子と友達になれた?」
「・・・・わかっている。わかって・・・・」
「・・・・何を言いたいか、敢えて聞かないわ『烈火の将』はそれ程に愚かではないハズだしね」
シグナムとしては、シンが口に出した者の名で焦っているのだ。そして、シャマルの叱責内容はシンが此処に来たキッカケの一因から、住んでいた世界の抱える問題と最悪の可能性をかなりの度合いで言い当ててるとは知りようが無かった。
そして、シャマルは自分の見落としもそうだが、シグナムの欠点についても楽観視してしまった。
シグナムに関しては、管理局においてはバトルマニアと分類でもすれば良いが、戦場を生業にするシグナムは決して一般社会に順応仕切れたワケでないし、そこに暮らす者達について考えられるようになれたワケではない、この時代の主である『八神はやて』を筆頭に単に周りに恵まれていたのだという事を。
ある意味、ルナマリアへの影響も3倍は出たかも。
途中、私作の場合でストライクの話題が何故に禁句に近いのかは徐々に路線です。